表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
134/171

ニートな女神と初めての牛

RPGあるある言います。

ダンジョンとかで、ボスよりも中ボスの方が強かったりする。

 トラップという言葉を聞いて人がまず始めに連想するものは何か?

 おそらくそれは落とし穴に違いないだろう。

 では、落とし穴の次に連想されるトラップとは何か?

 私はそれについて大きく2つあると思っている。


 1つは上から何かが落ちてくるタイプのトラップ。

 たとえば部屋の中に入った瞬間に閉じ込められて、それでトゲがめっちゃつけられた天井が徐々に床の方に落ちてくるとか、あとは落下シャンデリアとか。

 特定の位置に立ったら上から蛇とかタライが落ちてきたりとかするやつね。


 で、もう1つの方は何かって言うと、いや、人によってはトラップ=それ、みたいな。もしかすると落とし穴よりも先にこっちを想像する人もいるかもしれないんだけど。


 ……ガコン(※床の何かスイッチのような物を踏んでしまった時によく聞くあの音)


「あれ?、今なんか踏んだ?」


 ドドドドドドドドッ(※迷宮全体が揺れている音+地響き)


「わぁ!?、なになになに!?」


 ズシーンッ!!(※私の背後に何か大きい物が落ちてきた音+衝撃)


 ギギギギギッ(※おそるおそる振り返る私[実際にそんな音は鳴っていない])


「…………あ、マジか」


 この第3階層の迷宮ダンジョンで新たに加わったトラップ、それはすなわち……


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ(※クイズ。これは何の音でしょう?、答えは……)


「大岩ゴロゴロって、また古典的なトラップ来たぁぁぁぁぁぁ~!!」


 このトラップは通路ルートの、しかもかなり長いルートでプレイヤーが絶対に通らなければいけない道で発動される。

 最初に私が床に巧妙に偽装されていたトラップのスイッチ的なやつを押したら通路の端に大岩が落下してきて、そのまま通路の反対側の端まで転がってくる。

 そしてプレイヤーはもちろんその大岩に潰されてしまわないように全力で通路の終わりまで走らされるのだけど、その代わりに走らさせるその長い道の間には他のトラップはなく、またモンスターも出現しないのでとにかく作動させたら全力で逃げるしかない。


「しかも途中に隠れて岩をやりすごせそうなくぼみとかなくて、通路の終わりの直前にある別の通路の入口まで駆け込むしか回避できないとか、鬼畜すぎるだろ!!」


 ちなみに言うまでもないことだろうが、通路のトラップを作動させた時点でその前に通った通路の入口は封鎖され即座に元の道に引き返すということもできない。

 だからこのトラップは発動させたら最後、ゴールまで走りきるしかないのだ。

 もしも途中で転んだりしたらどうなるかとかっていうのは言わなくてもわかると思うけど。


「しまっ!?」


 ズシャッ(※私が転んだ音)


 プチン(※私が潰された音)


「……いや、プチンじゃないから!!、何そこで効果音だけ可愛くして残酷さを消そうとしてんの!?、全然消えてないからね!?」


 大岩に潰されるとプレイヤーのHPはちょうどその時の半分にされる。

(奇数の場合は切り捨てされる。)

 これはもちろん固定ダメージであってプレイヤーの耐久云々でどうにかできるものではない。

 という話をこのトラップの話自体を含めて私は事前に聞かされていたはずなんだけど。


「くっそー、迷宮ボスの攻略法探すのに必死で忘れてたし」


 そういうことだった。

 だがしかし、仮にそのことを覚えていたとしても今のは防げていたかどうかわからない。

 何よりもトラップを作動させるスイッチが本当に巧妙に隠されていて肉眼ではまず見分けられないのだ。これはきっとトラップの場所などを察知できるスキルか魔法がないとたぶん大体のプレイヤーが確実にトラップを作動させてしまうに違いない。

