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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
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ニートな女神と初めての死亡

 ボスモンスターとは通常フィールドに現れるモンスターよりも数段強いモンスターのことだ。

 フィールドに確率で現れるエリアボス、ダンジョンの最奥でプレイヤーを待ち構えているダンジョンボス、あるいはクエスト限定で戦うことになる特別な個体もいる。

 ヤタガラスはもちろん後者であり、その強さを客観的に分類するのであれば森林のエリアボスであるビッグポイズンスパイダーよりも強いモンスターである。

 ゲームの運営側は、このクエストは本来であれば第1階層の迷宮のダンジョンボスを倒せるようなパーティでの攻略を推奨していた。

 しかしあえて最初から誰でも受けられるようにしたのは、1つは初心者にも倒せない強大なモンスターという壁をどこかに作っておくべきだという意見。

 そしてボスモンスターの強さをわからせるためなど、他にも様々な目的あってのことだった。


 しかし、一番の目的は何かというと、それはただの嫌がらせに過ぎなかった。

 あるいはおふざけとでも言うべきか。


 ゲーム序盤を攻略してるプレイヤーたちが誤ってこのクエストを受けようものならどれだけ健闘したとしても最後のボスにコテンパンにやられてしまうだろう。

 ということを想像するだけでも一定のストレス発散の効果はあるものだ。


 ただ、あくまでも第1階層で受けられるクエストのボスであるため先の階層を攻略したプレイヤーならばこのクエストは比較的楽にクリアできるだろう。

 まあ、そのころにはおそらくこのクエストの存在など忘れているに違いないのだけど。

 それに第1階層ではそもそもギルドでクエストを受けるプレイヤーというものの比率自体が低い。

 報酬も安いのでわざわざ受ける必要性も感じないものが多いのが理由の1つだがこの話はいいとして、問題のヤタガラスのクエストに話を戻そう。


 つまりこのクエストは絶対にクリアできないというものではないということが重要なのだ。


 ゲームの運縁側の悪ふざけはもちろん先の階層のクエストにもいくつかあって、特に攻略最前線の階層にあるクエストにはもう絶対に倒せないレベルの化け物が出るクエストなどもあるのだというけど。


 さて、今度はどんなやつらがこのクエストを受けてくれるのだろうか。


 ……と、ゲームの運営側のこのクエストを考案したチームのメンバーは思っていたことだろう。

 クリアしたのならそれでもいい。むしろ誰かがクリアしたという報告を聞くことも楽しみの1つであったのだ。

 どんなやつらがどうやってヤタガラスを倒したのか。人数は?、レベルは?、それぞれの神の恩恵はなんだったのか?

 それを知ることで今後のゲームの展開やゲームバランスにもいくつかの改善、習性がなされていく。

 そしてそれが、時に重大な問題が発覚するきっかけになったりすることも……


 <第1階層:始まりの街:森林公園>


 ヤタガラスはHPケージ2本分のうち最初の1本の半分が減ったあたりで地上から空中に場所を変えた。

 そしてさらに半分を削って残りHPがケージ1本分になった時にまた地上へ降りてきた。

 私は、ならまた半分削った当たりで最後に空中に戻ることもありえると思った。


 ボスモンスターは、HPが減ると行動パターンが変わることが多い。

 ビッグポイズンスパイダーが自らの周りに毒液をまき散らして地面に毒沼の結界を作ったこともそうであるし、新しい攻撃方法が追加されたり既存の攻撃もより激しいものへ変わったり。

 それで、件のヤタガラスはと言うと……


「またでっかい竜巻が来るよ!」

「皆、距離を置いて」


 まず地上へ再び降りてきたヤタガラスの最初の行動は、翼を大きく広げることだった。

 この動き、モーションは先ほども見たものであり大きな竜巻を1つ生み出すものだ。

 しかしHPが減ったことでその攻撃方法も変化した。もちろんパワーアップしていた。


「よし来た!、あれ、うそうそうそ!、1つじゃないの!」


 具体的には翼を広げて大竜巻を起こす動作が高速化され、しかも3連続で行われたのだ。

 当然そのことで生み出される大竜巻も3つになった。

 標的は李ちゃん、ローズ、そして私。

 地上にいる時には物理攻撃をしかけてくるメンバーが優先的に襲われたのだ。


 そういえば一番最初の攻撃の時も、やつは前方で攻撃をしかけた魔法使い勢3人よりも、なぜか後方で待機していた李ちゃんを狙って竜巻攻撃をしかけてきていた。

 その理由について私はずっと考えていたのだけど。もしかしたらヤタガラスは自分の耐久の値が低いことで物理攻撃をしてくるプレイヤーを警戒しているのではないか?

