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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての帰還

RPGの情報屋ってけっこうクセの強いキャラが多いよね。

 現実の世界に戻ってきた私はゲーム機を頭から取り外すとそれをベッドの下に置き、そしてそのまま布団を被って眠りについた。

 そうして次に目覚めた時にはちょうどお昼の12時過ぎくらいで、寝たのが午前4時くらいだったからまあぐっすり眠れたことになるのだが。


「うーーーー、ああ。頭が重いし体が痛い」


 その目覚めは最悪だった。

 なんていうか昨日(ってかもう今日だったんだけど)の『円環の蛇』のクエストが思いのほか時間がかかっちゃったこともあって、精神的にも肉体的にも疲れが溜まっていたからな。

 いや、長時間VRゲームやってるとその間はプレイヤーってずっとベッドの上で死体みたいに微動だにしないわけだから、絶対に運動不足がたたるし、この前なんてそれで筋肉痛になったりもした。

 特にウロボロス戦とか、あれも絶対私1人だったら勝てなかったと本当に思うし、正直に言って私があいつの攻略法を見つけられたのは本当に偶然と言うかもう奇跡に近かった。

 それにその前にリリアちゃんがウロボロスの弱点みたいなのに気づいて教えてくれてなかったらそれでも詰んでいた可能性が高いし、分離後、私一人で2体の蛇を同時に相手取って戦うことなど不可能だと思う。クエストを一緒に組んだのがリリムちゃんとリリアちゃんだったからこそ勝てたと言ってもいい。

 それでやっぱり階層の最高難易度のボスクエストっていうのは私ひとりじゃ絶対にクリアできないんだという確信も今回のことで持てるようになった。


「これからはあんまり長いことゲームやった後にはストレッチとかしてから寝ることにしようかな」


 そうしないと本格的に体おかしくしそうで怖い。

 神界にいる神様の肉体は不死だけど、運動不足なら筋肉痛にもなるし、足がつったりすることもある。

 そこらへんは人間と肉体と一緒と言うか、不死であることを除けば基本的に神様の肉体って人間のそれと同じだっていうやつもいるくらいだしな。


「人間はある意味幸せなんだと思うよ。いや、これは人間に限った話だけじゃないか。不死の存在なんて退屈を持て余すだけだし、それで痛覚とかは普通にあるんだもん。むしろ不便でしょうがない」


 ちなみに神様の肉体について容姿はあまり当てにならないことが多い。

 神様は、人間と同じように赤ちゃんの状態からその生を始め、基本的にはそこから20年くらいは人間と同じような感じに体は成長していくそうだが、1度そこまで成長したら後はもうデタラメだ。

 外見が20歳から一気に60歳の老人のように老け込む神もいたり、逆に見た目は退行して子供のような姿になったりと、さすがに性別まで変わったりはしないんだろうけどそれこそ神様ごとに成長の仕方は違うし、だから実は神様には年齢という概念が薄かったりする。それは自分がこの神界に誕生してから経過した時間を現す数値くらいの認識でいるものが大半なのだ。


 それに神界には義務教育とかないから学校とかも別に絶対に行く必要もない。

 ほら、パン屋のヘスティアちゃんとかは生まれてから20年も経ってない成長途中の段階でまだ子供だけども日中でも自分の家のお店の店番してるでしょ。

 でもそれって結構珍しい方で実は9割以上の神様は中学、高校くらいまでは行くって話だけど。もちろん神界の学校にも入学費用とか、授業料とかお金もかかるんだけど。

 ようはさ、それでその子の両親が無職だったりとかして経済的に学校とかに通わせる余裕がなくても別に学校に行くことは強制ではないから構わないよっていうわけ。

 私の家はお父さんがそこそこ有名な学者だったし、お母さんもお父さんと結婚する前は普通に働いていて貯金も結構あったしで、私は高校卒業するまではできたけど。


 学校に通わない場合は学校で習うはずのあれやこれについてはそれ以外のところで、両親に聞くとか家庭教師(を雇うお金があるなら)を雇ったりして、子供を持つ親となる神には自分たちの子供に最低限度の教育を施さなくていけないという掟が神界にはある。

 でもこの最低限度の教育って言葉も、具体的に何をどこまでって決められていないんで実際はその掟もあってないようなものらしいけど。

 そもそも神界にある掟って掟というより心得に近いものが大半で、守ってなくてもそこまで問題になることもないし。中には絶対にやったらダメっていうのもいくつかあるんだけども。それって大半が下界に関することで、神界の中だとそれもあんまり、普段生活してて神界の掟とか意識することないからな。

