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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
164/171

ニートな女神と初めての無効

完璧なんて存在しない。無敵なんて存在しない。

……ということが発覚する話。

 この洞窟内にもダンジョン特有のトラップがしかけられていた。

 迷宮内部にもあった落とし穴(下は毒液)と、数は少なかったけどモンスターゲート。

 そしてこのダンジョンで新たに仕掛けられていたものとして落とし穴の逆、つまりは特定の地面を踏んだらプレイヤーの頭上から毒液が降ってくるというトラップもしかけられていたのだけど、まあ私はその毒液を被っても毒の状態異常にはならない。ただ、なんかドロドロした液体をぶっかけられたっていう気持ち悪さは何度経験してもぬぐえなかったけども。


 私がこの隠しダンジョンに足を踏み入れてから洞窟の地下2階へ降りるころまでに、私のレベルは2つほど上がっていた。この隠しダンジョンは1回の戦闘で出現するモンスターも多く、モンスター1体あたりの経験値もそこそこ良かったんで実はレベル上げにはもってこいのダンジョンだったのかもしれない。


 レベル38


 HP:285/285 MP:194/194


 STR:84

 VIT:84

 AGI:79

 INT:75

 DEX:37

 LUK:36


 まだ使っていないスキルポイント:95ポイント


 あと2レベル上がって40レベルになったら、5の倍数のレベルの時はスキルポイントが5ポイント手に入るんだからそれで使っていないスキルポイントは102ポイント、3桁になる。

 毎度毎度のように私はそのポイントはなにか1つの能力値にすべてつぎこんだらもう最強になれるんじゃないかって考えが頭をよぎるのだが、使わない使わない。

 あと、それともう1つ重要なお知らせとして、洞窟の地下1階に降りて割とすぐの戦闘終了後に私の今の武器装備のスキル、槌術のレベルがⅡに上がった。

 それで私はようやく槌という武器の技、武器スキルを4つほど覚えたのだけど。


<スキルレベルが上がりました>

 槌術Ⅰ→槌術Ⅱ


<槌術Ⅱで使用可能なスキル>

 ・アーマーブレイク

 ・ファイアーハンマー

 ・ウィンドハンマー

 ・アイスハンマー


 まあ1つずつ紹介していこうか。


 ①アーマーブレイク

 無属性の物理攻撃。槌で殴った相手の耐久を20%低下させる。耐久低下の効果時間は3分。効果の重ねかけは不可。

 消費MP:5 リキャストタイム:5秒


 ②ファイアーハンマー

 火属性の物理攻撃。炎をまとった槌で敵を殴りつける。

 消費MP:3 リキャストタイム:5秒


 ③ウィンドハンマー

 風属性の物理攻撃。風をまとった槌で敵を殴りつける。

 消費MP:3 リキャストタイム:5秒


 ④アイスハンマー

 氷属性の物理攻撃。冷気をまとった槌で敵を殴りつける。

 消費MP:3 リキャストタイム:5秒


 ②から④までの3つについては説明しなくてもいいだろう。

 いつもと同じ、それぞれの属性の物理攻撃というだけの話だ。

 槌の武器スキルとして重要なのは①のスキルだろう。

 やはり武器スキルは武器によって違いがあり、初期武器を何にするのかということはその意味でも重要な選択だったのだ。まあ、後から初期武器で選ばなかった武器のスキルも覚えられるんだけどさ。


 たとえば片手剣の場合は、2段斬りなどの連続攻撃で敵に大きなダメージを与えること。

 たとえば短剣の場合は、ポイズンダガーやパラライズダガーなどで敵を状態異常にすること。

 そして槌の場合は、アーマーブレイクのように攻撃した相手の能力値を下げる技を覚えられることがその武器の特徴の1つなんだろう。

 きっと槌術がⅢやⅣに上がった時には、耐久以外の何らかの能力値を下げる技か、あるいは耐久をより大きく低下させる技が覚えられるんじゃないだろうか。


「でもアーマーブレイクは使えるな。耐久が高い敵でもこの技使えば、もともと槌は耐久が高い敵にも物理攻撃でダメージ与えたい人向けの武器なのかもしれないけど、これで大体のモンスターは殴って倒せるようになるだろう。ゴーストやなんかを除けば」


