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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
21/171

ニートな女神と初めての勧誘

次回、玲愛は一緒にクエストに行こうという誘いを受けるのか?

 私は息を飲んだ。

 そしてようやく意識が戻ってきたのはビッグポイズンスパイダーが上からまた降ってきてからだった。

 いけない、今はこいつを倒すことに集中しなければ。


「玲愛さん、ちょっと頼みがあるんですけども」

「あ、はい」

「後を、お任せしてもいいでしょうか」

「え?」

「実は今の技、使い終わってから一定時間反動で能力値が下がってしまうんです。だから……」

「ああ、えっと。はい、わかりました」


 私が了承するとローズは前線から引いていく。

 まあ、あれだけ凄まじい効果の技が何のリスクもないなんてわけないか。

 ないならさっさと使ってるだろうし。でも、ちょっとだけ安心したかも。


「それじゃあ私が攻撃に徹するから、李とローズは休んでて。あとの2人は大丈夫?」

「「はい」」

「じゃあ援護はよろしく」


 ということで戦闘再開だ。

 ビッグポイズンスパイダーはさっきとほとんど体力が変わっていなかった。

 いや、まあやつも自分の手下というか8体ものポイズンスパイダーがわずか30秒足らずで全滅させられるとは思ってもいなかっただろうに。


「ファイアーボール!」

「ファイアーアロー!」

「ダークボール!」


 そして決まった私たちの攻撃でやつの体力は一気に3割ほど削れて残りは5割程度。

 このまま押し勝てると私は思っていた。

 それにしても、ファイアーアローという魔法はたしかにファイアーボールよりは速く、射程も長いのだけど威力が低いというのも本当のようだ。

 私の場合は火魔法最強のスキルの効果でファイアーボールの威力は2倍になっていて、さらにビッグポイズンスパイダーが火属性が弱点であることも含めて一発でケージの4分の1ほど削るのに対し。

