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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての居眠り

立ったまま居眠りできる人を尊敬してます。

 私たちは再会した。

 そして話をするために冒険者ギルドの2階へと移動した。

 長いテーブルを挟んで手前に私、向かいにナポリさんとパス太が座ると、まずは私が聞いた。


「あれ、そういえばペペロンチーノさんは今日は一緒じゃないんですか?」


 ナポリさん達は3人パーティで、今この場にはいないけど大柄な大剣使いのペペロンチーノさんというプレイヤーがいたはずだ。


「ああ、さっきまでは一緒だったんだけど先にログアウトしたの。リアルでやらなきゃいけない仕事があるからって言って」


「へえ、それなのに直前までゲームしてたんですね」


「まあね、ペペロンチーノさんは私たちの中で一番できる人だし、ああ、できるっていうのはもちろん仕事のことね」


 いや、それくらいは説明されなくてもわかるけど。

 でも、そうなのか。やっぱりペペロンチーノさんってリアルでも優秀な人間なんだな。

 第2階層でクエスト前に話し合いした時も、私の装備を見ただけで私がマダムバタフライをソロで撃破したことを見抜いていたし、観察眼が優れているというか。

 そういう人間が無能ということはないだろう。


「そうそう、うちの課でも彼の働きぶりには皆感謝しているんだよ。ペペロンチーノさんはほら、根が真面目で努力家だから」


 ペペロンチーノさんとナポリさんの上司であるパス太もそう言った。


「そうでなんですね。じゃあ、いつかペペロンチーノさんとパス太さんの役職が入れ替わる日も来るかもしれませんね」


 と、私がそう言ったらナポリさんが噴き出したかのように笑った。


「あは、あははははは。もう、玲愛ちゃんったら、それは職場の皆が思っていても言わないことだったのに、……あ、課長。大丈夫ですよ、そんなことにはならないですって……たぶん」


 あ、ナポリさんの今の言葉でパス太が地味にショックを受けた。


「そんな、え、っていうか皆内心ではそんなこと思ってたの!?」


「あ……いえ、まあ、はい」


「酷いな、おい。それはさすがに僕も傷つくっていうか、一応僕君たちの上司だからね!?」


「そうは言っても、課長は課長ですし。年もそんなに離れてないですし。それに、これは私が言っていたわけではないですけど威厳がないんですよ、課長には」


「君もう僕への批判を隠す気もないね!?」


 ナポリさんはそれから、まだまだありますけど聞きますかみたいな顔をして。

 それでパス太さんが軽く絶望しながらもうやめてくれと懇願して。

 そしてそんな2人の様子を見て私は笑っている。


「あ、そうだ。それで2人は、ああ、3人も第2階層の迷宮を突破できたんですね?」


 私は話題を変えようと思って2人にそう尋ねた。

 すると2人は私の方を見てうなずいた。


 なんでも、最初はパス太、ナポリさん、ペペさん(ペペロンチーノさん)の3人だけで迷宮のボスに挑もうとしたのだけど、ナポリさんがそれを止めたそう。

 理由は、あの『草原の守護者』のクエストの報酬で守護者からもらった武器、守護者の弓矢。

 守護者の弓矢はそれを装備したプレイヤーの所属するパーティ全体に常に耐久上昇の効果を付与し、パーティの人数が多ければ多いほどその効果が上がるという強力な武器だ。

 なので3人だけではなく最大の6人パーティでボスに挑んだ方が良いと提案したそう。


「それでちょうど同じタイミングでボスに挑もうとしている3人パーティがいて、その子たちと組んでなんとかマダムバタフライを倒せたの」


「ああ、一緒に組んでくれた子たちもナポリさんの弓の効果を教えてあげたら是非にって言ってたし、まあその過程で僕たちがあの『草原の守護者』のクエストをクリアしたって言ったらめちゃくちゃ尊敬されて、大変だったよ」


 ナポリさんとパス太はそう教えてくれたけど。

 あれ、でも『草原の守護者』クエストについて他のプレイヤーに話をしたのか。


「あ、それでね。クエストの話をする時にもちろん私たち3人だけでクリアしたわけじゃないって言ったら、すごく突っ込まれて。蝶々仮面さんと組んだのよって教えちゃった。あ、でももちろんそれ以上の詳しいことは教えてないけど」


 ……おいおい、マジかよ。

 それ、もしかしなくてもあれじゃないか?

