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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
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ニートな女神と初めての多頭竜

ネットの動画サイトとかにバジリスクタイムっていう動画があるのを見つけた。

なんか色々な種類があったけど、あれ、どうしてバジリスクタイムって言うのだろうか。

 バジリスクの攻撃方法は毒の息だけではなかった。

 プレイヤーめがけての突撃攻撃(無属性・物理)と、もう1つ。

 正面から見た時には気づかなかったのだけどバジリスクは単にワイルドコックの色違いモンスターというわけではなくて尻尾の部分に毒蛇がくっついていて、その毒蛇のかみつき攻撃も厄介だった。

 ようは、遠距離かつ広範囲には毒の息、近距離の場合は毒蛇のかみつき攻撃と毒攻撃を2種類使い分けているわけでさらにその毒はプレイヤーの毒耐性を無視して貫通する。

 それでプレイヤーがかかる毒(小)の状態異常は通常の毒消し薬が効かないのだけど、私は自分の調合スキルで作った毒消し薬☆をまだいくつか持ってたし、同じ毒の状態異常を治癒するアイテムでリンゴジュース☆もアイテムボックス内にはたくさんあるんで、毒の状態異常になったところでそこまで慌てることもなかったのだが。

 ただ、それ以前にバジリスクは純粋にすべての能力値が高めであり特に敏捷と賢さの値には目をみはるものがあった。一応、ワイルドコックと同じで空を飛ぶことはなかったんだけども。


「地上を高速で駆け回りプレイヤーを確実に毒にして回るとか……悪魔かよ」


 私は戦闘の最中、ついそう言ってしまった。だけど戦闘終了後に図鑑でバジリスクの項目を確認してみたらなんと本当にモンスターの種族が悪魔族であったというのだからもう笑うしかないよな。

 いやだって見た目はそれでもニワトリだったし、こいつ絶対に鳥族だよ。よしんば尻尾の毒蛇部分が本体だと言い張ったしても獣族が妥当なところだ。それなのに悪魔族って。


「……まあ悪魔にも色々いるってことかね」


 そういえば以前に下界での神様のイメージってどんなんだろうかと図書館で調べてみたことがあったな。

 それでその時、神に相対するものの存在として悪魔の図も見かけた気がするけど、たしかその本に載ってた悪魔の図は頭部が完全に山羊やぎだったし。なんであのイメージになったのかは詳しく調べてないし興味もなかったけど。そもそも悪魔なんて実際には存在しない空想上の生物だから、その姿がどうであったとしてもなんでもありっちゃありなんだろうな。


 今さっき私はバジリスクはすべての能力値が高めと言ったけど、でもその中でも耐久は低めだったんで私はバジリスクが突撃攻撃で接近してきた時にそれを槌で殴り潰して爆砕してなんとか倒すことができた。

 そしてバジリスクは1体で168ポイントの経験値と84ゴールドというザコモンスターにしては破格の経験値とお金と、ドロップアイテムとしてバジリスクの牙、バジリスクの羽、魔王卵まおうたまごという3種類の素材アイテムを落とした。魔王卵はなんか黒い卵だったよ。

 でもこのアイテムがあるっていうことはこのゲーム内にも魔王とかいるの?

 もしかして、バジリスクって魔王が飼ってるペット的な扱いのモンスターだったりするのかな。

 それでそのバジリスクの野生での主な生息地がこの洞窟っていう。


「そういや、この隠しダンジョンの中で初めて出会ったモンスターとかも、この先の階層には普通に出現するんだろうか?」


 私はまだ第3階層までしか進んでないけど、ポイズンスライムとかは、案外もう次の第4階層で出現してもおかしくはない気もする。いや、第4階層を攻略した後でこのダンジョンに来ていたらまたいくらか私の心持ちも変わっていたに違いない。


