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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
132/171

ニートな女神と初めてのピザ

宅配ピザを注文したことがない人って意外と多そう。

 そして私は現実世界へと戻ってきたのだけど。

 ゲーム機の電源を切って頭から外し、それをテーブルの上に置く。

 ものすっごく今さらな話で、もう誰も興味もないだろうけども。

 このヘルメット型のゲーム機の正式名称ね。コネクトギアって言うんだって。

 別にわざわざ覚えなくても私はこれからも単にゲーム機って呼ぶつもりだけど。


「そういえば、このゲーム機ってどこの製品なんだろうか?」


 と、私はふと気になってスマホで調べてみたところによると、コネクトギアは下界での日本という国の最大手のゲーム会社と、アメリカという大きな国の企業が共同開発で作ったらしく、ほぼ全世界同時発売のゲーム機だということ。

 コネクトギアは第4世代VRハードであり、現在の下界では最も普及率の高いハードだ。

 でも一応コネクトギア以外のハードというのも存在していて、ハードによっては性能に差異があるそう。もう時期また新しい第5世代VRハードが登場すると下界では噂になっているみたいだけど。


 たとえばとある楽器製造会社の開発したハードは、VR空間内での聴覚情報の再現にすごく力を入れていて、音楽系のゲームソフトをプレイするならそのハードが一番と定評があるらしい。

 アイドルを育成するソフトなどは、ライブとかも実際にライブハウスに行った時以上の熱狂と感動を味わえるとか、逆に実際のライブハウスとかが経営難で潰れそうな謳い文句をつけてるのもあったし。

 その点、コネクトギアは特に秀でたところもないけど欠点もないという万能型のハードで、どんなVRゲームでも楽しむことが可能なのが売りだという。

 まあ一番普及しているのってだいたいそんな感じのだよね。


「ふーん、万能型ね」


 私は、万能って言葉はあんまり好きではない。

 いや、悪い意味じゃないのはもちろん理解しているんだけど、たとえば万能な人間と言った場合、その人はつまり何でもできるわけだ。

 でも何でもできると返って人間は何をしたらいいのかわからなくなりがちでしょ?

 それは神様でも同じなんだよ。


「得意と不得意がはっきりしている方が、絶対に良いと思うんだけどな」


 そこは人ぞれぞれ、神それぞれの価値観なんだろうけど。

 万能型の人間は何でもできて、それで自分が何を本当にやりたいのかはっきり理解しているのであれば羨ましい限りだから、私はそういうやつに嫉妬してるのかもしれない。

 私なんてほら、特に何のとりえもないしさ。趣味は……ついこの間まではそれもなかったんだけど。


「趣味はVRゲームですって企業の採用面接で言ったら、引かれるかな。それとも下界の流行にも敏感なんですねって評価上がったりする?」


 そこは人それぞれ、神それぞれの……いや、その時の面接官の性格によるな。

 若くて下界に詳しい面接官の神ならあるいは心象を良くするかもだけど、下界の最近の流行にはまるで興味ないって感じのおじさんの神が面接官だったらそもそもVRゲームって単語が通じるかどうかさえ怪しいからな。


「でも、趣味は読書ですとか、映画鑑賞ですって面接で答えて私は感受性が豊かなんですアピールするよりは、個性的で良いかもしれない」


 ただそれも結局、その企業がどういう人材を求めているのかによるんだけど。

 他人との協調性を重んじるのか、それとも個性溢れる人、他とは違う感性を持つ逸材を求めてるところもあるから。

 だから面接の時は、事前にそういうところまでちゃんと調べて行かないといけないのだ。

 そして、たとえ面接で他の企業の面接の時と同じ質問が来ても、答えまで全部同じにする必要なんてない。というか、どうせ企業の面接なんて内容の半分以上は嘘みたいなとこあるしな。

 もちろん、嘘をつかず全部馬鹿正直に話すやつを欲しがる企業もあるにはあるけど、でもそういう企業ってだいたいすぐに潰れるからさ。なんでか知らないけど。


「面接受けた時にたまに直感でわかる時あるよね。あ、この会社たぶん近いうちに潰れるなって受けてるこっち側がさ。あれっていったいなんなんだろうな~」


 たぶん、その時の面接官さんかあるいは面接会場がその企業の本社ビルの中だったりした場合に、そういう終わりが近い雰囲気みたいなのを感じ取っちゃうんだろうな。

 死神にはある程度死期の近い人間がわかるみたいな?


