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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
隠しダンジョンへの挑戦―SECRET―
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外伝2―ニートな女神の知らない戦い―

新年明けましておめでとうございます。

って、もう年が明けてから2週間以上経ってしまったのですが。

『ニートな女神がログインしました。』の物語、更新再開となります。

 これはゴッドワールド・オンラインの日本(北海道)サーバーで、玲愛がリリムとリリアと共に第3階層の崖フィールドのエリアボス、ビッグホークと戦っていた時の話である。


<第50階層:王の都アルクラウン:ギルドホーム1階:会議室>


 その日はゴッドワールド・オンラインに存在するプレイヤーギルド『時節の剣客団』の幹部集会の日だった。場所は第50階層にある1番大きな街にあるギルドホームの大会議室。


 ギルドホームというのはゲーム内の第26階層から新たに街に登場する施設だ。

 複数人のプレイヤーが自由に出入りすることの可能な大きなプレイヤーホームのようなもので、プレイヤーホームと違って建物を購入するのではなく、あらかじめ利用時間、利用日数などを指定してその分のお金を支払うことで建物内の部屋や設備が利用可能となるプレイヤーギルドの仮の拠点のようなものだ。

 プレイヤー個人ではなく、プレイヤーの所属するチームで利用するためそのチームに所属しているプレイヤーであれば誰でも利用することができるのである。


 さて、プレイヤーギルド『時節の剣客団』は目下のところ構成人数が216人のギルドで、規模でいえば中規模なギルドだが構成員がどれも実力派揃いのプレイヤーであることで有名なギルドだ。

 その中でもギルドリーダーと、幹部とされる12人のプレイヤーたちの強さは折り紙付きであり、個々人の武勇伝もかなりあって、構成員同士の仲も比較的良好で団結力がある。

 ギルドとしての最高到達階層は現在第56階層であるが、わざわざ第50階層の街のギルドホームで幹部集会を開くのは初めてこのギルドホームを利用した時に、以降も何か集会を開く際はこの街のギルドホームに集まるようにしようとメンバーの誰かが言い、その案が賛成多数で可決された結果であった。


 その日開かれた集会に参加したのはギルドリーダーと幹部メンバー12人の合わせて13人中8人。

 不参加の5人はリアルでの仕事などの都合でログインできなかったのだが、むしろ13人全員が参加することなど1年に1度あるかどうかの出来事であり、その時参加していなかったメンバーにも後でちゃんと集会で話し合って決めたことなどが伝えられるため人数がそろっていなくても特に問題はなかった。

(ただし、参加人数が6人以下の場合は日取りを改めることもあるが。)


 集会自体は30分ほどで終わった。

 その日の議題は第56階層の攻略についての話と、階層の迷宮に挑む日程の仮決め、メンバー間の情報交換などが主であり、それらは滞りなく行われた。

 そして集会が終わった後、幹部メンバーの1人である五条ごじょう皐月さつきは会議室に居残って同じ幹部メンバーの中でもとりわけ仲の良い2人、四谷よつや卯月うづき霜月しもつき景士けいしとしばしの談笑を楽しんでいたのだが。


「あれ、リーダー?」


 そこで会議室に、さきほど解散してすぐにこの部屋を出て行ったギルドリーダー、歳時さいじめぐるが戻ってきた。


「おう、皐月。ここにいたか」


 巡は会議室に入ってくるなり目当ての人物、皐月を見つけると、ちょっと個別に話があるから後で執務室まで来てくれと皐月に言い、すぐにきびすを返して会議室を出て行ってしまった。


「え、なんだろう」


「珍しいね。さっちゃんだけが呼び出しって。さっちゃん何かやらかしたの?」


 皐月はそんな卯月の言葉に首を横に振ると、とにかくリーダーに呼ばれたわけなのでそこで2人にいったん別れを告げると会議室を出てからギルドホーム内の執務室へと向かった。