 でも回復アイテムを大量に買い込んでおいて、作動させたら逃げずにおとなしく岩に潰されてからHPを回復させた方が、全力で走って精神的な体力をすり減らすよりいいかな、なんて思って。


「大岩は1本の通路で1個だけしか落ちてこないし、仮に道を引き返して同じ場所を何度踏んでも岩は2度は落ちてこない。でも、長い通路の中に何か所もそのトラップ作動スイッチがあるな」


 通路の途中くらいにあるスイッチであればそんなに慌てなくても余裕でゴールまで小走りでたどりつけるけど、通路に入って割とすぐの場所にあるスイッチを踏んじゃったらもう大変だよ。全力疾走を余儀なくされるし、転んじゃった時の絶望感がヤバい。

 だからもう本当に、走るのが嫌だという人は諦めて潰されちゃってもいいと思うよ?

 どうせこのゲーム内、大岩に押しつぶされてもせいぜいがドッチボールで速い球を背中に思いっきりぶつけられた時くらいの衝撃と痛みしか……いや、それでもだいぶ痛いと思うけどね!?


「このトラップ、あと何か所あるんだろう」


 HPが1の時に食らったらもちろん死ぬんだろうけど、2以上ある時はこのトラップによって死ぬことはない。しかし、モンスターとの戦闘前に無駄なダメージを受けることはできればさけたいよね。

 回復アイテムだって無限には持ってないんだから。

 ……こんなことならポーションを999個買っておくべきだったかな?

 ポーションは1個50Gだけど、999個も買ったら49950G、ほぼ5万ゴールドだ。

 今の私からしたら5万ゴールドというのがそんなでもない額に思えるのは私のこのゲーム内での金銭感覚がすでにどうしようもないレベルまで麻痺してるからなのか。

 だってやろうと思えばすぐに稼げるからね私の場合、5万ゴールドくらいなら。


「ライトヒールよりも回復量の多い回復魔法……いや、それ以前にトラップを事前に感知できるようなスキルが欲しいな」


 私はそこでまた自分の今欲しいスキル・魔法リストに新たなスキルを加えた。

 それが意外と声に出していたら割とすぐに手に入ったりするんだ、不思議なことに。

 だから私はダンジョンの中だろうがどこだろうが欲しいものは欲しいと言う。

 まあ、さすがに人前では言わないけど。なんか恥ずかしいし。


 さて、大岩ゴロゴロトラップのことについてはこれくらいでいいだろう。

 地下2階からのモンスターの分布について話しておく。

 まず、バットとシルフは出現しなくなった。

 まあなんというか、入口から近い場所にしかいなさそうなイメージのある2体だったから当然かなとも思ったけど。デザートウルフ、グリーンスネーク、スモールロックの出現率が低下。代わりにフレイムバグとファイアーリザードの2種類のモンスターが出現するようになった。

 なのでこの迷宮ダンジョンの攻略でも(私のようにやけど無効のスキルを持っていないプレイヤーは)やけど対策を講じておく必要がある、と。

 地下2階から新たに出現するようになるモンスターはいないものの、大岩ゴロゴロトラップの餌食えじきになってHPがいきなり大幅に削られたり、やけどの状態異常にされると結構ここでリタイアするプレイヤーも多くなってきそうだ。


「本当にあの、大岩ゴロゴロだけはもうやめてよ」


 しかし結局この地下2階だけで長い通路は合計で6本あり、そのうちの3本では私は逃げ切れずに大岩に潰されることとなったわけだが。

 というかこのトラップ、パーティとか大所帯で迷宮内を散策してるプレイヤーたちの信頼関係がちょっと崩れそうだよな。

 だって絶対にトラップを作動させちゃったやつが後で責められるでしょう。しかもそのせいでそいつじゃない別のメンバーが潰されたりとかしたらそりゃあもう確実に。


「でもそんなこと言い出したらキリがないからな。ここはそういうトラップもあるんだくらいに考えて流していかないとね。それにもしもそのことがきっかけでパーティ仲が悪くなるようなら、最初から組まない方が良いと思うし」


