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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
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ニートな女神と初めての共闘

正確に言うと共闘はもう1回すでに東也としているのですが、あれはまあ共闘と言ってもお互い別々に戦っていたようなものですから、ノーカウントということで。

 私は落ちていく。ただ、気づかずに落ちるのとは違って自分から落ちる穴というのはまた新鮮だった。

 興味のあるやつはなんかそういうアトラクションがある遊園地にでも行ってみるといい。

 まあ、50メートル以上足から垂直に落下するアトラクションなんて……探せばあるかな?

 ということで私は2回目ということもあり叫び声はあげなかったよ。


 ……だけどそんなこと言っても怖いもんは怖いよな。


 もうね、むしろ自分から落ちた分半端に覚悟が出来ていたからかな、涙が出たよ。

 いやこのゲームほんとに凄いね。痛かったり怖かったりした時に涙まで出てくるなんてね。

 おしっことか排泄行為まで実装されていたら完全に失禁ものだったと思うよ。普通の女の子なら。


 そして私は地面へと激突……する前に跳躍して、と。


「きゃあ!」「な、なに!?」「またクモ!?」「皆、落ち着いて!!」


 うん、まあ下にいた4人はそりゃあ驚いたと思うよ。

 でもさすがにクモ呼ばわりするのはどうかと思うよ。どうみても人型でしょうに、私は。


 さて、地面に着地した私はとりあえず状況を把握した。

 まずは案の定というか、ビッグポイズンスパイダーがもうすでにお出まししている。

 HPケージは1段目の3割ほど削れていたけど、短時間で削ったにしてはいいところか。

 そして振り返りざっと4人のプレイヤーの方を確認した。

 するとその中にマロンちゃんを発見した。やっぱりそうだったか。


 フィールドで戦闘中の他のプレイヤーは、フレンド登録もパーティ登録していない場合は何も見えない。何もというのはもちろんプレイヤー名その他の一切の情報ということね。

 だけどフレンド登録しているマロンちゃんだけはフィールドで名前とHPケージ、MPケージまで確認できた。


 マロンちゃん以外のメンバーも全員女性で、見た目は小学生から高校生くらい。

 そして私と同じ片手剣と盾を構えた剣士スタイルの人がたぶんこのパーティのリーダーだろう。


「ちょ、ちょっと何なの?」


 一番最初に気を取り戻したのもその剣士さんだった。

 なので私はなんて言おうかちょっと迷ったけどここは普通に告げた。


「森を歩いてたら悲鳴が聞こえたんで駆けつけた。苦戦しているようだな」

「な!?」

「手伝おうか?」


 ちょっと横暴というか上から目線だったような気もするけど、ピンチのところを助けに駆けつけた人間が弱腰というか、下手に出るのはもっと変だろう。


「そ、それは……」

「決断は早くしてほしい。ほら、来るぞ?」

「え?、きゃあ!!」


 ああ、言わんこっちゃない。

 と、私は会話の最中もクモの方に気を向けてたけどこれも経験の差か、あるいは突然の状況変化に混乱したためか剣士の方はいまがまだ戦闘中だということも忘れていたようでクモの毒液攻撃をもろにくらってしまった。

