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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
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ニートな女神と初めての門

次回、ちょっとサブタイトルを変えてみる予定。

さすがにいつまでも『ニートな女神と初めての〇〇』というタイトルをつけるのは無理があると思うので。というか、実際に今まで初めてでもないこと色々とあったので。

 イシュタムさんが去った後、私とヤリーロはそれぞれ自分の部屋に戻った。

 ヤリーロは、今度またアイドルライブのDVD一緒に見ましょうとか誘ってきたけど、まあそこは適当に流しておいた。いや、それ以上にすごいのがお前の部屋の真上に住んでるんだぞ、ヤリーロよ。


 そして私は部屋に戻ると少し仮眠を取って、次に起きた時は午後5時過ぎだった。

 私は夕食をどうしようかと考え、久しぶりに自分で料理でもしてみようかと考えた。

 この前料理したのって、ヤヌスの部屋行ってパスタ作った時だったしね。

 今日は珍しく運動したんだし、その流れで珍しく自炊してみるというのも悪くないだろう。

 そう考えた私は財布を持って近所のスーパーへと出かけた。


「それで、ああ、そうか。何作るとか決めずに来ちゃった」


 私はスーパーの中に入って買い物かごを持った段階でそれに気づいた。

 だから、まあとりあえず適当に食材とか見て、それで安いやつ組み併せて何か作ろうということになり、そうして私の買った物はというと、パックの白飯、卵、長ネギ、かにかま、鶏肉で、もうわかると思うけどそれで作る料理となれば答えはチャーハンしかなかった。

 チャーハン。一人暮らしを始めたばかりの頃はよく作ってたっけ。


「まあ、低予算で誰でも簡単に作れるしな。よし、今夜はチャーハンにしよう」


 会計を済ませて、アパートの部屋に帰ってきた私はさっそくチャーハンを作り始めた。

 塩と胡椒と砂糖と醤油はあるし、飲み物は水で十分だ。それに最近は料理していなかっただけで包丁、まな板、鍋などの調理機材はある。最近使ってなかったから念のために一度調理機材は洗ったけども。

 冷蔵庫の上の電子レンジに白飯のパックを入れて、卵は割ってかき混ぜておく、あとは長ネギとかにかまと鶏肉を切っておく。

 フライパンに油をひいて、白飯を入れて、まず先に卵を投入。そしてそれを炒めながら他の材料を入れていき、塩胡椒も入れればチャーハンの出来上がりである。うん、簡単だ。


「でも材料、余っちゃったな。うーん、まあ明日またなんか作るか」


 私は卵と長ネギ、かにかまと鶏肉の残りを冷蔵庫にしまうと、コンロの火を消してチャーハンを皿に移すとそれをテーブルの上へ。コップに水道水を入れて食卓についた。


「いただきます。……うん、やっぱり自分で作ったものはおいしいよね」


 そりゃあ、店で売ってる物なんかと比べちゃうとあれだけども。

 でも、普通においしいと言えるレベルのものであれば私でも作れる。

 別に誰に習ったわけでもないけど、一人暮らし始める前に、自分で色々やったからな。実家のキッチンで。

 ああ、そういや1回だけ大失敗して、作った料理を味見したお父さんが速攻でトイレに駆け込んじゃったレベルの代物が完成したこともあったけど。あれ、何作ろうとしたんだったっけ?

 うーん、もう思い出せないな。自分でも食べてみたけど、そこまでまずくなかった気もするんだけどな。いやまあ、おいしくもなかったけどさ。ほんと、あれ何だったっけか。


「でも料理ってやっぱり経験がものを言うからな。たいていのことがそうなんだろうけど」


 稀に本当に何も知らずに、そいつが人生で初めて作ったとかいう料理がプロ並みにうまいなんてこともあるかもしれないが、それこそ私はその料理をこう呼ぶだろう。まさに奇跡の味だと。

 だけど、そういう奇跡がたまに起こるから料理ってのは奥が深いんだろうな。

 その他大勢のやつは、やっぱり最初は色々と失敗も経験するだろうけど、作れば作るだけ腕が上達していくのが料理だしな。絶望的なまでに料理が下手なやつもいるにはいるんだろうけど。


