ニートな女神と初めての分離
気がつけばいつの間にやら150話をこえていた。
そして第3階層編も50話こえていた。……はぁ、もっと短くまとめるつもりだったのに。
リリムちゃんの攻撃を受けたウロボロスは電撃ビームで反撃してきた。
物理攻撃で攻撃された場合、ウロボロスの反撃は必ず電撃ビーム攻撃で、魔法攻撃で攻撃された場合は必ず攻撃してきたプレイヤーに対して縦回転アタックで反撃してくるということは、私もここまでの戦闘の中で気づいていたんだけど。
このゲーム内では物理攻撃を主にするプレイヤーは力が高く賢さが低い。逆に魔法攻撃を主にするプレイヤーは賢さが高い反面で耐久が低いことが多いためプレイヤーがウロボロスに対して行った攻撃の種類から、攻撃してきたプレイヤーが苦手としている攻撃で反撃をするというのもボスモンスターに備わってるAIが他のザコモンスターよりも幾分か賢い証拠なんだろうけど。
リリムちゃんの方も、もう何度も物理攻撃してその度に電撃ビームでの反撃を経験しているからそれの上手な避け方ももうすでに学習済みであり、もちろん今回も電撃ビームの回避に成功した。
成功はしたんだけどもね。
「ちょっとリリア!、銀色の方攻撃しようとしたらなんか回転しちゃったんだけど!」
「もう!、それを教えてあげる前に行っちゃったのお姉ちゃんの方じゃない」
「え?、そうだったの?……ご、ごめん」
リリムちゃんはいけると思っていたのに結局自分の攻撃が通じなかったことでちょっと腹を立てたんだけど、リリアちゃんに先走ったことを注意されて逆に謝っちゃった。
「でもさ、それじゃあこれどーすればいいのー?」
「それを今考えてるの!」
私は2人の言い合いを横目に見ながら自分でも考えてみる。
ウロボロスにダメージを与える方法、ウロボロスの金色の蛇の部分に魔法攻撃、銀色の蛇の部分に物理攻撃を当てる方法。
まず1番最初に思いついたのが同時攻撃だった。
つまりはウロボロスの金色の蛇、銀色の蛇のどちらに攻撃するとか関係なく、3人で協力してウロボロスの同じ部分に向かって物理攻撃と魔法攻撃を同時に放つというもの。
これであれば、たとえウロボロスが回転したとしても、金色の蛇、銀色の蛇のどちらかの部分にダメージが通ると思われる方の攻撃が命中する。
だけど、私はそこでリリアちゃんの方を見た。
リリアちゃんも、きっとこの同時攻撃については当然のように思いついていたはずだ。
それなのにそれを私たちに言いださなかったということは、もう既に1度試したのか、それともさすがにその方法は解決案としては安直すぎると考えたのか。
「(でも私も、なんかそんな単純な方法でどうにかなるとは思えないんだよな)」
私も同時攻撃については、やってもたぶん無駄なんじゃないかと思った。
なんていうか、きっとウロボロスはやっぱり、何らかの条件を満たしたときに初めてダメージが通るようになるというか。ダメージを与えるためにはもう1つ何か、謎を解く必要があるのだと思う。
私は、いや私たちは何かを見落としているのだ、きっと。それさえわかれば……
「あ、じゃあさ。同時攻撃はどうかな!」
「お姉ちゃん……うん、そうだね。でも一応やってみようか」
リリアちゃんはどうやら同時攻撃を1度試したわけじゃなかったらしい。
ウロボロスの続く横回転アタックを全員地面に伏せて回避した後に2人でウロボロスに接近し、金色の蛇の部分に狙いを定めてリリムちゃんは槌での物理攻撃、リリアちゃんは光属性の魔法攻撃を放ったのだけど。そうしたらウロボロスはそれを体を高速回転させることで無効化した。
「うわぁぁぁぁ!?」
「やっぱりダメだったか」
私もそれを見ながらリリアちゃんと同じ、やっぱりダメだったかと心の中でつぶやいてそこで小さなため息を1つついた。
そしてそこでふと、視界内にボス部屋内の祭壇にともっている炎が目についた。
そういえば、ウロボロスがボス部屋に登場する時にはあの祭壇の炎が青色に変わって、その青色の炎が祭壇の中から出てきて輪っかに形を変えてその中からウロボロスが出てきたんだっけ。
でもウロボロスが完全に出現した後で戦闘開始前にもう1度祭壇に赤い火がついたんだよね。
よくよく考えればこのボス部屋内、壁には松明があるし、祭壇の炎がなくても真っ暗で何も見えなくなるなんてことはない。だから決して部屋の照明として機能しているわけではないと思うのだけど。
「うーん、ウロボロス本体じゃない場所に謎解きの答えがあるとすれば、この部屋の中にあって怪しいものはあの祭壇の炎くらいなんだよな」
