ニートな女神と初めての3人
果たして主人公は前衛なのだろうか。
そして私は近所のスーパーマーケットへと向かった。
コンビニで弁当買っても良かったけど今日はスーパーの惣菜でも買ってそれですまそうと思って。
それでやってきたスーパーにやってきた私は、しかしスーパーの中に入ることはなかった。
その入口の横、駐車場の端に止まっていた屋台からおいしそうな焼き鳥の臭いがしてきて。
「あー、焼き鳥いいな。うん、それにしよう」
それで私はその屋台で焼き鳥を買った。
もも、皮、ハツをそれぞれ2本ずつの計6本。
そうしたら屋台のおっちゃんがサービスでもう一本ただでくれるというから、ももを一本もらって。プラスチックのパック容器に焼き鳥7本入れてもらった。これが今日の私の夕食である。
それで本当なら、焼き鳥を食うならお酒も飲みたかったんだけど、今日はやめておいた。
帰りにコンビニで缶ビール1本でもとちょっと思ったんだけど、そこは節約で。
そしてアパートの自分の部屋に帰ってきた私は、買ってきた焼き鳥を食べると容器は洗って燃えないごみの袋の中に入れると、それから歯を磨いて、パジャマに着替えた。
シャワーはどうせ夜また寝汗かくだろうし明日の朝でいい。
そうして私は部屋の照明を落としてベッドで眠りについた。
その日の夜の夢は、なんだかすごくいい感じの夢を見たと思う。夢の内容は起きた時には忘れちゃってたんだけど、翌日の朝起きた時には頭がすっきりしていたから。
「ん、んーー。さて、と。朝飯はいいか。シャワー浴びよう」
私は清々しい気分で朝起きられたことで機嫌も良くて、それからシャワーを浴びて髪と体を乾かしてからお風呂を出た後で、私は強い睡魔に襲われた。
私は、二度寝には2つの種類があると思っている。
1つは、眠りの質が悪くて朝起きた時に気持ち悪くて、まだ眠り足りたいせいで寝ちゃうパターン。
おそらく多くの場合二度寝とはこっちのことを指すだろう。
でも二度寝にはもう1つのパターンがあって、逆に頭がすっきりしすぎていているせいでなんだか気持ちよくて頭がふわふわしているせいで寝ちゃうパターンね。
いや、実はそっちも本質的には1つ目と同じであんまり夜の眠りの質が良くないだけなのかもしれないのだけど。どっちかというと2つ目の方が抗えないんだよね、なぜか。
科学的に詳しくは、脳の血圧がどったらこったらっていうのが眠たくなる主な理由だったと思うけどそれは別にいいとして、つまり私が何を言いたいのかと言うと。
私は二度寝をしたということだ。
2度目の目覚めは午前10時過ぎくらいだった。
1度目に起きた時間は正確に覚えてなかったけど、そこそこ長めに二度寝しちゃったかな。
「……ふう。あんまり頭がすっきりしすぎているのも考え物だな」
私はそう言ってベッドから身をおこすと、スマホにまた何か重要なメールとかが届いてやしないかとチェックをしてからいつものゲーム機を頭に装着して電源を入れた。
<第3階層:岩の都グランガン:冒険者ギルド>
ということで残された7件の住人クエストについてだけど。
1件がボスクエストで、2件がクエストを受けるのに最低2人パーティ以上という人数制限があって1人では受けられないもの。そして残りの4件が特に制限もない普通のクエストだったんだけど。
私はまず制限のない4件のクエストを引き受けると、1時間半程度でそれらを片づけた。
だけど、その片づけたクエストのうちの1件について、私はちょっと思うところがあって。
第1階層でも第2階層でもまったく同じ内容のクエストがあったんだけど、街に住むお年寄りの家に行ってただ話を聞くだけのクエスト。
うん、本当にそのNPCの話を最後まで聞いてあげるだけでクエストクリアになって、だからプレイヤーは特に何かする必要もないんでクエスト自体は楽なんだけどね。