 それも特に槍は、空中にいる時でも投げることで自分を攻撃できる武器だということをわかっている。モンスターに搭載されているであろう人工知能は、ボスモンスターにもなるとそれなりに賢いということか。


 このパーティで最も厄介なのは私でもローズでもなく槍を持つ李ちゃんなのだと判断したとしてもおかしくはなかった。


「もともとカラスは賢い鳥だって言うしね」


 普通のフィールドに出るようなザコモンスターは基本的に同じ行動しかしない。

 攻撃方法が複数あるものもいるけれど、攻撃の動き自体はどの個体も同じなので1度そのモンスターの動きや特徴を掴んでしまえばあとはヌルゲーと化す。

 ……だけどボスはそう簡単にはいかない。


「アイスボール!……さすがにでかいのは無理か。避けよ」


 私は大竜巻に向かって一応念のためにアイスボールを打ちこんでみた。

 小さな竜巻ならこれでほぼ無力化できたのだけどやはり大きいものだとダメだったようだ。

 こちらに向かってくる竜巻はちょっとだけ遅く、小さくなったように見えたけどまだ大きい。

 私は諦めて横に飛んでそれをかわした。大竜巻は追尾はしてこないので。

 他の2人も先にやつと距離を取っていたから普通にかわすことは出来ていた。


「いくぞ、2段斬り!」

「せやぁぁぁぁ!」

「うりゃ!、そりゃ!」


 そして今度はこちらの番。3連続で大竜巻を放ったためかヤタガラスが少しばてたようなそぶりを見せたのですかさず接近して剣と槍で攻撃する。

 もちろんヤタガラスも必死に翼を振り回して反撃するが、素早さの高い私と李ちゃん、そして反射神経がいいローズはそれをなんなくかわす。

 さっきも何度か見た動きだし、翼も2枚だけしかないから見切るのは難しくはない。


「皆、離れて。新しい攻撃よ!」


 ヤタガラスはそこで翼を閉じて交差させると、体から真っ黒いオーラを発し始めた。

 また全員で距離を取ったのだがその後の攻撃は予想よりもはるかに強力かつ厄介なものだった。


「ダークボールだ。しかも同時に4つも!?」


 勢いよく開かれた翼から黒いオーラが凝縮されて飛んできたのはダークボールだった。

 ただし通常よりもかなり速く狙いも正確にラフィアちゃん以外の4人にそれぞれ1つずつ飛んできた。

 私はギリギリで回避できたもののローズと李ちゃんは直撃、大ダメージを受けた。

 ただ、ここで驚いたのはマロンちゃんの方で。


「ダークカーテン!」

「え?」


 マロンちゃんは自分の前方に対して何やら黒い幕のようなものを張った。

 そしてその黒い幕にダークボールが命中したのだが、ダークボールは幕に吸い込まれるようにして消えてしまいすぐに幕も消えた。


「今のは?」

「ダークカーテン。闇属性の魔法攻撃ならどんなものでも無力化できる防御魔法。ただ前にしか展開できないんだけど」

「そ、そうなんだ」


 マロンちゃんはそう言ってたけどその顔はドヤ顔だった。

 あ、この戦い今まで出番があんまりなかったから。


「皆、あの攻撃が来るときは私の後ろに隠れて!」

「わかりました!」「おう!」「うん!」


 マロンちゃんは得意げにそう叫んだ。

 それに3人が答えたけど私は、まあ自分でかわせるしね。

 そして私はここであの魔法を使っておくことにした。


「ウィンドステップ!」


 その効果で3分間私はさらに敏捷の値がアップする。

 本当は戦闘開始直後に使っていても良かったとは思うんだけどね。

 それだと絶対に途中で効果が切れるし、そうなるとさらに3分間はまた使えなくなるからここぞというタイミングまでとっておいたのだ。

 金色の光はまだあるけどそれがいつ消えても大丈夫なように保険をかけておくという意味もある。

 ただ、この金色の光ってゲーム的にはスキルなのか魔法なのか、どっちなんだろう。


「え!?」

「うそ」

「は、速い!?」


 私はさらに高速でヤタガラスに接近すると技など使わずにただガムシャラに剣をたたきつけていった。

 翼での反撃ももはや今の私にとってはスローに見える。

 私が一心不乱に攻撃をし続けているとヤタガラスは翼を閉じた。


「皆!」


 マロンちゃんがそれを見て叫び、さきほど言われた通りにその後ろに隠れるように3人が集まる。

 だが私はそこにいかない。翼を閉じようが無視だ無視。

 とにかく今の状態が続くうちに削れるだけ体力を奪ってやる。


 そして放たれた4つのダークボール。

 3つはもちろんマロンちゃんたちのいるほうへ飛んでいった。


「ダークカーテン!」

「すごい、防ぎ切った!」


 え、それで私のところにきたダークボールはどうしたのかって?