 まあ、この毒沼の洞窟ダンジョンの中だけでしか出現しない貴重なモンスターも何体かはいるとも思うけどそれも全部ってことはないだろうし。私は、できればバジリスクとは今後は、つまりこのダンジョン以外ではもう戦いたくなかったんで、できればこのダンジョンの中だけのモンスターであってほしいけども。


 ただね、バジリスクからは倒した時にスキルと魔法を1つずついただいた。

 たまにモンスター倒した時にスキルや魔法が2つ手に入る時あるけど、それは何もそのモンスターが特別に強いってわけでもない気がする。そこに何か法則性や規則性があるのかはわからないけど、私はでも偶然かなとも思っている。私の、倒したモンスターからスキルや魔法をいただく能力の、低確率でおこるラッキーな出来事くらいの認識でもいい気がする。厳密に言うと私の能力ではないんだけどね、それ。


「それで手に入ったのは、まあ1個は毒の息だよな」


 バジリスクから手に入れたもののうち、魔法の方はあの口から出てた毒の息だった。


 〇ポイズンブレス

 無属性の初級攻撃魔法。前方に広範囲に広がる毒の息を吐き出す。毒の息に触れた相手を毒(小)の状態異常にする。

 消費MP:12 リキャストタイム:15秒


 これまで私が手に入れたポイズン系の魔法でいうと、ポイズンの魔法の攻撃範囲を拡大しただけの魔法だったけど、ポイズンミストよりはまだ使えるな。

 相手を毒の状態異常にするなら召喚スキルで召喚できるマダムバタフライの使えるスキル、ポイズンパウダーが攻撃範囲も毒の強さもすべての面において現時点では最強なんだけどね。マダムバタフライを召喚する機会って、たぶんこの先もうないと思うからさ。


「んで、スキルの方は、と……え、マジで?」


 私がバジリスクからいただいたスキルの方を確認した時、いや、実際は新しいスキルを手に入れた時に目の前に開かれた画面にそのスキル名が表示された時すでにわかってはいたんだけども。


 〇毒貫通

 プレイヤーの毒攻撃が相手に命中した際に、相手を毒の状態異常にする確率計算の際に相手の毒耐性の数値を無視して計算を行う。


「なんか急に小難しい説明されてるけど、ようは私の使うポイズンとかも、相手の毒耐性を無視して相手を毒の状態異常にできるようになったってことだよな?」


 それは考えようによってはすごいことだった。

 だってこのスキルがあれば、たとえば体が完全に岩でできてるロックゴーレムとかにも、毒の状態異常にできるってことになるし、いやもっと言うとポイズンスライムとかも毒の状態異常にできるのかな?


 と、私は気になったんでその次からの戦闘でさっそく試してみた結果、私の放ったポイズンの魔法を食らったポイズンスネイルやポイズンリザード、ポイズンバグに毒貫通のスキルをくれた当のバジリスクにさえも毒の状態異常にすることが出来て、そうなるとそれこそもう本当に笑うしかない。

 いや、私は本当に笑っちゃったよ。だって、ねぇ?


「はははははっ。いやいや、これもうさ……相手を毒の状態異常にして後は放置しておけば……ああ、でもそれでも相手のHPをすべて削るまではいかないけども」


 ポイズンやポイズンブレスの魔法で相手がなる毒(小)の状態異常は、10秒が経過する毎に相手の最大HPの3%の数値だけHPダメージを与えるというもの。

 そしてその効果時間は3分、つまり180秒であるからその毒の効果ダメージが発生するのは18回ということになり、3分間で与える総ダメージ量は3(%)×18(回)で54%。

 だから毒(小)の状態異常にしてしまえばその後でプレイヤーが何も攻撃しなかったとしても3分後には相手のHPは半分にまで削られているのだ。


「でもそれでいったんは毒が回復して、その直後にまた毒を浴びせれば」


 私は、たとえどのような強大な相手も6分あれば確実に倒せることになりはしないか?

