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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
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ニートな女神と初めての雨宿り

ヒュドラーを強くしすぎただろうか?

もしもゴッドワールド・オンラインがリアルに存在していたとしたら、筆者は倒せる自信がないのですが。ああ、でも、頑張ればまだいけるかな?

 真ヒュドラーの酸性雨攻撃を防ぐ方法はないように思えた。

 ギガントロックゴーレム戦の時のようにドラゴンを召喚して背に乗り、空へと逃げたとしても、攻撃はその逃げた空から降り注いでくるので、むしろ空へ逃げると確実に死ぬだろうということくらい容易に想像できたし、だから私は酸性雨攻撃については攻撃前の前兆を見たらすぐにボス部屋の壁際までダッシュで逃げて壁ギリギリで回避するしかないと判断したのだけど。

 いかんせん攻撃の度に壁際まで走らされるのって、高校の時とかの体育の授業でやった体力測定のシャトルランみたいでさ。私の中で軽くトラウマが呼び起こされるんでできればほかの対応策を考えないといけないなとも考えていた。


 そして酸性雨攻撃は真ヒュドラーの首の数が減ったところでそれ以降の降ってくる雨の量と範囲に変化はなく、私がさらに首を2つ倒して真ヒュドラーの首が3つ(※2回目)に減った場合でも、酸性雨攻撃は依然として脅威のままだった。

 絶対に回避できない攻撃ではないが、非常に回避が難しい。今回はよくてもこの先、また酸性雨のような空から雨などを広範囲に降らす攻撃への対処法を、何か見つけておいた方がいい。


「って言ってもなぁ。一番確実なのは地面の下に潜ることなんだろうけども」


 まだあるかどうかもわからないが、いや、このゲームなら絶対にありそうなものだけど。

 地中に潜るスキルや魔法などがあれば、地上に降り注ぐ雨も関係ないはずで。

 だけども今、私はそのスキルなり魔法を持っていないし。


「そうなると後は……うーん」


 私はそうつぶやきつつも真ヒュドラーの首をそこからまた2つ倒し、真ヒュドラーの首の数が初めて1つになったところで首が2つ復活し、首の数は3つに戻った。

 おそらくこれで真ヒュドラーの首の復活は最後で、後はもう本当に残った3つの首を倒して、最後に胴体の残った1本分のHPケージを削って0にすれば真ヒュドラーは倒せるはず。

 まさかそれでその後胴体のHPまで復活してヒュドラーの首の数もさらに増えて12、いや、下界の伝承でもヒュドラーの首の数として最多だった100くらいまで増えたとしたら、私はもうこのゲームに見切りをつけてやめようと思っている。

 そして、私がそんな風に思っていたら、そこでそれまで私から発せられていた謎の金色の光が徐々に薄れていき、ついには消えて元通りになった。


「おっと、消えた。えー?、なんで消えたんだろ」


 金色の光が出てくるタイミングについては推察できたものの、消えるタイミングについてはまだよくわかっていない。なにせ光が出てきたのは今回で2回目だったんだし。

 ただ、もしかすると私が心の中でもう後はこの光がなくても自力で戦って倒せるなと強く思ったから消えたのかもしれないな。あくまでこの光はゲーム内で理不尽だと思えるほどの危機的、絶望的な状況でのみ効果を及ぼすもので、その状況を脱したのならもう光の効果はいらないよねっていう。


「でも、どうせならヤタガラス戦の時の最後に私が出したっていう、あの、ものすごい一撃も出してみたかったな」


 前回の金色の光が発生したヤタガラス戦、なぜか私の記憶にはないのだが、その最期で、ヤタガラスと奴が呼び出した空を埋め尽くさんばかりの大量のカラス達を一掃したという強力な一撃。

 あ、でもその時は私、片手剣を装備してて、後からみんなに聞いた話だとその剣にまとっていた金色の光のオーラが集まって、その剣から攻撃を放ったらしいから。

 私が今装備してるのって槌だし、もしかするとその強力な一撃については片手剣を装備している時でないと使えないのかもしれない。


「いや、それで仮に使えたとしても、私が任意で使える技なのかどうかもわからんのだけど」


 とにかく金色の光についてはまだまだ不明な点が多い。

 今回は、まあ発動条件っぽいのがわかっただけでも良しとしておこうかな。

 それに実際、もう真ヒュドラーは倒せたようなものだし。まさかこの後でさらなる大技を繰り出して来たりとか……ないとも言いきれないかな?