 おやおや、君は属性の相性のことをもう忘れてしまったのかい?


「闇には光だ。ライトボール!」


 至近距離にいたためにギリギリのギリだったけど私はライトボールをぶつけることでやつのダークボールと相殺させることに成功した。闇と光の球がぶつかると小規模な爆発が起こる。

 その時に発生した衝撃の余波で私はちょっと後方に吹っ飛ばされたのだけど。


 ダークカーテンで後ろに隠れている間に他の3人のメンバーは体力の回復をすませていた。

 私の渡したポーション☆で大幅に失った体力が回復されていく。

 あ、あのポーションの値段考えてなかったわ。どうしよう、後で使った分の代金は請求しなきゃなんだよね。もう1個50Gでいいか。たしか店売りのは1個30Gだったと思うし。


「せやぁぁぁぁ!」


 そして李ちゃんの復活した槍投げスキルによって投げられた槍がなんとヤタガラスの額にあった中央の目にクリーンヒット。

 そこはヤタガラスの急所だったようで大ダメージを与えられた。

 この時点でヤタガラスの体力は残り4割弱。ヤタガラスはまた空中へと飛んで逃げた。


 だけでは終わらなかった!!


「なに!?」


 空中へ飛んだヤタガラスは大きく息を吸い込んだ。

 そしてその口から放たれたのは紫色のもやのようなもの。

 ああ、これってもしかしなくてもあれだよね、うん。


「うわぁぁぁぁ!、毒の霧だ!」

「落ち着いて。すぐに毒消し薬を飲むんです!」


 幸いにも霧は長くフィールドには残らずすぐに晴れたものの毒のダメージは強力だった。

 ああ、だからね。私は毒無効のスキルをもってるからノーダメージだったんだって。

 でも他の4人はもちろんそうじゃないから。


「うそ、この毒も普通の毒消しじゃ……すみません玲愛さん。毒消し薬使わせてもらいます」

「ああ、うん。あ、そうだった!」


 私はあわてて李ちゃんとマロンちゃんのところへ。

 この前のビッグスパイダー戦の後でたしか、2人に渡した分の私の毒消し薬って切れてたはず。

 私は2人に念のために2個ずつ毒消し薬を渡した。

 ああ、この調子だとまたいくつか作っておいた方がいいかも。


「ありがとう、ごめん」

「お姉さん、ありがとう。助かったよ」


 私は2人のお礼を受け取りながらもヤタガラスの方に目を向けた。


「あ、やばい」


 そのヤタガラスはすでに次の攻撃モーションに入っていた様子。

 翼を大きく広げているのであれは竜巻攻撃の予兆だろう。

 空中にいるから今度は小竜巻だろうけどさっきの例を見ると今度も……


「うそうそうそ、同時に5つも来たよ。しかも2連続って無理だよ」


 前は1度に3つの小竜巻が1回だけ飛んできただけだった。

 今度は5つの小竜巻が2連続、つまり合計10個の小竜巻が襲い掛かってきた。

 私はまずアイスボールでマロンちゃん狙いの小竜巻を1つ無力化した。


 ラフィアちゃんはアイスボールで自営が出来る。

 李ちゃんと私は走り回っていればなんとかなる。

 問題はマロンちゃんとローズだったけど、私はマロンちゃんを優先させた。

 その理由は、この後来るであろう攻撃に対処してもらうため。


「アイスボール!」


 私は逃げつつも2回目のアイスボールでマロンちゃん狙いの2個目の小竜巻を消した。

 ラフィアちゃんも逃げつつなんとか自分で2回アイスボールを発生させて竜巻を消した。

 李ちゃんは全力疾走中、私も同じ。

 ローズは……あ、そういえばローズはどうなったんだろうか。


「きゃあぁぁぁぁぁ!、きゃあぁぁぁぁぁ!」


 あーあ、2個とも連続でくらってはるか後方へと飛ばされていった。

 ローズは攻撃と防御が優れている分敏捷はそれほどなんだよな。

 あの、青白いオーラみたいな技使ってた時はほんとに凄かったんだけど。

 聞いた話によるとあの技、なんと1日1回しか使えないのだとか。

 そんなことならこのクエスト、また別の日の朝とかに受けたほうが良かったんじゃないか?