「うーん……ま、いいか。それよりも今日の夕食どうしよう」


 私がまたどこか近場の店に食べに行こうかと思った時だった。

 玄関の郵便受けにチラシが挟まっているのが見えて私はそれを取ってみた。


「なんだ、宅配ピザか。1人暮らしで部屋に友達も呼ばないとピザは頼まない……けど、でも安いな。お腹も空いてるし1枚なら食べれるか?」


 なんか月に1度くらいは入っているよねこのピザ屋のチラシ。

 ああ、あと寿司と弁当屋。たまに新しくオープンした美容室やクリーニング屋のも入っている。

 だけどやっぱりピザ屋のチラシだろう。というかもう宅配の食べ物と言えばという問いに対して、答えがピザみたいなところあるし。


 私は入っていたピザ屋のチラシのメニューを見ながら10分くらい悩んだ後でピザ屋に電話をかけて宅配で注文した。

 なんかソーセージが乗った美味しそうなピザ1枚と、サイドメニューでフライドポテトのMサイズ。

 飲み物はいつものように頼まなかった。水道水で十分だし。

 こういうファストフード店などの飲み物の値段って量の割にすごく高いから私は絶対に頼まない。


 私が注文を終えてから30分後くらいにピザはやってきた。

 ピザを受け取って宅配のお兄さんに代金を払い、お釣りをもらうと玄関の扉を閉める。

 そして私はピザとポテトを食べた。実際に宅配ピザを注文したのは1人暮らし始めてから今が初だったけど、意外といいものだな。


「なにより自分が外出る必要ないから楽だ。冬場は特に重宝しそう」


 もう何度も言うようだけど私の部屋にはエアコンがない。

 だから夏場は暑くて死にそうなんだけど、暑い時はまだ扇風機やうちわなんかでなんとかなる。ただし、冬場はマジで地獄だかんなこのアパート。

 いやもう普通に、外の冷たい風とか部屋の中に入ってくるし。気温=室温みたいな。


「去年の冬は大変だったな。窓を全部ガムテで目張りして、夜寝る時も服も何枚も重ね着しないと寒くて寝れないし、でも着たら着たで暑くて汗かいて気持ち悪いし、洗濯物の量も増えて洗剤や柔軟剤もすぐになくなって買い足さなきゃで出費がかさむし」


 さらに言うと、そのかさんだ出費の分だけ食費を切り詰めてほんとにひもじい思いをした。

 たぶんそんな理由から早く春こないかなって思ってたのは私くらい……いや、でも案外いるのかな。

 とにかくこの『はしくれ荘』に住むつもりなら冬は色々と覚悟しておいた方がいい。

 もしも新しい住人がやってきたら私から言えるアドバイスはまずそれだ。。


「ああ、でもそういえば来るんじゃん、新しい住人が。しかも私の隣の部屋に。あれ、それいつだったっけ?」


 大家のルフタさんにその話を聞いたのがたしか3日前で、その時にルフタさんが5日後に引っ越してくるって言ってたから、つまりはもう明後日か。

 ということは明日はまだ大丈夫そう。大丈夫っていうのはゲームしてても大丈夫ってことね。


「大家さんは私よりも若い女神って言ってたけど、貧乏な大学生か、それとも私みたいなニートか」


 少なくともこの『はしくれ荘』にやってくるくらいなんだから裕福ではないだろう。

 こんな神界の外れにあるボロアパート。たしかに敷金も礼金もゼロで家賃も激安だけど似たような条件ならここよりももっと良い物件も探せばあると思うし。

 私の場合は両親がここがいいんじゃないって言ったからここにしたけど。


「あんまり変な神じゃないといいけど」


 このアパートの壁は薄い。

 部屋の中で普通の声量で話す言葉が隣に聞こえるほどではないけど、スマホの音楽をボリューム3くらいで流したら音が微かに聞こえてくるくらいには薄い。

 だから隣の部屋でテレビや音楽を大音量で聞かれると普通に私の部屋にも聞こえてくる可能性が高い。

 若い女神なら大声で友達と長電話したりとかあるだろうしな。


「できれば物静かな子だと私的には助かる」


 私は明後日引っ越してくる若い女神がそういうタイプの神であってほしいと切に願うのだった。

 そして私は、ピザを1枚とポテトを全部1人で食べきるとゴミはまとめてゴミ袋の中へ。

 それからシャワーを軽く浴びて歯を磨いてから寝間着に着替えると、明かりを消してベッドの中へ。


 でもやっぱりピザは皆で食べるものだと思うよ?

