ニートな女神と初めての競争
Q.学生時代100メートル走何秒くらいだった?
筆者の答え「あんまり走り切ったことないけど、強いて言うなら21秒?」
質問者「…………悪い」
筆者「いや、こっちこそ」
3人で受けた2つの住人クエストの1つはいわば引っ越しの手伝いだった。
グランガンの街のとある一軒家に住む1人暮らしのおばさんが別の一軒家に引っ越しするので荷物の運び出しを手伝うというもの。
手伝いと言っても、実際に荷運びをするのはプレイヤーだけであって依頼主のおばさんはクエスト中私たちの働きぶりをただ見ているだけだったのだけど。
運ぶべき荷物は段ボール箱でちょうど50箱あり、それぞれの段ボール箱は持った時にプレイヤーが感じる重さが微妙に違うのだけど、基本1人でどれも持ち運べる。
引っ越し前の依頼主の家の前には荷車があり、その車には1度に段ボール箱を10個まで載せることが可能で、荷車は段ボール箱5個まで乗った状態でならプレイヤーが1人で、6個以上乗ってる場合はプレイヤーが2人で引いて動かすことができる。
前の家から新しい引っ越し先の家まで荷車を引いて、新しい家の中へ段ボール箱を入れて空になった荷車を元の家まで引いて帰り、また荷物を載せて引っ越し先へというのを繰り返すのだ。
もちろん荷車に荷物を載せずに段ボール箱を1個ずつ手にもって徒歩で新しい引っ越し先まで荷物を運んでも問題はないが、このクエストには時間制限があって2時間以内にクエストを終わらせないとどういうわけか失敗扱いになるので効率を重視するならやっぱり荷車を使うべきだろう。
「それじゃあまずは皆で荷車に段ボール箱を10個載せて、私たちのうちの2人でそれを引っ越し先まで運んで1人は休憩する。それで先の2人が帰ってきたら、次は休憩してた人と2回連続で荷車引く人が一緒に荷車を引いて。3回目は2回連続で荷車引いた人が休憩……って感じでどうかな?」
「うん、それでいいと思うよ」
「はい、それで行きましょう」
「よし、じゃあ最初と2回目連続で荷車引くのは私がやるから」
私たちは3人で協力してクエストにあたった。
3人で荷車に段ボール箱を10個載せて、2人で新しい引っ越し先まで運び、2人で引っ越し先の家の中に段ボール箱を10個入れて、1人で荷車を引いて元の家に戻る(1人は徒歩で戻る)。
という流れで、つまり1度で10個の段ボール箱を移動させるのだ。1回にかかる時間はおよそ20分くらいであり、段ボール箱は全部で50個なので5回、つまり100分あればクエストをクリアできる計算になり、途中でもたもたしなければ2時間(=120分)以内にはクエストはクリアできる。
そしてクエストが始まりまずは3人で荷車に段ボール箱を10個載せて、最初は私とリリムちゃんの2人で引っ越し先の家まで荷車を運ぶことに。リリアちゃんが依頼主のおばさんと休憩。
荷車は3人以上で引くことは仕様上できないので、これが一番効率が良いのだ。
ちなみにプレイヤーが手でもって段ボール箱を運ぶ場合、段ボール箱は1度に1つしか持てず、2つ以上重ねて持とうとするとなぜか途端に重量が増して持ち上げることができなくなるのだけど、いったい段ボール箱の中身は何なのかね。
まあ段ボール箱を開けて中を見るわけにもいかないしそもそも開けられないのだけど。
1度目の荷運びの中で一緒に荷車を引いていたリリムちゃんから、さっきのビッグホーク戦とその前の崖の攻略の時のことについて色々と質問されたよ。
たとえばビッグホーク戦でビッグホークの攻撃、口から放たれる炎や大きな竜巻などを私が確実に食らったはずなのにダメージが一切なかったこと。
超音波攻撃も食らったはずなのに混乱の状態異常にならなかったのはなぜなのか、とか、本来であれば他のプレイヤーが持つスキルや魔法についてそういう風に直接聞くのはあんまり良くないと言われてるのだけど、リリムちゃんはそんなこと気にせずストレートに聞いてきた。
「ダメージがなかった理由は私には火属性と風属性、まあついで言うと水属性もなんだけど。その3つの属性の魔法攻撃では一切のダメージを受けないんだ。そういうスキルを持ってるから」
「え、なにそれ最強じゃん!?」
