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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
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ニートな女神と初めての救援

次のレベルまでに必要な経験値量と、それまでに倒したというモンスターから得られた経験値の量を見比べてみて矛盾が生じやすい。気をつけねば。

 ――夢の中――


 その夜は久々に夢を見た気がする。今まで何度だって見てきた夢だ。

 それは私の過去の記憶、私が神様になった日の出来事。


 神界にある最も大きな建物、大神殿。

 その大神殿にはこの神界という世界を統べる10柱の神がいて、それらの神には他の者を神として認めたり、あるいは神の資格を剥奪して追放するということもできる。


 神になるためには様々な条件があるが、神になることのできる生命にくくりは存在しない。

 とある神は、神になる前は人間だったという。

 またある神は元は犬であった、鳥であった、木であった、岩であった、川であったなど。

 とにかくまあ元がなんであっても条件さえ満たせば神様になれる。


 私は、元はなんだったろうか。もう忘れてしまった。

 だけども神様になると、なった時点で元の形は失われて人型になり、相応の知能を獲得すること。

 そして神様になった時に、自らが司るべきものがなんであるのかを告げられる。


 私の神様の資格を認定してくれたのはゼウスという神だった。

 ゼウスは古くから神界に存在する力のある神であり、神界内での権力も大きい。

 神界を統べる10柱の神の中でも1、2を争うほどの力を持つ神であるとされている。


「汝、●●●●●●●●●●●●●よ。そなたは神になるための条件を満たし、神になるための試練を乗り越えたものとして本日付けをもって神格(神様の資格)を与えるものとする」