 もちろん、相手が毒の状態異常を自分で、あるいは自動で治癒するような方法を持っているなら話は別だけど、理論上は私はポイズン2発でどんなモンスターも、たとえボスモンスターであったとしても簡単に倒せることになるのではないか。


「いや、いやいや、さすがにそんな方法で勝つのは……ああ、でもなくはないのかな?」


 だけどそれって結局のところ、他に相手を倒すための有効な方法が何もない場合の本当に本当の最終手段みたいな感じだし、なにより6分間は逃げに徹することになるんで、それは私の美学に反する。

 なんていうか、そういう粘り勝ちみたいのもわからなくはないんだけど、やっぱり格好悪いと思うし。

 ずっと逃げてるのも案外疲れるし、なによりもボス戦とかでどうやったら相手を倒せるのかとかいろいろと考えて、試行錯誤を繰り返すっていう、言わばボス戦の醍醐味だいごみみたいなのが一切なくなるからね、それやっちゃうと。


「そうなるともうこのゲームつまらないよな。だけど、念のために毒貫通のスキルもオフにはしないでおこうか。もうなりふりかまっていられない時とかは、毒効果での粘り勝ちもボスを倒す1つの立派な手段であることに変わりはないから」


 私がこの毒の効果ダメージでの粘り勝ち作戦を実行するのは、さっきも言ったけど本当に他に倒すための手段が思い浮かばなかった時の最終手段だ。

 それまではこれまで通り、普通に戦って勝つための方法が他にもあるなら、私はたとえ確実性が低くてもそっちで勝ちたいと思うし、人によってはそれを馬鹿という人もいるかもしれないけど。これが私の決めたルールだから誰にも文句は言わせないよ。召喚スキルの時と一緒だ。


「ギガントロックゴーレム戦みたいなのはもう2度とごめんだし。できればその手段を使わずに倒せることが望ましい。ある意味で卑怯な、せこい手を使って勝っても私はその勝利を心から喜べないんだよね。それでも勝ちは勝ちなんだけどさ」


 だからこそ召喚スキルや、今回の毒の効果ダメージでの粘り勝ちみたいなのは嫌なんだ。

 正攻法で勝てるなら、私はそっちで勝つほうがいいと思うよ。

 もっとも、ボス戦とかで正攻法で勝てる時って実は少ないのかもしれないけど、それでも最初から正攻法で勝つことを諦めてたんじゃ本当につまんないし。


「ゲームって、やっぱり楽しくないと。もうゲームって呼べない気がするよ」


 私はその言葉を、下界のゲーム制作の仕事をしている人間たち全員に言ってやりたかった。

 いや、実際には言わないけどね。そんなことわざわざ、だって面倒くさいし。


 さて、そんなこんなで私はこの洞窟の地下3階ではバジリスクを見つけたら優先的に倒すことを心がけながらも、時にバジリスクの毒の息で毒の状態異常になり、時にバジリスクの尻尾の毒蛇にかみつかれて毒の状態異常になったりもしながらダンジョン探索を進めていた。


 ……え?、それってバジリスクさえいなければもっと簡単に探索を進められたんじゃないのって?

 いやいや、君はいったい何を言ってるんだ、いまさら。


「その通りだよ!、あーもう!、マジでバジリスクうっとうしいわ!!」


 私はバジリスクに遭遇し、そしてバジリスクに毒の状態異常にさせられる度に心の中にイライラがちょっとずつたまっていき、ついにはそれは爆発した。


「くっそー、毒貫通無効のスキルとかないかな。もしあるなら今すっごい欲しいんだけど」


 毒耐性を無効にする毒貫通のスキル効果を、さらに無効にするスキルとか。

 それもう完全に無効化の無限ループに突入しそうだからさすがにないとは思うけど。

 でももしもあるのだったら今、今だけでいいからそのスキルください。いや、マジで。


「だけど、バジリスクが毒貫通スキル持ってるっていうなら、このダンジョンのボスモンスターも絶対にそれを持ってるって想定でいておいた方がいいよな」


 まだわからないけど、このダンジョンのボスモンスターもきっと毒攻撃をしてくるだろうし、それについては今までのように毒無効のスキルがあるからって言って受け止めたりせず、回避に専念した方がいい。