「うーん、でもダメージ無効にできるのはその3つの属性だけで他の属性の魔法攻撃は普通にダメージ通るし物理攻撃ダメージまでは防げないからなぁ」
……まだ今のところは、の話だけども。
「じゃあさじゃあさ、混乱の状態異常にならなかったのはなんで?、それもスキル?」
「うん、そうだよ。私は、混乱以外でも毒、麻痺、眠り、やけど、あとは酩酊もか。それと混乱を合わせた6つの状態異常にはもうならない。個別の状態異常に無効化スキルがあってね」
「なにそれ!!、最強じゃん!?」
「いやまあ……そうでもない、いや、そうかな?」
「うん。それってここまでの階層で出てきた状態異常全部ってことじゃん!!、強いよ!!」
私はリリムちゃんには正直にスキルのことを伝えてみた、1度他のプレイヤーに全部教えてみた時の反応を見てみたかったっていうのもあるし、リリムちゃんとリリアちゃんの2人は、一応信用してるから。
だけど、やっぱりすごく驚かれるし、他のプレイヤーからしたら私の現時点での強さって異常なんだなってことがこれで確信できたよ。
ゴッドワールド・オンラインというゲームで、私以外の普通のプレイヤーの場合。
レベルアップ時や特定の条件を満たしたときなどに新しいスキルや魔法を習得する。
プレイヤーごとに習得できるスキルや魔法は最初のキャラクターメイキングの時にプレイヤーが選んだ種族と初期武器、さらに第1階層の始まりの街の教会でプレイヤーが授かる神々の恩恵などの要素を複合的に組み合わせた結果決定されているらしい。
このゲーム、スキルだけでも1000種類、魔法なら2000種類以上あるとか言われていて、今現在実際にどれだけあるのかゲーム運営も明言していないそうで、けっこう頻繁に新しい魔法やスキルを発見したという報告が攻略サイトによせられてるって話だけど。
ただ、そのことを踏まえた上で私のことについて考えてみると。
私の場合は、モンスターを倒したときやクエストの報酬なんかでは新しいスキルや魔法を覚えたりもするけども、その代わり普通のプレイヤーのようにレベルアップの時に新しいスキルや魔法を覚えたことは1度もない。
これはたぶん、神様の恩恵がアストレアだった場合はそうなるかもしれないと私は思っている。そういうデメリットでもないとアストレアの恩恵の効果はチートが過ぎるから。
まあバランス取るならもっと多く(あるいは大きな)デメリットがないとダメなんじゃないかとか自分で思う時もあるんだけどね。
1度目の荷運びが終わり、帰りはリリムちゃんが1人で空の荷車を引いて私は徒歩で元の家まで戻り、また3人で段ボール箱を荷車に載せて。今度は私とリリアちゃんの2人で荷車を運ぶことに。
それで笑っちゃったのはその時に、リリアちゃんからもお姉ちゃんとまったく同じ質問をされたことでさ。
「ぷっ、ふふふふっ」
「え、どうしたんですか?、あ、やっぱりそういうのって聞いたらダメですよね」
「いや、ごめん。そうじゃなくて、やっぱり双子なんだなって思って」
「……?」
私は笑いながらもリリアちゃんにも同じように私の持っているスキルについて教えてあげたら、リリアちゃんはリリムちゃんほどではなかったけどやっぱりすごく驚いた。
それでリリアちゃんはさらにパラライズの魔法とか、魔法についてもあれこれ聞いてきて、私は聞かれたことには全部正直に答えたんだけど。
「あの、玲愛さんが今の時点でそんなにたくさんのスキルや魔法を覚えてるのって、やっぱりその、玲愛さんの神々の恩恵の効果が関係してるんですか?」
「ああー、それは……ごめんね。それはちょっと、教えられないかも」
リリアちゃんの疑問はある意味では正しい。
ただ、ここでその答えを教えちゃうとそれこそ色々と問題があるというか、たぶんそれは絶対に他のプレイヤーには言わないほうがいいことなんだと私は思ってるから。
リリアちゃんとリリムちゃんの2人はたぶん会ったことないだろうけど、私の強さの秘密を全部教えるととあるプレイヤーの正体も同時に教えちゃうことになるからなぁ。
「あ、そそそ、そうですよね。さすがにそれは……ごめんなさい」
「いや、いいよ。別に気にしてないから」
