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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
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ニートな女神と初めての休み

休みが欲しいのは筆者の方だったりする。

ニート生活がちょっとだけうらやましい。

 第1階層の迷宮ボスであるドラゴンを撃破した時の、報酬の金の宝箱に入っていたドラゴンブレードが、黒っぽい緑色だったのに対し、毒竜の剣は青紫っぽい黒色だった。そしてそれは今回のヒュドラー撃破の報酬の宝箱に入っていた他の防具類なんかにも同じような色合いだったのだが。


 〇毒竜の剣

 STR+54

 特殊効果

(1)この武器の物理攻撃によって敵にダメージを与えた時、敵を毒(中)の状態異常にする。

(2)(1)の効果の発動時、敵の毒耐性の数値を無視する。


 毒竜の剣の説明欄にはそうあった。

 それで、これのいったいどこに問題があるのかというと。


 まず、(1)の効果については、ようはこの剣で斬りつけたら斬った相手を毒(中)の状態異常にできるというわけなんだけど、その毒(中)にする確率が書かれていない。

 これまでであれば、ダメージを与えた際に〇〇%の確率で△△(♢)の状態異常にするとか書かれていたはずのテキストに、確率が書かれていない。それは、その確率が原則として100%だからだということに他ならないのだろう。なぜなら(2)の効果によってダメージを与えた側の毒耐性の数値は無視されるため、この剣で斬りつけたら斬られた相手は確実に(1)の効果によって毒(中)の状態異常になるだろうから。

 というよりもこの剣の(2)の効果って、まんま毒貫通のスキルなわけだが。


「ようは毒貫通のスキルを持ってなくても、この武器を装備していれば毒貫通のスキルは擬似的ぎじてきに持っているのと同じだと……恐ろしいな」


 私はそう言いながら毒竜の剣をアイテムボックス内にしまうと、そこで小さくため息をついた。

 特殊効果の方はえげつなかったけど、でも装備補正値の方はそこまででもなかったかな。

 いや、それでもドラゴンブレードよりは装備補正値が高く、私が現在所持してる[片手剣]カテゴリの武器の中では間違いなく最強なんだけど。


「うーん、でも装備中の槌の方が強いからな」


 私が装備中のギガントロックハンマーの装備補正値はSTR+115。

 それと比べてしまうと毒竜の剣はどうしても少し見劣りしてしまう。ただ、それは武器の特性というか、槌はその攻撃力の高さがある反面で攻撃動作が遅いっていう割と無視できないデメリットもあるから、それと装備の特殊効果も込みでいうなら毒竜の剣とギガントロックハンマーのどちらが強い武器かという問いにはすぐには答えられない。個々人のとらえかたによるとしか。

 1つだけ確実に言えることがあるとすれば、毒竜の剣は決して弱くはなくむしろ総合的に見た場合かなり強いほう(現段階では)の武器だということ。


「だけどあれだな。それで装備を毒竜の剣に変えようとは思わないな」


 私はまだまだギガントロックハンマーを使っていきたいと考えているし、毒竜の剣って結局は敵を毒の状態異常にしてその毒の効果ダメージを加えた上で敵を倒すわけだから。それは私の美学に反するってちょっと前に言ったと思う。

 ただ、毒竜の剣だけに限らずこの箱の中に入っていた他の装備品やアイテムについては、お店に売ったりとか他のプレイヤーに譲渡したりとかも、できれば控えておいた方がいいのかもしれない。

 隠しダンジョンに入る前に表示された警告というか、ゲーム運営からのお願いで、隠しダンジョンの中で手に入れたアイテムについての情報も、できるだけ他のプレイヤーに広めないようにってあったから。

 それがこの毒沼の洞窟ダンジョンで手に入れたってことを伝えなければ別に問題もなさそうだけど、それでも気軽に人に話したり、アイテムを渡したりはできないよな。


 私はそんなことを考えながらも、目の前の宝箱の中に入っていた残りの装備品についてもその効果を確認していった。


 〇毒竜の盾

 VIT+45

 特殊効果:この盾で敵からの直接物理攻撃を防いだ時、50%の確率で攻撃してきた敵を毒(中)の状態上にする。


 剣の方の効果も大概だと思うけど、盾の方も強いな。

 毒によるカウンターというか、剣の方と合わせて装備すれば相手は攻めても毒、守っても毒という毒地獄に陥ることになる。

 あ、でも盾の方は剣の方にあった(2)の擬似毒貫通スキルの効果は備わってないから、こっちは向こうが毒耐性を持っていれば毒の状態異常になるのを防がれる可能性もあるけど。