 1人でピザを1枚丸々食べるのって、なんかちょっとね。

 これもイメージなのかもしれないけど、ピザは誰かとシェアして食べる食べ物みたいなとこあるし。

 高校まではクラスメイトの友達と学校帰りに店に寄ってよく食べたんだけどな、ピザ。

 もちろん皆で仲良く分け合って、さ。


<第3階層:岩の都グランガン:酒場>


 翌日の朝、8時過ぎに起きた私は朝食をパスして顔を洗い、コップ一杯の水を飲んでからすぐにゲーム機を頭に装着してログインした。


 それで、今日は夜にこの階層最後の迷宮ダンジョンに挑む予定なんだけど。

 強がっちゃったけどやっぱり迷宮ボスの情報は欲しいところなんだよな。

 第2階層のマダムバタフライなんて、私は各種状態異常に対する無効化スキルがあったから良かったものの、それがなかったら何も知らずに初見で勝てたとは思わないし。


 私は一応念のために今日の朝もこの街の酒場をいくつか回ってみたのだけど、そうしたらなんと3件目の酒場にあのプレイヤーの姿を見つけた。

 あのプレイヤー、すなわち第1階層で私が情報を買ったこのゲーム内の情報屋を営んでいるプレイヤー。見た目小学生くらいの幼女の情報屋、アイリッシュだ。

 アイリッシュは店の奥のテーブル席に1人でひっそりと座っていたけど、私が店に入ってきたところを見るなり私の方に視線を移した。

 それで私もアイリッシュの存在に気がついたわけだけど、アイリッシュは前と同じ緑色のローブとマントを装備していた。

 あれがあいつの基本装備なのか、それとも情報屋として活動してる時だけの装備なのか。


「久しぶりですね、まだあれから2週間か3週間くらいしか経ってないですけど」


 私がアイリッシュの座っている席の向かいの席に座ってそう声をかけた。


「むしろ2週間ちょっとで第1、第2階層を突破したってことの方に普通は驚くべきなんだろうけど、あなたの実力は第1階層で薄々わかってたしね」


 アイリッシュは前と同じようにそれまで口元をおおっていたマスクを外すとそう言った。


「けども最近この階層で噂になってる蝶々仮面がまさかあなたのことだったとは夢にも思わなかったわ。その黄緑の色のフードとマント、あなたがそうなんでしょう?」


 さすがアイリッシュは情報屋だけあって目ざといな。


「そうですよ。まあ二つ名の方はできれば皆の記憶から消し去ってもらいたいんですけどね」


 私が本気でやめてもらいたいという感じでそう言うと、アイリッシュはにやっと笑った。


「それはもう無理ね。諦めた方がいいわ。あ、それとこれも一応確認なんだけど、第2階層でちょっと前まで噂になってた竜鱗の乙女っていうのももしかしてあなたのこと?」


 あー、それね。どうしようかな。アイリッシュは情報屋だし、それを言っちゃってもいいものか。

 私は少し考えてからアイリッシュにこう提案した。


「そのことについての情報を教える代わりに、それに見合うくらいの情報をただで教えてくれません?」


 そしたらアイリッシュが一瞬だけ驚いた顔をして、またにやりと笑うとうなずいた。


「ふふふ、面白いじゃない。いいよ、蝶々仮面と竜鱗の乙女は今すごくホットな話題だしね、それについての情報なら何でも買うよ。内容にもよるけどね」


 私はアイリッシュがそう答えたのを聞いて、取引は成立した。

 そして私は私が竜鱗の乙女と呼ばれているプレイヤーであることを認めた。

 その由来についても、第1階層の迷宮ボスであるドラゴンもソロで撃破し、報酬として最高グレードの金の宝箱を出してその中に竜っぽい感じの装備が入っていたことなども話した。

 アイリッシュはそれを聞いて最初は驚きはしたものの、私が証拠として私のアイテムボックス内にあるドラゴンシリーズの装備の名前と効果を見せたらすぐに納得してくれた。


「すごいじゃないの、いや、私もこの目で実物を見たのは初めてだけど。一応ドラゴンを倒した時の最高グレードの宝箱の中身については装備の名前くらいは知ってた。でもまさかそこまで強力な装備が入っていたとはね」