そんなやり取りをしながら、2回目の荷車運びは終わり、3回目は私が休憩でリリムちゃんたち2人での荷車運び。2人はやっぱり息が合ってるのか15分もかからずに戻ってきて、私が早いなと驚かされることになったのだけど。
「それで次はどうするんだ?」
「あー、4回目ね。ここはジャンケンで決めるか」
そうして行ったジャンケンは大失敗だった。
1回目:私がチョキ、リリムちゃんがグー、リリアちゃんもグー
これにより荷車を運ぶ2人のうち1人は私に決まったのだけど。
2回目:リリムちゃんがパー、リリアちゃんもパー。
3回目:リリムちゃんがグー、リリアちゃんもグー。
10回目:リリムちゃんがチョキ、リリアちゃんもチョキ。
「(お、終わらねぇ~。さすが双子って感心してる場合じゃないな。時間切れになるわ!)」
そこでそう思った私は、もう諦めてリリムちゃんを指名して4回目の荷車運びをした。
その際には昔から2人でジャンケンしたらほぼ永久に終わらなかったなどという双子ならではのエピソードをたくさん聞かされて。
そして私とリリアちゃんの2人で荷車を運んだ5回目、今度はリリアちゃんの口からつい今さっきリリムちゃんの口から語られたのとほぼ同じエピソードを聞かされた。
なんていうかこう、普段フィールドで戦ってるのを見る分には、あと普段の性格とか言葉遣いとかは対照的なのにやっぱり根っこの部分では繋がっているんだなって思ったし、あとちょっとだけ、私は一人っ子で良かったなとも思った。
「リリアちゃんはさ、お姉ちゃんとリアルでケンカしたりすることないの?」
「え、しょっちゅうありますけど」
「え、あるの?」
「はい。でもすぐに仲直りできるんです。だって相手が今何を考えているのかとかだいたい言う前にわかっちゃいますし、そうなるとケンカも長続きしませんよ」
もはやお互い未来予知レベルで相手の心情を理解していれば、ケンカなんてできないか。
いやいや、そこまで行くともう神の領域に近いと思うよ?
「玲愛さんは兄弟や姉妹はいないんですよね?」
「うん、いない」
「じゃあ、友達とかとケンカしたりとかは?」
「ああ、私の場合は……」
私の場合はそもそもそのケンカするほどの相手と言うか、友達自体が今そんなにいないからな。
でもヤヌスとはたまに言い合いになることもあったけどそこまで激しく、少なくともケンカって呼べるレベルの口論になったことって考えてみると1度もないな。
いや地元にいたころも、そういや私って他の神とケンカしたことってほとんどないかも。
「私はあんまり人とケンカしないっていうか、一定の距離を保ってるというか。けど、幼稚園の頃とかはたぶん、あったと思う」
「そうですか。それはいいですね。ケンカするほど仲が良いって言葉もありますけど、私はやっぱりあんまりケンカとか、人と争うのは苦手です」
「リリアちゃんは優しいんだね。あ、じゃあお姉ちゃんの方は?」
「お姉ちゃんも基本は優しいですよ。だけど、たとえば私がクラスの男子に何かひどいこと言われたりしてショックを受けた時には、ものすごい剣幕で怒ってくれて。あと、困ってる人を放っておけないタイプなんだと思います」
「ああ、なるほど」
やっぱり同い年の双子だとしてもお姉ちゃんという肩書は伊達じゃないってことか。
戦闘中もリリムちゃんはモンスターに特攻しかけているようでいて、実はチラチラ後ろにいるリリアちゃんのことちゃんと見てたこと私は知ってるし(一緒に前線で戦ったからね)。
まあ、それはきっとリリアちゃんも気づいてるだろうからあえてここでは言わないけど。
「あとお姉ちゃんは私と違って、すごく、モテます!」
「え、モテる?」
「はい。クラス内でも男子の人気が高くて、よく声をかけられるんですけど。お姉ちゃんはその、恋愛にあんまり興味がなくてですね。それで男子たちはことごとく玉砕していくんですよ。見ててちょっとかわいそうなくらい」
「そうなんだ。でも、それならリリアちゃんはどうなの?」
「え、私ですか?、私はダメですよ。男子から話しかけられることもないですし、話しかけられても私は、男の子と何話したらいいかとか全然わかんないですから」
ああ、うん。わかるわ、その気持ち。
っていうか学校ならクラスに1人は絶対いるよね、そういう子。