 〇毒竜の兜

 VIT+28 毒耐性+10%

 特殊効果:自身の毒攻撃によって敵に与えるダメージが10%上昇する。


 〇毒竜の鎧

 VIT+52 毒耐性+20%

 特殊効果:自身の毒攻撃によって敵に与えるダメージが20%上昇する。


 〇毒竜の靴

 VIT+26 毒耐性+5%

 特殊効果:自身の毒攻撃によって敵に与えるダメージが5%上昇する。


 〇毒竜の腕輪

 ING+25% 毒耐性+15%

 特殊効果:自身の毒攻撃によって敵に与えるダメージが15%上昇する。


 そしてその他の防具と装飾品の効果についてだけど。

 これらをまとめて装備すればプレイヤーは毒耐性が50%となり、さらに自身の毒攻撃によって敵に与えるダメージも50%上昇する。つまりはダメージ量が1.5倍になるのだが。

 まず、毒耐性の方はその上でさらに耐毒の指輪なんかを装備すれば毒耐性は100%となり、プレイヤーは状態異常の毒にならなくなる。耐毒の指輪は、まあヒュドラー戦までに洞窟の地下2階でビッグポイズンスパイダーを何体も倒してれば、普通は滅多にドロップしないレアアイテムでも1個はドロップするだろうか?、まあそれはプレイヤーの物運によるけど。

 でも毒攻撃のダメージが1.5倍になるというのは、さっきの毒竜の剣を装備していれば、毒竜の剣の物理攻撃も敵を毒の状態異常にする攻撃(=毒攻撃)であるから、それと合わせて考えると物理攻撃で与えるダメージが1.5倍になったと言っても過言ではない。そう考えるとなるほど、たしかに毒竜シリーズの装備もシリーズ揃えて装備したらかなりえぐいというか、強いな。


「シリーズとしてのコンセプトは毒を持って毒を制すってところかな。まったく、恐ろしい話だよ」


 私はすべての装備品を回収した後でそう言った。けれども……


「……うーん、でも需要あるかな、この装備」


 純粋に毒というものが好きな人、あるいは毒の状態異常によって相手のHPをじわじわと削っていくという戦い方が好きな人ならすごく欲しがりそうなものだけど。それって結構な変わり者だと思うし、っていうか後者はなんか性格悪そうだしな。私の偏見かもしれないけど。

 さっきはああも言ったけど本当にこの毒竜シリーズの装備が欲しいという人がいたら、どうせ私はもう使わないのだしその人に譲渡してもいいかな。ただ、そもそもこの毒竜シリーズの装備の情報を知ってるプレイヤーがそんなにいないとは思うが。


「たとえば、メイン武器が片手剣で、相手を毒の状態異常にして戦うのが好きってプレイヤーと出会ったら、私から実はこういうの持ってるんだ、私は使わないなんだけどいる?、って聞いてみたりとか」


 まあそんなプレイヤーと偶然にもゲーム内で知り合う可能性なんて……案外なくもないだろうか?


「別に出会わなかったらこの毒竜シリーズの装備は、ヒュドラー撃破の証として記念に持っていればいいだけの話だしね」


 少なくとも自分から、私こういう装備持っているんだけど誰かいる?、と聞いて回ることはしない。

 それこそ、運営からのお願いに反することになりそうだし。それで聞いたプレイヤーがいらないと言ったとしても、その装備品どこで手に入れたのとしつこく聞かれたりしても面倒だからね。

 あくまでも私が、こいつならこの装備品を欲しがり、かつその入手先をしつこく聞いてくることもないだろうなと思った相手にだけ話すのだ。うん、それがいい。


 さて、それで宝箱の中の装備品についてはこれで全部紹介したな。

 あとは魔法の巻物についてだけど。その前に他に入っていた素材アイテムについて教えておく。

 毒竜の鱗×50、毒竜の爪×20、毒竜の牙×18、毒竜の角×9。

 角の数が9個というのは、真ヒュドラーの頭の数と同じだったけど、思い返してみれば真ヒュドラーの頭には角がそれぞれ2本ずつ生えていたような。……いや、それは別にどうでもいいか。

