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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての恩恵

今回、神様の恩恵の効果がわかるのはリリムちゃんとリリアちゃんの2人です。

玲愛の恩恵の効果についてはまだ明かされません。

まあもうちょっとところどころで答え言っちゃってる節はありますけど。

 リリムちゃんとリリアちゃんは6体目のラミアをギリギリまでHPを削って弱らせるとそこですぐには止めをささずにそれぞれポーションや聖水を飲んでHPとMPを回復していた。

 ラミアを全滅させた後ですぐにクエストボスとの戦いが始まることを警戒しての判断なんだろう。

 これが普通のRPGとかならボス戦前に自分の体力とか、回復させて万全の状態にしておくのは当たり前なんだけど、VRゲームだとついついそれを忘れて勢いでボス戦に突入しちゃって最初の一撃で死んじゃうとかいうミス、けっこう多いらしいからな。

 特に今回のクエストの場合、このボス戦前のラミアを全滅させた後でプレイヤーが体力回復のための時間をもらえるかどうか怪しいからね。

 ラミアはたしかに強くて厄介だけど、1体だけ残して弱らせた個体が相手なら動きも遅くなってるし、攻撃をよけながら回復も容易にできるからね。

 ちなみに私の方はというと、そもそもラミア戦でそこまでダメージを受けてすらいないし、6体目のラミアを2人に任せた時にもうちゃちゃっとHPとMPは全快させておいたけど。


「それにしても、やっぱりすごいな。2人とも。まあ、2人の役割分担も神様の恩恵によるところが大きいんだと思うけど」


 私は数時間前、崖のフィールドで3人で協力してビッグホークを倒した後、グランガンの街までの帰り道でのことを思い出していた。


<第3階層:崖>


 ビッグホークを倒した後、ワープゲートを通って崖の分岐点まで戻ってきた私たちは帰り道での戦闘を適当にこなしながらも街までの道を雑談とかしながら歩いて戻っていた。

 その途中で私たちは、お互いが使えるスキルや魔法などについて、教えられる範囲で聞いたりもしていて、話の流れで私は2人の神様の恩恵についても聞いてみた。

 この前出会ったときは、私の神様の恩恵の効果は2人に教えたんだけど、2人の方の神様の恩恵は聞いてなかったし。

 ただ実は私は、本人に直接聞かなくてももう相手の神様の恩恵の名前と効果を知ることができるのだけど、その話についてはまた今度。

 とにかく2人は、それで私に快く自分たちの神様の恩恵の効果を教えてくれた。

 それでまず最初に恩恵の効果を教えてくれたのはリリムちゃんの方で。


「えっとね、私の神様は……アメノ、タヂカラオっていう名前で。日本の神様なんだって」


 リリムちゃんはそう言うと、証拠とばかりに自分のステータス画面を私に見せてきた。


 プレイヤー名:リリム

 種族:人間 性別:女

 神様の恩恵:アメノタヂカラオ

 職業:冒険者


 もちろん、レベルとか各種ステータスの値とかまでは見せてもらってないよ。

 リリムちゃんはその後で、自分の神様の恩恵の効果を説明してくれようとしたんだけど。口で言うよりも画面を見せたほうが早いと判断したのか、ステータス画面のアメノタヂカラオと書かれている部分をタッチすると、神様の恩恵の効果の詳細について書かれたページ画面が開かれ、それを私に見せてくれた。


『アメノタヂカラオの恩恵の効果』


 ①力成長(パワーグロウ)