 もっともダンジョンのボスモンスターなどは能力低下の効果に対しても耐性か、あるいは私の装備中のギガントロックシリーズの装備の特殊効果みたいに完全に能力低下の効果を無効化するとか、普通に備わってるんだろうけど。まあそれでも効くやつもいるだろうしね。

 それにそれ以外のザコモンスターであれば、耐久の高さが売りのモンスターでもアーマーブレイクを使えばその後は倒しやすくなる。……耐久の高いモンスターは魔法攻撃で倒しちゃった方が早く倒せるんだろうけどもね。


 ちなみに、私の装備中の武器であるギガントロックハンマーは槌で敵を殴った際に、爆発して殴った敵に火属性の魔法攻撃ダメージを追加で与える効果があるが、これは通常攻撃だけではなく武器スキルを使用した際にも発動する。

 なのでたとえばファイアーハンマーのスキルを使って敵を殴ったら、まず敵は火属性の物理攻撃によってダメージを受け、追加で火属性の魔法攻撃ダメージも受けることになるという、もう火属性が弱点であるモンスターであればそれでどんなモンスターも確実に一撃必殺できそうな凶悪なコンボ技が完成した。

 武器スキルと装備している武器の特殊効果を組み合わせたという珍しいタイプのコンボ技だな。


「ギガントロックハンマーがますます恐ろしい武器になっちゃったよ。ああ、でもこれ。私が次に武器変えた時にリリムちゃんに上げるって約束しちゃったんだよなぁ」


 リリムちゃんも使用武器は槌で、だから槌術のスキルはもう持っていて。当然のようにスキルレベルも今の段階でⅡかⅢだろうし、私が次に武器を変更する時までにはⅣあたりまで上がっている可能性もある。

 それでこの前の『円環の蛇』クエストの最中に、私は次に私が武器を変えた時には使わなくなったこのギガントロックハンマーはリリムちゃんに上げるって約束しちゃってたんだよね。

 うーん、まあその時もこれを手に入れたリリムちゃんが武器のあまりの強さに浮かれてしまうんじゃないかとか、ちょっと心配にもなったんだけど。もしそれで暴走するようならきっと妹のリリアちゃんが止めてくれるはずだから、たぶん大丈夫だろう。


 さて、それで私は洞窟に足を踏み入れて2時間足らずで地下1階部分のマッピングを終えた。そして見つけた地下2階へと下りる階段を下りて、私は毒沼の洞窟の地下2階へとやってきた。

 この洞窟が迷宮ダンジョンと同じような構造なのであれば、地下2階は地下1階よりは狭く造られているはずだけど、ここは天然の洞窟っぽいダンジョンだし、逆パターンも十分ありえる。

 つまり地下に下りるほどマップは広く複雑になっている可能性もあるので、私はもしそうなのであれば今日1日でダンジョンのすべてを攻略しないで、途中で引き返して続きはまた明日以降やることも視野に入れ始めていた。

 しかし地下2階の探索を進める中で、どうやら私の想像は杞憂きゆうだったみたいで、地下2階は地下1階よりも広くはなく、迷宮ダンジョンと同じように下の階へいくほどマップ自体は狭くなっているのだということがわかり、私はひとまずほっとした。


 だけども迷宮ダンジョンと同じだったのはマップの広さだけではなく、もちろん階を移動したことで出現モンスターにも変化があったわけで。


 まず、ゴブリンガードが出現しなくなった。ついでにビッグバッドも消えた。

 代わりに残ったゴブリンメイジ、ゴブリンハンマー、ゴブリンダガーの出現率が上がっていたんだろうけどパーティの盾役がいなくなったんでむしろ倒しやすくはなったと思う。

 それ以外では新モンスターが新たに登場することはなく、ポイズンスネークの出現率がちょっとだけ下がって、ポイズンリザードの出現率がちょっとだけ上がっていたかもしれない。