「はい」


 ●の部分はよく聞き取れなかったけど、私の元となったものの名前だろう。

 いや、これがもう本当になんだったのか思い出せなくてもどかしいんだけどさ。


「ではここに、新たな神の誕生を祝って、汝に神としての新たな名と生を授けよう」

「…………」

「汝の名はアストレア、そして汝の司るべきものは『正義』である。以後、神としての自覚と誇りを持って神界と下界のすべての生命のためになるように生き、精進せよ」

「はい」


 そして私の意識はそこで途絶えた。次に場面は変わり神界の外れにあるとある一軒家。

 私は神としてこの世界に転生し、今の両親の元で育てられる。

 この時、私はもちろん赤子の状態であり人間と同じように自我はまだない。

 両親となる神にはゼウスの方から私の名だけが伝えられるのだという。

 そしてすべての神は、生まれてから10年がたった時に改めて自分の司るものを知ることになる。

 ほんと、ある日突然ふっと思い出されるのだ。あ、自分は〇〇を司る神だったんだって。


「あ、私は正義を司る神だったんだ」


 その時のことは今でも鮮明に覚えている。

 両親の目の前で、家族一緒に食事をしている最中だった。

 両親は私が司る事象を思い出したことをたいそう喜んでいたと思う。

 けれども次の瞬間私が発した問いを聞いて、その顔は形容しがたいものへと変わった。

 困惑、という言葉が今となってはふさわしかっただろうか。


「ねぇ、お父さんお母さん。正義って何?」


 その時、両親は結局最後まで私にそれを教えてはくれなかった。



 もちろん、それは今であっても同じで……


 ――目覚め――


 玄関のチャイムの音で私は目を覚ました。

 飛び跳ねるように体を起こしたものの体に力が入らずまたベッドの上に倒れこんでしまう。

 頭が痛い、体も痛い。でもそれよりも何よりも……


「……ああ、またあの夢か。ほんと、勘弁してほしいよね」


 そして再び鳴るチャイムの音で私の意識は完全に覚醒させられた。


「うるさいな、こんな朝っぱらから誰だよいったい」


 私はベッドから起き上がるとうんと体を伸ばして、そしてそのまま玄関の扉の前までやってきた。


「はい、どちらさまで?」

「アストレア、僕だよ。ヤヌス。もしかして寝てたの?」

「ああ、今起きたところだよ。それで何の用?」

「いや、ほら。昨日っていうかもう一昨日になるのか。君またヤリーロの部屋のドア壊したでしょ?」

「……ああ、うん。壊した」

「やっぱり。もうこれで何回目だい?、毎回それを修繕する僕の身にもなってよ」


 誰だって朝起きてすぐに他人の愚痴なんて聞きたくはないだろう。

 でも今回のは原因は私にあるので文句は言えない。


「ていうかお前、仕事はどうしたんだよ」

「ああ、うん。今日はお休みなんだ。だからアストレア、もし暇なら今日は1日……」

「ああいや駄目だ。今日は私が忙しいだよ」

「え?……い、忙しいってアストレアがかい?」

「なんだよ、何か文句あるのかよ。私にだって予定くらい……ある時だってあるんだぞ」


 今日はビッグポイズンスパイダーを倒したり、岩場に行ったりで本当に忙しんだから。

 私が答えると扉越しにではあるがヤヌスがなんか落胆するのがわかった。

 ああ、さすがに悪いことしたかな。もし次があればそっちを優先……できたらしようか。


「そう……それなら仕方ないね。あ、ちなみに予定って何なのか聞いてもいい?」

「うーん、それは……秘密。そう、乙女の秘密」

「乙女?」


 あ、おいなんだよその反応。私だって今はこんな感じだけど心はれっきとした乙女だぞ。

 まあ、今のセリフに関しては神生じんせい初めて言ったけども。


「ああ、うんそうだね。わかったよ、それじゃあアストレア、あんまり寝すぎないようにね」

「わかってるよ。ってかお前は私のお母さんか!」

「ははははは。また暇があったら誘うよ、じゃあね」


 そう言うと扉の向こうから歩き去る足音が聞こえた。

 どうやらヤヌスは行ったようだ。うーん、やっぱり断るべきじゃなかったかな。

 でもあいつも、アパートの隣人を遊びに誘うなんていい神経してるよ。

 私とヤヌスは……うん、隣人だよな。あれ、でも向こうは友達だと思ってたり?

 まあ、それに関してはまた今度会った時にでも聞いてみればいいか、どうせ隣の部屋なんだし。


 私は部屋へ戻ると服を着替えた。そして鏡を見てついていた寝癖を水をつけて直す。

 頭はまだちょっと痛かったけど体の痛みは収まっていた。ああ、最近運動してないからな。

 私が時計を見ると時刻は午前9時前。パン屋はもう空いてるかな。

 私はハンドバッグを手に持つと玄関の扉を慎重に開けた。

 いや、ないとは思うけどもしもここでヤヌスに鉢合わせでもしたら気まずさは半端ない。


 何事もなく玄関の扉から外へ出ると鍵を閉めてそそくさとアパートを後にする。

 パン屋へとたどり着くと周囲を確認しヤヌスの姿がないことを見ると中に入る。

 ちょうど客がパンを買って出ていくところだったようで私が開けた扉から神が1柱買ったパンの入った紙袋を小脇に抱えて出てきた。

 あ、この人はたしか図書館の司書さんだ。名前は……忘れちゃったけど。

 向こうは私の方に気づかなかったみたいで歩き去って行った。


「いらっしゃいませ。あ、アストレアお姉ちゃん」

「う、うん。おはようヘスティアちゃん」

「おはよう。今日もいつものやつだよね?」

「うん、あの、いつものでいいよ」


 私はそう答えるとヘスティアちゃんの手からいつものやつ、パンの耳が入った袋を受け取った。

 いや、もうここに関しては突っ込まないでくれ。そして出来れば笑わないで。

 私にとっては死活問題なんだ。もう本当に。神様は餓死はしなくても飢えたくはない。


「あ、そうだ。お姉ちゃんちょっと待ってて」

「え?」


 そして私はパンの耳が入った袋を受け取った後で、店の奥にいったん消えて戻ってきたヘスティアちゃんから紙袋を渡された。それはこのパン屋の商品を入れる紙袋でもちろん中身はパンだった。


「えと、これは?」

「私が焼いたパンなの。ちょっと失敗しちゃって形が悪いんでお店には置けないんだけど」

「これ、くれるの?」

「うん。本当はいけないんだけど私が、えっと、お父さんもいいよって言ってくれたし。それにアストレアお姉ちゃん……の、飼ってるウサギさんにもたまには他のパンを、食べさせてあげたいなって」