 効果:レベルアップ時に力の値が上がりやすくなる。


 ②岩戸いわとひら

 効果:戦闘中、敵に物理攻撃によってダメージを与えた時、確率でダメージを与えた敵の耐久の値を10%低下させ、自分の力の値を10%上昇させる。

 この効果は戦闘中に何度も発動し、発動するたびに効果は重ねかけされていくが、発動するたびに効果が発動する確率は下がっていく。

 戦闘終了毎に効果はリセットされる。


 ③混沌こんとんはら

 効果:プレイヤーは光属性と闇属性の魔法を習得できない。


 私はリリムちゃんの神様の恩恵を確認すると、リリムちゃんにもういいよと言った。

 するとリリムちゃんは開かれていた画面をすべて閉じると、私に見た感想を求めてきた。


「うーん、と。まず①の効果はいいや、説明されなくてもわかるし」


 リリムちゃんがレベルアップした時、他の能力値に比べて力の能力値が上がりやすくなるって効果。

 もしかするとその反動で何か別の能力値が上がりにくくなってるのかもしれないけど、とにかくリリムちゃんが力の値が高いんだろうなということはわかった。

 というかその上でメイン武器が槌っていうのも、また物理攻撃特化のプレイヤーにとってはふさわしい効果と言うか。

 むしろこの恩恵の①の効果があるなら、プレイヤーはまず確実に魔法攻撃よりも物理攻撃の方に重きをおくようになるんだろうし。


「それで、③の効果はデメリットなんだよね?」


「うん。第1階層の始まりの街の魔法屋さんでさ。ライトボールの巻物買ったんだけど、私は読めなかったんだ。アイテムボックスから買った巻物を開いても見てみても、ライトボールは習得できなかった。他の属性の魔法は普通に覚えられたんだけど」


「なるほど……きっと②の効果がちょっと強めだから、それでバランス取るためにデメリットの効果もつけたんだろうけど」


 光属性と闇属性の魔法は、他の属性よりもやや強力であることが多いし。

 それら2つの属性の魔法が使えないとなると、プレイヤーにとってけっこうなデメリットのようにも感じられるが、そもそも①と②の効果を重視すればプレイヤーは物理攻撃をメインに戦っていくだろうから、一部の魔法が覚えられないからといってそれほど大きな悪影響はない気もする。


「それで問題というか、一番重要なのは②の効果だよね」


 アメノタヂカラオの恩恵、②の効果。

 敵に物理ダメージを与えたら敵の耐久を低下させ、代わりに自分の力は上昇するとか。

 それもう完全に敵を物理攻撃で滅多打ちにするための効果というかさ。


「これ、戦闘中に何度も発動して、発動するたびに効果発動の確率が下がっていくってあったけど、実際はどのくらい効果発動するもんなの?」


 私は一番気になっていた点をリリムちゃんに聞いてみた。

 するとリリムちゃんは顔をしかめて、というよりも何やら複雑そうな顔をして。


「あー、それね。それは、うーーーーん。私にもよくわかんない。でも普通にフィールドで戦ってる時には確実に1回か2回は発動してるよね?、リリア」


「あ、うん。そうだね……あ、玲愛さん。えっとですね」


 リリムちゃんはどうやら詳しい確率とかはわかっていなかったようだけど、いつも一緒に戦ってるリリアちゃんの方はそれなりに詳しくわかっていたみたいで。

 そこからリリアちゃんが語る分には。


 戦闘中、②の効果が1回発動する確率はおよそ50%ほどとのこと。

 つまり敵に物理攻撃でダメージを与えたら2分の1くらいの確率で効果が発動。


 そして②の効果が1度発動してから、2回目に効果が発動する確率はおよそ20%程度。

 さらに3回目だと10%程度、4回目以降になると5%を下回ってくるらしい。

 もちろん実際にそれが合ってるのかどうかはわからないし、あくまでそれはリリムちゃんとリリアちゃんの体感に基づく話なんだろうけど。


「今までに最高で何回発動したことある?」


「えっとね、たぶん4回、かな。1度の戦いの中で効果が4回も発動したのは2、3回くらい?」


 4回ということは、少なくともそれでリリムちゃんの力の値は40%も上昇していたことになるけど。

 ああ、そうかでもその効果って。


「耐久を10%下げる効果の方は、あくまでその効果が発動する時にリリムちゃんが物理攻撃でダメージを与えた時だから、複数の敵と戦ってるとちょっと効果弱くなるかな?」


 どういうことかというと、だ。

 リリムちゃんが、1体のモンスターと戦っている場合。

 その戦闘中に②の効果が仮に4回発動したとすれば、リリムちゃん自身の力の値は40%上昇し、敵であるモンスターも1体のみであるから、その1体のモンスターの耐久の値が40%下がるわけだ。


 しかし、相手のモンスターが4体だった場合はどうだろうか。

 たとえばリリムちゃんが、モンスターその1に物理攻撃でダメージを与えた時に1回目の効果が発動したら、当然リリムちゃんの力の値が10%上がり、モンスターその1の耐久の値が10%下がるのだが。

 それで2回目の効果発動がモンスターその2に攻撃した時に発動したとしたら、リリムちゃんの方は力の値が20%上がった状態になるけど、耐久の値が10%下がるのはモンスターその2となる。

 そして4回の効果が発動した時に、最悪の場合は次のようなことになることも。


 リリムちゃん(力+40%)

 モンスターその1(耐久-10%)

 モンスターその2(耐久-10%)

 モンスターその3(耐久-10%)

 モンスターその4(耐久-10%)