私はそう言って、少し考えてから祭壇の炎に向かってウォーターランスの魔法を打ち込んでみた。
するとリリムちゃんとリリアちゃんはもちろんそれに気がついて、祭壇の炎は少し弱まったんだけど。
「玲愛さん?」
私はそれを見てもう今度はウォーターボールと、ウォーターアローの魔法も続けて祭壇の炎に向かって放ち、その後でリリアちゃんも私のやりたいことに気づいたのか祭壇の炎に向かってウォーターボールの魔法を放った。それからも私とリリアちゃんの2人で祭壇の炎に水属性の魔法を打ち込み続けていたらしばらくして祭壇に灯っていた炎は完全に消えたのだが。
「「ギャォォォォォォォォス!!!!」」
その直後の出来事だった。
それまで一言も発したことのなかったウロボロスがそこで叫び声を上げた。
「「「……え!?」」」
思わずびっくりして3人そうハモってしまった。
そうしている間にもウロボロスは口を開け叫び声を上げ続け、口を開けたことでウロボロスがお互いに噛んでいた相手の尻尾が自由になり、ということはウロボロスは1つの輪の形ではなくなったわけで。
「ふ、2つに別れた!?」
リリムちゃんがそう叫んだ通り、ウロボロスは金色の蛇と銀色の蛇に分離した。
モンスター名はどちらもウロボロスだったけど、2体に分かれたことでウロボロスの400%あったHPケージがそれぞれ200%ずつに分かれて。
「す、すごい。玲愛さん、これってやっぱり?」
「う、うん。これでそれぞれ分かれた方にダメージを与えていけるんじゃないかな?」
ウロボロスが分離したことについて私が1番驚いてたんだけど。
だってまさか2体に分かれるなんて思ってなかったし、そもそも祭壇の炎を消すことにしたのだって、ダメもとっていうか、その場の思いつきだったし。
ああ、でもそう。その場の思いつきでなんとかするパターン、私多いからな。今までも。
「えっとえっと、じゃあ私が銀色担当でもいい?」
「う、うん。お姉ちゃんは物理攻撃が得意だから、銀色の蛇をお願い。金色の蛇の方は私と玲愛さんで、いけますよね?」
リリアちゃんの問いかけに私は無言でうなずくと、そこからウロボロスとの真の戦いが始まった。
まず結果から言うと、分離したウロボロスにはちゃんとダメージが通った。
もちろん分離した後でも、金色の蛇には物理攻撃ダメージ、銀色の蛇には魔法攻撃ダメージがそれぞれ無効だったんだけど、リリアちゃんがさっき予想したようにそれぞれにその逆の攻撃ではダメージを与えることができたのだ。
まずリリムちゃんが1番に駆けだし、銀色の蛇の脳天に槌での一撃を決めた。
すると銀色の蛇の方のHPケージが200%から190%くらいにまで削られた。
「やった、やったよリリア~!!」
それを確認した私とリリアちゃんは、それならこっちもと思い、\2人で合わせて金色の蛇の胴体に向かってそれぞれライトボールと、サンダーランスの魔法を打ち込んだらこっちもそれで15%くらいのHPを削ることに成功し私たちはこれでようやくウロボロスを倒せると喜んだのだけど。
けどももちろん、2体に分かれたウロボロスも攻撃はしてきたわけで。
というよりモンスターが2体に増えた分敵の攻撃を回避する難易度は上がり、しかも2体が別々の攻撃を同時にしてくるためむしろ難易度は上がったのかもしれない。
ただ、それでしばらくウロボロスたちの攻撃パターンを見ていたら、金色の蛇と銀色の蛇とではそれぞれで攻撃方法が微妙に違うということがわかって。
だからここでもう1度ウロボロスの攻撃方法について明記しておこうと思う。
まずは金色の鱗に覆われ銀色の眼をしたウロボロス、金ウロボロスの方から。
①火炎放射
火属性・魔法攻撃。
鉱山のファイアーリザードが使用してきたのとおそらく同じで、プレイヤーに向かって直線的に放たれる炎の息。直線的でよけやすい攻撃なので金ウロボロスの頭の向きに注目していればよけるのは簡単。
②ファイアーボール×5
火属性・魔法攻撃。
合体している時と同じで、口からファイアーボールを連続で射出してくる。
ただし射出してくる数がさっきの半分で5発に減り、さらに私たち3人に対して1人1発必ず向かうのではなく金ウロボロスの近くにいるプレイヤーに向けて放たれるように攻撃が変化したため、むしろ合体していた時のものよりも対処は簡単になったと言える。
③サンダーボール×5
雷属性・魔法攻撃。
②に同じ。単に攻撃の属性が違うだけだが、私は火属性無効のスキルを持っているおかげで①と②の攻撃は無視できるのだけど、雷属性の魔法攻撃はダメージ無効にできないのでこっちは回避するか、ソイルボールをぶつけて相殺するかしないといけず、ちょっと面倒くさい。