 重厚な木製の両開き扉の前までくると皐月はそこで呼吸を整え、扉をノックした。


「誰だ?」


「皐月です」


「おお、入っていいぞ」


「失礼します」


 扉越しに入室の許可を得た皐月はそれで執務室の扉を開けると、中にいた人物、巡に対して一礼してから執務室の中に入り扉を閉めた。

 巡はというと、執務室の奥にある自分のデスクに座って何やら書類仕事をしていたようだったが、皐月が部屋に入ってくるとそれまで動かしていた手を止め、皐月の方を見た。


 歳時巡は、見た目は40歳前半くらいの男性プレイヤーであり、渋いおっさんだ。

 時代劇マニアであり、それで扱う武器もギルドの幹部メンバーたちと同じく二刀流であり、職業ももれなく侍であったが、物腰は柔らかく、たまに冗談も言う楽天家でもあった。

 しかし戦闘においてはその実力は相当なものであり、前に1度、皐月と卯月と景士の3人対巡1人で決闘した時も、皐月たちの方が圧倒されて負けてしまったくらい。

 つまり、このゲーム内において真正の化け物プレイヤーの一角であることは間違いない。


 皐月は、そんな巡に個別に呼び出しを受けたことで内心とても不安だった。

 いや、もちろん今までもそういうことが1度もなかったわけではないのであるが。


「リーダー、それで私に話ってなんですか?」


 皐月はあくまで平静を装いつつ巡に言葉を投げかけた。


「うん。まあ大した話じゃない。ただちょっと確認をしておこうと思ってな」


「……はぁ。確認、ですか?」


 皐月はそう言いながらも、頭の中でここ最近自分の身の回りで起きたことを1つ1つ思い浮かべていった。そうして皐月はそこで、もしかしてあのことかなと1つの出来事を思い出していたのだが。


「ああ、確認だ。いや、これは昨日ここで二葉ふたばから聞いた話なんだがな」


 巡がそう言った瞬間、一瞬だが皐月は顔を曇らせた。

 二葉というのは皐月や卯月たちと同じくギルドの幹部メンバーの1人、如月きさらぎ二葉ふたばのことである。二葉は、他のメンバーとは特にそういったこともないのになぜか皐月だけは目の敵にしている節があり、ことあるごとに皐月に突っかかってくるのだ。

 皐月の方は特に二葉に何かをしたという記憶もないし、皐月は二葉のことが嫌いではないので、一方的に敵視されているだけなのだが。だから皐月は二葉に対してはやや苦手意識を持っていた。


「皐月、お前。第2階層で新人プレイヤーとバトルして負けかけたんだって?」


「…………はぁ!?、あ、すみません」


 皐月は巡の今の問いかけを聞いて激昂しかけた自分を少々恥じた。

 二葉のやつ、事実を悪意ある改変を加えた上でリーダーに告げ口しやがったなと、内心では怒りがふつふつとこみあげてはいたが、皐月はなんとか心を落ち着かせると小さなため息を1つ吐いた。


「お、その反応からするとやっぱりそれはデマだったか?」


「あ、いえ。えっとですね。第2階層で新人プレイヤーと手合わせしたのは事実ですけど、でも負けかけてなんていませんから!」


 皐月はややキレ気味にそう言うと、そこでまたため息を吐いた。

 それから皐月はことの経緯を巡に一からすべて語って聞かせた。

 第2階層で興味深い新人プレイヤーと出会ったこと、そのプレイヤーと1度手合わせしたこと。

 もちろん、その中で自分が一太刀だけど攻撃を受けてしまったことなど、嘘偽りや脚色はなしでありのままを聞かせた。すると巡も話の途中からは興味深そうに顎を手でさすった。


「……ほう。ハンデ有りとはいえ第2階層を攻略中のプレイヤーがお前に一太刀浴びせた、ねぇ」


「……あの、言っておきますけど別に私は油断なんてしてなかったですからね」


「いやいや、別にお前の話を疑っちゃいないよ。皐月は嘘とか滅多につかないしな。ただ、それが事実だとするとその新人は……他に何か気づいたこととかは?」


「気づいたことって、戦った相手の子についてってことですか?」


「今の話の流れで他に何があるんだよ」


 皐月はそんな巡の言葉を聞き流しながら、巡に自分が第2階層で戦った新人プレイヤー、玲愛のことについてどこまで話していいものか少しだけ悩んだ。

 このゲーム内、たとえ親しい間柄のプレイヤーであっても他人のプレイヤーの情報についてそのプレイヤーの許可なくべらべらと話すことはやはり気が引ける部分があるから。

 さらに皐月は玲愛の情報について一部に関しては、この前酒場で卯月と景士の2人には少しだけ話してしまい、そのせいでなんと2人は第3階層まで足を運んで玲愛に直接に会ったばかりか、3人でのバトルロイヤル形式の決闘もしたとさっき集会の後で2人から聞かされ。

 玲愛にはちょっと悪いことしただろうかと思っていたところだったのだ。


「……いえ、特には。ただ、第2階層を攻略中にしてはレベルが高めだなと思いましたけど、ソロプレイヤーならむしろそのくらいあってもおかしくはないとも思いましたし。後は、まあその時点でかなりの数のスキルと魔法を持ってたことはちょっと気になりましたけど」


