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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての鷲

以前にビッグホークと戦った際は初めての鳥というタイトルをつけましたが、その時につけたかったもう一方のタイトル案をここで採用。

 リリムちゃんとリリアちゃんの2人はゲームにログインしてきたばかりで崖のビッグホークに挑んで返り討ちにあって死んだら所持金も半分になる。

 だから崖のフィールドに行く前に2人はギルドの銀行でお金を預けたりとか、後はアイテムの補充などをすませるために街の北門の前で私たちはいったん別れた。

 私の方の準備はもう万全だったから私は10分くらい門の前で壁に背を預けながら2人を待っていたんだけど。その間にも崖のフィールドに行く他のプレイヤーたちや、あるいはフィールドから街に戻ってきたプレイヤーたちが私のこの階層では見慣れない豪華そうな(かつ強そうな)装備をまじまじと見てきて。

 ああ、やっぱり街中じゃ戦闘用の装備じゃなく普通の洋服とかに変えておいた方がいいのかもしれないなと私は思った。

 というか、今までもずっとそうしていればもしかしたら竜鱗の乙女とか、蝶々仮面とか格好いいけどちょっと恥ずかしい二つ名をつけられてそれで噂されることもなかったのかもしれない。


「……いや、でも。それでも結局はフィールドやダンジョン内じゃ戦闘用の装備着て戦ってる姿とか目撃されてただろうし、どっちみち二つ名はつけられていたか」


 でももうほんとに、勘弁してもらいたいよね。

 そもそも二つ名とか、私的にはそんなのなくてもいいし、それでプレイヤー名の代わりにその二つ名で名前とか呼ばれたりする度に気恥ずかしいからね。

 もう手遅れなんだけど、私はこのゲーム内であんまり目立ちたくはなかったんだけどな。

 いったいどこで間違ったのかな。やっぱり第1階層で迷宮ボスのドラゴンをソロで倒しちゃったのは問題だったのかもしれないな。


「それこそもう手遅れだから別にいまさら良いんだけども」


 昨日の段階ですでに殴ったら爆発する恐ろしいハンマーを扱う重厚な鎧を来た女性のソロプレイヤーの話が他のプレイヤー間で噂になっているかもしれないな。VR世界内での人の噂ってリアルのネットの書き込み並みの速度でプレイヤーたちに伝わっていくからな。

 私も街中や冒険者ギルドとかで他のプレイヤーと話したり、話しているのを聞いたりもするから私以外でも噂のプレイヤーとかいたら聞くこともあるんだけど。

 その噂になってるプレイヤーってだいたいが複数人で組んでるパーティだし、やっぱりこのゲーム内でソロプレイヤーは少数派で珍しくてこの階層で今一番話題に上がるソロプレイヤーは間違いなく私(=蝶々仮面)だった。


「おい、あれ見ろよ。あれって噂の蝶々仮面じゃないか?」とか。

「お前ちょっと話しかけて本当のプレイヤーネーム聞いて来いよ」とか。

「マジで女性のソロプレイヤーなんだな。しかもチラっと見た限り顔も可愛い。萌え~」とか。


 私も周囲のそういう反応にはもう慣れたし、特に用もなければ私の方から他のプレイヤーに話しかけることも稀で、でも向こうから声かけられたら普通に応対する気ではいるんだけど。

 どうやらドラゴンやらマダムバタフライやらをソロで倒したらしいっていう話と、後はまあ見た目の印象とかも少しあったのかもしれないけどなぜか直接私に話しかけてきてあれこれ聞いてくるプレイヤーというのは私が思っていたほど多くはなかった。

 無論ゼロではなかったし、それで私も話かけて来たプレイヤーに私が教えても問題ないかなと判断したような基本的な情報(本当のプレイヤー名を除く)なら教えてあげることもあったし。

 でもなんか、やっぱり私ってちょっと近寄りがたい雰囲気出ちゃってるのかな。大勢のプレイヤーに囲まれて質問攻めに遭うのはさすがにごめんだから私的にはそっちの方が良いんだけども。

 もしかしたらこのサーバーのプレイヤーたちはそこら辺はちゃんとしていて、大勢で1人のプレイヤーを囲んで質問攻めにするとかいう当人からしたら確実に迷惑がられる行為はしないっていう暗黙の了解でもあるのかもしれないけど。まあ、VRゲーム内での一種のマナーみたいものか。