「そ、それは……」


 ああ、そうか。今のちょっとした間で私は理解した。


 ……ばれてたよ。ヘスティアちゃんに私のついてた嘘が。

 あ、やばいこれ駄目だ。恥ずかしいどころじゃないぞ、普段の私なら即死レベルの恥ずかしさだ。

 だけど……


「あの、ね。だからアストレアお姉ちゃん……」

「う、うん」

「また、来てね?……私もお父さんも別に気にしてないし、その、私はお姉ちゃんのこと好きだから」

「……うん。ありがとうね、それじゃあ……また来るよ」

「うん。絶対だよ。約束ね」

「うん、わかったよ」


 私はパンの耳の入った袋と失敗作のパンが入っているという紙袋を両手でギュッと胸に抱きかかえるとそれだけ言って店を出た。

 そして腕にかけていたハンドバッグの中にパンの耳の袋だけを詰め込むとまたアパートの方へと歩き出す。涙があふれそうなのをこらえながら。

 自分の部屋の前につくと上着のポケットに入れていた鍵を取り出し鍵を開けて中に入った。

 そして部屋に入るなりバッグを投げ出し紙袋をテーブルの上に置くとそのままベッドへとダイブした。


「あーーーーーーーーーーーーーー」


 枕に顔をうずめて意味もなく声を上げる。おそらく今の私は顔面真っ赤に違いない。

 うん、私もうすうす気づいてたよ。ヘスティアちゃん、いつも純真無垢を装ってるっぽかったけど実は私の嘘に気づいてるんじゃないかって。

 でも、1度ついちゃった嘘ってなかなか言い出しにくいし、しかもその嘘は私の神としてのプライドを大いに傷つけるレベルのやつだったし……ああ、馬鹿だったな私は。

 ヘスティアちゃんがいつ気づいてたのかはわからない。最初からだった可能性もあるし、もしかしたらお父さんが教えたのかもしれないけど……でも恥ずかしい。死にたい。神様は自殺とかできないけど。


「……はぁ、でももう仕方ないか。うん、むしろ心のわだかまりが1個消えてなくなってスッキリしたと思うし……ああ、そう考えると私って心にわだかまってるもの多いな」


 ヘスティアちゃん以外にも、大小あるけど嘘をついてしまったこと、今なお嘘をつき続けている相手ならいくらでも心当たりがある。

 ついさっきも本当は予定なんてないくせにヤヌスの誘いを断っちゃったし。


「私、嘘つきだ。最低だ……今さらか……ああ、もう全部言っちまおうかな。これまでついてた嘘とか全部人に話して楽に……無理だな。小さいのならいけそうだけど大きいやつは下手すると殺されるぞ、私」


 でも、それでもこれからはできるだけ嘘はつかないように生きたいとは思った。

 だってさっきのヘスティアちゃんも最後は笑いかけてまた来てねって言ってくれたし。


 これまでの私だったらそれでもう2度とあの店には行く気にはならなかっただろう。

 でも何故だか、今の私はそんな気がしない。また行ってもいいかなと思えている。

 それは何故だろうか?


「……ああ、そっか。きっと野菜ジュースのおかげだな」


 昨日、私の作った野菜ジュースを初めて買ってくれた女の子が、それを飲んでおいしいって言ってくれた時に素直に嬉しかった。

 きっと、自分で作った食べ物を自分で売るっていうことの醍醐味はそこにあるのだろう。

 もちろんそれはゲームの中での出来事で実際の私には何の関係もないことかもしれない。

 だけど、どうやらそれは私の中の何かを変えるには十分な出来事だったみたい。


「……ゲームの前にせっかくだからヘスティアちゃんの焼いたパンでも食べるか」


 私はベッドから起き上がるとテーブルの上に置いた紙袋を開けて中を見てみた。

 端っこがかけたクロワッサン、中身が飛び出ているチョココロネ、ひび割れたメロンパンなどたしかにどれも形は悪かった。

 でもこれでいい。きっとこの不格好なパンたちは不格好な神様である今の私にはちょうどいい。


「む、でも普通においしいじゃないか。ヘスティアちゃん、なかなかやるな」


 私はパンを食べてみて味はまったく悪くなくむしろおいしいと思った。

 どのパンも、見た目は悪いけど普通においしかった。


「……見た目よりも中身、か。今までは考えずに使ってたけどきっとこういうことなんだろうな」


 つまりはどんなものでも食べてみなければわからない。

 もちろんだからと言って見た目をないがしろにしていいわけではないだろう。

 でも、それでも私は見た目だけ取り繕って中身のないものよりも見た目が悪くてもちゃんと中身があるものの方がいいと思う。少なくともそう思えるくらいの何かはそこにあった。