「そのことについて、本人に何か聞かなかったのか?」


「聞くわけないじゃないですか、マナー違反ですよ。それにたぶん、それはあの子の神様の恩恵の効果に関係あるんじゃないかなって思ったので」


「ふーん、そっか」


 巡は皐月の話を聞き終えるとしばしの間、考え事をするように腕を組んだ。

 そしてその間に皐月の方も少しだけ気になったことがあったので、それについて考えていた。


「(ちょっと待って。っていうかその話、二葉は誰から聞いたわけ?)」


 皐月が第2階層で玲愛と決闘した話については、皐月はもちろん二葉には直接話してはいない。

 そしてもちろん、二葉が玲愛からその話を聞いたという可能性もありえないだろう。

 ということは二葉はその話を誰かから又聞きしたのだろうけど。

 皐月がこの話を教えたのは、たった今伝えたばかりの巡を除けば卯月と景士の2人。それと、あとは2人と一緒に飲んでいた時に会話に混ざって来たおっさんプレイヤーが1人いたが。


「(いや、まず間違いなく卯月に違いないわ。もう、後でちょっと締め上げようかしら。)」


 皐月がそんな風に考えていた時だった。

 巡もようやく考え事を終えると、今回の件についての話はこれで終わりだと皐月に告げた。

 なので皐月は、これでもう自分は帰ってもいいのだと思い執務室を後にしようとしたのだが、そこで巡は皐月を呼び止めた。


「あ、待て。皐月」


「はい?、まだ何か私にご用ですか?、決闘の話についてはもう今全部話しましたけど?」


「いや、お前この後何かリアルで用事とかあるのか?」


「はぁ?、いえ、特にないですよ。私はこの後、56階層に戻ってフィールド攻略でもしようかなと思ってたんですけど」


「そうか、それならちょっと俺に付き合ってくれ」


「え?」


「バトルだよ。1本だけでいいからさ」


「ええぇぇぇぇ~!」


 皐月は巡からの決闘バトルの誘いを聞いて、そう叫んだ。


<同:ギルドホーム地下2階:決闘場>


 ゴッドワールド・オンラインというゲームの中では街中は原則として戦闘行為は禁止であり、それにはもちろんプレイヤー間の決闘も含まれる。

 ただし、それには例外もいくつかあって、ギルドホームの地下にある決闘場という施設の室内もそのうちの1つであり、プレイヤー間の決闘を行うことができる。


 皐月は、できることなら巡からの決闘の誘いを断りたかった。

 それは単純に戦ったら自分が負けることは目に見えているというのもあったが、全力で挑んでコテンパンに負けるのはプライドが傷つくという理由もあった。

 しかし、断ったら断ったで巡は子供のようにスネはじめて、皐月はそっちの方が後で面倒なことになるということをすでに経験で知っていたため、結局断ることはできなかった。

 皐月と巡の2人は執務室を出るなりそのままギルドホームの地下にある決闘場に直行した。


「ああ、勘違いするなよ。別に俺はさっきのお前の話を聞いてお前が弱くなったんじゃないのかとか不安になったわけじゃねぇ。これはただの純粋な戦いだ」


「わかってますよ。それで決闘のルールはどうします?」


「ん。いつもので」


「はいはい、いつものですね。あと、今日は本当に1回勝負ですからね。もう何度もボコボコにされるのは嫌ですからね、私」


「わかってるよ、そんなに心配すんなって」


 そんなやりとりをかわしながら決闘は皐月の方から巡に申請する形となった。

『時節の剣客団』では仲間内同士での決闘では主にあるルールが適応されることが多い。

 巡がいつものと言っていたくらいに、メンバー間での決闘はそのルールで行われるのが主流となっているのだ。


 基本ルールは初撃決闘。つまりどちらかが先に有効打(相手にダメージを与える攻撃)を当てた方が勝ちとなるルールで、ようはリアルでの剣道試合に近いルールだ。

 お互いにレベル調整やステータス変更、能力強化アイテムのリセット等のハンデはなし。

 そして、一切の魔法と武器スキル以外のアクティヴスキルは使用不可であり、パッシブスキルもすべて無効というのがいつものルールの全容である。

 つまり使えるものは己の肉体と自分の信じた武器の力のみと、まさに時代劇によくある侍同士の斬りあいにも似た決闘方法だった。

 さらに加えて言うなら、『時節の剣客団』のリーダーと幹部メンバーは全員が二刀流の侍であり、そのことからも決闘はいつも本当に刀での真剣勝負となるわけだが。


 決闘開始前、2人の間の距離はおおよそ30メートル。