 もっとも、誰とも組まないでソロでやっていく辛さについては、実際にそれをやってみないとわからないとは思うけども。

 いや、ほんと私くらいだと思うよ。ソロプレイヤーなのにこんなに余裕があるのって。

 私はそんなことを考えながら迷宮の奥へと進んでいく。


 そうしてやってきたのは地下3階へと繋がる階段がある部屋の手前の部屋。

 階段のある部屋にはこの第3階層迷宮での中ボス戦が待ち構えているのだ。

 だけども、まあ中ボスはそんなに気張らなくてもいけるだろうか。


 私がその部屋に入った直後に部屋の入口の扉がギギギギギと音を立てながら閉まる。

 そして前方の階段の下から中ボスが階段を上がってくる、と思っていたらまさかの頭上から降ってくるパターンだったことにはちょっと驚いた。

 見ればこの中ボス部屋は天井が高い設計だったんだけど、でも降ってきたそいつには翼があるわけでもなくて、では私が入る前までいったいどこにどんな体勢で待機していたのかとか気にしだしたら終わりなわけであって。


「ブモォォォォォォ!!」


 そしてその中ボスはRPGでは割とメジャーなモンスターであり、むしろこの迷宮というダンジョンにはぴったりなモンスターだと言えた。

 そう、下界の神話の中にも登場するあの牛さんである。


 モンスター名、ミノタウロス。


 というか、むしろこいつが迷宮のボスって言われたほうが私的にはしっくり来るんだけどな。


 HPは300%で、力と耐久が高く敏捷もそこそこ。ただし賢さはやや低め。

 弱点は氷属性で火属性に耐性ありという話だった。

 体は真っ赤で2足歩行。頭部は牛さんで角が曲がってる。

 腰にはベルトと緑色のズボンみたいなの履いて、あとは小さな尻尾もついてる。

 筋骨隆々といったそのボディは事前に知らされてなくてもこいつが力と耐久が優れているモンスターであるということがいっぱつでわかるよ。

 問題はその右手に装備された大斧の方で、それによって攻撃のリーチが格段に伸びているっぽい。


「……はぁ。どうすっかな……もう面倒だしあのコンボでさっくりやっちゃうか」


 あのコンボ。今の私が使える魔法とスキルを組み合わせた最強の必殺コンボ。


 ①ウィンドステップの魔法で自分の敏捷を強化。

 ②ファイアーステップの魔法で自分の力を強化。

 ③マッドショットの魔法で相手の敏捷を下げる。

 ④相対的にめっちゃ動きの遅くなった相手の背後とかに回り込んで、そして弱点属性の物理攻撃と魔法攻撃を連続で当て続けて一気にHPを削り倒す。


 以上が現在の私が使えるもっとも確実にモンスターを倒せるコンボだ。

 ただ、消費MPが激しく、さらにもともとがすごく素早いモンスターだとそれでも反撃を受けたりすることもあって、あんまり普段の戦闘で使用することはないのだけど。

 でもまあミノタウロスはそんなに敏捷高くないって話だったから今回はいけると思って。

 アースジャイアントみたいにマッドショットが通用しないなんてこともなかったし。


「凍結斬り!、アイスランス!、氷結斬り!、アイスボール!、アイスアロー!、凍結斬り!……」


 この氷属性の連続攻撃によってミノタウロスは1回も反撃することなくあっけなくHPをすべて削られて消滅した。そう、本当に私が一方的に攻撃だけして戦闘はわずか3分で終わったのだ。

 事前に聞いた話だと口から火炎弾を吐いてきたりとか、衝撃波を起こしたりとか色々と厄介な攻撃をしてきたりとか、体力が減ったら怒って装備した大斧を投げ捨てて代わりにブースト技を使用して力を上げてきて、レッドキャップ並みにプレイヤーに苛烈な攻撃をしてくるとかって聞いてたんだけど。