「その1つ下のグレードとの宝箱と中身の差が激しいですよね」


「ああ、そうね。私もドラゴンは銀で倒したけど、でもあれをソロで倒せるプレイヤーが本当にいるとはね。ちなみにその時のレベルは覚えてる?」


「たしか、レベル16だったかな」


「第1階層でドラゴン戦前にそこまでレベルが上がっていたら十分ね。どうやって倒したの?」


「それはさすがに教えられませんよ。というか教えてもたぶん、絶対に他のプレイヤーには真似できないと思うし」


 何せ私はドラゴン戦で、召喚スキルでヤタガラスを呼び出してからのダークボール連射や、最後も根性のスキルでなんとかギリギリ死なずに済んだんだし。

 それを正直に教えたところでなぁ……嘘だと疑われかねないし。


「そう、さすがにそこは答えられないか。あなたの使える魔法やスキルについても話さなきゃならなくだろうしね」


「はい。だから私からはここまで、で、今度はこっちから聞きたいんですけど」


 私が私の情報を教えた見返りに、私はアイリッシュに聞いた。

 今私が教えた情報はアイリッシュが本来であれば相応の値段で買うべき情報であり、その情報料に見合う分の情報を私もアイリッシュから教えてもらうというわけだ。

 そしてもちろん私が聞くのはこの第3階層の迷宮ボスについての情報で。


「ボスの情報だけでいいの?、他のザコや中ボスについては?」


「あ、それは他の親切なプレイヤーさんに教えてもらったんで大丈夫です」


「そういうことならまあいいけど。この階層の迷宮ボスはね……」


 そうしてアイリッシュはこの階層の迷宮ボスについて、モンスター名からその容姿、さらに弱点属性や攻撃方法についても事細かに詳しく教えてくれた。

 私は正直それを聞いて、あきれと、絶望と、わずかな希望を胸に抱くことになったのだけど、まあ詳しい話については迷宮のボス部屋に行ってから話すよ。

 ただ、これはアイリッシュの体感によるところだがどうやら迷宮ボスは鉱山のあのロックゴーレムの3倍くらいの強さだという話だ。


「……え、冗談ですよね?」


「そう思うなら今すぐ挑戦して見るといいわ。少なくとも私はあいつと戦うのは2度とごめん被りたいところね」


 ロックゴーレムの3倍くらいの強さって、じゃあマインゴーレムの2倍くらいかな?

 あいつらだって迷宮ボスでもおかしくない強さがあると思ってたのにさらにその上って。

 迷宮ボスはその階層で一番強いモンスターであることは間違いないからロックゴーレムよりも強いのはわかるんだけど、その強さが3倍と来たか。


「ソロで勝つとしたら、レベルはどれだけあればいいですかね?」


 私がそう尋ねたら、アイリッシュはまさかこの階層の迷宮ボスもソロで挑んで勝つつもりなのかと聞いてきた。

 だから私は正直にはいと答えたらアイリッシュはそれは絶対に無理だからやめておけと言ってきた。


「ドラゴンやマダムバタフライをソロで倒したあんたでも、あいつは無理だよ」


「じゃあもし勝てたらどうします?」


「その時はそうだね、あんたとフレンド登録してこの先の階層のことについても私が知っている情報は何でもタダで教えてやるよ」


 なんでもタダで教えてくれるの?、ふふふふ、言ったな。


「そうですか、じゃあ私頑張りますね」


「あなた私の話ちゃんと聞いてたの?、あいつは本当にヤバいんだって。ソロで挑んだんじゃ1分も持たない、もう完全に自殺行為よ?」


「でも、やってみないとわからないじゃないですか」


 私がそう言うとアイリッシュはそこで黙り込み、それから大きなため息をつくと椅子の背もたれに体を預けてへたりこんだ。


「…………はぁ。でもそうね。あなたなら、もしかすると勝てちゃうのかもしれないわね。でも、さっきの質問。あいつにソロで挑むならレベルは……最低でも30はないと無理なんじゃないかな」


 そうか、それなら私のレベルはもう33だから大丈夫……なんだろうか。

 けど最低でもレベル30だからな。やっぱりもう少しだけ上げた方が安全かな。


「それで、知りたい情報はそれだけなの?」


「ああ、そうだ。じゃあついでにもう1個だけ聞いてもいいですか?」


「答えるかどうかは質問内容によるけど、何?」


「あの、隠しダンジョンの扉の鍵って、どうやって手に入れられるんですか?」


 アイリッシュは私の質問を聞いて「え?」と首をかしげた。

 そして少ししてからようやく私の質問内容を理解したと思えばそこでアイリッシュは笑った。


「あはははは。そう、それが知りたいのね。でもそれはこの階層の迷宮ボスをソロで倒すことよりも困難だと思うわよ?」


「え?」


「いいわ、教えてあげる。ついでにこの階層の扉の場所も。だけど、それで取引は終了。もしそれ以上何か知りたいことがあればそこから先は情報料をもらう。それでいい?」


「はい、大丈夫です」


 そして私はアイリッシュの口から隠しダンジョンに入るために必要な鍵の入手法について聞いた。

 鍵の正式なアイテム名は秘密の鍵で、たとえば第3階層で入手できる秘密の鍵なら第3階層の隠しダンジョンの扉だけを開けられるのだという。つまり階層の数だけ秘密の鍵も存在しているということになる。そして肝心の秘密の鍵の入手法についてだが実は全階層で共通であり、さらになんと私は第1と第2階層でもうすでに9割方その入手条件を満たしていたことを知った。


「どう?、わかったところで容易には手に入れらないでしょう?」


 私はそう言うアイリッシュになんて答えたらいいのかわからなかった。

 ただただ苦笑いでやり過ごすしかない。だって、まさかあれが、ねぇ?