 ラフィアちゃんのファイアーアローはマロンちゃんのダークボールと合わせてもやつの体力を1割削るにも達していないところから見ると、どうやらそういうことのようだ。


 でも、残り体力5割ならもう別にいいか。

 と、思っていたのも束の間だった。

 ビッグポイズンスパイダーが前回と同じように自分の周囲をぐるりと囲むようにして毒液を噴射し、地面に毒の結界ともよべるものを作り出す。

 ああ、これやられるともう近づいて攻撃とか出来ないんだよね、普通は。


「うわぁぁぁぁ!」

「だ、大丈夫。マロンちゃん!」


 あ、しかも毒液が予想外に広範囲だったこともあってかマロンちゃんがまた毒液を食らって毒に。

 渡しておいた毒消し薬☆ですぐに治癒したみたいだけど毒液そのものを受けた時に発生したダメージも大きいようでマロンちゃんの体力は残り4割ほどというところ。

 あ、でもマロンちゃんも野菜ジュース飲んでてみたいで徐々に体力は回復はしている。

 そして実はラフィアちゃんは後方支援担当だったからかいまだに無傷だった。


「マロンちゃんも下がってていいよ。残りは私とラフィアちゃんでやる」

「う、うん。ごめんなさい」

「いいよ。ラフィアちゃんはそのままファイアーアローで援護してて」

「は、はい!」


 あのビッグポイズンスパイダーは毒液だけじゃなくてなんかもっとやばそうな酸性の液体も吐くから。

 それをまともにくらったら多分魔法使いなら一撃で死ぬこともあるかもしれないし。

 私はくらったことないけどあれは絶対にやばい攻撃だもの、見ただけでわかるよ。

 それで体力が減っているマロンちゃんには一旦下がってもらうのだ。マロンちゃんはもう毒消し薬使い果たしてるからっていうのもあるけどね。


 そして私はやつの方へと視線を移す。

 体力が減ってきて動きが悪くなっているもののまだ元気そうなご様子。

 ただ問題はやつ本体じゃなくその足元から広範囲に広がる毒沼。

 ああ、これ入って私が毒にならなかったらまず私の毒無効のスキルがばれるな、どうしよう。

 ただ毒沼の淵ギリギリからだとファイアーボールが届かなさそうなんだよな。

 ファイアーアローなら問題なく届く距離なんだろうけど、さてどうしようか。


 私は後方でこの戦いを見守っているローズの方をチラリと見た。

 でもさっきローズも隠し玉を見せてくれたし、私も毒無効くらいならばらしてもいいか。

 と考えて私は毒沼に足を踏み入れてやつの懐にもぐりこんだ。


「「「えええ!!!」」」


 と、叫んだのは3人だけだった。ローズは驚いて口を開けていたけど声は出していない。

 いや驚きすぎて声も出せなかったのかもしれないけど。


「ファイアーボール!」


 私の2段階火属性コンボ攻撃が見事に決まってやつの体力をまた3割程度削った。

 そして残り2割となっていたところにラフィアちゃんのファイアーアローが命中。

 うん、やっぱりあんまりダメージになってない。減ってはいるんだけどもどうしても私のと威力を比べてしまう。


「ダークボール!」


 さらに追撃をしたのはマロンちゃん、

 渾身のダークボールが炸裂した。けどもそれでもダメージはわずか。

 そしてそこにさらに追撃があった。それは槍であった。

 飛んできた槍がやつの顔面に突き刺さった。これは、李ちゃんだな。

 たしか遠隔で槍を投げるスキルがあったと言っていたけどここで使ったのか。

 そのおかげでやつの体力は残り1割にまで減った。


「私がやっちゃっていい?」


 一応はこのビッグポイズンスパイダーと最初に戦闘してたのはマロンちゃんたちであるので途中参加の私が止めをさしてもいいのかどうか一瞬だけ迷ったのだ。


「やって下さい!」


 私の問いに答えたのはローズだった。リーダーが許可してくれたのなら大丈夫だろう。


「わかった。ファイアーボール!」


 私が最後に一発ファイアーボールをぶちかますとビッグポイズンスパイダーはついに倒れた。

 そして光の粒子となって砕け散って消えて行く。

 完全にやつの姿が消えた時にカランという音が聞こえた。見るとマロンちゃんが杖を落として地面にへたりこんでいた。

 そしてラフィアちゃんも同様で地面にお尻がぺったんこ。

 李ちゃんは壁に背中を預けてたのがずるずると下に下がって行きぺったんこ。

 リーダーのローズはと言うと……


「終わりました、よね?」

「うん、終わったよ。お疲れ様」


 さすがに座り込みはしなかったがまだ倒したことに対して半信半疑だったよう。

 まあビッグポイズンスパイダーはそれぐらい強くてしぶとかったってことだな。

 え、私?……いや、私は普通に立ってたけど?

 それでそのままちゃっかりとドロップアイテムを回収してましたけど何か?