 私は自分で作ったチャーハンを食べ終えると、食器類を片付け。調理に作った他の道具と一緒に洗って、丁寧に拭いた後で乾かしておいた。


「……ふう、終わった。さて、これからどうしようかな」


 時刻はまだ7時前だった。眠りにつくにはあまりにも早い時間。

 でも私の部屋ってテレビないからな。またスマホで動画でも見るか、それとも……


「っていうか明日どうしようかな。まだちょっとゲーム再開する気にはなれないし」


 私はそこで考え、そして1つ思い出した。

 そういえば前々からちょっと最近の下界の様子を見に行ってみようとか言ってたな、と。

 これまではなんだかんだでゲーム攻略が忙しかったし、今考えてみればそこまで急いでやる必要もなかった気もするけど、そうだな。せっかくゲームを休むことに決めたのだし、明日は本当に行ってみるか。下界に。


 神界という世界には6か所、下界の門と呼ばれる場所がある。

 場所と言うか、まあその上には役所が建てられているんで施設と言い換えてもいいのだけど。

 下界の門は、文字通り神界にいる神様が下界に降りるための場所で、門と名づけられているけれど、それは実際に門の形をしているわけではなく。ゴッドワールド・オンラインの中のワープゲートみたいな、光の柱のようなものなのだ。


 神界の神が下界に降りるときは、まずは役所で自分の名前と下界に降りたいという旨を伝える。

 そうすると下界に降りる理由と、滞在時間を聞かれるのだけど。

 滞在時間が72時間、つまり3日以内であれば特に何もなくそのまま下界へと降り立てる。

 しかし、72時間以上の滞在を希望する場合は、別途に様々な書類を書かされてちょっと面倒な手続きが必要になる。

 そして、神様は前回自分が下界に降りて、神界にまた戻ってきた時から1週間はまた下界に降りることはできないという掟もある。

 でも私が前に下界に降りたのってたしか中学の時だったから、私は問題なく下界に降りることができるはずだ。滞在時間は、まあ何かあった時の考えて24時間くらいにしておけばいいか。事前に申請した滞在時間内であれば、神様はいつでも神界に戻ってこれるんだし。ただ、事前に申請した滞在時間を過ぎて下界に留まると、すぐに神界に強制送還される上に罰金。さらに1年は再び下界に降りることを禁止されることになるから、まあ不安なら事前に面倒な手続きが必要にならないギリギリの時間、72時間を申請しておけばいいんだろうけどね。


 そして、その肝心の下界に降り立った神様についてなんだけど。

 一番重要で、かつ気をつけなければいけない点がある。


 それは、下界だと神様は普通に死ぬということ。

 より正確に言うと、下界では神界では有効な神様の不死性が失われるのだ。


 つまりは、下界にいる神様の肉体はもうほぼ人間と同じであり、ナイフで刺されれば死に、車に轢かれれば死に、毒グモに噛まれれば死んでしまうわけだ。

 もちろんここで言う死とは、人間の死と同義であり、下界で神様が死んだとしたらそれでその神様はおしまいとなる。ただし、その際に死体は跡形もなく消え去り、その死んだ神が下界で知り合った人間の記憶からその神についての記憶は消されるため、それによって下界の人間たちに迷惑はかからないように一応はなっているそうだけど。そこらへんのことについて詳しくは私も知らない。明日、役所で聞いてみようかな。


 ちなみに、神界でも年に数件は下界に降り立った神様がそこで何らかの理由によって死亡してしまうという事例があり、下界に降りる前にその可能性があることを役所で予め伝えられるので、神様は下界に降りている間は最新の注意を払う必要がある。

 特に死因の多くは、自らの不死性が失われていることを忘れた故のうっかりミスであり、もしもそれで死んだとなれば神界で死んだ神様は笑いものにされるのでほんと、そこだけは注意しよう。