 そもそも大半の神は神界の掟をすべて把握しているわけでもないし、私もそうだ。

 ほら、下界の人間たちだって自分の住んでる国の法律とか、住んでいる地域のルールとか全員が全員すべてを把握していないでしょ、それと一緒。


「と、そんなことはどうでもいいな」


 とりわけ今はお昼ご飯をどうするかということについて考えないとなのだが。

 その前に充電器にさしっぱなしにしてあったスマホをチェック。するとメールが5件届いていて、4件はまたメルマガと迷惑メールだったけど、1件はまたラケシスからだった。

 メールの内容は、また簡単にまとめるとあれからスクルドはちゃんとラケシスにも連絡を入れたようで、私にスクルドの悩みを聞いてくれてありがとうというお礼と、これからもよろしく頼むというお願いをされた。私はそのメールになんと返信しようか迷ったけど、別にもう返信しなくても良いかと思ってそのままスマホを閉じた。

 スクルドのことについては、もちろん私もできうる限りの協力と言うか、また話を聞くくらいのことであればしてあげるつもりだけど。


「そうだ。それなら今晩スクルドのやつを食事に誘って……ああ、無理か。あいつ視線恐怖症だった。外食とかちょっとハードル高いかな。あのガスマスクとローブつけっぱなしで入れる店があるのかっていうこともあるし」


 私はそれから少し考えて、後で本人に直接今度一緒に食事にいかないかと聞いてみることにした。

 別にメールで聞いてもいいけど、せっかく隣に住んでるんだし、なるべくスクルドとは直接話す機会を多くした方がいい気がするから。


「あー、それで昼飯どうすっかな。……いいや、今日も抜いちゃえ」


 実際そこまで今お腹空いてるわけでもないんだよね。だから夕飯さえ食えばなんとでもなる。

 私もちゃんと3食きちんと食べる日は食べるし、そっちの方が絶対に健康には良いってわかってはいるんだけどね。

 ニート生活が長いと精神面もそうだけどとにかく食生活がめちゃくちゃになりがちだよな、うん。


 そういうわけで私はそれからコップで水を2杯飲んでからシャワーを浴びて、しばらくベッドの上でゴロゴロした後でまたゲーム機を頭に装着して電源を入れた。

 実をいうと今日はもうほとんどゲーム内でやることはなかったからすぐにゲームは切り上げるつもりだったんだけど。


<第3階層:渓谷>


 ゲーム内にログインした私はすぐにグランガンの街を出て渓谷のフィールドへと向かった。

 そこで昨日の夜……じゃなかった、今日の朝に今度確認しようと思っていたあれの性能について確かめておきたかったから。


「召喚:ウロボロス!」


 それはつまり召喚スキルで呼び出せるウロボロスの性能で。

 渓谷に入って少し進んだところ、ちょうどレッドキャップのギリギリ向こうが気づかない手前くらいで私はウロボロスを召喚した。

 すると私の目の前にオレンジ色の魔法陣が浮かびあがり、その魔法陣の中からあのダンジョン内で見たのと同じ、金色と銀色の蛇がお互いの尻尾を噛みあって輪っかになっている姿のウロボロスが現れた。

 そして私はレッドキャップに接近し、私に気づいたレッドキャップもいつものようにすごく果敢に攻撃をしてきたのだが。


「ああ、やっぱりさすがにダメージ無効にはならないか」


 私はレッドキャップの攻撃をウロボロスを間に置いて盾にすることで防いだのだが、レッドキャップの鉄のマチェットによる物理攻撃はウロボロスに普通にダメージを与えていた。

 やはりプレイヤーが召喚した場合、ウロボロスは合体状態でも物理攻撃によって、あとはおそらく魔法攻撃によっても普通にダメージを受ける。

 さすがにダンジョン内でクエストボスとして戦った時のようなあらゆる物理攻撃と魔法攻撃によってダメージを受けないなんていうとんでも性能はなかったということだ。

 なんとなくそうじゃないかと思っていたけどね、私は。


「ウロボロス、プラズマブラスター!」


 しかしウロボロスはそれを除いても純粋に召喚できるモンスターとしての性能は折り紙付きで、私の予想通りボスとして戦った際に使用してきた電撃ビーム攻撃と同じだったプラズマブラスターの威力はレッドキャップを一瞬で蒸発消滅させるほどの威力があった。