 私が『草原の守護者』クエストをクリアしたことも周囲にばれちゃったんじゃないか?


 いや、教えた3人組の子たちにもそのことは内緒ねと一応口止めはしてくれたそうだけど、でも私と直接会って、私が口止めを頼んだわけじゃないからもしかしたら普通に他のプレイヤーたちにも話しているかもしれない。


「ちなみに組んだ3人組ってどんなプレイヤーたちでした?」


「そうね。女の子2人に男の子1人っていう珍しい組み合わせで、3人ともリアルじゃ高校生って言ってたわ。女の子2人が魔法使いで、男の子が片手剣で前衛っていう、まあバランスは悪いけど3人のチームワークは結構良かったわよね?」


「そうそう。男の子が1人で前に出て頑張って、後衛の2人の女の子は僕が守るって張り切っていたし、あれは絶対2人のうちどっちかのことが好きなんだろうなぁ」


 なるほど、つまりは姫を守る騎士にでも成りきっているのか。

 ただ、騎士1人で2人の姫を守るのはこのゲームじゃちょっと難易度高そうだけど。

 それならいっそのこと3人とも魔法使いにすれば良かったのに、と私は思った。

 ああでも、それじゃあ賢さが高い敵と遭遇した時に詰んじゃうかな。


「でも女の子2人の方も、男の子に気があるみたいでしたよ?、女子3人で話した時にちょっとそんな感じしてましたもん?」


「え、女子3人?」


「なんですか課長?、何か言いたいことがあるなら聞きますけど?、また私と決闘して弓矢の雨を食らいたいんですか?」


「い、いやなんでもないよ」


 ナポリさん、それは怖いな。

 というか2人は以前にも決闘したことがあるのか。


「あの、これ微妙に気になってたんですけどナポリさんたち3人って、誰が一番強いんですか?」


「え?」


「いえ、すみません。ただちょっとだけ、気になって」


 私の質問を受けて2人は腕を組んで考え込んだ。

 そして出された答えは、接近戦ならペペさんが最強だが、中距離ならパス太さん、遠距離ならナポリさんにも分があるかもしれないということだった。

 そういえば魔法使いがいないことを除けば麺類トリオの3人は物理攻撃特化のパーティとしては普通に理想的な布陣なんだ。このパーティにあの2人。リリムちゃんとリリアちゃんを加えて、さらにもう1人魔法攻撃が得意なやつを入れて6人パーティにすれば最強なのに、と私は思った。


「ナポリさんたちは、さっきの話から推測するとロックゴーレムに挑みました?」


 さっきギルドの前で、私の方に向かって歩いて来る2人のうち、パス太さんが巨体でジャンプと言っていた。

 この階層で巨体でジャンプするモンスターといえばアースジャイアントとロックゴーレムの2体。

 でもアースジャイアントの方は夜しか出現しないエリアボスで、今はまだ夕方だからその直前に戦ったというならロックゴーレムの方で間違いないと思ったのだ。


「そう、そうなのよ。でもあいつ、攻撃方法がたくさんあるし、それに接近したらジャンプして衝撃波で吹き飛ばされて陣形は壊滅するわで、もう無理。あんなのどうやって倒せっていうのよ」


「そうそう。あんな化け物どうやって倒せばいいんだって……あれ、でもじゃあ玲愛さんもしかして?」


「いや、まあ倒しましたけど」


「嘘、ほんとに!?、私あれもう迷宮ボスくらい強いと思ったのに!?」


 ああ、やっぱり皆そう思うよな。

 あのロックゴーレム、絶対に普通のダンジョンのボスとして戦うにしては強すぎるよな。

 少なくとも第3階層のダンジョンのボスでは絶対にない気がする。


「まさか玲愛ちゃん、ロックゴーレムも1人で倒しちゃったんじゃないでしょうね?」


「もちろん、ソロで倒しましたけど?」


「「…………!?」」


 ああほら、また2人が驚きすぎて固まっちゃったよ。

 もういいからそんなコントみたいなリアクションとか。


「あ、あーーーー。でも、そうね。玲愛ちゃんだものね」


「あ、ああ、うん。そうだな、玲愛さんだからそれも、うん」


 おい、ちょっと待てよお前ら。

 私だからってなんだよ。え、私だからって理由でもう納得できちゃうの?