 後は、下界に降り立った神様には普通の人間にはないいくつかの特殊な力を使えるようになるのだけど、それについては明日下界に降りてから教えるよ。


「ふーむ。でもどうしようかな。1人で行くのも有りっちゃ有りだけど、誰か一緒に行かないか誘ってみるのもいいかな」


 私はそう思ってスマホを取り出すと、では誰を誘おうかと迷った。

 スクルドはやめておくか。今はきっと鍋パーティーのことで頭がいっぱいだろうし。

 それでラケシスも予定空いてなさそうだからパス。

 ああ、というか私にはこういう時に気軽に遊びに誘える友達なんて、今は1柱しかいないな。

 私はその今の私にとって唯一の友であるその神、ヤヌスにLINNEでメッセージを送ってみた。


『ヤヌス、明日暇?』


 私のそのメッセージに既読がついたのが3分後。


 ↳『うーん、明日は夕方から仕事だから。午前中だけなら暇かな』


 そうか、午前中だけか。まあそれならそれで、午後からは1人で見て回ればいいだけだしね。


 ↳『それじゃあさ、明日私と一緒に遊びにいかない?』


 ↳『え、本当に?』

 +『もちろんいいけども。ちなみに遊びに行くって、どこに?』


 ↳『下界』


 私がそう返して、そのメッセージに既読がついて数秒後。

 なんとヤヌスが私に電話をかけてきた。それで私は慌てて通話ボタンを押したんだけども。


「もしもし、アストレア?」


「お、おう。なんだヤヌス」


「え、下界に行くって本当に?」


「え、ああ。うん、本当だよ」


「どうして下界なの?」


「いや、どうしてって。うーん、まあ最近の下界の様子とかちょっと気になったから、かな?」


 私がそう言ったら、ヤヌスはそこで数秒沈黙した。

 だから私は何かまずかったかなと思ってヤヌスに聞いてみた。


「あの、ヤヌスが嫌なら別にいいよ。私1人でも……」


 私1人でも行くから、と言おうとした時だった。


「いや、僕も行くよ。アストレア1人だとちょっと心配だからね」


 ヤヌスが私の言葉をさえぎってそう言ってきた。いや、心配って。


「心配って、え、何が?、別に大丈夫だよ。私1人でも。日帰りのつもりだし」


「いや……うん。ともかく僕も一緒に行くよ」


「そ、そうか?、そんじゃ明日の朝、9時にアパート出発でもいいか?」


「うん、それでいいよ。誘ってくれてありがとう」


「お、おう。それじゃあまた明日な。もしも私が寝たたら玄関のチャイム連打して起こして」


「うん、わかったよ」


 ヤヌスとの通話はそこで終わった。切ったのは私の方だが。

 それにしても、心配か。ヤヌスはあれかな、私が1人で外も出歩けないような子供だとでも思ってるのか、それとももしかして、下界って私の知ってる頃よりも治安とか悪い場所増えたのかな。別に下界に降りるときは自分の好きな場所に降り立てるんで、それならまだ安全そうな場所に降りればいいだけの話なんだと思うのに。え、なに、世界レベルで大きな戦争でもしてるとか?


「まあ別にいいか。それも明日聞いてみれば」


 そうして私はその後、スマホをいじって時間つぶしをしてから9時過ぎには明かりを落としてベッドに入った。だけども、久々に下界に行くことで緊張したのか興奮したのかわからんけど、私はなかなか眠りにつくことができなかった。


 次の日の朝、結局昨日は何時くらいに寝たのかよくわからないままだったけど、起きた時の気分は比較的良かったんで割とぐっすり眠れたんだろう。

 それで、起きたのは7時30分。出発の9時までには余裕があった。


「そうだ、朝ごはん作ろう」


 私はベッドから起きるとまずはシャワーを浴びて、そして洋服に着替えると昨日買った残りの材料で朝ごはんを作ろうと思った。

 まず卵はそのまま卵焼きにして、まあ今日は砂糖を入れて甘いのにしとくか。

 それで鶏肉の残りに長ネギを切ったやつに醤油をかけて炒めて、かにかまはそのままで食うか。

 ご飯も味噌汁もないけど、まあ朝ごはんなんて食べない日の方が多いくらいだしな。それに私は料理をするのはけっこう好きみたいだから。最近は面倒くさくなってやんなくなっちゃっただけであって。


 そして私が作った朝ごはんを全部食べ終え、これで食材も使い切った。

 また食器類を片付けてそれらを洗い終えてから、少し休んだら時刻は9時になった。

 私が支度を整えて玄関先で靴を履こうとしたタイミングで玄関のチャイムが鳴った。


「アストレアー、起きてる~?」


「おう、今出る」


 どうやらヤヌスはちゃんと昨日私が言ったことを覚えてたようだ。

 靴を履いて玄関の扉を開けたらヤヌスが、なんか今日はすごくきっちりとした服を着たヤヌスがそこにいた。いや、いつも工房の作業着を着てるイメージがあるせいでちょっと新鮮に見えてるだけか。