 あと宝箱の中には力の種と賢さの種が1個ずつ入ってたよ。私は使わないけどね。


「それで巻物は、と」


 私は最後に残った魔法の巻物を手に取ると、その場で巻物を開いて魔法を習得した。


 〇ポイズンバースト

 無属性の中級攻撃魔法。大量の毒液を勢いよく放射する。毒液を受けた相手を毒(中)の状態異常にする。

 消費MP:25 リキャストタイム:2分30秒


「あぁ~。これはあれかな。ヒュドラーの口から出てた直線状の紫色のブレス」


 私は念のためにそこで、ボス部屋の壁めがけてポイズンバーストの魔法を使用してみたが、それはまんまヒュドラーの使用していた紫色の毒ブレスだった。

 直線状に伸び、遠距離まで攻撃が届く強力な毒液。きっと攻撃の威力も相当なものなんだろうけど、それでもまだ中級攻撃魔法なのか。消費MPも高く、リキャストタイムもそこそこ長いな。


 さっきは確認しなかったけども、召喚スキルで呼び出せるヒュドラーもこの魔法は使えるに違いない。

 ただし、首の数だけ連続攻撃になって、消費MPとリキャストタイムがその連続攻撃の回数分だけ倍になっていると仮定すると、召喚したヒュドラーの使うポイズンバーストは……あ、やっぱり無理だわ。


「はぁ~~。けどもこれでこの毒沼の洞窟ダンジョンで手に入るスキル・魔法もラストか」


 毒回復に毒貫通、ポイズンバブル、ポイズンボディ、ポイズンガード、ポイズンミスト、ポイズンブレス、ポイズンバースト。うわ、今回のこのダンジョンの中だけで毒に関するスキル・魔法を8つも習得してるし。


「もうあれだな。私のことポイズンマスターって呼んでくれてもいいよ、なんてね」


 いや、もちろん冗談だよ。

 でもさ、もしも私が装備を毒竜シリーズのものに変えて、それで毒攻撃を主体に戦うプレイヤーだったとしたら、そういう2つ名がついてた可能性もあるよね。


「結局、こんなに相手を毒にする魔法覚えても使わないっての」


 実はこのダンジョン内で私が覚えた8つのスキル・魔法の中でなら一番収穫と呼べたのは最初のポイズンスライムからいただいた毒吸収(現:毒回復)のスキルだったんじゃないだろうか。

 私はそんなことを思いつつもボス部屋に出現していた青いワープゲートの中に入った。すると私はこのダンジョンの中継地点、洞窟部分の入口までワープしたので、私はすぐにまたその場所にあった緑色のワープゲートに入るとこのダンジョンに入って最初の小ルーム、ダンジョンの外へとつながる扉のあるルームまで移動してきた。

 そして私がまた扉のノブを回して扉を開けたら、私の視界は一瞬光に包まれて、次の瞬間には私は森林フィールドの元の穴の底にいた。ようやく戻ってきたよ。


「ビッグポイズンスパイダーが復活してなくて良かったよ」


 どうやらこの場所から隠しダンジョンへの出入りの際には、この場所に巣を作っていたビッグポイズンスパイダーは復活しないみたい。いやー、良かった良かった。

 それにしても、毒沼の洞窟ダンジョンの中でビッグポイズンスパイダーが普通に出現してたことにはやっぱり驚かされたよね。この先もそういうことが起こりえるってことがわかっただけでも良かったけど。


「嫌だなぁ。この先ウェアウルフとかアースジャイアントとかが一度に複数出て来たりとか」


 いや、さすがにそんなすぐにそういった事態になるわけないとは思うけど。

 このゲーム、それまで常識だと思ってたことがいきなり通用しなくなったりして怖いわ。

 だからとにかくそれらのことも念頭に置いたうえで油断は禁物ってことだな。


 そして私は穴の底から脱出すると、森林フィールドを抜けて始まりの街へと帰ってきた。

 門をくぐって街の中に入るなり私はすぐにログアウトした。

 当初の予定では、この後で始まりの街の懐かしいNPCたちのところへ行ったりとかするつもりだったけれども、もう私の体は疲労困憊ひろうこんぱいだったし。それでもちゃんとこうして街まで戻ってきたのはただの意地だ。できればフィールドでログアウトとか、あんまりしたくないんだよね、私。