 このゲームでは、毒液のような液体の攻撃を受けても目や口や鼻などの穴に入ったりだとか、そのことで視界が悪くなったりすることは基本的にはない。

 けども毒液である以上はダメージもあるし毒にもなるため一定の痛みは感じる。こう、程度にもよるけどリアルだと軽い日焼けの痛みに近い。


「ほら、言わんこっちゃないな。ふう、まずはあいつをどかすか。ファイアーボール!」


 私はとりあえずまずビッグポイズンスパイダーにファイアーボールを決めた。

 これによりあいつの体力は2本ある体力ケージの1本目が残り3割。

 前回と同じであるならたしか1本目を削り切った時にやつは上へと逃げるはず。

 なので……


「火炎斬り!」


 私は火炎斬りによってさらに3割弱のHPを削りきるとクモは予想通り上へと退避していった。


「な、逃げた!?」

「いや、まだだよ」


 私は毒を受けて苦しそうにしているリーダーっぽい剣士の言葉にそう答える。

 すると上からやはりというか、普通のポイズンスパイダーが4体落ちてくる。

 が、落ちてきたそばから私は3体を即座に斬り殺した。残りは1体だけである。


「あともう1体は倒さないで。これを倒すとまた上からやつが降ってくるから!」

「な……わ、わかったわ」


 私が大声で叫ぶと剣士の女性、そして少し離れたところにいて戦闘に加わろうと準備していた他の3人もどうやら理解してくれたようだ。

 そして私はすかさず剣士の女性に近づくと先ほどの答えを聞いた。


「それで、さっきの答えがまだだったけど。どうする?、自分たちだけで倒せるっていうなら私は帰るけども」

「え?……あの」

「だから決断は早くしてくれないかな」

「す、すみません。あの、それじゃあお願いします」

「わかった。じゃあまずはパーティー登録してよ。君たち……4人パーティーだよね?」


 ないとは思うけど偶然知り合った4人がたまたま同じ穴に同時に落ちた可能性もあるから。


「そ、そうです。あの、はい。これであなたもパーティーに参加しました」


 3人以上のパーティーにはリーダーという役職がつく。

 そして4人目以降のパーティーメンバーの加入はリーダーにしか権利がない。

 その変わりリーダーは自分からパーティーを脱退することは出来ない。ようは解散は出来ないのだ。

 もしも解散したい場合はメンバー全員を説得するしかないのだけど。

 良かった、私の見立て通りこの剣士の人がリーダーだったようだ。

 リーダーの人が目の前にいる私をパーティーに登録してくれたおかげで私は今パーティメンバーの名前とHPとMPのケージが見えるようになった。


玲愛れあさんでいいのでしょうか?」

「玲愛でいいよ。えっと、君がこのパーティーのリーダーなんだよね」

「はい。あの、ローズです」


 なるほどね。そんなローズは今さっきくらったビッグポイズンスパイダーの毒のせいで今HPが大変なことになっているのだけど。本人は気づいていないのか?