 毒(中)や毒(大)の状態異常にかかったら致命的だからな。治癒も回復もせずに放っておいたら途中で死ぬから、(中)レベル以上の毒は。


 そして私はバジリスクに苦戦しつつも1時間ほどで地下3階の探索を終えた。

 その結果わかったことはこの毒沼の洞窟は地下3階までで終わりであったこと。

 地下2階最後のビッグポイズンスパイダー×3との戦闘がこのダンジョン内の中ボス戦だったこと。

 さらに今、私のいる部屋から続く最後のルートの先にこのダンジョンのボス部屋があること。

 このボス部屋1個手前の部屋は安全地帯となっており、モンスターは出現も侵入もしてこない。


「材料余ってたんで毒消し薬☆も追加で作っておいたけど、これでいけるかな?」


 このダンジョンには毒消し薬を作るための材料の1つ、ポイズンスパイダーの爪を落とすポイズンスパイダーが途中まで出現してて、もう1つの材料である毒消し草ももともと持っていた分がまだあったんでそれで毒消し薬☆を念のために作っておいたのだ。ダンジョンの安全地帯で調合を行ったのは初めてのことだったけど、まあこれで毒対策については一応大丈夫だと信じたい。

 けれども、果たしてそれでここのボスに勝てるかどうか。

 もしもここのボスが毒貫通だけではなく、たとえば火魔法貫通とか、風魔法貫通とか、すべての攻撃が耐性と無効化スキルを無効にしてダメージを通してくるようなら私はきっと負ける気がするけど。


「そんなこと考えていてもらちが明かないし、ここはもう行くしかない」


 どうせここまできておいて引き返すなどという選択肢はあるわけないから。

 私はまた深呼吸してから最後のルートへと足を進めた。


<第1階層[隠しダンジョン]:毒沼の洞窟:地下3階:ボス部屋>


 その部屋は最初は一切明かりのない暗闇だった。

 しかし私がその部屋に入ってから、背後の通路が落石によって塞がれたような音が聞こえた直後、部屋の壁際にあった松明に火がともり(原理は不明なんだけどさ)室内が明るく照らされた。

 そしてそこには最初からボスが存在していて、どうやら今回はそういう登場演出の仕方だったのだが。


「ああ、終わったな」


 私がいつもこういうボス戦でそのセリフを言うことはもうおなじみのことなのかもしれないけど、今回はそうだな。第1階層の迷宮ダンジョンで迷宮ボスがドラゴンだった時と同じくらいの衝撃から私はそのセリフを言ったんだ。と、私が言うのにもわけがあって。つまりこの毒沼の洞窟のボスとは……


「まさかのドラゴン。しかも3つ首の!」


 そう、それは長い3つの首を持ったドラゴンだったからだ。


 モンスター名、ヒュドラー。

 たしかその名は、第2階層のボスクエスト『草原の守護者』で戦った大猪、エリュマントスと同じく下界のギリシア神話に登場する化け物であり有名なドラゴンの名前だったな。

 エリュマントスと同じく、英雄ヘラクレスが神になるための12の試練のうちの1つが、そのヒュドラーを退治することだったはず。というか、エリュマントスは知らなかった私でもヒュドラーの名前は知っていたんだけど、こっちはRPGとかファンタジー小説とかにもよく名前出てくるからな。


「でもまさかこのゲーム内のここで出現するとは思ってなかったけど」


 体色は全体的に青紫色ないし黒色で、こいつは絶対に毒とか吐いてくるタイプのモンスターだなということは一目瞭然だった。ヒュドラーは猛毒を吐くドラゴンとしても知られている。