「ちなみに言っておくと、私はこの階層で秘密の鍵を手に入れたっていうプレイヤーの話はまだ聞いたことがないからね。まあそれも当然っちゃ当然なんだろうけど」


 と、最後にアイリッシュは教えてくれた。

 もちろんその前にこの第3階層の隠しダンジョンへの入口となる扉の場所も教えてくれて、それはどうやら渓谷フィールドの端っこ、大きな岩のオブジェクトの陰に隠れた場所にあるということだったが。


「ふふふ、また何か面白いネタがあったら売りにきてね。特にあなた自身の強さの秘密についてなら、かなりの値段で買うわよ?」


 いや、さすがにその情報については何があっても売れないわ。

 だってもう色々とチートだからね、私。それこそ色んな意味で。

 私はアイリッシュに愛想笑いを返しながらも席から立ち上がると、酒場を出て行った。


 それにしても驚いたな。まさか秘密の鍵っていうのを手に入れるのにあのアイテムが必要だったなんて。それについて自力で気づける奴とかほぼゼロだろうに。最初に入手法を発見した奴はリアルで名探偵か何かだったわけ?

 いや、それ以前にそのプレイヤーはいったい第何階層で秘密の鍵を入手できたんだろうか。

 それが何階層のものだったとしてもそのプレイヤーがかなり強くて、そしてかなりの暇人だったことはわかるんだけど。


「でもたしかに、迷宮ボスをソロで撃破するよりも困難だよな」


 私は冷静にそう言いながらも内心ではすごく興奮していた。

 ふふふ、やっぱり冒険者ギルドのクエストはコンプリートしておいて正解だったな。

 第3階層を突破したらちょっと階層を戻ってみようかな。それで第1と第2階層の隠しダンジョンに挑んでみてもいいかも。


 だけどもまずはこの階層の迷宮を攻略しなければいけないな。

 私は逸る気持ちを抑えながらもそれからグランガンの街の冒険者ギルドへと向かったのだった。


<修正報告>

〇第3階層編:ニートな女神と初めての悪魔


修正内容:フレイムデビルがゲーム内で悪魔族のモンスターとして初出であるという記述を削除。


修正理由:第1階層の迷宮などに出現するシャドーマンが悪魔族であり、フレイムデビルは悪魔族として初出のモンスターではなかったため。


原因:シャドーマンの陰が薄くて筆者がすっかり忘れてしまっていた。影のモンスターだけに。


<設定の変更を含む修正報告>


〇第3階層編:ニートな女神と初めての巨人


変更内容:ゲーム内には混乱の状態異常を回復させる専用のアイテムは存在しないという設定でしたが、それを変更しました。


変更後の設定:

混乱治し薬という混乱の状態異常を治す回復アイテムはゲーム内に存在しているが、玲愛が訪れた薬屋では販売されておらず、グランガンの街の別の薬屋には普通に売っている。

ただし、玲愛がその別の薬屋に行って混乱治し薬を買うことはなかった。その理由についてはニートな女神と初めての巨人(修正後)にて説明しています。


なお、上記の設定の変更に伴い以降の話の中で、上記の設定について言及されている文章の一部、または全部を修正し、物語全体に矛盾が生じないように新たな文章の追加や、既存の文章の削除等を行いました。

特にニートな女神と初めての混乱の後書きでの、混乱の状態異常に関する説明の欄を大幅に修正したのでそちらの方もご確認いただけると幸いです。


設定変更の理由:さすがに専用の治すアイテムが存在しないという状態異常が、第3階層というゲームの超序盤で登場させるのは酷すぎるかなと、思い直した結果です。


ストーリー本編の大筋とはほとんど無関係の設定変更ですが、一応この先の話で触れる可能性が高い話題としてこの場で変更のご報告をさせていただきました。

どうか今回の設定変更で混乱しないように、もしも混乱してしまったら混乱治し薬を飲んでいただけると問題ないかと存じ上げます。

筆者の勝手な都合で設定を変更してしまい大変申し訳ありませんでした。


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