 でもそれよりもなによりも私がほんとに、もうここ最近のゲーム攻略の中でももしかすると1番驚いたかもしれない出来事ががあってさ。


 それは地下2階に下りて最初の大ルームに移動した時のこと。


「……あれ?、ここって安全地帯なの?……部屋に入ったのにモンスターがいな……」


 と、私がもしかしたらまた天井にポイズンリザードがへばりついてるのかもと思って視線を上に上げた直後のできごとだった。時間差で私が部屋に入ってくる時に通った通路への道と、別の部屋へ続く通路への道が落石によって塞がれ、それはいつものモンスターゲートのトラップだったんだけども。

 その大ルームで私はまさかのモンスターと戦闘することになった。

 そいつは天井から降ってきた。私にとってもうよく聞きなれた鳴き声を発しながら。


「え?、うそでしょ!?」


「「ギシャシャァァァァ!!」」


 私がそのモンスターを見て驚いた点は2つある。

 1つは、それが第1階層の森林フィールドのエリアボスであるビッグポイズンスパイダーだったこと。

 そしてもう1つは、そのビッグポイズンスパイダーが2体同時に出現したことだ。


 私は理解したよ。ああ、この隠しダンジョンってやっぱり迷宮ダンジョンに似てるんだなって。

 つまり地下1階での戦闘なんてただのお遊び、本番はどうやらここからのようだった。


「ああ!、もしかしてさ。この隠しダンジョンの入口の扉がビッグポイズンスパイダーの出現する落とし穴の底にあったのって、これも関係してたりする?」


 いや、森林フィールドの落とし穴の底で戦うことになる()()()()()()ビッグポイズンスパイダーが、実は本来はこの洞窟の地下2階で()()()出現するモンスターがなんらかの方法で隠しダンジョンの外に出ちゃった個体、みたいな?

 さすがにビッグポイズンスパイダーがあの人間が1人通れる茶色い木でできた扉を通ってあの場所に移動したわけではないだろうけど。


「ビッグポイズンスパイダーって、エリアボスじゃなかったんだな。ああいや、違うか。もうエリアボスモンスターっていうのはゲーム内のどこかでは普通に出現してもおかしくはないと」


 レッドウルフやビッグホーンラビット、ストーンゴーレムにウェアウルフにクイーンビーなんかも、もしかするとゲーム内のどこかではこうして普通に出現する場所もあるのかもしれない。

 私は、まさかこういう隠しダンジョンの中でなくてもこの先の階層でもそういう、下の階層でエリアボスとして出現したモンスターがフィールドやダンジョンの中で他のザコモンスターと同じように出現する可能性を考えてちょっと怖くなっちゃった。


「はぁ~、でも、そういうこともあるって今わかっただけでもいいか。うん、それじゃあさっさと片付けよう」


 私はそう言うなり戦闘態勢を整えるとそこから3分もかけずに2体のビッグポイズンスパイダーを倒した。

 ちなみに今回のルームではビッグポイズンスパイダー2体と同時に普通のポイズンスパイダーも8体ほど出現したんだけど、そいつらすべてを含めても戦闘終了までに3分とちょっとというところか。

 そしてこのルームで倒したビッグポイズンスパイダーも、森林フィールドのエリアボスである個体と同じものをドロップして、私はこれにより耐毒の指輪を合計して8個も手に入れた。

 今日、この隠しダンジョンに入る前にもエリアボス個体のビッグポイズンスパイダーを倒して耐毒の指輪は4つ手に入れてたのでそれも合わせると12個になる。

 それで、ここからがまあ面白い話なんだけどさ。ようはこのルームだけじゃなかったんだよね。


「もしかして地下2階、いや地下3階もあればそうなのかもしれないけど。大きなルームには他にもビッグポイズンスパイダーが出現したりする場所が、あったりして?」


 事実あったんだよ。その後で地下2階の探索を進めていくとね。

 ビッグポイズンスパイダーは大ルームにのみ出現し、1体か2体で出現する。そして2体で出現するところはポイズンスパイダー×8が同時に出現するだけで他の種類のモンスターは出現しない。