「やばい!、また酸性雨攻撃だ!」


 私は真ヒュドラーの3つ首がまた天井に向けて毒液を連続発射してるのを確認してすぐに壁際まで退避したけれど、このタイミングでヒュドラーの首に攻撃を命中させたら攻撃をキャンセルできないだろうか。


「うーん、でも首はまだ3つあるし。それでキャンセルできなかったら、その後の酸性雨攻撃はもろに食らっちゃうだろうから」


 仮に私のHPが全快状態であっても、あの酸性雨攻撃を食らったらなんか即死しそうなんだよね。

 もうこれに関しては試しに1回食らってみてダメージ量を確認してみようかとか思えないから。

 私の見た感じだと、酸性雨攻撃も雨である以上は水属性の攻撃っぽいけど、もしも無属性とか雷属性の攻撃だったら怖いし、本当に確かめようもない。

 相手の攻撃を見た時に、その攻撃名とその属性を看破できるスキルがあると、そこで悩まずにも済むんだろうけど。ああ、そんなこと言ってまたないものねだりしても仕方ないしな。


「だけど、でもそれじゃあこの酸性雨攻撃、どうやって防げばいいんだよ」


 地中に潜る以外に、雨を防ぐ方法なんてあるのか?


「うん?、いや、ちょっと待てよ」


 と、そこで私ははっとなった。雨を防ぐ方法って、私はついついゲーム的な回避方法あるいは防御方法について模索してたけれども。

 リアルで、現実的に考えたならばその答え、方法は下界の子供でも知っているだろう。


 そう、つまりは……雨が降ってきたなら傘を差せばいいのだ。あるいはどこか建物の中に入るとか、単純に屋根の下で雨宿りしてもいい。


「そっか、ようは私の体に雨粒が当たらなければダメージもないんだし、それなら……」


 もちろん。私は傘なんていうアイテムを持ってはいないし、このボス部屋内は広い空洞であり、頭上に雨を防げる屋根のようなものもない。だが、ないなら作ればいい。

 私はそこで少し考えてから、ちょっと賭けに興じてみることにした。もしもこの賭けに負けたら私は酸性雨攻撃を食らってしまい、HP全快状態からでも一瞬で即死してしまい、ここまでの苦労とか努力とかが水の泡になる可能性もある。けれども、それでも私はこの思いつきを試さずにはいられなかった。

 なぜって、それはまああれだよ。いつもの好奇心だよ。


「召喚:ギガントロックゴーレム!」


 私は召喚スキルを発動し、ボス部屋内にギガントロックゴーレムを召喚した。

 ただし、今回の召喚は今までの召喚とは大きく違う。今までの召喚は召喚したモンスターの扱えるスキルなり魔法なりが目当てで、ようは攻撃を目的として召喚したのに対し、今回このギガントロックゴーレムを召喚したのはギガントロックゴーレムに真ヒュドラーを攻撃してもらうためではない。


「ギガントロックゴーレム、その場で待機」


 私はオレンジ色の魔法陣から出現したギガントロックゴーレムに、特に何をするわけでもなくその場での待機を命じると、真ヒュドラーが酸性雨攻撃をしてくるのを待った。

 もう一度言っておくけど、今回私が召喚スキルを発動したのはそれで召喚したモンスターに攻撃してもらうためではなかった。今回の召喚の目的は攻撃ではなく防御。すなわちそれが意味するところは。


「来た!、酸性雨攻撃だ」


 真ヒュドラーが酸性雨攻撃を行ってきたとき、私は召喚したギガントロックゴーレムの両足の間に入り込み、攻撃が来るのを待った。そして私は賭けに勝ったのだ。


「よーし!、防げた!」


 天井から降り注いできた酸性雨は、私には1滴たりとも当たらなかった。

 なぜならその前にギガントロックゴーレムがその雨をすべて受け止めてくれたからだ。

 つまり私は、ギガントロックゴーレムを雨を防ぐための傘にしたのだ。


 召喚スキルによって召喚されるモンスターの能力値は、プレイヤーのレベルによって決まる。

 もちろんプレイヤーのレベルが上がるほど、召喚されるモンスターの能力値も上がるわけだが、召喚されるモンスターの能力値はすべて同一ではないのだ。

 たとえばドラゴンであれば力と耐久、ヤタガラスであれば賢さと敏捷が高い。もちろんそれは同じレベルで召喚した場合の話だ。


「ギガントロックゴーレムはHPと耐久が高いから」


 酸性雨攻撃は魔法攻撃だったから賢さの高いモンスターとどっちを召喚するかちょっと迷ったけれども、私は結局HPの高さを優先した。あと、ギガントロックゴーレムは私が召喚できるモンスターの中でも一番サイズが大きくて、見た目が一番硬そうで、いるだけで守られてる感じがするからね。