 つまり、耐久を下げるほうの効果はリリムちゃんの物理攻撃を受けた相手に適応されるので、モンスターの数が多かったりするとそっちの方の効果が分散されてしまう可能性がある、と。


「あ、じゃあボス戦では大活躍なんじゃん、それ。ボスモンスターってたいてい1体だし」


「そうそう、そうなんだよ。だから普段フィールドでたくさんのザコモンスターと戦ってるときは、あんまり効果を実感できないっていうかさ」


「でも、お姉ちゃん。たまに自分でも効果が発動してること気づいてない時あるよね?」


「あ、あはははは。戦いに夢中になってると、そんなこといちいち気にしていられなくて」


 このゲーム内、プレイヤーの能力値がスキルや魔法の効果によって変化した場合は、もちろんそれを表すマークが自分のHPケージの右上につくのだけど。

 たとえば私がよく使うウィンドステップの魔法は、プレイヤーの敏捷が25%上昇する魔法で。

 この魔法の効果が発動中は、プレイヤーの足元に緑色のオーラが風のようにまとわりついて、まず目視によってその効果が発動中だということがわかる。

 しかしもう1点、自分の視界に表示される自分のHPケージの右上に、茶色い靴のマークの上に赤い上向きの矢印が重ねてあり、その上に25%という数字が表示されてるマークがついている。

 同じパーティに登録中であればパーティメンバーのHPとMPケージ、状態異常になっているかの有無は確認できて、もちろんこの能力値の変化も確認できるんだけど。


「だって仕方ないじゃん。この効果見た目には何の変化もないんだもん」


 まあ自分のHPケージなどは確認しても、戦闘中盛り上がっていたらその右上についてるマークとかまでは意識が向かないってこともあるかな。HPケージの右上には毒とか麻痺とか、状態異常になってることを表すマークもつくけど、混乱(微小)の状態異常とか、なってても気づかないプレイヤーもいそうだし。

 ウィンドステップの魔法と違って、アメノタヂカラオの恩恵の②の効果は効果によって自分の力の値が上昇してても見た目には何の変化もない(って今リリムちゃんが言った)から、余計に気づかないのかも。


「もう、いいんだよ。とにかく敵を倒せればなんでもさ。ほら、私の恩恵の話はもうこのくらいにして、次はリリアの番だよ」


「ううう、お姉ちゃんまたそうやって……あ、ごめんなさい玲愛さん」


「いや、別にいいけど」


 リリムちゃんの話が終わって、今度はリリアちゃんが自分の神様の恩恵を説明してくれることになった。それでリリアちゃんも、口で説明するよりもまずは自分のステータス画面と神様の恩恵の効果についての詳細画面を私に見せたほうが早いと考えたようで、リリムちゃんと同じように画面を開くとそれを私に見せてきた。


 プレイヤー名:リリア

 種族:人間 性別:女

 神様の恩恵:エイル

 職業:冒険者


「私の神様はエイルといって、調べてみたら北欧神話に登場する神様みたいで」


『エイルの恩恵の効果』


 ①医術の心得

 効果:レベルアップ時に回復魔法と支援魔法を覚えられる。


 ②癒しの献身けんしん

 効果:自分以外を対象として発動する回復魔法によって回復するHP・MPの回復量が増加する。


 ③不器用な医者

 効果:自分を対象として発動する回復魔法によって回復するHP・MPの回復量が減少する。


 私はエイルの恩恵の効果を確認すると、ちょっと笑ってしまった。

 それで画面を閉じたリリアちゃんに、どうして笑うんですかって怒られたんだけど。


「いや、ごめん。なんていうかその、またすっごいヒーラー向けの恩恵だなぁって思って」


 だってそうだろう。というかこれ絶対にこの恩恵を授かったプレイヤーはゲーム内でヒーラーになるだろう。ああ、ヒーラーっていうのは回復職ってことね。戦闘中に主に自分や仲間のHPやMPの回復を担うプレイヤーのこと。


 それで①の効果はもういいでしょ。重要なのは②と③の効果の方で。


「つまりリリアちゃんは、自分以外の人を回復させるのが得意なんだけど、反面で自分自身の回復はちょっと苦手だと?」


「そうです。だから私、自分自身のHPとMPが減った時は回復魔法じゃなくてポーションと聖水を飲んだ方がいいくらいで」


 なるほどね、それはまたちょっと大変そうだけど。

 でもこの恩恵の効果ならリリムちゃんと2人きりのパーティよりも、もっと大所帯の6人パーティの中でのヒーラーとしてのポジションでいた方が良いんじゃないかとも思うんだけど。