「まずローズ、ポーションを飲んで。あ、持ってる?」

「あ、はい」

「そんで毒消し薬も、森を探索してたんなら持ってるでしょ?」

「あ、はい……え、うそ?」

「どうしたの?」

「毒消し薬を飲んだのだけど、毒の表示が消えない。どうして?」

「……あー、そうか」


 毒消し薬は効果が微小の毒、つまり普通のポイズンスパイダーの毒用の毒消しだ。

 でももしかするとビッグポイズンスパイダーの毒はそれよりも上位の毒なのかもしれないな。


 たしか、前も同じこと考えてたっけ。

 前は私がもうすでに毒無効のスキルを持ってたから確かめようがなかったけどどうやらこの様子だと当たりだったようだ。でも、そういうことなら仕方ないな。


「あ、そう。仕方ないな、じゃあこれ使ってみて」

「え、これは?」

「いいから、ちょっとだけいい毒消し薬だよ」


 私は毒消しが効かなかったことで慌て始めるローズに救済措置として私のアイテムボックスから作成した毒消し薬☆を1個だけ取り出すとローズに手渡した。

 ローズは私から受け取った毒消し薬をいぶかしがりながらもグイっと飲んだ。


「うそ、毒が消えた?」

「言ったでしょ、いい毒消し薬だって。それと私は他のメンバーを見てくるからローズは念のためもう1個ポーション飲んで体力回復して。それであいつを引きつけといて」


 私が渡した毒消しで毒を治癒したローズは、私が指さした先にいた残った1体のポイズンスパイダーを指さすとローズはわかったと言って頷いた。

 ポーションを飲んだらローズの体力は全快していたからまあ大丈夫だろうか。


「ただし倒さないでね。さっきも言ったけど」

「ええ、あれを倒してしまうとまたやつがふってくるんですよね。わかってます」

「そう……じゃあここは任せた」


 そして私は今度は壁際に寄せ集まっていた残りの3人のメンバーに近づく。

 1人は無傷、1人は体力2割減り、そしてマロンちゃんは体力5割減っていた。


「へ、あの?」

「ふふふ。わからないか、えっと……野菜ジュース」

「え?、あ、もしかして昨日のお姉さん?」

「そうだよ」


 今日は戦闘装備だったからやっぱりわからなかったか。

 いや、でもマロンちゃんの方にも私の名前は見えてるはずなんだけど、動揺してたのかな。


「落ち着いて、ここは私が助けるから。それで一応聞いておきたいんだけど君たちは皆魔法使い?」

「あ、いえ。私とラフィアちゃんはそうですけど(リー)ちゃんは……」

「あ、私です。えと、私は槍使いです」


 ああ、そっか。なんか杖かなと思ってたけどそれは槍だったのか。

 この李という女の子は槍、それでマロンちゃんも今は戦闘用装備で杖を装備している。

 だけどもう1人の魔法使いだといったラフィアちゃんは手には何も持ってなかった。


「あれ、君も魔法使いなんだよね?」

「あ、はい。だけどその……私はちょっと特別で」

「特別?」

「いや、あの……」


 どうやら何か話せない事情があるのだろうか。

 そこで私はラフィアという女の子のことを良く見てみた。そこで気づいた。


 耳だ。それとしっぽがあった。


「あの、お姉さん。ラフィアちゃんは獣人なんです」

「じゅう、じん?」


 はて、それはいったいなんだっただろうか。

 ……ああ、そうだ。たしかゲームの初めのキャラクターメイキングの時にあったな、それが。

 人間だとか、エルフだとか選べる種族一覧の中にたしかそんなのがあった気がする。

 私はよく確認もせずに人間を選んじゃったんで詳しくは見なかったけど。


「はい。あの、何の動物になるかまでは選べないんですけど。私の場合は狐で」

「なるほど、狐ね」


 たしかに耳といい尻尾といい黄色、いや金色だったから狐なんだろう。


「それで狐の獣人の特性で初期から魔法がいくつも使えてレベルアップでも覚えられるんです。それとHPがちょっと低いんですけどMPがすごく多くて。だけど大きなデメリットとして武器が装備できないんです」


 たしかにそれは大きなデメリットだな。

 でも、その分それを補えるだけのメリットもあるということなのか。


「なるほど。エルフに似た感じなんだね」

「はい、そうです」


 たしかエルフもHPが低いけどMPが高くて、賢さも高い種族だったはず。

 人間の他にはそれとドワーフの項目くらいしか見てなかったんだけど考えてみると最初に選べる種族ってもっとたくさんあったんだな。


「魔法はどうやって発動するの?」


 私がファイアーボールなどの魔法を使うと手に装備した剣の先端に火で出来た球が生成されるけど。

 そういえば別に魔法って素手でも使えるんだよな。


「その、基本は手のひらから」


 ああ、やっぱりそうなんだ。

 たぶん両手に何も装備していない状態なら自分の意識を集中させていた方の手から魔法が出てくるのだろう。


「じゃあ、火属性の魔法は使える?」

「はい。ファイアーボールとファイアーアローが使えます」


 ファイアーアロー。アローってなんだったっけ?

