ニートな女神と初めての槌
槌と書いてハンマーと読む。
槌術と書いてハンマーじゅつとは読まない。つちじゅつです。
渓谷フィールドでレッドキャップ狩りを始めて3時間ほどが経過した頃、私はこの階層の迷宮への入口である神殿を含む、渓谷フィールドのマッピングをすべて終えた。
最終的にレッドキャップは100体ほど倒して鉄のマチェットとレッドキャップもそれぞれ100個ずつほど手に入れた。
そしてその間に、私はまたレベルを2つほど上げて33になった。
『怒りの鉱山』のクエストと『槌入門』のクエストで鉱山のモンスターたちを倒しまくって、マインゴーレムからも多くの経験値を得て、今回も1体で経験値が80ももらえるレッドキャップを100体も倒したとしたらそれだけで8000ポイント。
それ以外のモンスターも倒しながらまるで殺戮の嵐のようにフィールドを駆けまわっていれば、そうなることも当然か。まあ、それはいつものことなのだけど。
レベル33
HP:260/260 MP:174/174
STR:74
VIT:74
AGI:71
ING:64
DEX:34
LUX:32
まだ使っていないスキルポイント:82ポイント
そしてさらに短剣術のスキルレベルもⅡからⅢへと上がり、新たな技を4つ覚えた。
〇トリプルダガー
無属性の物理攻撃。短剣を3回連続で投げつける。連続攻撃。1回目の攻撃が敵に命中した場合2回目、3回目の攻撃は必ず命中する。
消費MP:6 リキャストタイム:10秒
〇サンダーダガー
雷属性の物理攻撃。雷をまとった短剣を投げつける。
消費MP:3 リキャストタイム:5秒
〇アイスダガー
氷属性の物理攻撃。冷気をまとった短剣を投げつける。
消費MP:3 リキャストタイム:5秒
〇パラライズダガー
無属性の物理攻撃。麻痺毒を塗った短剣を投げつける。攻撃が命中した敵を麻痺(小)の状態異常にする。
消費MP:6 リキャストタイム:12秒
……それぞれの技の効果はそんな感じだ。
サンダーダガーとアイスダガーについては、もう説明はいらないと思うけど。
トリプルダガーはダブルダガーの強化版となる技で、まあ1本の短剣を投げたはずなのになぜか敵に命中した時にはグサグサグサと3回の命中音が聞こえるのはやっぱり変な感じがするんだけど、でもまあきっとプレイヤー自身もわからないくらいの速度で3本の短剣を投げていたんだろう、きっと。
「短剣術Ⅱの時にポイズンダガー、それで今回はパラライズダガーか。短剣のスキルは状態異常を与えるものが覚えられるのか」
私は麻痺(小)の状態異常にする技なら普通に魔法でパラライズが使えるし、それ以前に私が装備している蝶々の短剣の特殊効果で攻撃を命中させた敵を80%の確率で毒か麻痺か眠りの(中)レベルの状態異常にできるからパラライズダガーを使う機会はなさそう。
「強力な魔法やスキル、装備を手に入れると、その後からその下位互換となる魔法やスキル、装備を手に入れても全部使えないっていうか使わなくなっちゃうからな」
かと言って、別にモンスターを倒した時やスキル成長で覚えるスキルや魔法について、私がそれを決めたり選んだりしてるわけでもないし、そこは仕方がないんだけど。
「覚えてるスキルや魔法を売ったりとか、魔法屋の巻物みたいに新しいスキルを買って覚えたりとかできればいいのにな」
擬態とか、影遁とか、突進とか、超音波とか、自爆とか。
もう絶対に使わなさそうなスキルはそれで売り払ってやってもいい。
たとえ1度売り払うともう2度とそのスキルを手に入れることが出来なくなるとしても、きっと私は迷わずにそれらのスキルを売ってしまうだろう。だって使わないのだもの。
特に自爆とか、もう速攻で売ってやるよ。売値が0Gでも売ってやる。
「オフにしてるから発動はしないけど、持ってるとたまに使いたくなる魔力があるんだよね。自爆」
ボス戦の時にどうしても勝てなくて、それで1回死んでまた最初からやり直そうという時には便利なんだろうけどね、自爆のスキルは。
モンスターの攻撃をあえて受けて痛い思いしなくても、自爆のスキルを使えば一瞬で死ねるから。
まあ以前にも言ったけどパーティプレイなら、たとえば自分を犠牲にしてでも敵に大ダメージを与えて後ののことは仲間に任せるという使い方もあるかもしれないが、ソロプレイヤーは使わないからな。
「ある意味、近づいたら勝手に自爆して死んでいくスモールロックこそ、プレイヤーが一番倒しにくいザコモンスターだったりして……」
自爆したスモールロックって経験値とお金を落とさないんだよね、当然だけど。
自爆させずに倒してもそこまでもらえるわけでもないんで別にいいんだけどさ。
「とりあえず、街に戻ってアイテム売って、ログアウトして昼飯にしよう」