「うーん、まあ普通に戦っても良かったんだけどね。何せまだ地下3階と地下4階、迷宮ボスまで控えてるんであんまりここに時間かけてられないんだよね、リアルじゃもう夜だしさ。だから今回は、ごめんね!」


 どうせミノタウロスについても、この先の第何階層かでフィールドに普通に出現するんだろうし。

 迷宮ダンジョン内の中ボスについては、ほとんどがそうだと言う話だったのだ。

 だからミノタウロスもナイトアーマーやライカンスロープと同じでこの先のどこかでまた戦うことになるんだよ。具体的に何階層で出てくるかは知らないけどさ。


 ミノタウロスとゆっくり戦うのはその時でいい。

 まあその時には私もミノタウロスを普通に瞬殺できるくらいの強さになってるかもだけど。


 そういえばあの人、霜月しもつき景士けいしさんもすごかったな。

 低威力だっていう刀の冷気を飛ばす攻撃であのアースジャイアントをそれでも瞬殺して。

 やっぱり装備の強さと本人のレベルが上がればそうもなるんだな。

 どうだろうか、今の私だったらたとえ瞬殺とまではいかなくてもドラゴンくらいなら10分もかからずに倒せるんじゃないかな。


「はははっ、いやマジで行けそうな気がするぞ」


 ミノタウロスを倒したことで私は1800の経験値と4500Gを入手。

 そしてドロップアイテムはもちろんあの大斧だったわけで。


 〇闘牛の大斧


 STR+45 VIT+35 ING-40


 特殊効果:攻撃速度上昇


「……え?、効果の説明それだけ?」


 私は思わず自分の目を疑ってしまった。

 でもたしかに闘牛の大斧の特殊効果の説明欄には攻撃速度上昇の6文字しか記載されていなかった。

 つまりこの斧は、斧の割に他の斧と違って素早く振り回せると?


「なにそれ最強じゃん!!、ま、私は斧はまだ装備できないんだけど」


 もしもこれが斧ではなく槌だったとしたら、私はそれを装備していたかもしれない。

 でも、よくよく見たら闘牛の大斧にはマイナス補正もついていて。


「賢さがマイナス40か。強い武器には大きなデメリットがつきものってことだな」


 第2階層の迷宮で倒した中ボスのライカンスロープも。あいつがドロップした狂戦士の大剣も特殊効果を含めて色々と強力だったけど、防御面が大きく弱体化するデメリットがあったからな。

 あれ、でもそう考えたらあの皐月さんたちが普段使っているっていう刀とかはどうなんだろう。

 あの刀にも何かデメリットとか、マイナス補正とかついてるのかな。


「あの刀、全部プレイヤーメイドって言ってたけど。素材さえ良ければデメリットなしの強力な武器とか作れちゃうのか、それともゲームバランスが壊れない程度にマイナス効果も何かしら自動で付与されちゃうのか」


 もしも前者だった場合、鍛冶のスキルを皆して手に入れたがる気持ちがよくわかる。

 けどももし後者だったとしたら、果たして皐月さんたちはいったいどんなデメリットを受け入れているというのか。相応に強力な武器だからあるとしたらそのデメリットも大きそうだけど。


「いいなあ、仲間に鍛冶師がいると。私も将来的にはプレイヤーメイドの武器とか欲しい。もちろん自分で作ってもいいけど、誰かからプレゼントとか、それ絶対に大切にするよな」


 まああまりにも変な効果がついてるヘンテコな武器とかだった場合、受け取りを拒否する可能性もゼロではないけどね。


 さて、そしてそれ以外のドロップアイテムについてだけど。

 ミノタウロスの角という素材アイテムが2個と、牛肉が8個。

 うん、もう牛肉については私は何も言わないから無視してやる。ちゃんと拾うけどさ。

 それで、ミノタウロスからもまた1個スキルをもらったんだけど。


 〇咆哮ほうこう

 5分間自身のSTRとAGIの値が10%上昇する。一戦闘中に3度まで使用可能。効果は重ねかけされる。戦闘終了ごとに効果はリセットされる。

 消費MP:8 リキャストタイム:10秒


「魔法じゃなくてアクティヴスキルなのか。でも、効果はすごくいいな」


 仮に咆哮を一戦闘中に3回使用したら私のSTRとAGIは30%上昇する。

 しかも効果時間は5分間と長め。


 ウィンドステップとファイアーステップはそれぞれSTRとAGIを25%上昇させる魔法で、効果時間は3分間。さらにリキャストタイムも3分あるという支援魔法なんだけど。