「あ、戻ってきた」

「ぜぇ、はぁ。ぜぇ、はぁ。なんですか、さっきもでしたけど、追いかけてきて」

「うん、追尾してくる攻撃だよ。大丈夫?」

「ダメージは、それほどでも。ただ、怖かった」


 うん、まあいきなり小型の竜巻に襲われることなんて現実じゃまずないしね。

 皆にもわかりやすくいうなら時速60キロくらいで100メートル近く後ろに飛ばされるみたいな。

 高速道路走ってる車のドアを開けて道路に飛び出した時みたいな。そんな感じ。


 まあ、私も経験したことないし想像でしかないけどね。

 あ、良い子も、あと悪い子も絶対にそんなマネしたらダメだよ。

 そんなことで死んだら神界で人間の魂の行き先を決める仕事してる神様が死因見て大笑いするから。

 おいおい聞いてくれよ、この人間こんなバカなことやって死んだんだぜ。マジうけるんですけどー。

 とか言われちゃんだぜ?……そんなの嫌でしょ?


「ライトボール!、ライトアロー!」


 お、そんなこと考えてる間にラフィアちゃんが攻撃してる。

 私も参加しなきゃ、と思っていたところでウィンドステップの効果が切れた。

 チッ、もう3分たったのかよ。速いよ。カップラーメンってこんなに速く出来たっけ?