④電撃ビーム
雷属性・魔法攻撃。
さきほどの合体していた時と違い、攻撃前に火花が散るという前兆がなくなり、無動作でいきなり口から放出してくるようになったのだけど、ようは①の攻撃の雷属性版であり、同じく直線的にプレイヤーに向かってくるのでタイミングを見切ればよけるのは簡単だった。
⑤尻尾振り回し攻撃
これはもちろん物理攻撃で、グリーンスネークなんかと同じ攻撃なんだけど。
なにせウロボロスは分離してもそれぞれでっかいから、尻尾も長くて太くてさ。しかもこの攻撃を受けると吹っ飛びの追加効果もあったみたい。私はギガントロックベルトの装備の特殊効果のおかげでそれを食らってももう吹っ飛ばなかったけど。
もちろん私は私たち3人の中では1番耐久の値が高いし、ウロボロスもどうやら2体に分かれたことで合体していた時よりもそれぞれの能力値が幾分か下がっていたみたいで。
だから尻尾振り回し攻撃でも私にはそこまで大きなダメージはなかったんだけど、それでも何度か攻撃を受けて私のHPが半分くらいにまで減るとすぐにリリアちゃんが私に回復魔法をかけてくれてね。
「ありがとう、リリアちゃん」
「い、いえ。これが私の役割ですから」
リリアちゃんは金ウロボロスへの攻撃にも参加してくれるけど主に私とリリムちゃんの間を行ったり来たりしながらどっちかのHPが減ったら回復魔法をかけていてこの中では1番大変なポジションだったと思う。なので途中からは私はリリアちゃんは回復魔法に専念して攻撃魔法は使わずにMPを温存するように言って、金ウロボロスへの魔法攻撃は私1人で担うことにしたんだけど。
そっちの方が、リリアちゃんの負担が減ると思ったからね。
さて、金ウロボロスの方の攻撃は実はまだもう1種類ある。
それが黄金の針飛ばし攻撃だ。
金ウロボロスの鱗が数枚(4、5枚)胴体から剥がれ落ちると、それがなんか黄金製の鋭い針というか、短剣のような形に変わってそれがプレイヤーめがけて飛んでくる。
まあその後で剥がれ落ちた鱗はすぐに再生しちゃうんだけども。
この攻撃はもう1番やばかった。何がやばかったっていうとさ。
「え、嘘!?」
私はその攻撃、とっさに物理攻撃だと思ってよけずに受け止めちゃったんだけど。
いや、きっと物理攻撃ではあったんだと思う。でもこの黄金の針攻撃、まさかの貫通攻撃でさ。
プレイヤーの耐久の値無視してダメージを与えてきたんだよ。
幸いにも1発1発の威力はそこまででもなかったんだけど、1度に何発も食らうと私でも一気にHPが削られて危なかった。
「そんなのありかよ。くそ、やっぱりクエストボス。ダメージを与えられるようになっても強いわ」
私はそのことを再認識した。
ちなみに、この黄金の針飛ばし攻撃。三回目に使用してきた時に試しにウィンドボールを放ってみたら飛んでくる黄金の針を吹き飛ばすことができて、それ以降はもう余裕だったんだけど。
何気にプレイヤーの耐久の値を無視してダメージを与えてくる貫通攻撃って、モンスターではこいつが最初だったなと思って。
プレイヤーなら前に第1階層で李ちゃんと決闘した時に李ちゃんが使ってきてたの受けたこともあったけども。
「この先もフィールドで、貫通攻撃してくるザコモンスターも出てくるだろうし。物理攻撃だからってなんでもかんでも受け止めようとするのは危険ってことか」
たとえパーティで、前線で敵の攻撃を引きつける壁役を担っているプレイヤーでも、攻撃を回避できるなら回避したほうが当然良いのだ。だってどんな攻撃もよければダメージ0だしね。
物理攻撃は最初から全部受け止めてやるとか考えてると貫通攻撃でやられるわけだ。
「貫通攻撃を無効にするスキルとか、あとは装備とかあれば、それも問題ないんだろうけどね」
貫通攻撃の効果を無効にする盾とか、絶対ありそうな気がするよこのゲームなら。
金ウロボロスの攻撃方法はここまで紹介した6種類だけだ。
なのでお次はリリムちゃんが戦っていた銀色の鱗に覆われた金色の眼をしたウロボロス、銀ウロボロスの方の攻撃方法について、後からリリムちゃんに教えてもらった分を含めて紹介しておく。
①衝撃波
風属性・魔法攻撃。
これは金ウロボロスの①と④と同じく風属性のプレイヤーめがけて口から直接放射される攻撃で、リリムちゃんもよけるのは簡単だった。
あと残りはもう一気に紹介しちゃうけども。
②ウィンドボール×5
③サンダーボール×5
④電撃ビーム
⑤尻尾振り回し攻撃
⑥銀色の針飛ばし攻撃。
これ見て何か質問ある人とかいる?