 1体で出現した時はポイズンスパイダーが4体出現するのは確定で、あとは他の種類のモンスターがランダムで8体ほど選ばれて出現するようだった。

 そして地下3階へ下りる階段の存在する地下2階最後の大ルームではなんと……


「うわっ!?、3体同時来たぁ~~~~!!」


 ビッグポイズンスパイダーが3体同時に出現し強制戦闘になるという鬼畜仕様。

 これもうね、絶対にプレイヤーをこの先に進ませる気がないよね。


「攻略推奨レベル25とか、嘘も大概にしとけよ。絶対にそれじゃここで確実に詰むって」


 最低でもその10ほど上、レベル35から40くらいは必要な気がする。

 ああ、でも私はもうレベル38っていうか、そうでなくとも毒無効のスキルを持ってさえいればレベル25でもビッグポイズンスパイダー×3には勝てたかもしれないけども。そうでもない普通のプレイヤーたちであれば最大の6人パーティで挑んだにせよ苦戦は免れないだろう。っていうか全滅必死、全員無傷では絶対にいられないに違いない。


「ここってもしかしてこのダンジョンの中ボス戦かな。でも、どっちにしろこのダンジョンのボスがこいつらを相手にするよりもやばい奴っていうのは確定したわけだけど」


 幸いにもビッグポイズンスパイダー3体との戦闘では同時に他のモンスターが出現することはなかったし。でもここのビッグポイズンスパイダーのレベルは30で、森林のエリアボスである個体がレベル12だったんで、攻撃方法とかは同じだけどまあ能力値が高いことで。

 だからもちろんのこと森林のエリアボス個体のやつほど簡単には倒せなくて、途中で何度も天井に避難されて部下のポイズンスパイダーを召喚しての時間稼ぎを食らって。まあそれでも3体全部倒すのに10分はかからなかったんだけどね。すっごいイライラさせられたよ。


「それで……あーあ、アイテムボックスに耐毒の指輪が72個もあるし」


 私は戦闘終了後、ドロップアイテムの回収を終えた後でそうつぶやいた。

 始まりの街の隠れた名店のあのおじいさん、これを1度に全部売ったらあまりの驚きでショック死しちゃうんじゃないか?、あるいはお金がなくて買い取り拒否されるかもしれない。まあ、拒否されるならされるでそれはある意味貴重な経験というか、後にプレイヤー間で語り継がれる私伝説の1ページになるんだろうから、それはちょっと面白そうだけど。……面白そうだけどやっぱりちょっと恥ずかしいかも。


 私は戦闘後にその部屋で少しの休憩をとった後で地下2階から地下3階へと続く階段を下りた。

 ちなみに地下2階の探索は大ルームでのビッグポイズンスパイダーとの戦闘が案外早く終わったこともあってか、1時間半程度で終わったんだけど。

 森で2時間、地下1階で2時間、地下2階で1時間半だとしておおよそこのダンジョンの攻略に5時間半くらいかかっているのんだけど私は不思議とそこまで疲れていなかった。

 なんだろう、ここまできたらもう勢いで最後まで行ってやるぞっていう気合いか何か、たぶん、ボス倒してダンジョン出て、街に帰り着いたあたりでそこまでの疲労が一気に襲い掛かってくるんだろうけど、それは迷宮攻略の時も同じだしね。でもこの隠しダンジョン、いつもの迷宮攻略の数倍は難易度高いっていうか、10階層あたりの迷宮を攻略させられてる気分なんだよね。


「地下3階で終わってほしいけど、どうかな」


 迷宮ダンジョンと違って隠しダンジョンはダンジョンの内容も広さも事前情報ほぼゼロで挑むことになるからな。ゴール地点の見えないマラソンと、ゴール地点が見えるマラソンでは同じ長さを走るにしてもゴール地点が見えてる方が早くゴールできるっていうしね。

 やっぱりどこまで続いているのかわからないっていうのは人間の感じる恐怖の中でもけっこう上位のものなんじゃないかな。まあ私は神だけども。


 それで、でも実際に下りてみた地下3階は地下2階よりも全体のマップが狭くなってたこともあってか、予想してたよりは楽に進めたんだ。

 大ルームでビッグポイズンスパイダーが出現することはなくなったし、普通のポイズンスパイダーも完全に出現しなくなった。ついでにビッグポイズンスライムも出現しなくなった。