「それもどこまで持つか怪しいところなんだけど」


 私が小声でぼそっとそうつぶやいた時、冒険の準備を整えてきた2人が門のところに戻ってくるのが見えた。


「あの、玲愛さん。お待たせしました」


「へへへ、お待たせ~」


「うん。私の方の準備も出来てるし、それじゃあフィールドに行こうか」


「「はい!」」


 こうして私たちは街の北門を抜けて崖のフィールドへと移動したのだった。


<第3階層:崖>


 そして崖のフィールドに出た直後に私たち3人はそれぞれの武器を取り出した(というか手元に装備中の武器を出した)のだけど。

 リリムちゃんは巨人のこん棒という槌で、リリアちゃんの杖はグランガンの街で売っているらしい市販のものだったんだけど。


「あれ?、お姉さん、防具だけじゃなく武器も変えたの?」


「うん。ああ、そっか。それまだ2人に言ってなかったか。ごめんごめん。これは、まあ見たらもうわかると思うけど、リリムちゃんと同じで槌だよ」


 リリムちゃんが私の手元に出現したギガントロックハンマーにいちはやく気づいて質問してきたので、私は2人に私の武器を槌に変えたことと、槌を装備するためのスキルはこの階層の住人クエストの報酬の中にあったことをまずは教え。

 いきなり戦闘で私がハンマーで殴ったモンスターが爆発消滅しても驚かないように2人にはあらかじめギガントロックハンマーの特殊効果を教えてあげたのだけど。まあまず2人とも私の説明を聞いて驚いたよね。意外にもリリムちゃんの方がなんかすごい衝撃受けた顔したんだけど。

 でもやっぱりそこまで教えると確実に気づかれるというか、聞かれるよね。


「あの、もしかしてその武器と防具ってこの階層の迷宮ボスを?」


 リリアちゃんがなんだかおそるおそるといった感じでそう聞いてきた。

 この階層の迷宮ボスを、で言葉は終わっていたけどもちろんそれに続くだろう疑問はソロで倒したんですかという質問に違いない。


「そうだよ。今回も、なんとか頑張ってソロで初回撃破したら金の宝箱出て。その中身がこれ」


「や、やっぱり!」


「マジで!?、それじゃあお姉さんもう迷宮突破しちゃったんだ。あれ、でもそれですぐに第4階層には行かなかったんだね」


「うん。別にそんなに急いで先の階層に進みたいわけでもないし、まだ街のクエストが残ってたからね」


 私は2人にそう言ったけど、でも今回の迷宮ボス戦は召喚スキル使って強引に勝っちゃったわけで、いやもちろんそれでも勝ったことに違いはないのだけど。召喚スキルで召喚されたモンスターの力使って勝ってもあんまり自分の実力で勝ったって気になれないし、やっぱりせめてトドメの一撃くらいは自分の手でやった方が良かったな。

 あと私が今日この後2人に協力して一緒に受けてもらおうと思ってる住人クエスト、そのクエストとあともう1件ボスクエストをクリアしたら私がこの階層の住人クエストを全部クリアしてコンプリートすることになるってことは教えないでおいた。

 それ教えるとまた色々と聞かれたりして面倒だと思ったし。


 あ、そうだ。でもそれならボスクエストの方も2人に一緒にパーティ組んで受けてみないか後で聞いてみようかな。3人パーティでバランスも悪いけど、2人がやる気になってくれたら負け覚悟で挑んでみても別にいいだろう。

 なんたって2人はビッグホークに戦いを挑んで負けてもすぐに再戦挑んだっていうんだし、それも負け覚悟の上だったに違いないから。


「とにかく歩きながら話そう。あんまりのんびりしてると夜になっちゃうし」


 私はとりあえずそう言って歩き出すと、2人もそれで私について来た。

 それでこのメンバーでの連携についてだけど、リリアちゃんは基本的にいつも通りリリムちゃんの支援と回復に徹してもらって私の方は特に支援はいらないけど必要だと思ったらその都度声をかけるということにしておいた。

 そしてそれから始まったこの崖での初戦闘で、2人は私が私のハンマーで殴り飛ばしたモンスターが本当に爆発したのを見て絶句。

 結局その戦闘では私がすべてのモンスターを倒してしまって、戦闘終了後に私は2人に話しかけた。


「どうしたの?」


「い、いや。なんていうかその、先に話聞いてたけど実際見てみたらすごすぎて」


「はい。あの、びっくりしました。その、ハンマーで殴ったモンスターが直後にドカーンって爆発して。その武器、すごく怖い、あ、えっと、すごく強いですね」


 あ、リリアちゃんも今怖いって言った。やっぱりそうだよね?