②は金ウロボロスのファイアーボールと同じだし、③と④と⑤に関しては金ウロボロスのものとまったく同じ攻撃方法で、⑥もただ飛んでくる鱗の針の色が銀色なだけで金ウロボロスの⑥の攻撃方法と同じなんだろうし。
合体していた時に使用してきたウィンドエッジの魔法については、分離した状態では使用してこなかったというのは本当に良かったと思う。
リリムちゃんは尻尾振り回し攻撃の時はむしろそれをスーパージャンプで回避して即座に銀ウロボロスに反撃を決め込んだらしいし、何よりも物理攻撃でダメージを与えることに成功したことでリリムちゃんの神様の恩恵の2番目の効果が2回も発動し、リリムちゃんの力の値は20%上昇。
ただしウロボロスの方の耐久が20%下がることはなかったらしいので、おそらくウロボロスはそれ以外のも含めて今の私の装備と同じく能力値を下げる効果を受けつけないんだろう。
私たち3人が奮闘し、金ウロボロスと銀ウロボロスのHPが共に100%を切った時、ウロボロスはそこで再び合体した。
まあそれもなんとなく予想してたことだけど、再び合体したウロボロスに表示されたHPケージはきっちり金ウロボロスのHPケージと銀ウロボロスのHPケージを合計した数値になっていて、それを確認した時には私たちの誰もが安心したんだけど。
「あ、また祭壇に火がついたよ」
「それじゃあまたこれを消せば、次で倒せそうですね」
ウロボロスが合体した直後、またボス部屋の祭壇に真っ赤な炎が灯され、それで私とリリアちゃんは今度はもう迷わずにその炎を消化しにかかったんだけども。
HPが減ったことで合体した状態のウロボロスの攻撃方法も変化しててさ。
①縦回転アタック→より高速になった。
②横回転アタック→プレイヤー全員の胴体を薙ぐように2週するようになった。
③電撃ビーム→攻撃直前の合図である火花が散る時間が短縮、またビームそのものの速度は高速化。
と、ここまではまだ良かったんだけど。
④ファイアーボール×15
ファイアーボールの数が10発から15発に増えた。
さらにこのファイアーボールが祭壇の方にも飛んでいって、せっかく消火しようとしていた祭壇の炎をまた燃え上がらせるという最悪の攻撃になっていて。
でもまあ数が増えたこと以外、ファイアーボールそのものに変化はなかったんだけどね。
「ああ!!、せっかく消そうとしてたのにあいつ~!!」
「仕方ないよお姉ちゃん、むこうも負けないように必死なんだよ」
リリアちゃんが言ったむこうっていうのはあれだ。
ウロボロスがっていうよりはそれを作ったゲーム制作サイドの人間がって意味も含まれてるんだろうな。祭壇の炎を消されるとまたウロボロスが分離して、そうなったらきっとウロボロスが倒されちゃうから、それを阻止しようと祭壇の炎を復活させる攻撃をウロボロスに追加したって感じかな。
ほんと、やることがえげつないというかこのまま簡単には倒させないぞという思い、必死さは伝わってきたんだけども。
⑤ウィンドエッジ×7
ウィンドエッジの方も攻撃の数が増えて、それでリリムちゃんが危ないってなったんだけど。
あれでも、よくよく考えてみたら私がリリムちゃんの目の前に出てリリムちゃんに向かってくるウィンドエッジも全部受ければ問題ないんじゃね?