「2人って、リアルの顔は似てないの?」
「いえ、そっくりですよ。だから髪の毛の分け目変えたりとかして違い出してるんですけど、親はさすがに間違えないですけど友達とか先生とかはそれでもたまに間違えられます」
「ふーん。でも顔がそっくりならお姉ちゃんの方だけモテるのはどうしてなのかね」
「うーん、お姉ちゃんは私と違って明るくて、男子女子かかわらず基本誰とでも普通に話せるからだと思います」
「そっか」
いや、これあれだぞ。絶対リリアちゃんのことを好きな男子もいるだろ、クラスに。
ただリリアちゃんの方はあんまり男子と話すのが得意じゃなさそうだし、だから無理に話しかけたりすると逆効果だとか考えて誰も話しかけないだけであって。
ああ、きっと仲良くなれるきっかけがないかとか探してるんだろうな、男子たちは。
「え、でもそれならさ。リリアちゃんの方はあるの?、その、恋愛への興味みたいな?」
「わ、私ですか?、私は……お姉ちゃんよりは、たぶん」
まったく救われない話だよ。
誰とでも気楽に話せる姉は恋愛に興味はなく、逆に恋愛に興味のある妹は男と話すのが苦手って。
2人のいる中学のクラスメイトの男子は本当に救われない。まあ、クラスの男子人気が2人だけで独占してるわけでもないんだろうけど。もしもクラスで他に優しくて可愛い子とかに皆彼氏がいたり、好きな男子がいたりして。2人だけがフリーなのだとしたらけっこうなことだ。
でも、それで言うならまだ恋愛に興味あるっていうリリアちゃんの方が、何かきっかけさえあれば普通に誰かと……あれ、これもしかするとリリアちゃんの方が陰ではモテてる可能性が高いぞ?
ただ当の本人はそのことには一切気づいていないっぽいけど。
「(がんばれ、男子たち)」
私は心の中でリリアちゃんと同じクラスの男子たちにエールを送った。
別のクラスの男子や先輩たちとかにも好かれてる可能性もあるけど。
5回目の荷車運びが終わり最後は私が空になった荷車を元の家の前まで引いて行ったところでクエストは無事に終了した。
依頼主のおばさんからは報酬として7000Gと、引っ越しの際に処分する予定だった品として家の中に飾っておく置物の岩をもらった。
それぞれ1個ずつもらったのだけど、これ6人で受けてたら処分する予定だった置物も6個になってたのかよっていうか処分する予定だった物を報酬にするなよな。
「おもしろいクエストだったな」
「そうだねお姉ちゃん」
リリムちゃんとリリアちゃんはそれでも満足そうだったからもういいけどさ。
さて、それでこのクエストが終わったところで時刻はもう午後6時過ぎ。夜になっていた。
意外と時間がかかってしまったのだけど。ここで2人はそろそろ夕食の時間だからということでいったんログアウトした。
だけども今日、午後8時からまたログインする予定だと言っていたので残る1個の住人クエストは後でやろうということに。
残ったほうのクエストは特に時間指定も時間制限もないないクエストで、人数制限だけがあるクエストだったから。
「それじゃあお姉さん、また後でね」
「し、失礼します」
私もそれで2人がログアウトしたのを見送ってからログアウトして現実に戻った。
ただ私は夕食は食べなかったよ。なんかお腹あんまり空いてなかったから。
午後8時までは部屋の掃除したり、スマホで動画見たりして時間を潰した。
それで午後7時50分に再びゲームにログインしてみたら、2人も先にログインして待ってようと考えたのか私がログインした直後に街の祭壇の上に2人の姿が現れて。
それで祭壇の上で3人顔を見合わせてちょっと笑っちゃった。10分前行動したはずなのに鉢合わせると、やっぱりちょっとおかしくなっちゃうよね。
「あはははは、そ、それでお姉さん。もう1つのクエストってどんなのだっけ?」
「んー、ああ。モンスター退治だよ」
私たちが受けたもう1つの住人クエストは、モンスター退治だった。
鉱山の地上と地下でそれぞれモンスターを300体ずつ倒すというだけのシンプルなものだったけど、1人でやるのは時間がかかりすぎるだろうと判断したのか2人以上で受けられるクエストになっていた。
私なら1人でも短時間で余裕でクリアできただろうけどね。