「武器だけ変えたほうがいいかな?、やっぱり爆発音うるさくて戦闘に集中できない?」


 私が2人にそう聞いたらけれども2人は首を横に振った。


「いいや、そのままでいいよ。っていうかなんか見ててすごく格好良かったし。私もそれ欲しいな」


 リリムちゃん、それでまさかソロで迷宮ボスに挑んだりしないよね?


「私も、最初は驚きましたけどそれで殴ったら爆発が起きるんだってことを覚えた上でなら、すぐに慣れると思いますし。それに武器だけ変えちゃうと玲愛さんの格好がチグハグな感じになりませんか?」


 おおう、リリアちゃんはちゃんとわかってるな。その通りだよ。


「うん。だから私もできればこのままで行きたいんだけど、2人の許可も得れたようだし、それじゃあこのままで」


 ということでそれからも私はそのままのギガントロックハンマーを装備した状態でモンスターを殴殺爆殺して行き、2人もすぐにその爆発音には慣れたようだ。

 そして私たちはさくさく崖のフィールドを進んでいきついにあの吊り橋の前までやってきた。あの吊り橋っていうのはもちろんビッグホークのいる場所に通じている渡ったら落ちて戻れなくなる吊り橋ね。


「すげぇ、こんな短時間でもうここまで来ちゃったよ」


「やっぱり人数が多いと戦闘も楽だし早く進めるね、お姉ちゃん」


 2人は吊り橋の手前でそれまでの戦闘で減ったHPやMPを回復させながらそう言ったけど。

 実はソロプレイヤーほど自由でもなく、3人以上のパーティよりも戦闘に安定感がない分2人でのパーティというのは意外と攻略に時間がかかったりもするようで。

 だから私が加わって3人パーティになったことで2人で冒険する時よりは楽に戦闘も行えて。

 まあ私は前衛特化が2人に支援・回復役が1人だと逆にバランス悪くなって大変かもと思っていたんだけどそこのところは問題なかったようで何よりだった。


 ここまでの戦闘で、崖のフィールドのザコモンスターと戦ってきてたいていのモンスターは私とリリムちゃんの攻撃で一撃で倒せていたんだけど。これは昨日の時点でも街と迷宮を行き来していた私もすでにわかっていたのだけどやっぱりシルフにはちょっと苦戦させられる。

 苦戦というか、シルフは敏捷の値が高くて空中を飛行して、物理攻撃をひらひらと舞ってかわされてしまうことが多く、だから槌での攻撃でなく魔法で攻撃して倒していたんだけど。

 蝶々シリーズを装備している時は私の敏捷の方が高かったし、短剣を投げて当てても倒せるモンスターだったのだけど。やっぱり今の装備だと敏捷が下がった分素早いモンスターとの戦いは楽にはいかないか。

 ただ、シルフは魔法で倒せてもビッグホークはどうするか。まず物理攻撃を当てることはかなり難しいと思うし、こういう時相手を拘束して移動を封じるスキルか魔法が使えればいいんだけど。

 私が1人で魔法で倒しちゃったら、2人はきっと不満に思うだろうしな。


「2人とも準備はいい?」


「はい、問題ないです」


「いけるよ、お姉さん」


 まあとりあえずまずはやってみて、だな。

 私は2人に準備は出来たか確認し、問題ないようなので吊り橋を渡り始めた。

 そうして私たち3人が吊り橋を渡って崖の離れ、草が生い茂る大地にたどりついたとき、渡ってきた吊り橋はちぎれて崖下へと落ちていき、私たちの前にビッグホークが姿を現した。