 しかもプラズマブラスターはやはりというか、直線状にモンスターを貫通するようで、レッドキャップの先に偶然出現していたスケルトン2体も今の一撃を食らって即死。


「おー、怖い怖い。これほんと下手な場所で呼び出せないぞ」


 強力な攻撃技が使用できる反面で消費MPも1秒で2ずつ食われるし、技の消費MPも高いんであんまり呼び出す機会はないと思うけど。

 この先、たとえばダンジョン内でいきなり周囲を100体のモンスターに囲まれるなんていうとんでもなく凶悪なトラップに引っかかってもこいつを召喚したら普通になんとかなりそうで逆に怖いよ。

 私がそう思ったのはもちろん、ウロボロスが使えるあと2つの技も確認したからで。


 ローリングアタックとフレイムリングは、技の構成が同じで、物理攻撃か魔法攻撃、消費MPやリキャストタイムに違いはあるものの、使用したら私を中心とした半径30メートル圏内というかなり広範囲に渡って存在する(と、私が認識できている)モンスターすべてに攻撃を行う。

 そしてこの2つの技、もちろんクエストボスとした戦った時のウロボロスの横回転アタックと炎のリング攻撃にそれぞれ相当する技だったのだけど、プレイヤーが召喚したウロボロスが使用する時にはボスとして戦った時に使用していたのと変更点が1つあった。


 それはボスとして戦った時は誰か1人に攻撃が命中したらそこで攻撃は終わったのに対し、プレイヤーが召喚したウロボロスは範囲内にいるすべてのモンスターに必ず1度ずつ攻撃するということ。

 つまり範囲内にモンスターが複数いても最初の1体に攻撃が命中したとしても攻撃は続く。

 荒野とか、周囲が開けた場所でならそれこそ1回で何十体のモンスターを瞬殺することも可能であると私は思った。


「ウロボロス、送還。……ふう、やれやれ」


 無敵の防御性能がなかったことはやっぱりちょっと惜しいけど、でもそれがなくても十分だ。

 私はギガントロックゴーレムの方も一応召喚してどんな感じなのか確認してみようかとも思ったけど、それはやめておいた。

 いや、ギガントロックゴーレムの方は実際に召喚してみなくても使える技の説明みただけでだいたい想像できるし、あいつ特にでかいからからさ。渓谷みたいな狭い場所じゃちょっとね。

 召喚するとしたらそれこそ荒野とか、ダンジョンのボス部屋の中とかある程度広い場所でないと。


「まあ、ゴーレムの方はいいか。たぶん、呼び出す機会ないと思うし」


 ギガントロックゴーレムも強力だけど消費MPが1秒で2消費だからね。


「……よし。これでウロボロスについての確認も終わったし、ギルドのクエストも両方コンプリートしたから第3階層でやることはもう全部終わったな」


 だけども、私はその後で少しだけ渓谷でモンスターを狩った。

 そしてグランガンの街に戻ると、武器屋ではまたレッドキャップや鉄のマチェットなどをまとめて売り払い、その後でよった道具屋ではまた溜まってきた素材アイテムなどをいくつか売った。

 そして薬屋にもよってポーションと聖水をまた補充してから冒険者ギルドの銀行へ。そこで所持金から10万ゴールドを預けることでついに銀行の預金額が100万ゴールドになった。


「でもよくこんなに貯めたよな、私も」


 前もちょっと言ったと思うけどこの貯めたお金の大半が、モンスターからドロップした装備品などのレアアイテムを店で売り払って手に入れた金であり、他の一般的なプレイヤーとはお金の稼ぎ方が違う。

 ちなみにリリアちゃんとリリムちゃんの2人にも、銀行に今どのくらいお金貯めてあるって尋ねてみたら2人とも10万ゴールド前後だった。

 2人は洋服とかのアイテムも買うし、ゲーム内のレストランとかで食事することもあるって言ってたけど。そういうプレイヤーなら第3階層だとそのくらいの貯金額なわけだ。

 さらに2人曰く、この階層でもかなりお金持っている方のプレイヤーでも預金額は40万ゴールドほどで、それでも今の私の半分にも満たないのだ。


「次の階層じゃちょっと自重しようかな」


 だって私、この階層だけで50万ゴールド以上稼いでるからね。

 私がいう自重というのはあれだよ。ほらこの前のレッドキャップを狩りまくって装備品のレッドキャップと鉄のマチェットを大量に手に入れてそれを売って、それで一気に10万ゴールド以上稼いだあれ。