 なんだけども!、この地下3階でまた新しいモンスターが出現したんだよね。しかも2種類。

 私はその2体のモンスターと遭遇し戦った上で、本当にどうかしてると思ったよ。


「え、なに、隠しダンジョンっていうのはゲーム制作サイドの人間がなんかこう、日ごろの仕事でたまった鬱憤うっぷんとかをプレイヤーたちにぶつけるためだけに作ったの?」


 この私が思わずそう叫びたくなってしまうほどの強さ、いや、酷さか。

 『プレイヤーの腕試し、自分の実力に自信のあるプレイヤーは挑戦してみれば?』の域を完全に超えている。完全に、プレイヤーイジメをしたいがために作ったに違いない。そう思ったんだよ。


 プレイヤーイジメ用の新モンスター① ポイズンバグ


 第3階層のダンジョン、鉱山の地上で出現したフレイムバグの強化版のモンスター。

 フレイムバグは赤い下地(羽の大部分の色)に黒い斑点模様という一般的なテントウムシが炎上してるモンスターだったのに対し、ポイズンバグはまず下地の色が紫色になっていた。斑点模様は黒のままで、それ以外の部分も色の変化はない、まあいつものデザイン手抜きモンスターだったんだけど。

 ポイズンバグは体は炎上していないが、常に紫色の毒の霧みたいなものを体から噴出させていた。

 もちろんその霧にに触れたらプレイヤーは確実に毒の状態異常になるだろうからこいつへの物理攻撃は自殺行為に等しい。だけどもこいつは敏捷と賢さの値が高く、魔法攻撃の効き目が悪いときている。


「もうなにがなんでもプレイヤーを毒にして苦しめたいのかよ」


 ただし、ポイズンバグは攻撃方法が体当たり攻撃のみであるため、毒の状態異常になるのを覚悟の上で物理攻撃によって倒すか(耐久は低めだった。)、それとも毒になりたくないプレイヤーはMPを消費して魔法攻撃で倒すか。決して絶対に倒せないとかいうモンスターではないけど、ちょっとプレイヤーを悩ませるという点で嫌なモンスターだよね。


 そして倒したら魔法を1ついただいた。


 〇ポイズンミスト

 無属性の初級攻撃魔法。プレイヤーを中心に半径2メートルの範囲に毒の霧を発生させる。毒の霧は発生した場所で10秒間とどまり、触れた相手を毒(微小)の状態異常にする。

 消費MP:9 リキャストタイム:14秒


 ……うん、正直言って効果は微妙だったんだけども。

 まず効果範囲が狭いし、出しても10秒で消えちゃうし、毒にしても(微小)っていう。

 これならまだ普通にポイズンの魔法の方が使い道がある気がしたよ。


 プレイヤーイジメ用の新モンスター② バジリスク


 私は断言する。このバジリスクというモンスターこそ、間違いなくこの隠しダンジョン内で出現するモンスターの中でも最強のモンスターだったと。


「うん?、なんだろうあのモンスター……大きめの、ワイルドコックかな?」


 そのモンスターの見た目は、正面からみたらそんな感じだった。

 ポイズンバグと同じく第3階層のダンジョン、鉱山に出現したニワトリのモンスター、ワイルドコック。

 ニワトリの白い羽部分は濃い緑色、目の周りとトサカ部分は赤から紫色、それに黄色いくちばしというカラーリングもけっこうきつめだったんだけどね。

 第2階層の迷宮のバトルボアや、第3階層の渓谷フィールドのレッドキャップみたいに、そいつはプレイヤーを確実に葬り去るためのモンスターだったんだよ。


 ……実は私、前からちょっとだけ考えてたことがあったんだよね。

 それはこのゲームを開始してすぐのこと、ブルースライムを倒して手に入れた水魔法耐性(微小)がスキル成長を繰り返した末に水魔法無効に進化した時と、同じく第1階層で李ちゃんとゲーム内で初めての決闘をした時に、李ちゃんがこっちの耐久の値を無視してダメージを与えてくる貫通攻撃をしてきた時に、それぞれちょっとずつ思ったことなんだ。

 その時はほんとに、ちょっと頭の中をよぎったくらいの嫌な懸念けねんだったんだけども。


 もしかして、このゲーム内にはスキルの効果を無視して攻撃を通してくるモンスターや、そういう技や魔法も存在しているのでは?