 純粋に両者を比べたら咆哮を3回使用した方がお得であるように思えるけども。


「ああそうか、咆哮の方は一戦闘中に3回までしか発動できないんだ。だから最初に間をあけずに3回使ったら最初の5分くらいはそれでいいけど、それ以降はその戦闘中はもう咆哮は使えない」


 だから長期戦になりがちなボス戦などでは使うタイミングが非常に重要になってくる。

 それに咆哮を3回使うとMPを合計して24も消費するというのも大きい。


「同じ一戦闘中に3回しか使えないスキルでも、粉骨砕身とはまた違うな」


 渓谷のスケルトンからいただいた粉骨砕身のスキルは効果時間がなく、スキルを使用したらその戦闘が終了するまでスキルの効果が持続する。

 ただ、スキルの効果にはデメリットもあったんだけど。


「回数制限のあるスキルや魔法には注意しておかないと、いざって時に使えなくてピンチになってたんじゃせっかくの強力なスキルももったいないしね」


 だけど5分以内に倒せそうなら咆哮のスキルは役立ちそうだな。

 もし仮に5分で倒せなくても、その時はウィンドステップなりファイアーステップなり使っていけばいいんだし。まあでも1回試しにどんな感じなのか知りたいから今使ってみるか。


「咆哮!」


 私はそこで手に入れたばかりのスキルを発動しようといつものようにスキル名を言った。

 だけどもいつもならその直後にスキルの効果が発動するはずなのに何も起きない。。


「あれ?、咆哮!」


 シーーーーーーン(静けさを表現する音[実際にそんな音は鳴っていない])


「あれー?、なんで発動しないの?」


 ちなみにMPも減っていないので本当に何も起きなかったのだ。

 そこで私は気になって咆哮というスキルの説明欄をもう一度良く確認してみると、画面を下にスクロールした先にこんな一文が記載されていた。


『※このスキルはスキル名を言った後で、プレイヤーが叫ぶことで初めて発動します。スキル名のみではスキルは発動しないのでご注意下さい。』


 できればその一文については見つけないほうが幸せだったのかもしれないと思った私。

 でも、見つけてしまった以上はもうやってみるしかないな。


「咆哮!……ぅ、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ……はい、それでようやく発動しましたとさ。


「…………これは、きついな」


 もう色々な意味で。

 結論として私はこの咆哮というスキルは2度と使用しないことに決めた。

 なんていうか、差別するわけじゃないけどこのスキルはもっと体格の良い男が使うべきスキルだな。

 決して私のようなか弱い乙女が使うようなスキルじゃない気がするんだ。うん。

 何よりもソロプレイヤーの私でさえ恥ずかしさがやばいから。


 ……おい、誰だよ今それくらい我慢しろよって言ったやつ。


 じゃあお前今その場で絶叫してみろよ、ほら、早く叫べよ。何でもいいからさ。


「心理的なハードルが高いよ、このスキル」


 自爆ほどではないけど小心者には絶対に使えないスキルだと思う。

 この咆哮というスキルを考えたやつはいったいどういうつもりでこんな仕様にしたんだ。

 そこに悪意は……いや、少なからず絶対にちょっとは悪意あったろこれ。

 咆哮のスキル使うたびになんかめっちゃ叫んでるプレイヤーの様子を見てゲラゲラ笑ってやがるんだ。


「ぷぎゃー、あの子あんな可愛い女の子のキャラのくせにめちゃくちゃ叫んでる、うける~!!」


 とか言ってやがったとしたらまじ天罰だからな。

 まあ、さすがにそこまで酷いとは思わないけど。


「あ、でもこのスキルってもしかして……」


 たとえば日ごろからストレスを溜めこんでいる人とかなら。


「部長の馬鹿やろ~!」(いつも理不尽な理由で怒られている平社員)