「出た!、ビッグホーク!」


 リリムちゃんがボスモンスターと対峙したせいか興奮気味にそう叫んだのだけど、リリアちゃんは冷静にビッグホークのことを見据えていた。

 そしてビッグホークとの戦いが始まったのだけど、うん。やっぱり案の定というか向こうの方がかなり素早いし飛んでいるから、私とリリムちゃんの槌での物理攻撃はなかなかビッグホークに当たらない。

 ちなみに私は戦闘開始直後にウィンドステップの魔法を使用していたのだけどそれでもまだビッグホークの方が敏捷が高かったのかあまり効果を実感できなかった。

 ビッグホークからの攻撃については私はほぼノーダメージで、リリムちゃんは普通に攻撃食らってダメージ受けてたけどすぐにリリアちゃんが回復してたから良いんだけど。


 私は考えて、マッドショットの魔法を当てられればビッグホークの敏捷を少し下げられるかもと思ったのだけど。ビッグホークは風属性の魔法攻撃が使えるし、土属性の魔法であるマッドショットは放っても打ち消されて意味がなさそうなんだよな。


「くっそー、やっぱり攻撃が当たらないよ~!」


「お姉ちゃん、前に出すぎだよ!」


 戦いの中で自分の攻撃が相手になかなか当たらないと人間は焦って冷静さを失っていく。

 そしてそうなると人間はつまらないミスをしたり、油断をして返り討ちにあったりもする。

 だからまず何よりも、どんな敵、どんな状況でも一定の冷静さを持っていないとこのゲームでは、とくにボスモンスターとの戦いに勝つのは難しいのだ。


 だけどどうしたものかな。このままじゃ疲労が溜まっていく一方だし。

 何かビッグホークの動きを継続的に止めさせるような方法…………いや、それならあるじゃん。

 私はそこで閃いた。私は、まずは冷静さを失いつつある2人に落ち着くように言ってから、その後でビッグホークに接近し、1つの魔法を放った。


「パラライズ!」


 それは雷属性の魔法であり、命中した相手を麻痺(小)の状態異常にする魔法。

 麻痺は、一定時間ごとに体が硬直してその間は一切の行動ができなくなるという状態異常で、麻痺(小)の場合は10秒ごとに2秒間の行動不能となる。

 つまりは10秒が経過するとそれから2秒間は一切の攻撃、防御、そして移動ができなくなるわけで。

 もちろん2人も麻痺の状態異常自体については知っていたはずだけど、私はそこで2人に今放った私の魔法でビッグホークを麻痺の状態異常にしたことを伝えて。


「だからいい?、リリムちゃんと私はあいつが動きを止めた2秒間に攻撃するんだ」


「わ、わかった」


「リリアちゃんは時間を数えてリリムちゃんにタイミングを教えてあげて」


「は、はい」


 結果的に言うと、それで私たちはビッグホークに勝つことができた。

 2秒間の硬直時間に私とリリムちゃんの破壊力抜群の槌での攻撃がビッグホークの頭と胴体にうちこまれて、それからも硬直の瞬間に攻撃を当てられるようになったから。

 ビッグホークは耐久はそこまで高くないから、物理攻撃を確実に当てられるならば魔法よりも物理で攻撃したほうが早く倒せる。私とリリムちゃんの武器は武器の中でも物理攻撃力がトップクラスの槌。これで勝てないわけがない。


 前までの私なら蝶々の短剣を投げ当てたらそれで毒か麻痺か眠りのどれかの(中)レベルの状態異常に出来てたから今まであんまり使う機会とかなかったけど、意外とパラライズの魔法は使えるな。

 他のポイズンとかフレイムバーンとか、あとパニックウェーブの魔法よりも、やっぱりモンスターは麻痺の状態異常にするだけで格段に倒しやすくなる。本当は眠りの状態異常にできればより良いんだけども。言っちゃえばパラライズの魔法って隙のないモンスターにも2秒間の隙を与える魔法だからね。しかも一定時間継続的に。


「す、すごい。勝っちゃったよ」


「玲愛さんはすごく便利な魔法を覚えてるんですね」


 うん。まあ私もとっさの思いつきで試してみただけだったし、まさかそれでここまで上手くいくとは思ってもみなかったけど。ボスモンスターって状態異常の耐性も多く持ってたりするから、ビッグホークも麻痺が効かない可能性もあったんだけど、効いてくれて本当に良かったよ。

 やっぱり私が魔法攻撃だけで倒しちゃうよりはこっちの方が2人もちゃんと戦いに参加して勝ったって実感を得られるだろうし、それにトドメの一撃はリリムちゃんに譲ったから、私。

 というより私は、パラライズの魔法を使ってから後はあんまり攻撃にも参加せずに2人の頑張りをちょっと見させてもらってた。なんか麻痺らせたらもう私抜きの2人でも行けそうだったから。

 だからきっと、リリアちゃんとかもパラライズの魔法さえ覚えたなら普通に2人でもビッグホークは倒せたんだと思うよ?