「ははは、はは。……はぁ」


 あ、ローズも座り込んだ。どうやら今までは気力だけで立ってたっぽい。

 私は改めて全員の様子とHPケージを確認したけど皆大丈夫そうだった。

 たぶん初めてのボス戦で緊張したのと、長丁場の戦闘での疲れがいま一気に来たのだろう。

 私はドロップアイテムをすべて回収し終えるとローズの元へ。


「大丈夫?」

「ええ、大丈夫です。ただ、さきほどの技の反動がまだ残っていて」

「そう」

「それにしても、玲愛さんはお強いんですね。今も1人だけ平気な顔をされてますし」

「ん、んー。まああいつとは1回ソロで戦って勝ってるから……あ」

「え、今なんて?」


 まずい。私も戦闘の後で安心したせいでついうっかり口を滑らせてしまった。


「え、いやー。あはははは。なんでもないよ」

「そ、そうですか。……あの、ちなみに参考までにお聞きしたいのですが玲愛さんは今何レベルなのでしょうか?」

「え?」

「ああ、もちろん答えたくなければ無理にとは」

「いやいいけど。レベルは12だよ」

「じゅ、じゅうに。あの、このゲームのプレイ時間は?」

「え?……いや、まだそんなに。初めて1週間もしてないけど」

「そ、そうなんですか。そう、まだ1週間も……」


 ああ、でも見た目イコール中身だと仮定すれば私はまだ高校生に思われるか。

 普通は学校行ったりとか他にもいろいろあるだろうけど1週間でこのレベルというのはちょっとやり込み過ぎに聞こえるのかも。

 まあでもそこまでおかしな数字でもないだろう。だってまだ序盤も序盤なんだから。


「ローズのレベルはいくつなの?」

「私はこの前やっと8に上がりました。他のメンバーも7か6です」

「え、そうなんだ」


 あれ、でももしかするとそうでもないのかな。

 今の時点でレベル12っておかしいのかだろうか。誰か基本というか、平均的なレベルアップやらプレイ時間を教えてほしいところだ。


 私は、そしてこれ以上は話すこともなかったのでどうしようかと足元を見たら毒草や毒消し草がまた大量に生えていた。

 この前全部取ったばかりなのに復活早いな。さすが野草といったところか。

 うーん、まあ今回ので毒消し薬もけっこう使っちゃったし拾っておくか。

 こうして私はまた大量の毒草と毒消し草を手に入れた。

 毒草の方はまだ何も使ってないから溜まりまくってるんだけどもう普通に売ろうかな。

 でも毒だしな。薬屋でも買い取ってくれるかどうか……ま、それは街に帰ってからでいいか。

 こうして私の初めてのパーティでの連携戦闘は終わりを迎えた。


 <第1階層:始まりの街:東門の前>


「今回は助けていただき本当にありがとうございました」

「「「ありがとうございました」」」


 私はもう何度目かもわからない感謝の言葉にいいよいいよと返す。

 戦闘が終わった後で皆がようやく動けるようになって、そして仲良く縄梯子で上へと脱出した。

 途中で梯子から落っこちかけたラフィアちゃんをローズが助けた時にはドキリとしたけども。

 そして穴を脱出した時に1回、帰り道の途中でもメンバーのそれぞれにお礼を言われつつも結局のところほとんど質問攻めにあった私だったが、ローズがいさめてくれたことで収まった。

 まあ、私も答えられる範囲でなら答えていたけど。


「あ、そうだった。皆にこれを渡しておくよ」


 私は分かれる前に各人に1つずつあるものを渡した。

 それはまあ、耐毒の指輪だ。あ、今回も私が止めをさしたので前回と同じ4つ落ちていたのだ。


「え?」「これって」「これは!」「うそ……」


 4人の反応はそれぞれだったけど私は誤解のないように言っておく。


「あ、勝手に拾っちゃったんだけど。実はさっきのビッグポイズンスパイダーからドロップしてたんだ。えっと、ちょうど4つ落ちてたから」

「で、ですがこれは……でもそれでしたら玲愛さんの分は?」


 あー、それは言うよね。うん、ここで変なこと言ったらいけないな。

 でもどう答えるべきだろう。実はもう同じの持ってるんだ、だとマズイかな。

 うーん、まあもう皆ちょっと気づいてるっぽいからいいか。


「えっと、そのアイテムはその、私には必要ないというか」

「ええ!、これがですか!?」


 うん、分るよ。耐毒の指輪は毒攻撃を受けた時に毒になる確率が半分になるっていう効果だしね。

 でも私にはもう必要ないのだよ、それ。


「あの、これはまあ出来れば内密にお願いしたいんだけども」


 私は4人に絶対に口外しないことを誓わせた上で自分には毒無効というスキルがあるのだということを説明した。

 さきほどの戦闘で毒沼の中に飛び込んでも平気だったこともこのスキルがあるからだと。


「毒無効?」「それ凄くね!」「そ、そんなスキルが」「なるほど、だからさっき」


 うん、まあ最初は信じられないって反応してたけど、現にさっき実際の戦闘で見てたからね。

 割とすんなり信じてくれたよ。良かった良かった。


「あ、そうだ。せっかくだし皆ともフレンド登録したいな。マロンちゃんとはもうしてたけど他の皆とも」


「え?」「マロンお前知り合いだったのか?」「え、うん」「そうだったんですか!」


 まあなんかちょっともめたけど皆もちろんオーケーしてくれたよ。

 よし、これでまたフレンドが一気に3人も増えたぞ。順調だな。

 あ、でも別に私そこまでフレンド集めに必死になってるわけでもないけども。


「じゃあ、皆またどこかで会ったらよろしくね」

「玲愛さんはこの後どちらへ?」

「ん、私はクエストを達成したんでギルドまで行こうと思ってたんだけど」

「まあ、それでしたら私たちと一緒ではありませんか」

「え、そうなの?」

「ええ、私たちもクエストを受けてあの森へ行っていたんです。私以外のメンバーは森は初めてだったのであそこまで深く潜るつもりはなかったのですけど」


 けど、ということは何があったのか?


「あ、ごめん。それって私のせいだよね。せっかくだから一番奥まで行ってみようって言いだしたの私だったし」

「いや、私もあの時賛成したよ?」

「そうですよ。李さんだけの責任じゃないです」

「……まあそういうことです」

「……なるほど」


 リーダーのローズは少しだけ経験豊富で皆のまとめ役。

 李は元気いっぱいで好奇心も旺盛。ラフィアは気弱で流されやすい。

 そしてマロンが冷静だけど予想外の出来事に弱いと。

 うん、改めて思った。愉快なパーティーだな、君たち。

 でもまあありがちな構成か。ローズの苦労が目に見えるよ。


「じゃあ、ギルドまで一緒に行こうか」

「はい、是非」


 そうして門からギルドまで私たちは歩いていく。

 森からの帰り道も皆からいろいろな話を聞かされていた私だけど、さすがにもう質問攻めにあうこともなかった。というかなんか、もう私自然にこの4人の輪の中に入ってた。いつの間に?