 いや、きっとペペさんもこの場にいたら無言でうなずいたに違いない。

 本当に失礼な話だよ、まったく。

 私だって、ロックゴーレムに勝てたのは本当に偶然でその場の思いつき頼りみたいなとこあったし。


 ああ、でもそういや私って行きあたりばったりで詰みかけて。

 それでその場で対処法考えてなんとかするって場合が多いな、今まで。特にボス戦とかほとんどそうだった記憶あるし。その対処法の半分近くが召喚スキルに頼った強引な勝ち方だった気も。


「ああああああ~~~~!!」


 私はようやく今までの自分の戦いを顧みて、自分がいかに無茶なことをしてきたのかということをその場で改めて理解した。理解したんだけども、もうここまで来たら今さらだと思うし。

 それに私は別に死んだら死んだでも良いと毎回ピンチになる度に思ってるしね。死んだら、所持金半分はきついけどお金ならまたすぐに稼げるし、次にそいつに挑むまでに対応策をゆっくり考える時間が手に入ったと思えば、別に。

 実際に負けて死んだらめちゃくちゃ悔しがるとは思うけど。


「だ、大丈夫玲愛ちゃん。もしかして今の言葉、傷ついた?」


「い、いえ。大丈夫です。私は、もう慣れましたから」


 いったい何に慣れたのかということは2人は聞かなかった。

 私もわざわざそんな風に私の強さに半ば呆れたみたいに納得されることに慣れてますなんて、言いたくはなかったし言ったらもっと悲しくなるだけだから。


 それから30分くらい私はナポリさんとパス太の2人と話した。

 私がどうやってロックゴーレムを倒したのかということについては聞かれなかったけど、それについては毎回玲愛ちゃんに攻略法を教えてもらうのはさすがに悪いし、それにあれは自分たちの力だけでなんとかして勝ちたいからだと。立派なこころがけだと思う。


 そして私が今渓谷の攻略をほぼ終えて明日にはこの階層の迷宮に挑むつもりだと言ったら、そこでナポリさんから新しい情報を教えてもらった。


「そうなんだ。前から玲愛ちゃんの攻略スピードは早いと思っていたけど、あ、それじゃあもしかして隠しダンジョンにも挑戦しちゃったり?」


「え?、隠しダンジョン?」


 なにそれ、そんなの初耳なんですけど。


「あれ?、もしかして玲愛ちゃん知らない?」


「えっと、はい。なんですかその隠しダンジョンっていうのは」


 いや、言葉の意味からして大体は予想がつくけど。

 ナポリさんが教えてくれた話によれば、ゴッドワールド・オンラインの各階層にはどこかに必ず隠された扉というのがあり、その扉の先に隠しダンジョンというのがあるらしい。

 隠しダンジョンの入口である扉がどこにあるのかは階層によって違い、とある階層の扉はフィールドにあからさまに置いてあったり、またはダンジョンの中だったり、街の中にあることもあるんだとか。


 隠しダンジョンの中には、その階層に出現するモンスターの平均レベルを大きく上回るレベルのモンスターが大量にいるらしく、その階層を攻略中にその扉を見つけても不用意に中に入ってはいけないこと。

 隠しダンジョンに入るにはまずその前に扉を開けるための鍵を手に入れる必要があり、その鍵はその階層の中のどこかで手に入るという話だったが。


「じゃあ、第1階層や第2階層にもその扉はどこかにあるんですね?」


「たぶんね。実際に先の階層では扉だけはけっこう見つかっているらしいんだけど、でも、ね」


「え、何かあるんですか?」


「その扉の奥に進んだプレイヤーはその先に隠しダンジョンがあることは認めたんだけど、どういうダンジョンでどんなモンスターが出たのかという質問についてはなぜか皆だんまりを決め込んでいて」


「え?」


 なんだその話は。

 それじゃあ本当に扉の先に隠しダンジョンがあるかどうかわからないじゃん。

 あれ、でもということはもしかして?