 下界のあの有名なヒーローも、よくこの短時間で怪獣とか倒せてるよな。絶対時間足りないよ。


「それにしても玲愛さん、その光。もう随分たってますけどまだ続きそうですか?」

「え、うん。どうかな、もう20分近く経ってると思うけど」


 そもそも発動条件もよくわかっていないのだ。

 今までだって強い敵と戦う機会は何度かあったし、もしかするとこの光って何か特別な条件とか。

 たとえばクエストのボス戦の時だけとか限定的な条件の時でしか使えないのかもしれない。

 ローズのあの青白いオーラも効果はすごいけど効果時間は30秒だけでしかも1日1回だけ。

 私のやつは時間制限はどうやらないっぽいけどさすがに普段からいつでも使える技じゃないだろう。

 ていうか使えたとしても使わないよ。さすがに、つまらなくなるだろうし。


 ゲームの運営もさすがにそんなことはしないだろう。

 神様の恩恵の中には強力なものもあるらしいけどあまりにも強すぎる効果だとそれを手に入れたプレイヤーがゲーム序盤のあまりにもぬるい難易度に嫌気がさしてやめてしまう。

 誰だって少しくらい苦戦はしたいものだ。


 まあ、中には一方的に敵を倒しまくる無双を楽しむプレイヤーもいるとは思うけど。


「やつの体力は残り3割くらいかな。太陽は、ああもう半分も沈んでるよ」

「ええ、ですが行けます。このままなら……」


 しかしもちろん現実(いや、ゲームだけどもう現実って言っても言いよね?)はそれほど甘くはなかった。


「また翼を閉じたよ!」

「皆、マロンの後ろに速く!」


 マロンちゃんはいつダークボールが飛んできてもいいようにじっと杖を構えている。

 その後ろには李ちゃんとローズがいる。

 ラフィアちゃん?……ああ、さっきの私のライトボールを見て自分にも迎撃できると考えたのかあの子もなんか構えてるみたい。もちろん私も。


 ただ、私たちが失念していたのはそのダークボール攻撃も先ほどよりパワーアップしてるという可能性を忘れていたことで。

 ヤタガラスは翼を交差させながらもさらに上へと上昇していく。

 そして翼を開くと同時に体を回転させてダークボールを螺旋状に振り払った。

 しかもその数なんと16個。正確には8個ずつ2回に分かれての攻撃だったけど。


「ダークカーテン!、ううう、受けきれないよ。きゃあぁぁぁぁ!」

「ライトボール!……う、うわぁぁぁぁぁ!」


 マロンちゃんはそれでも頑張って6つのダークボールは止めて消した。

 ダークボールが極めて広い範囲に巻かれたことで地面に当たったものもいくつかあった。

 私は1つは消したもののその直後に2つほどくらってしまった。

 HPケージが一気に削られる。まずいな。


 だけど、その攻撃を1人だけかわしきったものがいた。


「ライトボール!、ライトアロー!……ライトボール!」


 そう、ラフィアちゃんである。

 彼女は2つの光魔法を交互に、さらに移動しながら放つという技をやってのけた。


 魔法を使う際、人は普通集中するために立ち止まる。

 だから歩きながらならともかく高速で走りながら魔法を使うことはできない。

 いや、システム上は出来るのだが一般的には出来ない人が多いだろう。私だってまだ出来ない。


 でも、それを普通にやってのけたラフィアちゃんはつまりかなりの集中力の持ち主ということだ。

 本人は記憶力しか取り柄がないとか言ってたけど、私はむしろこちらの方が恐ろしいと感じた。

 それはもはや魔法という名の大砲をしょって動き回る、移動砲台だった。

 それにラフィアちゃんは手に杖などを持たずに素手で魔法を発動させるから狙いを定めるのも容易だというところか。


「ラフィアすげぇ!?」

「うん、私は絶対に出来ないよ」

「ええ、これがラフィアの一番の強みですからね」


 他の3人のメンバーもいくつかダークボールをくらってしまったいてけれどラフィアの動きを見てそう言っていた。

 もしかしてこのメンバーで普通に戦いあったらラフィアちゃんが最強なんじゃないの?

 少なくとも魔法というカテゴリに置いては。


 ラフィアちゃんはダークボールを消し切るとさらに追撃でライトボールをヤタガラスに打ちこんだ。

 これであいつの体力は残り2割強、となったところでさらに状況は変化した。


「ちょっと、あれ冗談ですよね」

「え、うわ。ここにきて!?」

「もう、ダメかも」

「あぅ……あれって」


 今にも沈みそうな夕日、しかしまだ赤かった空に現れた黒。

 その黒はどんどん大きくなってきてそして姿を現した。

 カラスだ。オオガラスやキョダイガラスはいないようだったけどカラスの群れがフィールドに出現したのだ。

 ヤタガラスの仕業であろうやつの最後にして最大の大技。


「仲間を呼ぶ、か。しかもあの数、もう1000羽いるかね」


 そしてヤタガラスは相変わらず空中に飛んでいた。

 体力が減ったことで動きは遅くなっており疲れていることは明確だった。

 けれどもその顔はどこか満足気であり声は出さずともこう言っているであろうことは伺えた。


『どうだ、これでもうお前たちは終わりだ』


 私は歯を食いしばった。手に持った剣を握りしめる。

 そして私は……


「玲愛さん!?」

「うっそだ~!」

「お姉さん!」

「うそでしょ!」


 結果から言うとヤタガラスは倒された。私の、その最後の一撃によって跡形もなく。

 そしてヤタガラスの体が光の粒子となって消えた時、太陽が地平線の彼方に沈んでいったのが見えた。

 夜の帳が落ちてそれまで赤に染まっていた公園も暗くなった。

 私の体をまとっていた光も同時に消えてもとの状態に戻った。


「ああ、クエストは失敗か」


 私は最後にそうつぶやいた。そして私は……そこで初めてゲーム内で死んだ。



<モンスター辞典>

〇ヤタガラス

第1階層の住人クエスト「カラスの群れとゴミの山」に登場するボスモンスター。

その強さはクエスト最後のボスにふさわしく強大。

姿は赤い3つの目と3本の太い足を持っている超巨大なカラス。

HPも、それ以外の能力値もただのカラスとは比べ物にならないほど高くなっている。

ただ、それでもやはりカラスであるのか耐久の値だけやや低いので物理攻撃が割と効く。

賢さが高いためほとんどの魔法攻撃でダメージを受けないが、唯一弱点である光属性の攻撃だけはダメージが通る。

攻撃方法もボスらしく非常に多彩で地上と空中で攻撃方法も変化。


地上:接近戦では翼による物理攻撃、大竜巻攻撃(風属性)、ダークボール(闇属性)

空中:小竜巻攻撃(風属性)、ダークボール(闇属性)


なお、戦闘中に1度だけフィールド広域に被害が及ぶ毒の霧攻撃も使用する。

この毒の霧はダメージもあるが毒(中)にもなるため普通の毒消し薬では治癒できない。


筆者は、もっと攻撃方法を増やしてやろうかなと考えていたけれどさすがにそれは玲愛たちが可哀想だし、なによりそれを書く自分が大変なのでやめました。


このモンスターはカラスと名がついていますが鳥族ではなく伝説族という種族になります。

クエスト限定のボスなのでとくにアイテムなどはドロップしません。

ただし次回の話で、玲愛だけはいつものあれがもらえます。

元ネタは下界の日本神話に登場する3本足の怪鳥、八咫烏やたがらす


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