 まあ、巨体であるということは酸性雨攻撃の雨粒も大量にその身に受け、大ダメージとなったため、ギガントロックゴーレムのHPはそれで一気に9割近く削られたのだが、なんとか持ちこたえてくれた。


「ギガントロックゴーレム、ありがとう。送還!」


 私はその身をていして(と言っても召喚された場所から一歩も動いていないのだが)私を守ってくれたギガントロックゴーレムにお礼を言うと、送還した。

 まあ、雨を防ぐための傘として呼び出してしまったことにほんのちょっとだけ罪悪感を感じないでもなかったけど。別に召喚スキルで召喚したモンスターは絶対に攻撃のために扱わないといけないなんていう決まりもないしね。


 もっとも、この先ただのフィールドなどで雨攻撃をしかけてくるエリアボスなどと戦うことになったところで、今回のギガントロックゴーレムガードを使用するかどうかは迷うところだ。フィールドじゃ他のプレイヤーの目もあることだしね。

 けれども、真ヒュドラーのようにダンジョンのボス戦などでは使ってもいいかな。さすがに雨攻撃が来るたびに召喚して傘代わりにするのは、ギガントロックゴーレムがあまりに不憫ふびんに思われるのでやめようとは思うけど。

 だからやっぱり地中に潜って身を隠すスキルとか、あとはそうだな。頭上に風を発生させ続けて降ってくる雨を弾き飛ばす魔法とか?


「まあいいや。そういうのもいつか、どっかのタイミングで手に入るだろう。とにかく今はもうヒュドラーを倒しちゃおう」


 真ヒュドラーは首にHPが自動回復する特性、HPの減った首を別の首がかばったりする特性を持っているけれども、首の数が3つとなった今ではそれももはや関係はなかった。

 私は残った真ヒュドラーの3つの首、首D、首E、首Fのうち、まず先に首Dと首Fに止めをさすと、最期に残された真ヒュドラーの中央にあった首Eにも止めをさそうとした。しかし。


「あれ?、なんで?」


 その首Eなのだけど、どういうわけかHPが0にならなかったのだ。

 正確に言うと、首EのHPケージはもう残り1ドット(おそらくHPの数値的にも1)までは削ることができたのだけれど、その状態でどれだけ攻撃を加えてもその最期の1ドットだけが削られずに残り続けるのだ。つまり首Eだけは倒すことができなかったのだ。


「まさかバグってことはないだろうし。最期の最期に残った首だけ不死なのかな?、それとも最初からあの中央の首だけは倒せない仕様になってたのか?」


 残りHPが1ドットであるため、その首はもう息も絶え絶えといった感じで、ファイアーボール各種の攻撃も1発だけだし、そもそも首が1つになった段階でもう酸性雨攻撃は使用してこなくなったのだが。

 まあなんにせよ首Eだけがどうしても倒せないようになってるらしいことは明らかだったから、私はもうそれで諦めて、先に胴体の方に止めをさしてしまうことにした。

 それで、これまでであれば首が残っている状態で先に胴体を攻撃しようとすると、その攻撃を首がガードしてきたわけだけど、最期に残った死にかけの首はそれさえしてこなかったし。

 なんで私は胴体の方に普通に攻撃していき、ついに胴体のHPも完全に削り切ったと思った時。


「ギャオォォォォゥゥゥ~」


 胴体のHPが0になると同時、死にかけだった首EのHPケージの最期の1ドットも削れて0となり、ヒュドラーは首1つだけくっついた状態のままで地面に倒れこみ、それから体を光の粒子へと変えてパキパキと砕け散っていった。


「なんだろう。見栄え重視だったのかな」


 首のないドラゴンを倒すより、やっぱり首のあるドラゴンを倒したほうが見た目的に達成感あるだろうから、最期の首だけは倒せないようになってたとか?……そんなわけないか。

 まあ最期なんかちょっと疑問が残ったけど、それでも倒せたことに違いはないし。


 ヒュドラーはそれで8800の経験値と、12000のゴールドを落としたのだが。

 普通に第3階層迷宮の迷宮ボスであるギガントロックゴーレムのそれを越えちゃってるあたり、本当に強かったということを改めて理解させられたよ。というか、隠しダンジョンのボスって迷宮ダンジョンのボスと違って、一度倒してもまたダンジョンに入りなおせば復活してるのかな?