「でもリリムちゃんは攻撃特化の恩恵の効果で、リリアちゃんが回復特化の恩恵の効果を授かるなんて、けっこうな確率だと思うけどね」


 私がそう言うと2人もそこに関しては同意見だったようで。


「あー、それ私たちもちょっと思った。最初に2人で教会で神様の恩恵もらってさ。その後で街の公園のベンチの上で並んで座ってまず自分たちで自分の恩恵の効果見て、その後でお互いの恩恵の効果を教えあってさ」


「私もびっくりしちゃいました。でも、それでその後話し合って、今の私たちの役割分担みたいなのができてですね」


 そりゃあそうもなるわ。まあ、それはあくまで2人きりのパーティとしてやっていく場合の話で、別に3人以上の、2人に誰か別のプレイヤーが一緒になってパーティ組んだらまたパーティ内での役割とか、変わってくる可能性もあるけど。


「前線にはリリムちゃんが立って敵を攻撃して倒し、敵からの攻撃も一手に引き受けてリリアちゃんを守って、リリアちゃんはそれで傷ついたリリムちゃんを癒したり、戦闘のサポートをする、か」


 2人の神様の恩恵の効果を聞いた上に考えてみると、聞く前よりも合理的な布陣というか、むしろ最初からその形になるべくしてなったと言っても過言ではないというか。


「ちなみに2人はさ、その、面倒だけど最初からゲームをやり直して別の神様の恩恵を授かろうとかは考えなかったの?」


 アメノタヂカラオもエイルも、どちらにもプレイヤーにとってデメリットとなる効果もあったし。それで気に入らなければやり直ししても良かったのではと私は思ったんでそう質問してみた。

 すると2人とも、それは考えなかったと答えた。


「だって、リリアと一緒なら大丈夫な気がしたし」


「私も、攻撃と壁役をほとんど全部お姉ちゃんに任せるのはちょっと悪いなって思ったんですけど、だけどこれはこれで面白い戦い方ができるんじゃないかなとも思って」


「…………そっか」


 私はそれだけ言うとそれ以上はもう何も聞かなかった。

 それからはまた3人で他愛もない話とかしながら、街に帰って。それから引っ越し作業のクエストをやり始めたんだけど。


 とにかくリリムちゃんとリリアちゃんは本当に仲の良い双子姉妹で、戦闘での連携のうまさについても、元をたどれば2人の神様の恩恵の効果がその連携を生み出す大きな一因となっていたことを私は知ったわけだ。

 まあ本当は、もしも2人に授けられた神様の恩恵が別のものだったとしてもリリムちゃんの選んだ初期武器がハンマーで、リリアちゃんの選んだ初期武器が杖の時点でどっちにせよ今の2人の役割分担、今の2人の連携での戦いに行き着いていたんじゃないかとも思うけどね。