「おはよう、昨夜はよく眠れた?」


 ただ、服が変わっても中身はいつもの爽やかイケメンだからな。

 今もいつもと同じように爽やかな笑顔と一緒にそう聞いてきたけど、朝からこのスマイルはなんかちょっとこっちの気が重くなるな。


「おう、ばっちりだぞ。そういうお前はどうなんだよ」


「うん、僕もぐっすり眠れたよ」


 と、ヤヌスは言ったけど、よく見たらうっすらとではあるが目元にクマが出来ていた。

 少なくとも本人が言うほどぐっすりは眠れてないことは明白だった。

 だけど、ここでそれを突っ込むのはさすがにかわいそうかな。

 きっとヤヌスも、下界に降りるのは久々のことで、それが楽しみで昨日の夜は緊張するか興奮するかしてよく眠れなかったんだろうし。それでそれを正直に言わないってことは、たぶんちょっと見栄を張ってるんだろうから。ここで私が嘘だとか言っちゃうと、気まずくなりそうだし。


 私は部屋の鍵をしっかりとかけたことを確認するとヤヌスに言った。


「それじゃあ行くか」


「うん」


 そうして私とヤヌスはアパートを出て、まずは最寄りのバス停まで向かった。

『はしくれ荘』から最も近くにある下界の門には、まずバスに乗って途中のバスターミナルで降り、そこで今度は地下鉄に乗らなければいけないので行くだけでけっこう時間がかかるのだが。


「ちなみにヤヌスは今日は何時までなら大丈夫なわけ?」


「そうだな、まあ3時までには帰るつもりだけど」


「そっか」


「アストレアは?、今日何時まで下界にいるつもりなの?、たしか日帰りって言ってたよね?」


「ああ、うん。私は……まあ夜にはぼちぼち帰るよ」


 バス停でバスが来るのを待つまでの間に、私とヤヌスはそんな話をした。

 そしてやってきたバスに乗り込んでからも、色々と話をした。

 ヤヌスは、昨日アパートの隣の部屋のイシュタムさんが部屋を引き払って出て行ったことを言ってきて、私はもちろん知ってはいたけど、その話を知らないふりしてヤヌスの話を聞いた。


「引っ越しのトラックが来ててね。家具とか大きなものは先にそれで運んじゃったみたいだよ」


「ふーん、そうなんだ」


「僕が部屋を出た時にちょうどそのトラックがやってきてね。イシュタムさんもいたから挨拶したんだけど。僕、一応隣の部屋に住んでるけどイシュタムさんとはほとんど話したことなくて、でも向こうは僕の名前を覚えててくれてさ。それでちょっと驚いちゃった」


「んー、まあ大学の教授だからね。あの人」


「うん。それにしたって、すごい記憶力だよね」


「ああ、そうだな」


 私も昨日、まったく同じこと思ったんだけどね。

 それにしてもそうか、先に大きな家具とかはトラックで運んで。後の荷物は昨日のあの、白いワゴン車に詰め込んで運んだのか。たしか大学の教え子たちが手伝いに来てたけど。

 まあ引っ越しの時、ダンボール箱1個でも運んでもらうとお金かかっちゃうからな。自分で運べる分は自分で運んじゃった方が安くていいってことか。

 私はそう納得すると、引っ越しで思い出して逆にヤヌスにも1つ聞いてみた。


「そういや引っ越しで思い出したんだけど、この前私の隣の202号室に新しい住人来たの知ってる?」


「うん、来たことは知ってるよ。まだ姿を見たことはないけどね。挨拶にもこなかったみたいだし」


「まあ、引っ越しの挨拶なんてせいぜい隣の部屋までだよな」


「ああ、それじゃあアストレアは会ったことあるんだね」


「うん、私のところには挨拶に来たからね」


 本当は以前にもスクルドとは1度だけだが会ったことはあるのだけど、まあそれは言わなくてもいいか。

 だけど、そっか。ヤリーロだけでなくヤヌスもスクルドを見たことがないのか。


「どんな神だったの?、男神?、女神?」


「あ、お前それも知らないのか。女神だったよ。私より若くて、可愛らしいね」


「ふーん、そうなんだ」


「ああ」


 ……あれ、会話終了しちゃったよ?