 ヒュドラーは、下界の伝承では複数の首を持つ竜、多頭竜として有名なんだけど、その首の数は伝承によってまちまちで統一されていなかった。

 それで今回のヒュドラーは首は3つで胴体部分は1つ、腕と足と翼に関しては一対、尻尾も1つだった。ようするに、第1階層の迷宮ボスであるドラゴンの首の数が3つに増えた上でのカラーリングや細部のデザインを変えただけのモンスター。ただ、それでデザイン手抜きとは言わない。ドラゴンっていうのはたとえ色だけ変えたのだとしても実際に相対すると迫力は十分なんだし。


 そして、私が驚いたのはボスがヒュドラーだったことだけではなかった。

 そのヒュドラーのHPケージが、なんと4つも見えていたことにも驚かされた。

 4つというか、体の4か所にそれぞれ別のHPケージが存在しているのが見えているのだ。

 そのうちの3か所は、ヒュドラーの3つある首に存在し、すべて200%。つまりはHP大ケージで2本分ずつあって、最後の1か所は胴体部分にあった。胴体部分のHPは300%で、首よりも大ケージ1本分だけ多かったのだけど。


「ああー、これたぶんあれだな。胴体のHPを0にすれば勝ちなんだろうけど、まず先に首を全部倒さないと胴体は無敵……みたいなやつかな?」


 おそらくは首が残っているうちは胴体に対しては物理攻撃も魔法攻撃も無効になっているが、あるいは首を無視して先に胴体を攻撃して倒してしまおうとしても首がその攻撃をガードするか、代わりに攻撃を受けるかして胴体を守ったりとかするに違いない。

 私は、まだ戦闘が始まる前の短い時間でそれらのことを予想した。いや、それが予想できるくらいには私もこのゲームのボスモンスターとの戦い方に慣れていたと言ったほうが正しいかもしれない。


「とにかく先に首だな。でも1つの首を集中攻撃して倒しても、時間経過で後で復活するかもしれないし、そうなったら面倒だから……できれば3つの首をほぼ同時に倒せると確実か」


 このことについては、この前のウロボロス戦の時にリリアちゃんが分離していた2体のウロボロスのうち片方だけを先に倒しても、もう片方が生き残っていれば時間が経てば先に倒したほうのウロボロスが復活してしまうんじゃないかって言って、それで2体のウロボロスに同時に止めをさしたことで私は学んだ。

 もちろん、ウロボロスも今回のヒュドラーも、先に倒した方、部分が後から復活するという確証はどこにもなかったんだけど、まあそれでも復活されるのは本当に面倒だからね。


「「「グギャォォォォォォゥ~!!」」」


 ヒュドラーの3つ首がすべて私をとらえたまますべての頭がそう叫んだところで戦闘が開始された。

 それでまず先に動いたのはヒュドラーの方だった。ヒュドラーは3つある頭の口からちょっと大きめのサイズのファイアーボールを放ってきたのだが、3つ同時ではなく1つずつ3連続で放ってきた。

 そのファイアーボールは飛んでくる速度こそそこまで速くはなく、むしろちょっとゆっくりだったんだけど私がそれを回避したところ、地面に着弾したそのファイアーボールはそこで爆発して着弾地点の周囲に火の粉をまき散らした。


「ああ、ロックストライクの火属性版かな」


 大きな岩の塊を放ち、何かにぶつかると破裂して小さな石の破片を周囲にまき散らして広範囲を攻撃する土属性の魔法、ロックストライクを火属性に変えた魔法といったところか。

 たしかに1発の攻撃範囲は広く、それが3発もあれば極めて広範囲を攻撃できるのだろうが。攻撃速度が遅いんで動き回っていればまず食らわない。


「アイスハンマー!」


 私はファイアーボールをすべてかわした後、反撃でヒュドラーの3つ首の1つ、首Aに対してアイスハンマーの一撃を叩き込んだ。

 第1階層の迷宮ボスのドラゴンは氷属性が弱点で、竜は寒さに弱いって伝承があるから私もヒュドラーは氷属性が弱点なのかもと思ってのことだったのだけど、どうやらそれは正解だったようで。