 皐月の手には右手に五月雨さみだれという名の刀、左手には村雨むらさめという名の刀が握られているのに対し、巡の手には右手のみに刀を持ち、左手はフリーであった。


「リーダー、一刀いっとうで良いんですか?」


「おうよ。まあ出してないだけで左手にも一応刀は装備してるが、お前が俺にもう1本の刀を使わせることを期待してるぜ?」


「……はぁ、そうですか。それじゃあもう始めますけど準備はいいですか?」


「おう、いつでもいいぜ」


 巡がそう答えたのを聞くなり皐月は決闘開始のボタンを押した。

 そして2人の視界の上に表示された15秒という決闘開始前の準備時間を表す時計が消滅した時、晴れて2人の決闘は開始となった。


 まず先に仕掛けたのは皐月の方だった。

 皐月は巡に向って一気に駆け出しながらも右手に装備していた刀、五月雨を振るった。

 そうすることで皐月の持つ刀の武器スキルの1つ、五月雨斬りが発動した。

 五月雨斬りとは、片手剣術の武器スキルにあるスラッシュのような斬撃を5つ同時に高速で飛ばす技であり、もちろん食らったらダメージが発生する。

 なので皐月の放ったその5つの斬撃のうち1つでも巡の体に命中すれば、その瞬間に決闘は皐月の勝ちとなるのだが。


「(まぁ、そんなことあるわけないんだけど)」


 皐月の読み通り、飛ばした5つの斬撃が巡の体に命中することはなかった。

 巡は高速で飛んでくる斬撃を受け止めなかった。ただ、かわしたのである。

 しかも非常にゆっくりとした動作で、必要最低限の動きでもってすべての斬撃をよけきったのだ。


「(ほうら、やっぱり。相変わらずリーダーの目はどうかしてるわね)」


 これが巡の戦い方であり、強さの秘訣の1つであった。

 巡にはありとあらゆる攻撃の軌道が見えている。それはゲーム内における何らかのスキルの効果などでは決してなく、本人の元々の動体視力と集中力が異常なのである。


「せいやぁぁぁぁぁぁ!!」


 さらに巡にはもう1つの特異な才能があった。

 それがこれ、接近してきた皐月が二刀で持って絶え間なく斬りかかっているというのにも関わらずその刃を目を閉じたままの状態ですべてよけてみせた。

 その能力を一言で言い表すとしたら直感とでも言うべきだろうか、あるいは相手の思考や呼吸、意志、感情などの精細な機微を感じ取ることからくる攻撃の事前の予知。

 皐月はそれを見てやっぱりこの人には今の自分がどう足掻いても勝てないなと思った。


「(でも、だからと言って手は抜かない!)」


 皐月はここにきて至近距離からまた五月雨斬りを放った。

 さっきとは違いほぼゼロ距離からの5つの斬撃を、巡はここで初めて手にした刀で受け止めた。

 ただし、あくまで何のアクティブスキルも使わずに単純に刀の軌道だけを変えて、だ。


「くっ!!」


 それには皐月も、まあ本当はそれも予想はしていたが実際にやられると絶句するしかなかった。

 もう何度となく見たはずなのにいまだに脳が理解することを拒むのだ。こいつは本当に人間か、と。

 そしてそんな皐月に巡は目を開いてこう言った。


「ほう、この前戦ったよりもずいぶん強くなったみたいだな」


「くっ!!、なんですかそれ。嫌みにしか聞こえないんですけど」


「いやいや、本当にそう思ったさ。お前はうちの幹部連中の中でも五本の指に入る実力者だよ」


「……でも、1番ではないんですよね?」


「ああ、まあな」


 皐月は前に巡と戦った時にも聞いたし、後は実際に他の幹部メンバーと戦うことも多くあるのでそこは自分でも十分理解しているところだった。

 たしかに自分は12人いるギルドの幹部メンバーの中では戦闘の腕はかなり上位の実力があるという自負があり、巡が言うようにそれは客観的に見ても事実なのだろう。

 だが、それがわかるからこそ皐月にはわかっていた。自分は決して1番強いわけではないということを。


「それでも、3、4番目くらいですかね?」


「ああ、そんなところだろうな。今の実力なら」


「ちなみに1番は誰ですか?」


「お前、それは言えないよ。もし本人に俺がそう言ってたことばれてもみろ。あいつ絶対に調子に乗るぞ」


「ああ、今のでもう誰かわかりましたよ」


 皐月はそう答えると刀を構えなおした。

 すると巡も笑って刀を構えるとそれから2人の剣戟けんげきが再開された。

 結果から言うと皐月は、最後まで巡に2本目の刀を出させることはできなかった。

 数分間は皐月からの攻撃を巡がまた淡々と捌いていくだけであり、それからようやく巡が攻撃に転じた時、皐月はなすすべもなくその一太刀を受けて、そうして決闘は終わりを迎えたのだった。