 仮にそれで復活するのだとしても私は、もうヒュドラーとは2度と戦いたくないのだけど。


「だぁ~~~~!!、終わったぁ~~~~!!」


 ヒュドラーを倒した直後、私は思わずそう叫ぶと地面に大の字になって倒れ伏した。

 いや、今回は本当に疲れた。何よりも長かったし。ふと時間を確認してみたらなんとヒュドラー戦だけで2時間も経過してたし。ほんと、勘弁してもらいたいよ。

 そしてヒュドラーを倒したリザルト画面を閉じた後で、次に開かれた画面を見て私は盛大にむせ返ってしまった。


<新しいスキルを習得しました>

 ・スキル:召喚:ヒュドラー


「ぶはっ!?、うげほ、ごほっ……ええ!?、マジで!?」


 いや、私もヒュドラーも倒したらきっと何かスキルか魔法(私の予想では最後の酸性雨攻撃の魔法とか)が手に入るんじゃないかとか予想はしてたけど、まさか隠しダンジョンのボスモンスターも倒したら召喚スキルの仲間入りするとはね。


「えぇ~、ヒュドラー召喚できるようになったの?」


 と、私が言いながら召喚できるようになったヒュドラーの詳細について確認してみると、それはもう本当に恐ろしい内容だった。何が恐ろしいっていうのは、もう、全部だよ。


 〇召喚:ヒュドラー

『ヒュドラー』を召喚し使役することが可能になる。


 消費MP:召喚中1秒経過毎に4消費 リキャストタイム:――


 まず、ヒュドラーは召喚してる間、1秒でなんと4ものMPを消費していく。

 私はもうこの時点で嫌な予感しかしていなかったんだけども。


『ヒュドラー』が使用可能なスキル


 ①ポイズンショット×9

 無属性の初級特殊魔法。毒液の塊を射出する。毒液の塊は何かにふれると破裂して周囲に毒液をまき散らす。

 消費MP:54 リキャストタイム:45秒


「よーし、これは見なかったことにしよう。うん、こんなスキルなんてなかった」


 私はヒュドラーが使えるスキルについて、1つ目のものを確認した時点でさっとスキルの詳細画面を閉じると、ヒュドラーが召喚可能になったという事実を忘却の海へと沈めた。

 だってなんかもう、その先を確認するのが怖すぎて。


 いやだって、確認したポイズンショットっていうのはおそらくあの、ヒュドラーの口から放たれてた毒液弾のことなんだろうけど魔法名の後に×9ってついてたし。それで召喚スキルで召喚されるであろうヒュドラーは最終形態の真ヒュドラーだということはもう確定したようなものだけど。


「たぶん、初級の魔法なのに消費MPが54とかあったのも、一度の攻撃で9発連続で使うからなんだと思う」


 だからポイズンショットは、プレイヤーが普通に習得して使用する場合はきっと消費MPは6でリキャストタイムも5秒の魔法なんだろうな。ヒュドラーはそれが常に9連続攻撃に設定されているせいで消費MPとリキャストタイムも9倍になってしまっていると。ははは、もう無茶苦茶だな。


「今の私じゃ、召喚したところですぐにMP切れるだろうし」


 仮に聖水を飲みながら召喚するにしたって、きっと50個くらいならそれですぐに使い潰すだろう。

 あまりにも燃費が悪すぎて使えないんだよ。それになによりもこの先、ヒュドラーを召喚しなければいけないような状況があるとも思えないし。いや、絶対ないよ。


「うん、やっぱり忘れよう」


 ということで私はやっぱりヒュドラー召喚の件については忘れることにした。

 ほら、1、2、3……ポカン。はい、きれいさっぱり忘れました。だからこの話はこれで終了。


「おほん!、さてと、気を取り直して……ふっふっふ。みんなお待ちかねのあの時間がやってきたぞ」


 あの時間、人はそれを宝箱タイムと呼ぶ。ついでに神もそう呼ぶ。

 それはつまり、ヒュドラーを倒し、奴が光の粒子となって砕け散り消え去った直後に、ボス部屋の中央に出現した大きな赤い宝箱。その中身を確認することにする。

 ちなみに宝箱の他に、ヒュドラーを倒した時点でボス部屋内には青色の一歩通行ワープゲートも出現したけれど、それはいいよね。


「でも宝箱の色は赤色なのか。迷宮ボスの時とは違うのかな」


 階層最後のダンジョンである迷宮のボスモンスターは、倒した際にいくつかの条件を満たすことによって倒した後にボス部屋内に出現する報酬の宝箱のグレードが決定する。

 最低グレードが赤で、そこから銅、銀、金とグレードは上がっていくのだけど。ここは隠しダンジョンであり、迷宮ダンジョンではないし。そもそも通常ダンジョンではボスモンスターを倒しても、それでアイテムをドロップすることはあってもボス部屋内に宝箱が現れることなんてなかったからな。