 次の階層じゃ、スキルの成長に必要でもない場合は店で割と高額で売れるアイテムをドロップするモンスターを狩りまくって、それで大量に手に入れたそのアイテムをまとめて売って金を稼ぐとか、そういうのを控えれば少しは常識的な額に落ち着くだろう。

 自分でやっておいた結果言うのもなんだけど、おそらく第3階層の終わりで銀行の預金額が100万ゴールドっていうのはどう考えても異常だと思うから。

 私は冒険者ギルドを出ると、後はもう本当にやることはないので本来であればもうログアウトしても良かったんだけど。


「あ、そだ。アイリッシュのやつ探さないと」


 私は情報屋のアイリッシュとの約束を思い出した。

 私がもしも第3階層の迷宮ボスであるギガントロックゴーレムをソロで撃破することができたとしたら、その時はアイリッシュは以降私にどんな情報もただで提供してくれるという約束。

 もちろん私はギガントロックゴーレムを、召喚スキルを使ってしまったとはいえソロで倒すことには成功したし、その証拠も今私がこうして装備している。

 そう、迷宮ボスを最高グレードで倒した時にボス部屋に出現する金の宝箱の中に入っていた装備を。

 だからまあ会いさえすればそれでアイリッシュも認めざるをえないと思うのだが。


 それで私はグランガンの街の酒場をすべて回ったものの、アイリッシュは見つからなかった。

 今日この時間帯は第1か第2階層にいるのか、それともログイン自体していないのかはわからない。


「そうだな。ちょうどいい機会だし、戻ってみるか。前の階層に」


 実は私、アイリッシュを探しに行くという目的がなくても別の目的で第1と第2階層には戻る予定があったのだ。その目的がなんなのかっていうのは、前にもちょっと言ったと思うんでみんなもわかってると思うんだけど。

 私はグランガンの街の祭壇広場までやってくると祭壇の上に乗った。


『階層を移動しますか?』

 はいorいいえ


『移動先を選んで下さい』

 第1階層:始まりの街

 第2階層:花の都フローリア


 私はそれで始まりの街を選択した。すると私の視界はすぐに切り替わって。


<第1階層:始まりの街>


「うわっ!、なんかまだひと月も経ってないけどすごい懐かしい!」


 私は問題なく第1階層の始まりの街にある祭壇の上に転移してきて、そこから見える広場の様子や周囲の街の景色を見てまず言ったのはそんなセリフだった。

 いや本当に少し前までこの街を拠点に冒険してたとは思えないくらいの懐かしさを感じるんだよ。

 第2と第3階層でも色々あったからなぁ。そう思うのも仕方のないことかもしれないけど。


「まずはアイリッシュを探してみるか」


 それで私はアイリッシュを探してみようと始まりの街の昼間唯一やってるあの酒場に行ってみた。

 すると運の良いことにそこにアイリッシュはいた。最初にあった時と同じ席に座って1人の男性プレイヤーと話をしてたのが店の入り口から見えた。向こうは目の前の相手に集中しているのか店に入ってきた私には気づかなかったようだけど。


「接客中かな。じゃあちょっと待つか」


 私は酒場のカウンター席に座るとマスターにオレンジジュースを1杯注文した。

 そしてそれをチビチビと飲んでいたら5分くらいした後でアイリッシュと話していた男が席から立ち上がって店を出て行った。果たしてあのプレイヤーは情報を買ったのか、売ったのか。それとも単にアイリッシュの知り合いで世間話でもしてたのか。

 とにかく私はオレンジジュースを飲み干すと、マスターに代金を払い、カウンター席から立ち上がってアイリッシュの元へ。前と同じようにアイリッシュの前の席に座ったら、アイリッシュはそこでようやく私が誰だか気づいたようで。