「〇〇くんなんて大っ嫌い~!!」(5年間も付き合った彼氏に浮気された女子大生)


「リア充爆発しろ~!!」(どこにでもいるニート)


 とかって、叫んでストレス解消したりとかするためのスキルだったり?

 万が一それを誰かに聞かれたりしても、「いえ、今のはただ咆哮のスキルを使っただけなんで」と言って誤魔化せるし、一石二鳥なんじゃね?


「ああ、そう考えたらなんかこのスキルすごく有用な気がしてきたぞ」


 私もいつか、何か叫ばずにいられないほどのストレスを抱え込んだ時には使わせてもらおう。

 そう、咆哮のスキルを発動するのに叫ぶ言葉は別に何でもいいのだから。

 一定の声量さえ出ていれば本当に何でも。


 でも、できればストレスはあんまり溜めこまない方がいいんだろうけどね。


<モンスター辞典>

〇ミノタウロス

獣族。下界では割とメジャーな方のモンスター。体長は5メートルほど。

2足歩行の牛頭のモンスターで、第3階層迷宮で中ボスとして登場するミノタウロスは斧を装備しているが、先の階層では大剣や槌を装備したミノタウルスもいる。

力の値がずばぬけて高く、耐久も高めであり物理攻撃が強い。

敏捷もそこそこ高いので見た目の大きさの割には早い方。ただし賢さが低め。

弱点は氷属性。耐性は火属性と非常にわかりやすい。

元ネタはギリシャ神話に登場する怪物、ミーノータウロス。

ドロップ:闘牛の大斧、ミノタウロスの角×2、牛肉×8


※闘牛の大斧をドロップするのは第3階層の迷宮の中ボスとして出現する個体のみ。


本編内で玲愛はミノタウロスをあっさりと倒してしてしまいましたが、本来は6人パーティでも全滅させられる強さを持っていたはずの中ボスでした。(玲愛の強さが異常なだけです。)

一応ここで攻撃方法について簡単にまとめておきます。これから攻略する人向けに。


①フレイムボール

火属性・初級魔法攻撃。触れると広範囲に広がる炎の球を口から放つ。水魔法で相殺可能。


②突撃

体当たり攻撃。直線的に迫ってくるので避けるのは簡単な方。


③グラウンドインパクト

ロックゴーレムが使用したものと同じ地面を円形に広がりプレイヤーを弾き飛ばす衝撃波攻撃。ミノタウロスは両腕を地面に叩きつけるか、あるいは装備した武器を地面に叩きつけることで叩きつけられた場所から衝撃波を発生させる。


④装備した武器による物理攻撃

実はシンプルだけど1番強い攻撃。とくに攻撃前に少し溜めの時間を作る技などは威力が高く、防御力に自信のあるプレイヤーにも大ダメージを与えてくるので要注意。


⑤咆哮

本編内で説明した効果と同じだが、第3階層の迷宮の中ボス戦の場合は戦闘開始直後に必ず1回咆哮をするので注意。HPが減ってくると使用してくる確率が上昇。


⑥パワーブースト

エリュマントスが使用してきたのと同じ支援魔法。自分の力を大幅に引き上げるが、一定のダメージを受けると自動で解除される。一戦闘中に一度だけ使用。


以上です。

咆哮のスキルを3回使ってさらにパワーブーストまで使用されると、もうどんなプレイヤーも一撃で殺せるレベルの攻撃力になりますのでできればその前に倒したいところ。


次回、玲愛は迷宮地下3階と地下4階の攻略へ。新モンスターも出現。そして迷宮ボス戦へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