「ああ、じゃあ例えば攻略サイトとかにも?」


「ええ、扉の場所について判明している階層は、扉の場所は書いてあるんだけどね。隠しダンジョンの中については何も。ただ、ゲーム運営は隠しダンジョンがあること自体は前に認めたらしいわ」


「実際に鍵を手に入れて中に入ったっていうプレイヤーはどうして何も言わないですかね?」


「さあ、それは私も知らないけど。噂じゃ隠しダンジョンの中での記憶は出る時に消されてるんじゃないかとか、あるいは鍵を手に入れて扉を開ける時にそのプレイヤーに警告文でも表示されるんじゃないかって話ね」


「警告文って?」


「だからその、運営からのメッセージよ。隠しダンジョンの中で見たもの、聞いたこと、手に入れた物なんかについては他のプレイヤーに一切の口外を禁ずるみたいな?」


 ああ、なるほどな。

 きっと運営側としてはそうして、謎のままにしておくことでプレイヤーの好奇心を掻き立てるような要素をゲーム内に用意しておきたいわけだ。

 だって私は違うけどこのゲームも攻略サイトがあって、それを見れば正直言ってどんなゲームも楽勝っちゃ楽勝だからね。

 ダンジョンのボスの名前や攻撃方法、その対処法に弱点まで全部載ってるみたいだし。


 攻略サイトって本来はどうしても自分たちの力じゃ勝てない相手や、わからないナゾに直面したプレイヤーが最期の手段で先に答えを見ちゃうっていう裏技であって、自分で何の努力もせずに先に攻略サイトで攻略法見てゲームをプレイするプレイヤーは、私は3流だと思う。

 まずはとりあえず自分で挑戦してみないと。


 ちなみに、どうしても自分じゃどうにもできなくて最期に攻略サイト見ちゃうやつは2流。

 1度も攻略サイトを見ることなく自力でゲームを攻略するプレイヤーは1流。


 私は、まあでも謎解きとかボスの攻略法とかはさすがに見ないけど、攻略サイト自体はスマホでよく見たりしているからな。1.5流くらいかな?


「扉の鍵の入手法についても、プレイヤーは何も言ってないんですか?」


「あ、ううん。そっちについてはもう判明してるみたい。でもごめんね、実はそれは単純に知らないのよ私が。今度会う時までに調べておくね」


「い、いえ。それは自分で調べますから大丈夫です」


 それにしても第1や第2階層にもあったのか、隠しダンジョン。

 私は鍵はおろかその扉さえ見かけたことはないんだけど、それとも街中の普段は滅多に行かないような場所にひっそりとあったのか。

 というより、鍵はその階層のどこかで手に入るって話だけどもう攻略終えてるのに私、その鍵とやら手に入れてないし、先に扉だけ見つけても無駄なんだけどさ。


 それから私は、リアルでこれから会社の飲み会があるという理由でログアウトしたナポリさんとパス太の2人を見送ると、外はもう完全な夜になっていた。

 私は隠しダンジョンのことも気になったけど今は目先の攻略に集中しようと思い、街を出て夜の崖へと向かうのだった。


<第3階層:渓谷>


 夜の崖についてだけど、モンスターの分布に特に変化は見受けられなかった。

 でも、ただでさえ出現率が低めだったフレイムバグが夜ではまったく出現しなくなったこと。

 それと、夜は空気が澄んでいるっていう理由からなのか何なのかは知らないけどシルフの出現率がやや上がっていて、ハルピュイアは目が怪しく赤く光るようになっていたくらい。

 新しいモンスターは出現しなかったけど夜の吊り橋っていうのは昼以上に怖いなと思った。

 月と星が綺麗に見えるのは荒野と同じだったけど、崖はたまにちょっと谷底から吹く風の音が聞こえたりするから荒野よりも幻想的に感じる。

 やっぱり景色は見るだけでなく聞くことも大事なんだということが良くわかったよ。


 そして夜の崖を抜けた私は夜の渓谷へ。

 もちろん、さっき冒険者ギルドを出る前に渓谷で受けられる残る2件のギルドクエストについては受注しておいた。渓谷の夜にはまた新しいモンスターが1体だけ出現するようだったし。

 ギルドクエストの内容からそのモンスターの名前も私はあらかじめ知っているんだけど。


「うん、間違いなくあいつだな。レッドシャドー」


 そのモンスター名はレッドシャドー。

 第1階層の迷宮地下3階に出現したあのシャドーマンの強化版となるモンスターで、見た目は名前の通り全身真っ赤な影のモンスター。

 あれだよ、パソコン上でシャドーマンのデザイン画があって、その体の部分に色を全部別の色に変えるペンキ缶で黒を赤に変えただけみたいな?

 あ、でもよく見たらレッドシャドーの方がシャドーマンよりも手の爪みたいなのがちょっと長いか?


「いやいや、でもさすがにデザイン手抜きじゃない?」


 ここまで手抜きなのはあれだよ。もう色付きのスライムと同じレベルだよ?

 それか、なんだっけ。あの、ホーンラビットとニードルラビットみたいな?