まあ、それでお年寄りにありがちな話がループするなんていうことはないんだけど、今回はそれでも30分ほどグランガンの街に住むおばあさんNPCの話を聞かされた。
話の内容は、まあ長かったし適当に聞き流してたんでもう覚えてないんだけどさ。
「だけどゲーム会社もよく作るよな。30分もの会話内容をさ。もしかしてリアルで実際にあるお年寄りに聞いた話をそのままゲーム内で再現してたりとか?」
もしもゲーム制作陣(の中のそのクエストを作った人間)が、ゼロから自分で30分もの会話内容を考えていたのだとしたらそれはなんていうか、ものすごいことだと思うし。
それがラスボスの戦闘前の口上とかなら、まだわかる気もするんだけど。でもなんでもないようなただのクエストにそこまでの労力をかけているとなると、このゲームの制作陣のゲーム制作に対する愛というか、どこまでもどんなに些細なところまでもリアリティーを追及しようというその姿勢は本当に素晴らしいものだと思うし。(一部おふざけが過ぎると思う部分もあるけど。)
「あれかな、このゲームのそのクエストを機に若い世代の人間たちに、おじいちゃんやおばあちゃんの話をたまには聞いてあげてね、みたいな狙いがあったり?」
それが実際にどれほど効果があるのかは知らないけど、もしもそういう狙いというか、むしろそれはもう願いに近いと思うんだけど。そういうのがあるんだとしたらこれはとても良いゲームだな。
下界で最近あんまり子供や孫と会話していなかったお年寄りに、話しをする子供や孫が少しでも増えてくれたとしたら万々歳だろう。
もっとも、果たしてこのゲーム内でそのクエストを受けてやったというプレイヤーが今までに全サーバーを合わせて何人いたのかとか、考えるとちょっとあれだけど。
「でもそれ言うならこのゲーム、そもそも街にいるNPCの作り込み具合がやばいしな」
以前にも言ったと思うが、このゲーム。街にいるNPC1人1人にちゃんと名前が存在している。
さらには名前だけでなく、年齢、家族構成、過去から現在に至るまでのエピソードなどが、特にクエストやストーリーで関わりのない一般NPCにまであって。
そしてNPCたちの多くは笑うし、泣くし、怒る。この上さらに街中を自由に移動し同じ場所にずっと留まる個体は少ない。
それだけ考えてみてもこのゲーム、容量無限かよとツッコミたくもなるし、まだ第3階層だと階層に街が1つだけしかないけど、この先の階層で1つの階層に街や村がたくさんあるようにもなればそこに住んでいるという設定のNPCもそれだけ数が多くなるわけで。
「っていうかどうやって作ってるんだろうな。NPCの性格とかって」
私はコンピューターとか、そういうのは全然知らないし、むしろちょっと機械音痴なくらいだからわかんないんだけども。
そういえば下界には人工知能っていうのがあったな。ハイパーコンピューターの完成に伴ってその人工知能も加速度的に進化を遂げたのだとしたら、現実にいる人間と寸分たがわないレベルのNPCを作成し、ゲーム内に置くこともできるのだろうか。
でもそのNPCたちを作るための元々の人格とかのデータはどうやって……いや、でも人間の性格なんて十人十色と言うけど、結構似たり寄ったりな部分もあるしな。
ほとんど同じ思考、同じ性格のNPCがゲーム内に何十体もいたとしてもプレイヤーは気にしないだろうし絶対に気づかないだろう。あとは個々のNPCの好き嫌いや、背景設定を考えて入力しておけばいけるのかも。
「それでも相当な時間と労力が必要だと思うが」
あるいはそれすらもコンピューターがランダムに選んで作成し、もうボタン1つ押せばわずか5分足らずでNPCが1体出来上がるとか、そういう可能性もあるけど。
武器屋などのお店の店員のNPCやギルド職員、あるいは住人クエストで関わるNPCやストーリー上重要になってくる特別なNPCだけ自分たちでちゃんと作っておいて、それ以外のただの街の住人は適当にポンっと作って服着せて終わりみたいな?