「ねぇ、お姉さんも私たちのパーティーに加入しない?」

「え?」


 ギルドへの道の途中、前方を歩くローズ、李ちゃん、ラフィアちゃんから離れて後方の私に近づいてきたマロンちゃんが私のとなりに並ぶと歩きながらそう聞いてきた。


「いや、せっかくだけどやめとくよ」

「どうして?、私たちは玲愛お姉さんがいてくれるととっても……」

「うん。それは私もわかってるし、このパーティは楽しそうだなって思うよ」

「じゃあ……」

「でも、今は。えっと、しばらくはソロで頑張りたいかな。少なくとも1階層を抜けるまでは」


 そう、別に私はどこかのパーティーに正式に加入することに抵抗があるわけではない。

 まあそうなった時は、私の恩恵の効果なども含めて色々と問題はありそうだけども別にいいかなとも思ってる。

 だけどまだ今は、1人で出来るところまで頑張って行きたいという思いの方が強いのだ。


「そっか。なら仕方ないね」

「うん、ごめん」

「ううん、いいの。あ、でもじゃあもっと先に進んだらまた誘ってもいい?」

「うん、それならもちろん構わないけど。でも、他の皆は?」

「大丈夫だよ。皆もきっと同じこと考えてると思うし」

「そう、それならいいんだけど」


 おいおい、同じこと考えてるなら私はあと3回同じやりとりするんじゃないだろうな。

 いや、マロンちゃんから他の皆に言っておいてもらおう。


「でも皆にはちゃんと言っておくから、今はまだ駄目だって言ってたこと」

「あ、うん。ありがとね」


 どうやら私が言わないまでもマロンちゃんはそこらへんの気づかいは出来る子だったみたい。


「あ、ねえお姉さん。もう1つ聞いてもいい?」

「うん、いいよ」

「あの野菜ジュースってどうやったら作れるの?」

「あー、あれね。えっとね、まずギルドの……」


 私が調合スキルから野菜ジュースレシピを手に入れるまでの過程をこと細かに教えてあげた。

 マロンちゃんはなかなか記憶力と呑み込みが早くてすぐに説明は終わったけれど。


「今度私も挑戦してみるね」

「うん、きっと喜ぶと思うよ。薬屋のお兄さんが」

「え、どうして?」

「いや……まあ受けてみればわかるよ」


 マロンちゃんも驚くだろう。調合スキルを手に入れたのは自分でまだ11人目だという事実に。

 私は特に興味もなかったけどもしかしたら今度マロンちゃんの活躍を見て調合スキルを取りにくるプレイヤーが増えることもあるかもしれない。

 そうなったら薬屋は大忙しだろう。うん、忙しいことはいいことだ。


 そして私たちはギルドの前へたどり着いた。

 中に入るとまず先にローズ達が受けたクエストを達成させたとして報酬をもらっていた。

 そして、まだ話があるので2階で待っていると言われたので私はわかったと言っておいた。

 私が受付の前に立つと受付のお姉さんが一瞬ビクリとしたのに気づいた。

 私はアイテムボックスからビッグポイズンスパイダー討伐の依頼達成書を取り出すとそれを差し出した。


「はい。えっと、クエスト040ですね。……うわ、凄い。ビッグポイズンスパイダーまで倒しちゃったんですね」

「ああ、まあもちろん1人ではないですよ。他の皆に手伝ってもらって」

「で、ですよね。さすがにあれをソロで倒せるプレイヤーなんてそういませんよね」


 いやいるよ、今あなたの目の前に。


「あ、これが報酬になります」

「はい」


 そして受け取ったのは通常報酬の500Gと、初回限定報酬の賢さの種。

 賢さの種は、種アイテムの1つで食べるとINGの値が2上がるようだけど温存しておく。

 それにしても、スキルポイントもそうだけど私そういうの温存してばっかだな。

 いつか使わないと思いつつもそのいつかはいつまでも来ない。

 というか他の皆はどういうふうに割り振っているのだろうか。


 私が報酬を受け取った後でギルドの2階の歓談スペースへと上がると、ちょっと奥のテーブルにローズ達はいた。

 大きめの丸テーブルに椅子が5つ囲っており残った1つに私が座るとそこでローズが咳払いをした。


「ごほん……えーと、それでこれからのことなんですけども」

「うん。ん、これから?」

「はい。あの、えっと本当は正式にうちのパーティに入らないかと打診するつもりだったのですけどマロンが先に聞いてたみたいで」

「ああ、うん。今はまだソロで頑張りたいから」