 ただ、それにしても神様の恩恵っていうのは本当にプレイヤーごとにランダムに決められて与えられるものなんだろうか。

 2人の例を聞く限りだとむしろ……いや、これは考えすぎかな。ごめん、今のは忘れて。


<第3階層:円環の蛇の遺跡:ボス部屋>


 時間は戻って現在、リリムちゃんとリリアちゃんの2人は回復を終え、HPとMPはどちらもほぼ全快状態となっている。

 そして2人は私の方を見てきて、私がそれで無言でうなずくとリリムちゃんが最後に残っていた死にかけだった6体目のラミアにトドメをさした。


 さて、私たちの予想だとこのまますぐにクエストボスがこの部屋に出現して最後のボス戦が始まるのだと思っていたんだけど。

 どうやらこのクエストはそこらへんちょっと優しかったようで。

 ラミアを6体倒した後に、ボス部屋の外へ繋がる扉がいったん全部開いた。

 そして視界の右上に現れたタイマーが3分から1秒ずつカウントされ減っていくのを見て、私たちはきっと引き返すならここが最後のチャンスなんだなということを理解した。

 その3分のカウントが終わったらボス部屋の扉はまたすべて閉ざされ、そしていよいよ今回のクエストのクエストボスとの戦いが始まると、そう考えて間違いないだろう。

 おそらくはラミア6体と戦ってみて、それでどれだけ苦戦したのかというところでプレイヤーたちに先に進むか、あきらめて引き返すか選択のチャンスを与えてくれたんだろう。

 あとはまあ、ラミア戦で減ったHPとMPもこの時間で回復しておけと。


「2人ともどうする?、きっとこの後ボス戦で、引き返すなら今が最後のチャンスなんだと思うけど?」


 私は一応念のために2人にそう聞いてみた。

 え?、答え?……そんなの決まってるじゃん。2人ともやる気は十分だったよ。


 3分が経過し、視界右上のタイマーが消滅した直後、予想通りにまたこのボス部屋へ続く12の扉はすべて閉じられた。

 それまで祭壇に真っ赤に燃え盛っていた炎の色が一瞬にして青色へと変化すると、祭壇の中から青い炎が一塊となって空中に浮きあがり、炎は形を変えて輪っか状になった。


 そして、そいつは炎の中から姿を現した。


「うぇぇ!、なにあれ、気持ち悪い」


「2匹の蛇、ですか?」


 リリムちゃんとリリアちゃんはボスのその姿をみてそれぞれそう感想を述べた。

 私はというと、特に何も言わず内心でやっぱりかと思っていた。


 今回のボスクエストのクエスト名にもなっている『円環の蛇』。

 私たちが今いるこのダンジョンの名前も円環の蛇の遺跡。

 遺跡の壁画に描かれていたのは、この階層では昔、蛇を神聖視する宗教のようなものがあったこと。


 円環というのは、つまりは輪っかということで。

 それ故にこのクエストのボスモンスターの姿が、2匹の蛇が輪っか上に、お互いがお互いの尻尾に噛みついているような姿をしていたとしても、なんら不思議ではないだろう。


 モンスター名、ウロボロス。

 そういえばこのダンジョンの入口の上にも、2匹の蛇が絡まっているような絵が象られたレリーフのようなものがあったっけ。


 ウロボロスは、1匹は金色の鱗に覆われた銀色の眼をした蛇。

 そしてもう1匹はその逆で、銀色の鱗に覆われた金色の眼をした蛇で。。

 HPケージは400%と、マダムバタフライやエリュマントスと同じくらい。

 でも私は、てっきりギガントロックゴーレムと同じ500%くらい、つまりはHPケージが長いので5本分はあるのかと思っていたんだけど。まあ少ないならその方が良いに越したことはない。


 と、その時の私はそう思っていた。


 だけども私はその後でウロボロスとの戦いが始まってから、こいつは仮にHPケージが今の半分の200%だったとしても十分強いというか、間違いなく今まで私が戦ったモンスターの中で最強だということを知らされるはめになった。


 その理由はすごく単純だ。


 ウロボロスには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。


 そう、それは一切のダメージを与えられなかったという意味でもある。

 つまりは無敵の守り。そんなんどうやって倒せと言うんだ。ふざけんなし。

 私はそれに気づいた時思ったよ。あー、これ今度という今度はマジで無理ゲーだわ、と。


<神様の紹介>

〇アメノタヂカラオ

下界では日本神話に登場する神で、『筋肉』を司る男神。

神界では腕利きの大工であり、働いている作業場のナンバー2、次期棟梁の座に最も近い神と呼ばれるベテランである。

力持ちであり、筋骨隆々を絵に描いたかのようないでたち。

口数は少なく、いわゆる結果で物を語る生粋の職人だが、仲間たちからの信頼は厚く、また自身も周囲への気配りをかかさない性格。

釘を打っている最中に誤って自分の指を打ってしまった時でも、痛いと一切言わなかったことから、痛覚がないんじゃないのかと周囲に噂されているらしい。(実際は我慢強いだけでめちゃくちゃ痛い。)


〇エイル

下界では北欧神話に登場する神で、『慈悲』を司る女神。

神界ではとある小学校で保険医をしている。

元々は看護師を目指していたが、大学在学中に医師免許と保健師と臨床心理士の資格も取得できたため、独立して田舎で小さな診療所を開き、しばらくの間は女医をしていた。

そして近くの小学校で養護教諭(保健室の先生)が退職した時に学校側から声がかかり、診療所をたたみ小学校の保険医として雇用が決まったという過去を持つ。

性格は温厚であり、学校の生徒からは好かれている。独身であり容姿もそれなりに優れているため、同校で働く男性教師の何人かからアプローチをうけているが、本人の恋愛偏差値がゼロであるためにあえなく撃沈している。

生徒の仮病を100%見抜く観察眼と、仮病をしてまで授業を休みたい生徒の心に寄り添うことができる最高の先生である。あと、意外と酒豪とのこと。


次回、ついに現れたクエストボス、ウロボロス。戦いの幕が切って落とされた。

果たしてその攻略法は存在するのか!?…………いや、ないわけはないんだけどね。

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