ちなみにこのゲームのNPCにも限界はあるようで、たとえばNPCたちは基本的に服装に変化がない。さすがに服装まで1体1体毎日のように変化していたら大変なのか、それとも手を抜いただけなのかはわからないけど。でも、別にここまで来たらそれも余裕で出来そうな気もするんだが。
でも、ここからがちょっと面白い話なのだけど。
過去に、ゲーム内でとある女性NPCに恋をした男性プレイヤーがいたそうで。
その男性プレイヤーが女性NPCに洋服をプレゼントしたら、なんと次の日にその女性NPCは男性プレイヤーがプレゼントした洋服を着て出てきたのだという。
私はその話を聞いた時に、プレイヤーだけでなくNPCにもアイテムとか譲渡できるんだってそっちの方に驚いたのだけど。
「だけども、ここまで人間に近いとゲーム内のキャラだってわかっていても異性のNPCに恋をしたり、仲良くなったりもするんだよな」
もちろんこのゲームには本来は恋愛の要素などまったくなく、純粋なRPGだ。
しかし、NPC作成に力を入れすぎたあまりおそらくゲーム運営も予想していなかったできごと、決してバグとかではない類の何かが起きていてもおかしくはないと思うし。
NPCには別にプレイヤーごとに信頼度とか、愛情みたいなパラメーターが存在するわけもなく、だからこのゲーム内でどれだけNPCに恋をしたところでその恋は絶対に成就しない。
そもそもNPCというのは現実には存在しないのだから。
「でもこうしてゲームの中で会って、見て、聞いて、話せて、感情も性格も過去の記憶もあったらとしたら、それってなんていうかもう……人間って呼べる気もするな」
そもそもVRゲームの中の世界と、外の世界を区別しているものってなんなんだろうか。
たとえば現実世界よりもVRゲームの中で過ごす時間の方が長いって人間にとっては、現実とはむしろVRゲームの中の世界のことを指すのではないだろうか。
VRというのは元々が医療目的で作られた技術であり、たとえば子供のころに事故にあって植物状態に陥った人間の意識が、VR空間内では普通の人間として活動できたとしたら?
現実の世界の自分は病院のベッドの上で体はおろか指一本動かせないのに、VR空間内ではそれが自由にできる。そうなったとしたら、もちろん現実世界でその人間の体や生命活動の維持にお金や資源、人員が必要だろうけど、それがあるうちはその人間はVR空間内では生きているということにならないだろうか?
「下界のオタク界隈じゃ2次元嫁とかいう言葉もあるそうだけど。VR空間内でのNPCとの恋愛はいったい何次元になるんだろうか?」
2次元っていうのはあれだよ。漫画とかラノベとかアニメの中だけに存在するキャラのことでさ。
数学的には平面のことだけど、とにかく現実には存在しない女の子のこと。
それで下界の人間たちが普通に生きている現実世界のことは3次元っていうらしい。
なんか立体フィギュアとかアニメキャラに声をあててる声優さんに恋をするのが2.5次元とか言う奴もいるそうだけど、それならVRゲーム内のNPCは2.9次元くらいか?
あとはもう現実世界に存在していれば完璧なんだけど、そこには絶対に越えられない壁がある。だけども人によってはそれはもう現実みたいな?
「気持ち悪い、理解できないっていう人間も多いだろうけど。でも、VRゲーム内にいるNPCは現実の人間に限りなく近いし(少なくともこのゲーム内では)、もしもVRゲーム内でNPCとうまく仲良くなって恋とかできるなら、現実でもきっとそいつはうまく行くと思うんだけどな」
ようは現実世界でもそのVRゲーム内で恋した異性と同じような子を探せばいいのだ。
ただ、もちろんそれで絶対にうまくいくという保証はないし、そもそも現実世界での自分とVR世界での自分じゃ容姿も全然違うだろうし、人によってはゲーム内で性格まで変化してる人もいそうだから。
あとは現実世界で結婚している人間が、VR世界のキャラに恋したりするのはありだろうか?
嫌だな。それが原因で離婚とか洒落にもならないし、VR不倫とかいう単語も出来てそうだ。
もしかしたらマジでそれが社会問題になってたりとかして?