 一応角の形に違いはあったけどそれ以外は単純に体の色を変えただけっていう、それだけで別のモンスター扱いとして出すのはやっぱりどうかと思うんだけどな、私は。


 え?、それでレッドシャドーは強かったのかって?


 それは……うーん、どうなんだろうね。

 攻撃方法はシャドーマンと同じで急速接近してきて爪で引っ掻き、そしてすぐに逃げるという本当にうざったい一撃離脱、ヒット&アウェイ戦法なのは変わってなかったし。

 まあ能力値は全体的に上がっていたみたいだけど、それだけっていうか。


「うわ、マジで色変えただけかよ」


 本当は他にも違いがあったのかもしれないけど私は気づかなかったし。

 体力も耐久も低かったんで片手剣の一撃で倒せたよ。スキルや魔法の入手はなし。

 ドロップしたのは赤い塊。シャドーマンがドロップした黒い塊の赤いやつだ。

 そういや黒い塊って調合のレシピで爆発薬を作る材料の中にあったな。

 じゃあこの赤い塊も、もしかしたらそれより上の大爆発薬とかの材料になってたりして?


「はははは、まさかね」


 私は笑いながらも内心でそれもありえなくはないかもとか思いつつ、ギルドクエストである10体のレッドシャドーの討伐と、赤い塊を5個手に入れるというのを達成した。

 それでまあ暇だったんでレッドシャドーも100体くらい倒しておいたよ。出現率なかなか高かったしそれもすぐに終わったけど。

 というか赤い塊が100個欲しかったんだ。この先何かに使えそうだったからね。


 だけども夜の渓谷で一番笑っちゃったのはレッドキャップだよ。

 だって昼間はプレイヤーを見つけたらものすごい勢いでこっちに襲い掛かってきたのにさ。


「……あれ?、なんかレッドキャップのやつ居眠りしてない?」


 そう、まさかの居眠り。

 というか眠り(微小)の状態異常になぜかしらなっていたのだ。すべてのレッドキャップが一様に。

 誰だってそれを見たらもう笑うしかないだろう。なぁ?


「このフィールド、夜の方が難易度低いんじゃないか?」


 私がこう思ったのも無理はないだろう。

 フィールドは昼よりも夜の方が難易度が高いという話も、あくまで絶対ではなくそういう傾向があるってだけの話であって、だから夜の方が昼よりも安全にフィールド探索できるフィールドというのがあってもおかしくはない……んだろうな、たぶん。


「明日、迷宮に行くときは夜に行くことにしようかな。そっちの方が渓谷をすんなり通れるみたいだし」


 夜の渓谷はレッドシャドーが追加で出現するようになったことと、レッドキャップが居眠りしていることを除けば昼との違いは特になかったよ。

 だから私は特に苦戦することもなく夜の崖と渓谷の探索を終えるとグランガンの街へ戻った。

 冒険者ギルドで2件のギルドクエストの報告を終えると報酬をもらい、そこで私はログアウトした。


 これで残るギルドクエストは8件、この階層の最終ダンジョンである迷宮内部で受けられるものを残すのみとなった。

 そして私は明日(夜に行くことにした)その迷宮に挑むつもりなんだけど。


 レベルは33で大丈夫なんだろうか?

 なんなら明日の午前中にでもまたレベル上げしておくべき?

 ソロプレイヤーはそれを考えなきゃいけないから大変なんだよね、このゲーム。


<モンスター辞典>

〇レッドシャドー

悪魔族。シャドーマンの強化版のモンスターで、シャドーマンのカラーリングを黒から赤に変えただけだが、決してデザインに手抜きをしたわけではない。

ただ、攻撃方法はシャドーマンと同じでそれ以外に目立った変化もないだけであって。

敏捷と力の値が高いが耐久と賢さは低め。

弱点は相変わらず光属性だが、耐性は闇属性の他に火属性も加わっている。理由は、赤いから。

ドロップ:赤い塊


〇レッドキャップ(追記)

夜は基本的に居眠りしていて昼よりも簡単に倒せますよ♪


次回、玲愛は第3階層の迷宮に挑む予定。


なお、今回本編内で設定だけお知らせした隠しダンジョンについては、第3階層編の最後か第4階層編のどちらかで余裕があれば挑む予定です。

また、その時点で第2、第1階層の隠しダンジョンに戻って挑むかどうかについてはまだ未定。

あるいは、外伝として書くかもしれない。


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