「(でもあの子なら、あるいは最初からリーダーに全力を出させることもできたのかしら?)」


 決闘終了後、皐月はそんなことを思っていた。

 12人いる今の幹部メンバーの中でも間違いなく最強であるあの子なら、もしかすると巡にも勝てるのではないかと思った皐月だったが、すぐにそれはないなと思い直した。

 巡は、化け物プレイヤーだから。そう、きっと私たち幹部が12人全員で挑んで勝てる確率は五分五分くらいではないかと皐月は思ったのだ。


「よお、どうする?、もう1本やるか?」


「いえ、やめておきます。っていうか1回勝負ですよねって戦いの前にあれほど確認したじゃないですか!?」


「いやいや、俺はそのつもりだったよ?、でも皐月、お前の方がなんかまだ戦い足りないみたいな顔してやがったんでな。俺でよければ付き合うけど……」


「結構です!!……それに私、この後でちょっとやらなきゃいけないことあるの思い出したんで」


 皐月はそう言うと刀をアイテムボックスに収納してスタスタと決闘場を出ていこうとする。


「おい、なんだよ。やらなきゃいけないことって」


 巡が最後にそう問いかけると皐月はそこでいったん足を止めて巡の方を振り返った。


「ちょっと、お喋りなウサギちゃんに久々におきゅうえにいこうかと思って」


 そう言った皐月の顔はそれはもう満面の笑みであって。

 それを見た巡は思わず身震いしてしまった。ゲーム内には存在しないはずなのに体に鳥肌がたったような気さえした。


「そ、そうか。なら仕方ないな。うん、行っていいぞ」


「ありがとうございます」


 皐月は最後までその笑顔のままで巡に一礼すると、そのまま決闘場を出て行ったのだった。

 そうして後に決闘場に1人残された巡はと言うと、自分も刀をアイテムボックスに収納した後で後ろ手で後頭部を掻きながらこう言った。


「ありゃあ卯月のやつ、また泣かされるな。おー、怖い怖い」


 それから巡も決闘場を後にしたのだったが。

 それにしてもと、巡はさきほど皐月に聞いた話を思い出していた。

 あの皐月に一太刀浴びせたとか、その新人プレイヤーはいったいどんな奴なのか。

 たしかプレイヤー名は玲愛って言って、見た目は女子高生でけっこう可愛い顔立ちだったって皐月は言っていたけど。


「ふーむ、俺もちょっと見にいっちゃおうかな、なんてな。ははははははっ!」


 巡はそう笑いながらもまたギルドホームの執務室へと歩いていく。

 果たしてその言葉が本心からくるものであったのか、はたまた単なる冗談だったのかということについては本人もわかっていなかったに違いない。

 ただそう言ってみただけ。それだけだったのだ。この時は、まだ。


次回からまた本格的に隠しダンジョンに挑戦編がスタートします。

主な内容については第3階層編の最後でお伝えした通りですので。


それと、第2階層編と第3階層編の誤字・脱字チェックと矛盾点の修正などを終了しましたが、まだ筆者の見落としがあるかもしれませんので、もしもこれまでの話を読み返してそれらを発見された場合は感想欄や、誤字報告でお知らせいただけると幸いです。すぐに直します。


それと、前話の第3階層編のまとめ話の最後に、これまでの話で特に重要だと筆者が思った修正箇所を2つほど追記しておきましたので、気になる方はご確認ください。

でもストーリーの大筋には何の影響もない部分なので無視してもらっても問題はないです。


2019年は、できれば週に1話は話を更新していきたいなと考えていますが、そこは筆者の体調とモチベーションによって変化すると思われますので、1日に2話更新したりだとか、10日以上次話の更新が止まる可能性がありますが、そこは予めご了承ください。

そんなわけで今年も『ニートな女神がログインしました。』をよろしくお願いします。


ちなみに筆者は初夢でゾンビに襲われる夢を見ました。どうやら今年はいい年になりそうです。


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