「……いや、ネガティブ思考は良くないな。うん」
私はそこで思考を断ち切ると、いったんログアウトすることにした。
そして現実世界に戻って、少しだけ仮眠を取ることにした。
残る3件の住人クエストは午後からやろうと思って、昼食はパス。
そして次にまた起きたのが午後2時過ぎとちょうどいい時間だったのでゲームを再開。
街の祭壇からスタートするとまた冒険者ギルドへやってきた。
さて、それで私はやっぱりボスクエストは最後にやろうと考えて先に誰かとパーティを組んで2件のクエストを片づけてしまおうと思い、フレンドリストを開いてみたのだけど。
<フレンドリスト>
・コルト:非ログイン中
・東也:非ログイン中
・マロン:非ログイン中
・ラフィア:非ログイン中
・ローズ:非ログイン中
・李:非ログイン中
・ナポリたん:非ログイン中
・ペペロンチーノ:非ログイン中
・パス太:非ログイン中
・リリア:非ログイン中
・リリム:非ログイン中
「うっわ、全滅じゃん!、あ、でもまだ2時だしマロンちゃんたちと双子ちゃんは学校か」
と、私がそう言った直後のことだった。
フレンドリストの表示が更新されて、リリムちゃんとリリアちゃんがログインしてきた。
〇リリア:ログイン中
第3階層:岩の都グランガン
〇リリム:ログイン中
第3階層:岩の都グランガン
そう、つまり2人は今まさにこのゲーム内にログインしてきたのだ。
ということはもちろん2人は今街の祭壇の上にいるわけで、急いで向えば出会えるかもしれない。
「よーし、行ってみるか」
私はフレンドリストを閉じると冒険者ギルドを出てまた街の祭壇のある広場へと向かった。
すると幸運なことにその途中の道でリリムちゃんとリリアちゃんに遭遇して。
「あ、リリアちゃん!」
「え?」
と、最初私が声をかけた時リリアちゃん(と、その隣を歩いていたリリムちゃんが振り返り)は一瞬私が誰だかわからなかったという顔をしたけど。
それはおそらく前に会った時と装備を大幅に変えていたからで。
フレンド登録したプレイヤー同士は街中でもプレイヤーの頭の上にプレイヤー名が表示されるので、2人はそれを確認して私だと気づいてくれた。
「あれ?、お姉さん?、なんかこの前と装備の雰囲気がらっと変わってね?」
まずそうツッコミを入れてきたのは双子の姉であるピンク色の髪の女の子、リリムちゃん。
「ちょっとお姉ちゃん……あ、すみません。私も一瞬その、玲愛さんだとわからなくて」
そして申し訳なさそうにそう言ってお辞儀をした水色の髪をした女の子が、妹のリリアちゃんだ。
うん、まあたしかに全身の装備変えたら誰だって気づかないよね。街ですれ違うプレイヤーのプレイヤー名なんて見えないことの方が多いんだしそこまで意識してないだろうから。
「フレンドリスト見てたら2人がたった今ログインしたのがわかってさ。あれ、でも2人とも学校は?」
「あ、今日は午前中で終わりだったんです。午後からなんか、学校の方で地域のイベントが開催される予定だとかで在校生は午前で家に帰されて」
「ふーん、そうだったんだ」
なるほど、そういうわけだったのか。
「まあそのイベントのお手伝いをする子も、何人かいるんですけど。私たちは2人とも違ったので。それで家に帰ってお昼ご飯食べて、ちょっと勉強してから今ゲームを始めたところで」
リリアちゃんが説明を終えてすぐにリリムちゃんから一緒にゲーム攻略しないかと誘われた。
「私たちこれから渓谷に行こうと思うんだけど、玲愛さんも一緒に行く?」
「え、渓谷に行くってことはもう鉱山と崖の攻略は終わったの?」
「うん。元からレベル的に余裕あったし、ロックゴーレムは私がボコボコにして倒したよ」
ああ、やっぱりそれで押し切れたか。
ロックゴーレムは耐久が高くて物理攻撃でダメージを与えにくいけど、一撃の威力が大きい槌を武器としているリリムちゃんならそんなこと関係なく殴って倒せるとは思っていた。
「フレイムデビルはどうやったの?」
「あー、それはリリアが頑張ったおかげでなんとか」
「はい。私はその、支援魔法と回復魔法が得意なんですけど、攻撃なら水属性と光属性の魔法が使えて」
「なるほど、水魔法でフレデビの攻撃をそのつど打ち消したりした?」
「そうです。でも基本はやっぱりお姉ちゃんがその、ハンマーで殴って」
「そうそう。お姉さんにもらったハンマーがすごく強くてさ。巨人のこん棒」
ああ、そういえばこの前私が助けた時に倒したアースジャイアントからまたドロップした武器、巨人のこん棒はそのままリリムちゃんにプレゼントしたんだったな。巨人のこん棒は武器のカテゴリが槌だったし。たしか巨人のこん棒って通常攻撃が5分の1の確率でクリティカルになるって割とえげつない特殊効果がついてたんだっけ?