 そしてその答えが今出たのだ。答えは、あった。


「え?……ええぇぇぇぇ!?」


 バジリスクは口から毒の息を吐き出し、自分の前方に広範囲に攻撃してくる。

 だけども私はそれもどうせ毒攻撃だと思って無視してその毒の息(息っていうか煙)の中に突っ込んで行ったんだけど、そうしたら。


「毒の状態異常になってる!?、どうして!?」


 もちろん、私はその戦闘の前に毒無効のスキルをオフしたわけではなかったし、戦闘後にも一応確認してみたらちゃんとスキルはオンの状態のままだった。

 つまりそれがどういうことを表しているのかというと答えは単純で。


 バジリスクには()()()()()()()()()()なんだ。


「……おいおい、マジかよ」


 バジリスクの毒の息は、どうやらプレイヤーを毒(小)の状態異常にするものだったようだけど、そんなことはもうこの際どうでもよかった。

 ただ1つ、私が今まで割と信頼していた無効化スキルの恩恵も絶対ではないということが証明されたことがショックで。しかもそれで、たぶん水魔法無効のスキルとかも、それを無視してプレイヤーにダメージを通してくる水属性の魔法攻撃も絶対にあるに違いないのだ、このゲームには。


 さっきさ、ダンジョン内でビッグポイズンスパイダーが出現したことがここ最近のダンジョン攻略の中で一番驚いたかもしれない出来事だったって私言ったと思うんだけど。これで二番目も更新されたわ。

 無効化スキルを無効とか、私にとっては悪夢もいいとこだよ。


<モンスター辞典>

〇ポイズンスネイル

水族。ナメクジであるポイズンスラッガーが巻き貝を背負ってカタツムリとなったモンスター。

攻撃方法はポイズンスラッガーと同じだが、殻にこもることで物理攻撃の一切を無効にするという技を使ってくる。ただし、この防御態勢の時は一切の攻撃もしてこず、また魔法攻撃ダメージは普通に通り、魔法攻撃でダメージを受けるとまたすぐに殻から出てくるため実はポイズンスラッガーよりも倒しやすい可能性があるのだが、一応は強化版のモンスターである。

ドロップ:ポイズンスラッガーの粘液、茶色い巻き貝


〇ポイズンリザード

獣族。ブルーリザードの強化版であり、毒液を放つ。また、舌でのつつき攻撃にもプレイヤーは食らうと一定確率で毒(微小)の状態異常になるため注意が必要。

ブルーリザードと同じように壁や天井にも移動するためさながら毒液を発射する移動砲台である。天井にへばりついてるのをプレイヤーはよく見落として毒液の餌食になるという。

ドロップ:毒トカゲのしっぽ(本編未記載)


〇ポイズンバグ

昆虫族。羽の色が紫色に黒い斑点模様のテントウムシのモンスター。

フレイムバグとは違い、体から噴き出しているのは炎ではなく毒性の霧であり、それを常に体内から出しているために直接の物理攻撃をしかけたプレイヤーはもれなく毒の状態異常になるという厄介な性質を持つ。さらに敏捷と賢さが高いため魔法攻撃でも倒しにくいという防御面には隙はない。

ただし、攻撃方法は体当たりだけで力の値は低いので時間をかければ倒せなくはないレベル。

ちなみにフレイムバグの強化版のモンスターだが、弱点は火属性である。

ドロップ:毒霧虫どくむちゅうの足(本編未記載)


※バジリスクについては次回の後書きコーナーにて紹介


次回、玲愛はついに毒沼の洞窟のボスへと挑む。

このボスは過去最強レベルのモンスターなので、もしかしたら玲愛も死ぬかもしれない。

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