「んな!?……あなた、まさか」


 私と、そして私の身に着けている装備を見た瞬間にアイリッシュの顔(口はマスクで隠れていたから目が)驚愕に見開かれたのを私は見た。そしてマスクを外すと。


「ちょ、ちょっと。だからその、あなたつまりあれよね。その装備はその……」


「はい。第3階層の迷宮ボス、ギガントロックゴーレムをソロで倒して出てきた金の宝箱の中に入ってたやつですけど?、なんならアイテム名も確認してみます?」


「…………はっ。ははははは。いや、こりゃあ参ったね。私もまさかとは思っていたけど、本当にギガゴをソロで倒しちまうなんて」


 ギガゴっていうのはギガントロックゴーレムの略かな。

 これはアイリッシュだけでなく他の一般的なプレイヤーもそうだが特に長い名前のモンスターは略して言うこともある。略しかたは人それぞれだろうけど。

 私は一応念のためにアイテムボックスを開くと、現在装備中の装備品の名前の画面を開いてアイリッシュの方に見せた。

 このゲーム、改造ツールでも使わない限りは装備品やアイテムの名前とかは変えられないし、アイリッシュも私のギガントロックシリーズの装備の名前を確認するとそこでため息をついた。

 もちろん、見せたのはアイテム名だけだから装備の装備補正値や特殊効果までは教えてないけど、もしも知りたいっていうならそれも教えてあげてもいい。その場合は逆に情報料取ってやるけど。


「ついでに聞きたいんだけど、その、あなたの瞳の色が左右で違うのって」


「瞳の色?……ああ、そうだった」


 私は円環の蛇の眼を装備したことで左右の瞳の色がそれぞれ金色と銀色のオッドアイに変わっているということをすっかり忘れていた。


「装備の効果ですよ。円環の蛇の眼って言う装飾品の」


「まさかとは思うけどそれ、第3階層の最高難易度のクエスト『円環の蛇』もクリアしたっていうんじゃないでしょうね?」


「ええ、クリアしましたけど。あ、それはもちろんソロでなく他のプレイヤーにも手伝ってもらって」


「当り前よ!、いや、というかクリアできた時点でもうすでにおかしいんだけど」


「そうですかね?」


 私はそのことを内心では自慢したい気持ちを押し殺して白々しくもそう言った。

 するとアイリッシュは顔に手を当てて大きなため息をついた。


「それでこの前の約束のことなんですけど、覚えてますか?」


 私はアイリッシュに確認してみた。するとアイリッシュはもちろんよと言って。


「たしかあなたがギガントロックゴーレムをソロで倒せたらあなたとフレンド登録して、私の知ってる情報はこれ以降ただで教えるって話だったわよね?」


「はい」


「私はね。今は11階層を攻略中なの。だから正確な情報は10階層までしか教えられないけど、それでもよければ」


「はい。というかアイリッシュさんってけっこう先まで進んでるんですね」


 最低でも第4階層以降には進んでるのはわかってたんだけど、想像以上に先に進んでた。

 それなら第3階層までと言わず、その先の階層でも情報屋をやればいいのにと思ったけど、そういえばこれは前にも聞いたことがあったんだっけ?

 たしか第4階層からは別の情報屋がいて、情報屋どうしのテリトリーは出来る限り被らないようにしているのだとかで。


「まあね。他の情報屋はどうだかしらないけど、私の場合は半分は趣味みたいなものだし」


「後の半分は?」


「後の半分は、そうね。親切心、かな。特に第1階層なんて初心者ばかりだけど。このゲーム序盤からけっこうつまずくポイントも多いし」


「ああー、たしかに」


 私がアイリッシュの言葉を聞いてそう賛同したら、アイリッシュは一瞬だけキョトンとした顔をした後で突然クツクツと笑い出した。

 私がそれでどうしたのかと聞いたらアイリッシュはなおも笑いながらこう答えた。


「くっくっく。いや、あなたが言うとそれも信憑性なくなるなって思って」


「な、失礼な。私だってゲーム始めたばかりの頃は大変……あれ、どうだったっけ?」


 私がそう言ったらアイリッシュはそれで声をあげて笑い出してしまったのだった。


次回、第3階層編終了。

玲愛はアイリッシュとフレンド登録し、その後でなぜか決闘する流れに?


そして、前回の後書きでも書きましたように第3階層編の次は第4階層編ではありません。

隠しダンジョンに挑戦編となります。文字通りに玲愛は第1と第2階層に戻って、そこで懐かしい人物たちと再会を果たした後にその階層の隠しダンジョンに挑戦します。

第3階層の隠しダンジョンにも挑戦するかどうかはまだ未定ですが。


ドラマパートでは前々から予定していたイベント、アストレアの久々の下界視察も。

さらにまた外伝エピソードもあり、スクルドもVRゲームを始めたり?


ただし、その前にまた第3階層編の誤字脱字と矛盾点などの総チェックと、まとめ話の作成もあるので、もしかすると次の章の始まりは新年、年明けてからになるかもしれません。


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