「パンに負けてられないな……よし!」


 私は紙袋の中に入っていたパンを全部食べ終えると紙袋をくしゃくしゃにまとめてゴミ箱に捨てた。

 そういえばお腹がいっぱいになったのも久しぶりだったかもしれないな。


「やるか」


 私は頭にゲーム機を装着するとベッドの上に寝っ転がってゲームを始めた。

 まだまだ駆け出しだけど、このゲームを始めたことで私の中で何かが変わり始めているということはわかった。

 このままゲームを進めていけば私も神様としてのなんたるかがわかる日が来るかもしれない。

 そして正義とは何であるのかということも。


 <第1階層:森林>


 始まりの街の祭壇で目覚めた私は、特に準備の必要もなかったのでそのまま今日の目的地である森林の方へと向かった。

 いまさらだけど街には街の名前があるようにフィールドにもフィールドの名前があるのだけど。

 今までのフィールドは全部とくに形容詞がつくこともなくそのまんまだった。

 つまり平原は平原、草原は草原、そしてこのフィールドも森林という名前のフィールドだった。


 せめて小さな森、だとか静かな平原とかもっとRPGらしいちゃんとした名前をつけてくれてもいいのではと思いもしたけれど第1階層なんてそんなものか。

 たぶんこれが最前線の階層になるとフィールドの名前ももっとちゃんとした恰好良い感じのものがついてるに違いない。

 恰好良い名前……は、ちょっと今は思いつかないけれども。


「さて、そういえばビッグポイズンスパイダーのいる穴って、どこでもいいのかね」


 この前は穴の中に上からいくつかの光が差し込んでいるように見えたけど、あれが全部上の森とつながっている穴だったとしたらどの穴から落ちても下では繋がってるはず、だけど。

 でももしかすると繋がってない穴とかもあったりして。

 ほら、あの下界で有名な横スクロールのゲーム、名前なんていったっけかな。

 ……なんとかブラザーズ!、でも赤い帽子被ったオーバーオール着たおっさんが穴に落ちるとだいたい死亡でゲームオーバーだったし。


「この前と同じ穴から落ちるのが確実かな」


 そう言って道中のモンスターを蹴散らしながら、草花は見つけたら拾って行きつつも前回私が落ちた穴の場所まで歩いて行った。

 そして地面に穴がいくつかあるという前提で森の中を歩いていると、それまでの道の途中でも草でカモフラージュされてたようだけどそれっぽい地面を見つけることができた。

 ああ、あそこは穴だなっていうのがよく見たらわかるわけだ。


「そうだ、どうせだしその前に一番奥も見ていくか。たしかまだそこマッピングできてなかったんだよね」


 私は森を歩いていき前回私が落ちたと思われる穴の前までやってきた。

 私は場所に関しては割と記憶力は良い方なのでこの穴で間違いないはずだ。

 そしてこの穴をよけて行くとこの先が森の最奥だ。


「うわー、なんだこれ」


 森の最奥についた私はつい声を上げてしまった。

 そこにはなんと石で出来た祭壇のようなものがあった。

 私が近づいていくとその祭壇の近くに1つの石碑が建てられていて何やら文字が書いてあるっぽい。


「えーと、なになに」


 こうした文字が書かれているらしきもの、石碑に限らず店の看板や本などはその文字を見ようと目に意識を集中させると目の前に画面が開いて文字を読むことが出来る。

 そしてその石碑にはこう書かれていた。


『ココハ、スベテノハジマリノチ。ナンピトモフミアラスコトヲキンジルセイイキナリ』


 読みにくいので訳すと。


『ここは、全ての始まりの地。何人も踏み荒らすことを禁じる聖域なり』だろうか。

 まあ漢字のほうは当て字だけど間違っていないはず。


「でも、踏み荒らすなっていうかもうすでに荒らされた後じゃないか、ここ」


 その祭壇は石で出来ていたが、柱などはほとんど崩れ落ちており祭壇の中央にあった大きな岩のようなものもところどころ亀裂が入っているようだった。

 ああ、でもこれは誰かが荒らしたというか時間の経過で自然とそうなったという感じかな。


「よくわからないけど、でもここが最奥みたいだし。他には何もなさそうだし。……たぶんこれは今はまだどうにもならない感じのやつだ。きっとクエストか、あるいは先の階層に進むと何かしらのイベントが起きる場所なんだろう、たぶん」