 ――神界の私の部屋〈はしくれ荘203号室〉――


 それで私がリアルに戻ってきた時、時刻はなんと午後6時前。

 もう9時間近くずっとログインしてことになる。そのうちの約2時間はヒュドラー戦だし。


「だぁぁぁ~~~~。もーーーー」


 私はゲーム機の電源を切って頭からゲーム機を外すと、それを床に放り投げた。

 そしてベッドの上で寝ていた体をくるりと回転させると枕に顔をうずめて声にならない叫びを1つ。

 とにかく今回はマジで疲れた。もうこのまま寝ちゃおうかな。でも、そしたらきっと明日の朝まで爆睡しちゃうような気がするんだよな。


「第2階層の隠しダンジョンもこんくらい時間かかるのか、それともこれ以上か」


 考えただけでも気が重くなってくる。それで私は、第3階層の隠しダンジョンに挑むのはまた次の機会にしようと思った。この次、第2階層の隠しダンジョンを攻略したらその後はまたゲームの本編を進めて第4階層に行こうと思う。おそらくダンジョンの攻略推奨レベル(という名の完全な詐欺)も毒沼の洞窟よりも断然高いのだろうし。

 というか第2階層の隠しダンジョンでもちゃんと最後までいけるかどうか不安なんだよ。


「第2階層の隠しダンジョンも毒づくしってことはないだろうけど、あるいは麻痺づくしとか、いや、最悪の場合、眠りづくしの可能性も」


 もしもそこのダンジョンのボスが眠り貫通なんていうバカみたいなスキルを持っているようなら私はもうあきらめておとなしく第4階層へ進むよ。だって勝てっこないものねそんなの、ソロじゃ絶対にさ。

 眠らされてタコ殴りにあって確実に殺られるだけだよ。……はぁ、本当に不安だ。


「あ、そだ。スクルドから何か連絡は……おっ。1通メールきてるじゃん」


 そして私が体勢を起こしてスマホをチェックしてみたら、スクルドの方からメールが1件届いていた。

 ラケシスの方からはメール来てなかったけど、たぶんラケシスの方からはもう来ないかな。こっちからまた何かメールを送ったりしない限りは。


『大変です、アストレアさん。

 ラケシスちゃんがウルド姉さんとヴェルダンディ姉さんにも声をかけてくれたんですけど、パーティー当日二人ともちょうど予定が空いてるらしくて、参加するみたいです。

 それで私、どうしたらいいですか?』


 スクルドからのメールにはそう書いてあったけど。

 いや、参加できるっていうなら別にいいんじゃね?、元からそのつもりで呼びかけたんだし。

 でも、そうか。それなら当日はマジで久しぶりに解散したSORSのメンバーがスクルドの部屋に集まることになるわけか。いったいどんな話をするのやら。

 というか、そうなってくるとますます私が一緒にいづらくなるな。スクルドとラケシス以外のメンバーとは私は直接の面識とかないし、自分からスクルドに提案しておいて何だけど当日は私、ばっくれちゃってもいい気がしてきた。せっかくの再会に水を差すようなまねをしたくないからね。

 私は少し考え込んだのち、スクルドにはこう返信しておいた。


『それなら良かったじゃん。

 久々にSORSのメンバーが集まるんだし、それで準備を進めればいいだけだと思うよ。

 あ、でも鍋パなら鍋に入れる食材を当日皆に用意して持ってきてもらうとか、面白いかもよ?』


 私はやったことないけど、学生時代に友達がそんなことして、それでパーティー当日に集まったメンバーがほぼ全員肉を持ってきて大変だったとかいう話をしてたの聞いたし。まあたぶん盛り上がるに違いない。それで皆が当日何を持参してくるのかとか、ちょっと興味あるから。

 私はメールを送信するとスマホを閉じて置いた。それから起き上がると、まずは汗でべとべとになった服を脱ぎ散らかすと浴室にいってシャワーを浴びた。そして髪と体をしっかり洗って乾かしてから洋服を着て、夕食を買いに近所のコンビニに向かった。