「なんかたまにすごいダメージ与えられて、なぁ?」
「うん。装備補正値もすごく高くて、もうほとんどのモンスターを一撃で倒せるんですよ」
いやまあ、それが槌っていう武器の最大の売りだからね。
「そっか、あ、じゃあビッグホークにも勝ったんだ?」
私が話の流れ崖のエリアボスであるビッグホークのことについて言及したら、そこで2人は固まった。
「あれ?」
私はその反応を見てもしかしてと思ったのだけど。
「あー、ビッグホークね。もちろん挑んだんだけど、あいつ空飛んでるし、素早くてさ。私の攻撃もなかなか当たらなくて、オマケに近づいても風で吹っ飛ばされるし混乱の状態異常にしてくるしで余計に攻撃当てられなくなってさ」
「じゃあ、負けちゃったんだ?」
「うん。しかも5回」
おおう、それはまたなんていうか、負けてもめげずに5回も挑んだことの方がすごいな。
「あの、やっぱり私たち2人だと素早く動き回るモンスターは相性が悪くて」
「それはなんとなくわかるよ」
リリムちゃんとリリアちゃんは2人パーティだ。
主に敵に攻撃し、敵の攻撃を引きつけるのがリリムちゃんで、そのリリムちゃんの戦闘を支援魔法や回復魔法でリリアちゃんがサポートするという連携を得意としている。
この2人の連携は意外とよくできていて、たいていのザコモンスターやボスであればリリムちゃんの槌による物理攻撃で殴り続けていれば勝てるのだ。
ただし、リリムちゃん(と今の私)が装備している槌は一撃の威力が大きい代わりに攻撃動作が遅く、攻撃後の隙が大きいため、ビッグホークのような空中を高速で移動したり、単純に素早いモンスターには苦戦を強いられる。
「あの、そういえば玲愛さんは私たちに何か用があったんじゃないですか?」
「あ、うん。ギルドの住人クエストでソロじゃ受けられないクエストがあってさ、誰か一緒にパーティ組んでやってくれないかなって思ってたんだけど」
「え?、クエスト?、いいね、私やりたい!」
私が一緒にクエストやらないかともちかけたらそれでリリムちゃんは速攻やる気になってくれたのだけど。さすがに私も何の見返りもなしに2人に協力をお願いする気もなかったから。
「あー、うん。でもその前に、君たち2人の今の実力も知りたいし、私と一緒にパーティ組んでちょっとフィールドに行かない?」
「え、それはもちろんいいですけど。えっと、どこに行くんですか?」
「崖だよ。3人で、ビッグホークに挑んでみない?」
私が2人にそう言ったら、2人はお互いに顔を見合わせて笑顔になり。私の方に向き直ると、お願いしますと2人そろって頭を下げてきた。
私が2人にこの提案をしたのはもちろん2人のためでもあるけど、半分は私自身のためでもある。
私は、今のこのギガントロックシリーズの装備に変えて前よりも敏捷が一気に下がったから、それで以前は楽勝で勝ててたけど敏捷が高いボスモンスターであるビッグホークにどこまで攻撃が通用するものか確かめておきたかったから。
これでもし私もビッグホークに苦戦を強いられるようであれば私は今の装備をやめて元の装備に戻すかどうか、もう1度よく考えるつもりだったし。
こうして、私とリリムちゃん&リリアちゃんはパーティ登録をし、街を出て3人で崖のフィールドへと向かった。
でもよく考えてみれば前衛が2人とも武器が槌だと、後衛のサポート役のリリアちゃんの方が大変になりそうだな。そこも私がうまくやらないといけないか。
まあもっともたとえどんなに苦戦させられたとしても私がいる以上は絶対に負けはないのだけど。
ビッグホークからの攻撃は私ほとんど無効化できるからね。スキルなりなんなりで。
次回、3人でのビッグホーク戦(すぐ終わる)。
そして2件の住人クエストを協力して終わらせ、最後のボスクエストへ挑む。