 少なくとも今は、特に何かが起きる気配はなかった。

 イベントというのはあれだ、だからストーリーの本編には関わっているいないに限らず、突発的な出来事のことだ。

 おそらく何かの条件を満たした上でまたここにくるとそれが発生する仕掛けなんだろう。

 なのでそれまでは別に気にしなくてもいい。その時が来たらわかるだろうし、頭の片隅にでも覚えておけばいいか。


「よし、それじゃあ穴に落ちようか」


 我ながら変なセリフだと思うがそれも事実なので仕方ない。

 そうして私が踵を返して前回私が落ちた穴の方へ向かおうとした時だった。


「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」」」」


 なんか、そっちの方から叫び声が聞こえたぞ。それも全部女の子の声で、4人ほどの。

 あ、これはまさか……


「……やっぱりか」


 私が慌てて声のした方へと駆けてくるとその場所はまさに私が前回落ちた穴の場所だった。

 さっきまで草が被っていてカモフラージュされていた地面が今はぽっかりと開いていた。

 つまり、誰か今落ちたわけだな。声の数からすると4人パーティかな。


「ん、待てよ。女の子だけの、4人パーティ?」


 私はそれをつい最近どこかで見たような気がしたのだ。

 そして思い当たったのはギルド2階の歓談スペース。


「あ、マロンちゃん!」


 私は慌ててメニュー画面、図鑑からフレンドリストを選び開くとマロンちゃんの居場所を特定した。

 フレンドリストには、フレンド登録したプレイヤーが今ゲーム内にログインしているかどうかということと、ログインしていた場合は現在いる階層と場所が表示される。

 そして私の読み通りというかマロンちゃんは私と同じ森林にいるようだった。

 まず、間違いないだろう。昨日女の子だけの4人パーティで話してたの見たし。


「どうしようかな。さっきの悲鳴を聞いた感じだとビッグポイズンスパイダーを倒しに来たってわけでもなくただこの森の探索をしに来ただけって感じがしたけど」


 私が選べる選択肢は2つに1つだな。

 1つはこのまま私が参戦してマロンちゃんたちのパーティを助ける。

 そしてもう1つはこのまましばらくマロンちゃんたちがビッグポイズンスパイダーと戦って倒すか全滅するのをここで待つ。


「どうしようかな。部外者が勝手に他のプレイヤーの戦闘に介入するのもマナー違反って聞いたし、でも多分マロンちゃんたちは負けちゃうような気がするし」


 ビッグポイズンスパイダーはかなり強かった。

 おそらく事前に何の情報も対策もせずに挑んで勝てる敵ではないと思う。

 ……まあ、私は勝っちゃったんだけどもね。しかもたった1人で。


 そしてどうやら戦闘が始まったのか穴の下からかすかにではあるけど剣とか魔法とかの攻撃の音とクモの叫ぶ声が聞こえてきた。


「よし、決めた!」


 そして私はそりゃっという声と共に穴にジャンプして落ちて行った。

 あとにはまた静寂に包まれた森だけが残された。



<第1階層の案内>

第1階層には1つの街と1つのダンジョン、4つのフィールドがあります。

街の名前は始まりの街、ダンジョンの名前は第1階層迷宮。

そしてフィールド名は、平原、草原、森林、岩場の4つです。

4つのフィールドへは始まりの街から東西南北の門をくぐった先につながっておりすなわち始まりの街は第1階層のほぼ中央に存在しています。


それぞれのフィールドにはゲームの運営側が定めたそのフィールドを探索するのにおすすめのレベルというものが定められています。(ゲーム内で表示はされませんが公式攻略サイト等に記載されている。)


平原(昼):レベル1~5 平原(夜):レベル3~7

草原(昼):レベル3~5 草原(夜):レベル4~8

森林(昼):レベル4~7 森林(夜):レベル5~8

岩場(昼):レベル6~9 岩場(夜):レベル7~10


第1階層迷宮:レベル8~10以上(ダンジョンには昼夜の区別は存在しない)


そして玲愛の現在のレベルは12である。

しかし玲愛は、慎重な性格だから十分に安全マージン(おすすめレベルよりもレベルを上げること)を取っているわけではなく、単にスキル成長のためにモンスターを倒しまくっていたらレベルがどんどん上がっていったというだけである。だってそうじゃないと辻褄合わないし。

このままだとダンジョンのボスでさえ軽く倒せてしまうんじゃないかと思っている筆者は、ゲームの難易度の調整というのがいかに難しいのか絶賛痛感中である。

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