 もっとも、パラライズの魔法は私は第2階層のクイーンビーを倒していただいた魔法で、私以外のプレイヤーはそれでその魔法をいただくことなんてできないんだろうし、ここまでの街の魔法屋で巻物が売ってるわけでもないんでリリアちゃんが今の段階でパラライズの魔法を覚えているのは難しい話だと思うけど。

 このゲームってプレイヤーによって覚えられるスキルとか魔法とかはもう本当にバラバラだから探せばパラライズの魔法を今の段階で覚えているってプレイヤーもいるかもしれない。


「私もモンスターを状態異常にしたりとか、相手の能力値を下げる魔法が使えればな」


 私はリリアちゃんがそうつぶやいたのを聞いた。

 リリアちゃんは、基本的に自分や仲間の能力値を上げたりする効果のある支援魔法と、回復魔法。それと水属性と光属性の攻撃魔法を覚えているって話だったけど、こればっかりはどうしようもない。

 他の属性の攻撃魔法なら、街の魔法屋で売っている巻物買って読めばいい話なんだけどね。

 私も今の段階でもたくさんのスキルや魔法を覚えているけど、まだまだ欲しいと思うスキルなり魔法なりがたくさんあるから。


「第2階層のフローリアの街で受けられる住人クエストでさ、『短剣入門』っていうクエストがあるんだけど。それクリアしたら短剣が装備可能になる短剣術っていうスキルがもらえてさ。その短剣術のスキルレベルをⅢまで上げると、攻撃が命中した相手を麻痺の状態異常にするパラライズダガーっていう技が使えるようになるよ」


 今の私が知っている情報で変わりに教えられそうなのはそれくらいだった。

 リリアちゃんの武器である杖は片手武器だから、短剣術のスキルを手に入れたらもう一方の手に短剣も装備できるよ、とも教えてあげた。


「そうなんですか。……うーん、そうですね。私も気が向いたら、やってみます」


 リリアちゃんはそう答えた。まあ武器スキルのスキルレベルの上がりにくさはリリアちゃんも知ってると思うし、ダブル武器スタイルって強いんだけど組み合わせによっては戦闘で慣れるのに時間かかってかえって大変になるからね。

 だけども杖と短剣っていう組み合わせも、やってみたらちょっと面白そうかも。


「よーし、ビッグホークも無事に倒せたことだし。今度は私たちがお姉さんに協力する番だね。えっと、一緒に街の住人クエストやるんだっけ?」


「うん。……あ、でも住人クエストって1つの依頼をクリアできるの1回きりだから、2人がそのクエストもう先にやってクリアしちゃってたら無理なんだけど」


「それなら問題ないよ。私たちギルドクエストの方はよくやるんだけど、住人クエストの方は、なぁ?」


「はい。たまにやることもありますけど、この階層ではまだ1件もやってないので」


「あ、そう。なら大丈夫だね」


 さっき会った時に先に確認しておくべきだったことだよね、今の。

 まあそれで問題なかったから別にいいけど。

 それと今回はもう面倒だったんで薬草とか、そこに生えてた野草アイテムは取らなかったよ。ビッグホークを倒した後はすぐワープゲートで崖の分岐点まで戻って、それですぐに街に帰ったから。

 別に私だけならビッグホークなんていつでも倒せるんだし、あの場所にしか生えてない貴重な草があるわけでもないし。

 そうしてグランガンの街の冒険者ギルドに戻ってきた私たちは、私がまだ受けていない住人クエストの中の1人では受けられない依頼を2件、3人で引き受けたのだった。


次回、(今話が思いのほか長くなっちゃったけど)玲愛は双子と一緒に住人クエストをやり、それから最後のボスクエストへ挑む。


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