 コンビニでは牛カルビ弁当と明日の朝食用のハムタマゴサンドイッチだけ買って、すぐにアパートの部屋に戻ってくるとカルビ弁当を食べた。うん、おいしいんだけどもカルビ弁当って高いんだよね。その、値段だけでなくてカロリーとかも。


「そうだな。最近ずっと運動不足だったしな。明日はちょっと運動でもしてみるか」


 それも外をジョギングとかじゃなくて、スポーツジムとかに行って。

 たしか、アパートからそう遠くないところに大型のスポーツジムがあった、ような気がする。

 いや、どうだったかな。まあ、明日散歩がてらちょっと行ってみるかな。


「ごちそうさまでした」


 私は食べ終わった牛カルビ弁当の容器を燃えないゴミの袋にぶち込むと、ベッドの上で少し横になった。

 物を食べたり、風呂上がりとかにはどうしても眠気が襲ってくるけど、食後30分から1時間くらいは寝ないでおいた方がいいって言うしな。

 それで、まあなんとか1時間くらい食後の睡魔と戦い、ちょうど1時間経ったくらいで今日はもう寝ようと部屋の照明を落として、ものの5分で私は眠りについた。私は、まあ普段から眠りにつくのは割と早めな方だと思ってるけど、今日はとにかくヒュドラー戦で本当に疲れたからね。もう速攻だったよ。

 それで深い眠りについたから夢とかもみなかったし。


 ――翌日の朝――


 で、そういう時って次の日の朝けっこう遅くまでがっつり寝ちゃうんだよね。

 私が起きた時、時刻は10時過ぎだったよ。昨夜寝たのが午後9時前くらいだったから、それでもう12時間以上も寝ちゃって。でも明らかに寝すぎだったはずなのに意外と頭はすっきりしてたところをみるに、これは昨日は本当に疲れてたんだな。

 私はベッドからおきて大きく伸びをすると、またスマホをチェック。スクルドからまた返信が来てるかなと思ったけどそれがなかったんで、たぶん私が言ったことについてまたラケシスとやりとりしてるってところかな。まあ今日明日中にもまた返信は来るに違いない。なんなら直接尋ねにくるかもしれないな、隣の部屋に住んでるんだから。


 私は冷蔵庫にしまっておいた昨日買っておいたサンドイッチを食べてから、外に行く支度を済ませた。

 まあ最初は外に出て普通に少し散歩してからスポーツジムに行ってみるか。なんか場所がうろ覚えなんだけどあえてスマホの地図を確認せず、自分の記憶が正しいのかどうか足で行って確かめてみるっていう。

 自分で言うのも何だけどなかなか殊勝しゅしょうな心がけではないかな、なんて。


「最近は、初めて行く場所でも普通にスマホで地図確認してから行くからな。まあ、そっちの方が確実に目的地につけるし、道に迷わなくていいから良いんだろうけど。たまには地図確認せずに、記憶や勘を頼りに道に迷うの覚悟の上でブラブラ歩いて行くのも悪くはないだろう」


 むしろなんていうかその、最近は神界でも下界でも迷うってことを神も人もしなくなったよね。いや、しなくなったというか、する機会が減ったと言った方が正しいのか。

 それは普通はいいことのように思えるし、私だって何も自ら進んで迷いたいわけじゃないけどさ。

 でも考えようによっては迷うっていうことも必要なんだと思うよ。

 もしも迷わずにずっと歩き続けていくことができる人がいたら、その人はよほど自分に自信があるか、あるいは馬鹿なのかもしれない。この迷うというのは、何も実際に地理的な意味で道に迷うとかいう意味だけじゃなくて、神生(人生)におけるあらゆる場面、選択肢にいえることなんだけど。


 突き詰めれば迷うっていうのは、これまで自分が辿ってきた道のりを振り返る機会なんじゃないかな。

 だって迷うと人は立ち止まって、現在地を確認しようとするからね。

 今、自分の見ている景色、自分のいる場所を説明しようと思ったら、必ず立ち止まる必要があるから。


「まあ、私の場合は立ち止まってばっかな気もしないでもないけどね」


 私はそう言うとそれでちょっとため息をついて。

 それから玄関の扉を開けて外に出た。今日の空は快晴で雲一つない青空。絶好の散歩日和だった。


次回、アストレアの3日間の休日の1日目。

アストレア、スポーツジムに行くの巻。

そして、はしくれ荘にもまた変化が訪れる。

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