「お姉さん!?」
もともと私を狙って飛んできた分を合わせて5発のウィンドエッジを食らっちゃって、それでリリムちゃんがびっくりして叫び声をあげたんだけども。
私には風属性の魔法攻撃はもうダメージ無効だからね。リリムちゃんも攻撃を受けた私のHPが一切減っていないことでそれを思い出したみたいで。
「ありがとう、お姉さん」
「うん。というかまたウロボロスが分離するまではリリムちゃんずっと私の後ろに待機してもらっていてもいい?、そっちの方が安全だと思うし」
「あ、うん。わかった」
さっきもこうしていればリリムちゃんがウィンドエッジを食らって余計なダメージを受けずに済んだのではないかと思うと、ちょっとあれだったけど。
とにかくリリムちゃんはウロボロスが再び2体に分離するまでは私の後方で待機して、ウロボロスがウィンドエッジを使用してきても私がそれを受けて無効化することでリリムちゃんが死ぬ可能性を減らすことに成功した。
それで、だ。HPが減ったことでさらにウロボロスには新たな攻撃技が追加された。
⑥炎のリング攻撃
火属性の魔法攻撃でウロボロスの全身が炎に包まれたかと思うとその炎がそのまま輪っかの形となってプレイヤーに襲い掛かってくるというボス部屋内にいるプレイヤー全員に対しての攻撃。
攻撃の軌道は横回転アタックと同じだったので地面に伏せればプレイヤーはダメージを負うことはない。だけどもプレイヤーが全員この攻撃を回避してしまうと、攻撃が終わった後で炎のリングは祭壇の方へ飛んでいき、ファイアーボールと同じようにせっかく消そうと思って水属性の魔法攻撃を打ち込み続けて小さくしていった祭壇の炎をまた燃え上がらせてしまう。
「ああ!!、また火が復活した!」
もちろん、それ1回で祭壇の炎が最初の状態に戻るわけではないのだけど、このままだと私たちが火を消して、ウロボロスがまた火をつけるというのを延々と繰り返すはめになる。最終的には火を消せるにしてもあまりにも時間がかかりすぎるし、なにより面倒だ。
私はそのイタチごっこをなんとかしようと思考を巡らせ、そこで閃いた。
あ、そうだ。こういう時こそあの魔法の出番なんじゃないか?
私はその魔法を使用する前にリリアちゃんに近づきリリアちゃんにあることを頼んでおいた。
それから私はちょっと不安もあったけどその魔法を使用してみた。
「ギガントロックウォール!」
それは第3階層の迷宮ボス、ギガントロックゴーレムを倒したときに出現した金の宝箱の中に入っていた巻物を読んで覚えた魔法。
その効果は敵のあらゆる攻撃の対象を3分間自分に集中させるというもの。そしてその3分間は自分が受ける物理攻撃ダメージは5分の1となる。
さて、じゃあ今のこの状況でその魔法を使用したらどうなるかな。
……客観的に見てもなかなかすごいことになったとだけ言っておくよ。
<モンスター辞典>
〇ウロボロス
前回からの続き。
最初合体した状態だったウロボロスを、2体の蛇に分離させるとようやくウロボロスにダメージを与えることができるようになります。
分離させる方法については本編内参照のこと。
逆に言うと、分離させない限りにおいてウロボロスにダメージを与えることは基本的に不可能であり、絶対に倒すことはできないので要注意。
分離後も、前回の後書きでも伝えた通りに。
金色の鱗に覆われた銀色の眼をした方の蛇には物理攻撃が一切効かず。
銀色の鱗に覆われた金色の眼をした方の蛇には魔法攻撃が一切効きません。
なので金色の方には魔法攻撃、銀色の方には物理攻撃によってダメージを与えていく必要があります。
金色の蛇、銀色の蛇共に弱点と耐性は同じです。
弱点は雷属性で、耐性は火属性・水属性・風属性・土属性の4つ。
まあ見るからに金属っぽい外見なんで電気をよく通すっていうことみたい。
なお、分離後は合体していた時よりもすべての能力値が下がっていて(それでもまだ十分高いけど)、ウロボロスからの攻撃で受けるダメージも少しは減っています。
ウロボロスの攻撃方法については本編内で説明した通りですが、分離中それぞれのウロボロスが使う⑥の攻撃技。鱗を針にして飛ばす攻撃は玲愛の読み通り物理攻撃で、さらにプレイヤーの耐久の値を無視してダメージを与える貫通攻撃なので特に注意が必要。
耐久の値を上げまくってもう物理攻撃は怖くないとか言っていると、普通に殺られるよ?
次回、ついにウロボロス戦が決着。それで第3階層編ももうほぼ終わり。
あとは本当にやり残したことなどをさくっと終わらせて、最後にちょっとだけドラマパートを挟んで終わる予定。