 ああ、そうだ矢のことだ。つまり火で出来た矢を放つ魔法かな。


「どっちが威力高い?」

「威力ならファイアーボールの方が。でも射程と速度ならファイアーアローです」

「そう、それなら君は離れたところからアローで攻撃していて。あ、もちろんあのデカいクモがまた落ちてきたらね」

「は、はい!」


 よし、これで1人は役割が決まった。それでお次は……


「えっと、李ちゃん。君は槍だからもちろん近接戦闘だよね?」

「はい。あ、でもスキルというか技で遠くから槍を投げることもできます」

「そうなんだ。じゃあ基本はあのローズと一緒にクモの足とかお腹を攻撃してて。顔の方は毒液がくるしお尻は糸攻撃がくるから近づかないように」

「はい!、わかりました」


 うむ、李ちゃんは元気いっぱいという感じだな。

 ラフィアちゃんはどちらかというとおどおどしているし、マロンちゃんは……普段は冷静みたいだけど予想外の出来事には弱いというところか。なかなかに面白いメンバーだな。


「それで最後にマロンちゃん、えっと君は」

「すみません。私は火属性の魔法は使えないんです」

「あ、ああうん。じゃあ何でもいいから使える魔法で攻撃してて。でも他の皆もそうだけど基本は敵の攻撃を避けることに専念してて。攻撃は2の次でいいから」


 同じ魔法使いでもやっぱりいろんな種類というか、差があるんだな。

 そういや今までこんなに他のプレイヤーのことについて聞いたのは初めてかもしれない。


「あ、そうだ念のために君たちにも2本ずつ渡しておくよ」


 そして私はマロン、李、ラフィアの3人にそれぞれ毒消し薬☆を2個ずつ渡した。


「え、こ、これは?」

「デカいクモの毒を消す薬。☆マークがついてるのは……まあ私が作ったやつだから」

「でも、毒消し薬なら私たちも」

「ううん、デカいクモの毒は普通の毒消しじゃ消えないみたい。さっきローズが試してたからわかったことなんだけど。でも私が作ったほうなら治せるから」

「そ、そうなんですか」


 ああ、まあでもこれは嘘になるのかな。

 本当はちょっとどころじゃないくらいにすごい毒消し薬らしい(薬屋の店員さん曰く)。

 ただ今はあのクモの毒を消せる薬だってことがわかってくれればいい。


「もしも使いきったらまだ持ってるけど、出来れば毒にはならないように心がけて」

「わ、わかりました」

「それじゃあよろしくお願いね。そろそろあのチビ倒さないと面倒だと思うし。あ、それとマロンちゃんね。他の2人にも野菜ジュース配っておいて。昨日私から買ったやつ」

「え?」

「その様子だとまだちゃんと効果確認してないのか。いいから渡しておいて。それでやばくなったら皆使って」

「あ、はい」


 もうすでに5分以上経っている。

 これ以上時間をかけるとビッグポイズンスパイダーのHP回復で最初から振り出しになりそうだ。


 私は3人から別れるとそれまでずっと1人で戦ってくれていたローズの元へ。

 ただ、なんか後ろの3人がちょっと騒がしくなってたみたいだけど今は無視だ。


 ローズの方はすごかった。なんというか、剣の動きが綺麗で動きにも無駄がないというか。

 私の言った通りポイズンスパイダーを倒さないように注意しながら毒液をさけつつも剣で少しづつHPを削っていた。

 本当にどうやったのか知らないけど多分ポイズンスパイダーのHPケージはもうほんのあと1ドットというくらいでギリギリの状態になっていた。

 普通はあそこまで微調整というか、そんなことは出来ないはずなのだけど。

 もしかしたらローズは、リアルで剣道でもやってるのかもしれないな。


「ごめん、遅くなった」

「いえ、全然。それで私はこの後どうすれば?」

「うん、後衛2人が魔法で援護射撃してくれるから。私とローズと李の3人で直接攻撃。私は魔法も使えるけどね」

「そうですか。ではもうあれは倒してしまってもいいんですね?」

「うん。あ、その前に……ローズにも一応渡しておくよ」


 私はローズにもさきほどの毒消し薬を4つ渡した。

 皆よりも渡す数が多いのは、まあ近接戦闘するからという理由もあるしリーダーだったので。


「これは、いいんですか?」

「うん、ていうか持っておいてよ。また毒になるたびに私が渡しに行くんじゃ非効率でしょう」

「そうですね。では、ありがたく。使わなかった分は後でお返ししますので」

「いや……別にいいよ」


 そうして戦闘再開である。

 ローズがポイズンスパイダーを倒すと上からまたやつが降ってきた。

 やつの体力は大幅に回復していてケージ1本目の8割といったところ。

 つまりはまあほとんど振り出しに戻ったようなものだった。


「なるほど、そのための時間稼ぎでしたの」


 さすがリーダー、ローズはやつの体力が回復しているのを見てすぐに理解したようだ。

 さて、それじゃあここからが本番だ。私もこういう連携って初めてだからドキドキしている。


「行くわよ、皆!」

「「「はい!」」」「……はい」


 うん、そこで掛け声がずれちゃった時に不安が爆発しそうになったけど。


「ファイアーアロー!」

「ダークボール!」


 おお、さっそくラフィアちゃんとマロンちゃんの攻撃が来た。

 というかマロンちゃんって、闇属性の魔法使いなんだ。見た目とは違って怖いな。


「てりゃぁぁぁぁぁ!」

「せい!」


 そして李とローズも、うん、まあ槍と剣という違いはあれどすごい勢いで攻撃している。

 もうこの時点で体力は3割ほど削れている。おお、凄い凄い。

 そしてもちろん私も戦闘に参加するわけだけど、この調子なら別に私いなくても良かったんじゃね?