「では、その。もしもパーティに入りたくなったらすぐに連絡をして下さい。必ず行きますから」

「え?……いや、それは」


 それはさすがに約束できないよ。

 もしかしたらこの先、ここよりももっと良い感じのパーティと遭遇する可能性もあるし。


「ローズ、それは無茶」「うん、私もそこまでは強制しない方がいいと思うよ」「あ、私も」


 他の3人もどうやら私と同じ気持ちというか、私の気持ちを組んでくれたようだ。


「え、え、皆。さっきと言ってることがちが……」

「いや、よく考えたらそれってお姉さんの自由なわけじゃん?」

「そうですよ。それにお姉さんはその、今の私たちよりもずっと強いみたいですし」

「うん、強制は駄目」

「え、ええええ!?」


 あ、珍しくローズが取り乱してる。ああ、なるほど仲間内には弱いタイプだったか。

 いや、さすがリーダーだ。本人の性格もあいまって大変そうだな。


「お姉さんもその方がいいんだよね?」

「うん、悪いとは思うけどね」

「そ、そうですか……」


 ローズはやや大げさにしょんぼりして見せたけどその様子だと意外と幼いのかな。

 てっきり高校生くらいかと思ってたけどもしかしたら中学生だったか。

 私は考えてたけどすぐにやめた。まあ、本人たちに聞くしかないことだしね。

 私は落ち込むローズにもう一度ごめんというと、でもその誘いは前向きに考えておくからとだけ言ってあげたらそれで少しは納得というか、気持ちを切り替えてくれた。


「話はそれだけ?」

「いえ、実はもう1つあります」

「え、なに?」

「玲愛さん、もしよろしければ1つ私たちとクエストを受けてもらえませんか?」

「へ?」


 それは私の予想外の展開だったことは言うまでもないだろう。



<クエストについてのおさらい>

クエストとはゲームのストーリー攻略上は直接関係のないイベントの1つです。

多くは街や村の住人たちの困りごとを解決するものですが、モンスターの討伐や素材採集などの依頼を受けることもありクエストの内容は様々です。

クエストには基本的に3つの種類があります。それぞれの特徴を簡単にまとめました。


〇自然クエスト

ある特定の条件を満たした状態で、フィールドや街中で不定期に発生する。

制限時間のついた依頼が多い。依頼内容の難易度は比較的低めで報酬も安いものが多いけど中には難易度が高く報酬の良いものもある。

狙って特定のクエストを受けることは難しいが、クエストの名前や発生条件などわかっているものについてはゲームの攻略サイト等に乗っている。


〇ギルドクエスト

街の冒険者ギルドで受けられるクエストの1つ。ギルド掲示板に依頼書が貼られている。

主な内容としてギルドが定めたモンスターを一定数倒すか、定めたアイテムを一定数ギルドに収めるというものがある。

常にすべてのクエストが誰でも受けられるようになっていて誰かが受けている最中でも同じクエストを他の人間が受けることは可能。1人が同じクエストを何度も受けることも可能。

報酬は安いものが多いが、初回にそのクエストを達成した時だけ1人1回良いものをもらえることもあるので挑戦するプレイヤーは多い。


〇住民クエスト

街の冒険者ギルドで受けられるクエストの1つ。住民掲示板に依頼書が貼りだされている。

ギルドクエストとは違い、誰かがそのクエストに挑戦してる最中は他のプレイヤーはそのクエストを受けることはできない。また同じクエストを1人が2回受けることもできない。

内容は特に決まったものはなく素材採集やモンスター討伐もあればただ話を聞くだけとか掃除の手伝いなどというものがあって難易度もピンキリ。

ただ報酬はけっこういいので時間に余裕がある時はこちらのクエストを受けるプレイヤーもいる。

特に新しいスキルや魔法が手に入るクエストは皆受けてたりする。


なお、クエストの種類に限らず同時に受けられるクエストの数は5つまでである。

またクエストを途中で失敗しても特にペナルティーはないが、すぐに再挑戦は出来ない仕様になっているため注意。(基本は失敗したら3日間は同じクエストに再挑戦はできないが、例外もある。)

※なお、ここに書かれていることはあくまで基本的なものであり、例外やここには書いていない決まり事等ももちろんありますが本編内で触れるかどうかは未定ですのであらかじめご了承下さい。

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