 ヤヌスお前、せっかく私が若くて可愛らしい女神だったって言ったんだから、もっとこう、色々聞いてくるべきなんじゃないのか?、男神としてはさ。

 ああ、でも。そういえばこいつ今、私の知らないどっかの女神に絶賛片思い中なんだったな。それならその反応もおかしくないか。他の女神には目もくれないほどにその女神にゾッコンなのかね。まだ1度も恋を経験したことのない私からすれば、それはすごい羨ましい話なんだが。


「でもちょっとだけ、変わったやつだったよ」


 私は仕方なしとばかりに話を強引に続けることにした。


「変わってるって、その女神のこと?」


「うん。なんかね、ああー、うん。すごく、変わってた」


 私は一瞬スクルドのあの恰好、ガスマスク+ローブのことについてヤヌスに言おうと思ったけど、それを言うと変に誤解を招かれそうだし。かと言ってスクルドの視線恐怖症の話までするのは、それはさすがにスクルド本人の問題だから私が他人に話していいことではないからな。


「えっと、具体的にはどこら辺が変わってたの?」


「ああ、うーんとだな。ええー、ちょっと言葉で言い表すのはむずいかもしれない。でもまあ、きっとお前も見たら一発でわかると思うから。うん、見た目がね。でも実際に話して見たら普通にいい奴そうだったよ?」


「そっか。じゃあ今度見かけたら僕の方から話しかけてみようかな」


「あ、うーん。そう、だね」


「え、何か問題でもあるの?、あ、もしかして……その子、男性恐怖症だったり、とか?」


 おっと、こいつ微妙に核心に近いこと言ってきたな。どうしようか。


「いや、そういうわけじゃないけどね。そう、ちょっと人見知りするタイプだって本人が言ってたから、その、挨拶に来た時にちょっと話してさ」


「ああ、そういうことか。じゃあ、いきなりこっちから話しかけるのはやめておいた方がいいね」


「う、うん。たぶんな」


 あ、危なかった。いや、別にヤヌスは悪いやつじゃないし、そのことはスクルドにも伝えてあるけど。

 それでも今のスクルドはたぶん、いきなり知らない、しかも男神に話しかけられたりとかしたら心臓飛び出るくらいに驚いちゃうと思うし。そうなったらスクルドに悪いからね。

 ただ、かと言ってずっとそのままの状態にしておくのもスクルドのためにならないだろうから、仕方ないな。折りを見てスクルドとヤヌスが自然な形で話できるように私がセッティングするか。本来はそんなの必要ないと思うし、私がそこまでスクルドに義理立てする必要もないんだけどね。


 でも、そういえばヤヌスってスクルドのこと、アイドルとしてのスクルドのことは知っているんだろうか。

 スクルドがメンバーだったSORSは、短期間とはいえ爆発的な人気を誇っていたアイドルグループだったし、街中でもよくSORSの曲が流れてて、テレビ出演も多かったからな。

 ヤヌスはあんまりテレビ見る習慣ないって前に言ってたけど、さすがに名前くらいは聞いたことがあっても不思議はない。


「ちなみにその子の名前は?」


 ほら、来た。そうだよね、この話の流れなら最後に絶対にそう来ると思ってたよ。どうしようか。


「あ、あー、なんて名前だったかな。ス……ケ……ケルダだったかな?、悪い、ちょっと忘れた」


 私がなんとかスクルドの名前を伏せてそう誤魔化すと、ヤヌスは幸いにもそれ以上は詳しく突っ込んではこなかった。とっさにスクルドが最初使ってた偽名を思い出した私、グッジョブ!


 そんなこんなで、私とヤヌスは他にも話をしながら、バスから地下鉄に乗り換え、そして地下鉄で目的地である下界の門のすぐ近くにある駅までやってきた。

 神界にある6つの下界の門の1つ、ビブロストはもうすぐそこにある。


次回、ついにアストレア(とヤヌス)が下界へと降り立つ。

西暦2037年の日本。案外今と変わってないかもよ?

なお、あらかじめ断っておきますけども筆者はSFが苦手です。

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