 その一撃によって首AのHPケージは50%も削られて残りは150%。


「おっと、弱点だったのもありそうだけど。首は耐久そこまで高くないのか?」


 ダンジョンのボスモンスターにしては能力値が低めかなとも思ったんだけど、でも首は3つあるんだし、総合的な体力が多い分防御面はそこまででもないのかもしれない。

 しかし、それは逆に攻撃面に特化してるとも言えるわけで。


「毒来た!」


 続くヒュドラーの反撃はまた3つの首から1つずつ連続で放たれた毒液弾だった。

 それもさっきのファイアーボールと同じで飛んでくる毒液弾の速度は遅かったものの、それを私が回避したところで地面に着弾したその毒液弾は水しぶきならぬ毒しぶきを周囲にまき散らした。それだけならまだ良かったのだが、さらにその毒液はそこから30秒ほど地面に毒沼を残したのだ。

 そういえばビッグポイズンスパイダーの毒液もたしか地面に残るタイプだったけど。


 もしもヒュドラーもバジリスク同様に毒貫通のスキルを持っていたとして、この攻撃後に地面に残った毒沼にもその効果は適応されているのだろうか?


「いいや、後から攻撃が激化する前に今、調べておこう」


 私はそう言うとその地面に残った毒沼に入ってみた。

 するとその毒沼に対しては私の毒無効のスキルがちゃんと適応されたのか私は毒の状態異常にはならなかったので、地面に落ちる前の毒液弾さえ回避すればいいのか。


「いや、待てよ。そもそもヒュドラーも毒貫通のスキルを持ってるって最初から決めつけてたけど、やっぱりそれも確認しておいた方がいいな」


 そしてその後の戦いで次にヒュドラーが毒液弾を放ってきた時、私は1発だけわざとそれを食らってみたら見事に毒の状態異常をもらいましたとさ。しかも(中)レベルの!

 私はそれで慌てていったんヒュドラーから距離を置くとすばやくアイテムボックスの中から毒消し薬☆を取り出して一気に飲み干し、その毒を治癒させると言った。


「こんちくしょう!」


 いやまあ、これでヒュドラーの毒攻撃は絶対に回避しなきゃいけないものだとわかっただけでも意味はあったんだけどね。ほんと、毒貫通無効のスキルが欲しくなったわ。ないんだろうけど。


<モンスター辞典>

〇バジリスク

悪魔族。緑の羽に紫色のトサカ、尻尾には赤い毒蛇がくっついてる見た目はニワトリのモンスター。

第3階層の鉱山ダンジョンでワイルドコックを見たことのあるプレイヤーは、バジリスクはその強化版のモンスターなのかと思いがちだが実はまったく別種のモンスターである。

口から広範囲に広がる毒の息を吐き、さらに毒貫通のスキル持ちであるためその毒の息はプレイヤーの装備・スキル・魔法の効果によって上昇している毒耐性を無視して毒の状態異常にしてくる。

さらに敏捷の値が高く、地上を高速で駆け回るその姿はまさに悪魔か死神か。

およそ毒攻撃を行うモンスターの中ではゲーム内でもトップクラスのやばさである。

弱点は雷属性。土属性と闇属性に耐性あり、毒・麻痺・眠りが無効である。

ドロップ:バジリスクの羽、バジリスクの牙、魔王卵


※ヒュドラーについては次回の後書きコーナーにて紹介。

※ちなみに筆者は当初、バジリスクは毒沼の洞窟ダンジョンの中ボスモンスターにしようかとも思っていましたが、あえてザコモンスターにしました。理由は、ただの嫌がらせです。


次回、ヒュドラー討伐戦。

1つのRPGのラスボス戦並の展開に玲愛は驚愕する!?

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