 と、思わなくもない。


「うわぁぁぁぁ!」

「李!」

「大丈夫、彼女にも毒消しは渡してある」

「え?」


 李が毒液をくらってしまった。

 ああ、あれ意外と広範囲にまき散らされる上に地面に残るから気をつけててもくらっちゃう時はくらっちゃうんだよね。

 李はそれで大ダメージと毒を受けたけどすぐに私の渡した毒消し薬で毒は治癒された。

 そしてよく見ると徐々にだがHPが回復していた。


 ああ、野菜ジュースをさっそく飲んだんだな。


「へへへ、これすごいね」


 なぜかその効果を確かめて得意げな顔をする李、いやいいけどね。

 多分なんだけどその野菜ジュース、下手な回復魔法よりもいいやつかもしれないから出来れば大事に飲んでほしかったんだけど。材料代は安いからそれもいいか。


 そしてさらに皆の連携でビッグポイズンスパイダーのHPは1本目は完全に削り切った。

 2本目を2割ほど削ったところでまた上へ逃げられたけど。

 それまでにローズが2回と、魔法の射程が短かったマロンちゃんが誤って地面の毒沼に足を踏み入れたことで毒をくらったりしたけどまだ大丈夫だ。

 そして李が途中でクモの背後に回ってしまい糸攻撃をくらったため戦線離脱を余儀なくされたけど、それはまあ調子に乗ってたみたいだし自業自得だろう。


「わああ、数が多いよ!」


 と、今度は8体も落ちてきたポイズンスパイダーの前にマロンちゃんがそう叫んだ。

 振り返るとラフィアちゃんは顔を青ざめさせていた。ああ、きっと虫とか駄目なんだろうな彼女は。


「ふう、仕方ないですね!」


 そしてここで今回の戦闘で一番驚かされるものを私は見た。

 ローズがそう叫ぶとローズの体から何か青白いオーラのようなものが出た。

 なんだろう、あれ。と、私が思ったのも束の間ローズは次の瞬間には8体のポイズンスパイダーをものすごい速さでバッサバッサと斬り殺していく。


「ええええ、速いっていうか強い!」


 ポイズンスパイダーはたったの一太刀を受けただけで一瞬でHPケージが吹き飛んでついでに本体の方も砕け散って行った。

 8体のポイズンスパイダーが倒されるまでにたぶん30秒もかかってなかっただろうか。


「うそ、でしょ?」


 私はそのあまりの出来事にただそう呟くことしか出来なかった。

 そして30秒を超えた当たりでローズの体から発せられていた青白いオーラは消えた。

 今のはいったいなんだったのだろうか。スキル、なのだろうけどそれにしても凄まじい効果だった。

 序盤であそこまで強力なスキルを持つとローズはいったい何者なのだろうか?

 いや、待てよもしかしたら……


「恩恵の、効果?」

「……ふう。ええ、まあそうです。本当はメンバー以外にはあまり見せたくはなかったんですけど」


 私のつぶやきが聞こえたのかローズが私に向かってそう答えた。

 その顔は微笑んでいたようだけど今のを見た直後だった私はその笑みにただただ戦慄した。

 たぶん今の青白く光っていたローズと戦ったら私でも瞬殺されるだろうと、本気でそう思ったから。



<状態異常について①―毒―>

ポイズンスパイダーの毒液攻撃のように、GGOの世界にもプレイヤーを状態異常にする攻撃を行ってくるモンスターやトラップがあります。

状態異常というのは、正常な状態と違って何らかの異常、たとえば時間経過でダメージを受けたり動けなくなったりするなどの悪い状態にあることを言います。

今回はそのうちの毒についてご紹介。(状態異常は毒以外にもあるよ。)

毒は、一定時間ごとにHPにダメージが発生するという状態異常です。

毒にはそれぞれ強さがあって4段階、微小、小、中、大と分かれています。

これは他の状態異常も同じで大に近づくほうがより悪い効果をおよぼします。

それぞれの毒の効果は以下の通り。


毒(微小):1分おきに5ダメージ。効果時間は5分。(最大25ダメージ)

毒(小):1分おきに15ダメージ。効果時間は5分。(最大75ダメージ)

毒(中):1分おきに25ダメージ。効果時間は10分。(最大250ダメージ)

毒(大):1分おきに40ダメージ。効果時間は15分。(最大600ダメージ)


ビッグポイズンスパイダーの毒は中だったので実は玲愛がローズに毒消し薬を渡していなければローズは数分で死んでいました。

そしてローズを失ったところで他の3人のメンバーだけでビッグポイズンスパイダーに勝てるでしょうか?……答えはノーです。おそらく全滅していました。

なのであの場で玲愛が駆けつけたこと、そして玲愛の存在は必要だったのです。


なお、毒がなぜ大中小なんだよ。普通は強いとか弱いだろうという意見に対しましてはこう答えさせていただきます。

このゲームではそうなんだから文句言うなよ、と。まあ、私もちょっと違和感はあるなと思わなくもないのですけど。……大きな毒ってなんだろうね。

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