それで採掘場で依頼主のおじさんにあって話を聞いて。
私は1人で鉱山の地下を、2人には地上を担当してもらうことにした。
ただ、その時にリリムちゃんが。
「あ、じゃあさ。お姉さん1人と私たち2人、どっちが先にモンスター300体倒してくるか競争しない?」
「競争?」
「うん。ほら、私たちの視界の右上には地上と地下、それぞれ残り300体ってカウンターでてるでしょ?」
私はそれを見て理解した。
このクエストを受けた私とリリムちゃん、リリアちゃんの3人の視界の右上には今2つのカウンターの数字が見えている。
すなわち地上残り300体、地下残り300体というモンスター討伐カウンターが。
「つまり先にカウンターの数字を0にしてここに戻ってきたほうが勝ちってこと?」
「そう、それで勝ったチームは負けたほうになんでも1つお願いできる。どう?」
「お、お姉ちゃん、さすがになんでもはちょっとまずいんじゃない?」
「なんだよリリア、いいじゃん。ゲームなんだからさ」
私はあんまり乗り気ではなさそうなリリアちゃんには悪いとは思ったけど、面白そうだったんでリリアちゃんの提案っていうかそのゲームに乗ることにした。
そうしてゲームは開始され、もちろん勝ったのは私の方だった。
「あー、やっぱり負けちゃったかー」
「やっぱりって、お姉ちゃん勝つ気でいたんじゃないの!?」
「いや、勝つ気でいたよ?、でもほら、ゲーム開始からなんかすごい勢いでお姉さんの方のカウンターが減っていくの見た時に思ったんだ。あ、これ私たち絶対負けるなって」
「そ、そんなぁ~」
……やっぱりちょっと大人気なかったかな。私、ゲームとか勝負で手加減とか苦手だからつい最初から全力でやっちゃって。気づいたときにはもう終わってた。
それで私たちは依頼主のおじさんから報酬として5000Gと宝石のトパーズを3個ももらっちゃった(もちろん3人にそれぞれ個別に)。
なんか前にトパーズを1個渡して指輪に変えてもらうクエストがあった気もするけど、トパーズって洞窟の中に出現するレアモンスター、トパーズリザードが落とすアイテムで、普通なら手に入れるのすごく難しいアイテムなんだけど。
なるほど、先にこっちのクエストやっていればそっちはすぐに終わらせられたわけか。
これまでもけっこうあったんだよね。クエストAの報酬の品がそのままクエストBに必要だったりとかするパターン。たいていがトパーズみたいに手に入れるのが難しいアイテムだったんだけど。
きっとそこらへんはゲーム運営側もちゃんと色々考えて調整した結果なんだろうな、きっと。
「お姉さん、ゲームに負けちゃったからなんでも1個お願い言っていいよ。って言っても私たちにできることに限られるけども」
クエストが終わった後でリリムちゃんにそう言われた私は、そこで肝心のお願いの内容を何も考えていなかったことに気づいて困った。どうしようかな。
でもここで遠慮してもリリムちゃんはしつこくそれじゃあダメとか言ってきそうだしな。
そこで私は閃いた。そうだ、それならもうこの際だから2人には最後まで私につきあってもらおうか。
「あ、じゃあさ2人とも、1つお願いがあるんだけども」
「うん、なんでも言って」
「あ、あの、できればあんまり変なことはちょっと……」
リリアちゃん、変なことってどんなことだよ。逆に聞きたいんだけども。
「私とさ、あともう1個、クエスト一緒にやってくれない?」
「え、クエスト?」
「うん、そう。この階層で最高難易度のボスクエストなんだけど……」
私がそう言ったら二人はそれでポカンとした顔をした。
ああ、さすがにこのお願いは無理だったかな?、断られるの覚悟で聞いたんだけどさ。
次回、この階層で最高難易度のボスクエストに挑む。
クエスト内容は、第1階層の洋館クエストに近い形になるかと思われます。
リアルのRPGなどを参考にしながら、毎回強いボス戦、それに登場するボスがどんな奴で、どんな厄介な攻撃をしてくるのかということを常に研究中の筆者。
調べれば調べるほどやばいボスモンスターがたくさんいることを知る日々を送っています。
個人的には、途中でHPを回復してくるボスが嫌いです。絶対長丁場になるからね。