「うーん、おそらくだけど隠しダンジョンの場合はボスモンスターを倒すだけでいいのかも。そこに条件による宝箱のグレードの変化とかはなく、本当にただ倒せば報酬はもらえる」


 ただし、ヒュドラー戦を振り返ってみても並みのプレイヤーであればその倒すだけというのもかなり厳しいんじゃないかとは思うけど。その上でさらに初回撃破とか、制限時間内に撃破とか、ソロで撃破とかいう条件がつこうものならそれこそ本当に鬼畜だろう。ヒュドラーは倒せただけでも十分すごいのだ。

 それに、もしも隠しダンジョンのボスモンスター戦後の報酬の宝箱が、迷宮ボスと同じように今言った条件を満たすことでグレードが変化する仕様なのであれば、私は少なくとも初回撃破とソロで撃破の2つの条件は満たしているはずなので宝箱の色は最低でも銀色になってるはずだし。

 そして私がそのことを確信できたのは、件の宝箱を開けてみて実際に中身を確認してみた時で。


「うわぁ。いつもの迷宮ボスの金の宝箱の中身と同じくらいすごそうなものが入ってるよ」


 つまりは、中には武器や防具をはじめとした装備品一式と、魔法を覚えられる巻物が1つ。

 それと各種の素材アイテムが複数個入っていたのだった。まあそれは予想通りだったのだけども。

 でもこれで、宝箱の色は赤色だったけど、それは中身のグレードとは関係なかったということが確定しただろう。まさか最低グレードでこんなに豪華なものが入ってるわけないからね。


 それで装備品については、幸運なことに武器の種類は片手剣だった。

 それと防具に盾、兜、鎧、靴。装飾品として腕輪が1つ入っていた。


「じゃあ、まずは武器から確認していくか」


 私がそう言いながら宝箱の中に入っていたドラゴンブレードの色違い(細部の意匠は異なる)みたいな形をした武器、毒竜のつるぎを手に取ってその能力、特殊効果を確認してみると、そこでいつものように絶句することとなった。


「え?…………いやいやいや、これはちょっと…………え、マジで?」


 それこそそう、その武器の存在もさきほどのヒュドラー召喚スキルと同様に、忘却の海へと沈めてしまおうかと思ってしまうくらいには、その武器は強力だった。

 いや、もうあえてこう言ってしまった方がいいかもしれない。

 ……ぶっこわれてんじゃないのかな?、この武器。


<モンスター辞典>

〇ヒュドラー

ちょっとしたこぼれ話。

実は今回、結構リアルの元ネタであるギリシア神話の伝承を再現しています。


〇ヒュドラーの首の数は9つ(※これについては所説あり)

=ゲーム内での最終形態(真ヒュドラー)の首の数と同じ。筆者は、ゲーム内のヒュドラーの首の数が100でもいいかなとかちょっと思いましたが、それだと全部倒すのに半日くらいかかりそうなので首の数は9つを採用。3、6、9と段階的に首の数が増えていく仕様にしたのは遊び心です。


〇ヒュドラーの首は8つまでは倒すことはできるが、中央の首は不死である。

=ゲーム内、真ヒュドラーの9つの首のうち、中央に存在する首(本編内表記での首E)のみ、HPケージを0にできない。本編内では玲愛は首Eを最後に残してましたが、実は首が9つある最初の段階から首Eは倒せないようになってました。


〇ヒュドラーの首は倒しても、傷口からすぐに2つの首が復活する。

=前話、今話の本編内での真ヒュドラーの首の復活という特性。


ちなみにこれ以外にも神話の中では、ヒュドラーの吐く息は吸っただけで人は死ぬというものと、ヒュドラーの毒は解毒できないなど、ヒュドラーの特徴についてはまだいくつもの記述がありましたが、さすがにそれらについては……反映してたら玲愛は絶対に勝てなかったでしょうし。特に前者。


あと、これは本当に偶然だったのですが、神話の中でヒュドラーを退治にしにきた英雄ヘラクレスの武器が棍棒こんぼうで、本編内で玲愛が装備していたのがつちであり、同じ打撃武器だったことはヒュドラー戦が書き終わったタイミングぐらいで気づき、思わず笑っちゃったりして。


皆さんも、もしも興味があればそうした神話関連の本なども買って読んでみると意外と面白かったりしますよ?


さて、次回。毒竜の剣をはじめとした毒竜シリーズの装備のえげつない効果とは。

そしてアストレアの3日間の休日、1日目に突入する予定。

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