時刻はもう午後1時前だったし、ちょうどいい時間だろう。
<第3階層:岩の都グランガン>
グランガンの街に戻るなり私はすぐに武器屋へと向かい、そしてまずはゴブリンガードがドロップした木の大楯を235個売った。1個60Gで14100Gに。
そして鉄のマチェットは1個250G、レッドキャップは1個850Gで合わせて1100G、それをそれぞれ106個全部まとめて売り払い値段は11万と6600G。
合計して13万と7000Gという額になった。
「自分で売っておいてなんだけど実際えぐいな、この額」
武器屋の店員さんも、もう顔がめちゃくちゃ引きつっていたしちょっと悪いことしたかも。
でも木の大楯と鉄のマチェットは売れないだろうけどレッドキャップは店頭に並べればそこそこの値段で売れると思う。
そんなに性能がいいわけでもないけど、でもまだこの階層じゃ装飾品アイテムは貴重だから。
でも実は第4階層からは武器屋にも普通に装飾品のアイテムが売られているという噂も聞いたから、そこからはそんなに珍しくもなくなるかもしれない。
「うーん、それで今の所持金は……20万超えてるよ」
モンスターをバッサバッサと斬り殺して、戦闘終了後のリザルト画面が消えないうちに次のモンスターを見つけては倒しまくっていたせいでアイテム売却までの時点ですでに私の所持金は5万を超えていた。
ここ最近のギルドクエストや住人クエストの報酬金も含まれてるけど。
「……預けよう。さすがに怖いし」
ということで私は武器屋を出た後で冒険者ギルドへ行き、銀行に20万ゴールドを預けた。
これで預金額は70万ゴールドになったのだけど。
「うん、これ第4階層ではもう100万超えるな、絶対に」
それだけは確信できた私だった。
第1階層終了時点での銀行預金額はたしか20万ちょっと。
第2階層終了時点での銀行預金額が、45万だったっけ?
つまり私は、第1階層では20万程度。第2階層では25万程度の金を稼いだということになるのだけど、この階層ではまだ残る迷宮ダンジョンやギルドのクエストを多く残っている現段階で70万。
つまりこの時点ですでに第2階層と同じ25万くらいの金は稼いだということになる。
もちろん、魔法屋で巻物を買ったりとか、後はポーションや聖水などの回復アイテムも買って散財した分を合わせるとそれ以上。
「もっとも、今回預けた20万のうち13万はアイテムの売却代金だけど」
そういえば第1階層でも第2階層でも手に入れたお金の大部分はモンスターを倒してドロップした素材アイテムや装備品などを武器屋で売却して手に入れたものだった。
仮に、私のアイテムドロップ率が100%というチート効果が備わっていなかった場合、おそらく私の銀行の預金額は現在でも20……いや、10万あったかどうかというところだろう。
「そう考えるとやっぱりアイテムドロップ率100%もすごい話だよな」
倒したモンスターからスキルなり魔法なりをいただく効果もすごいんだけども。
それに、調合スキルとかのアイテム作成スキルで作ったアイテムの品質が毎回すべて最高品質のものになるという効果も。
「ほんと、チートが過ぎるよな」
私は冒険者ギルドを出て、周囲に誰もいない場所で1人そうつぶやくと、メニュー画面を呼び出してログアウトのボタンをタッチした。
そして現実に戻ると今朝買ってきたカレーパンとやきそばパンを食べた。
両方とも辛めのパンを買ったのはちょっと失敗したかもしれない。やきそばパンではなくメロンパンにしておけば良かったかな。と、ちょっと思った。
そしてパンを食べ終えて少しだけ休憩した後で私はゲームを再開した。
<第3階層:崖>
さて、今日は夜に崖と渓谷のフィールドを探索したらそれで終わろうと思っていた。
けれども時刻は現在2時半過ぎ。この階層に夜が訪れる午後6時までまだ3時間以上あった。
だから私は先に冒険者ギルドで昼間の崖と渓谷で受けられるギルドクエストをやってしまおうと考えてとりあえず崖で受けられるギルドクエストを5件受けた。
「あ、そういえば槌が装備可能になってたんだった。うーん、まあ時間あるしちょっと試しに装備してみるか」
私は『槌入門』のクエストで槌術Ⅰというスキルを報酬でもらい、さらに報酬として鉄の槌という武器ももらった。
槌という武器は両手武器であり、それを装備するためには右手と左手の2つの装備スロットを使って装備しなければいけない。
しかしその分一撃の威力はこのゲームのすべての武器の中でもトップクラスという、まさにパワーファイターにはオススメの武器なのだ。そして私は鉄の槌を装備してみたのだけど。
頭:蝶々のフード
体:蝶々のマント
右手:鉄の槌
左手:――
足:蝶々の靴
装飾品1:蝶々の仮面
装飾品2:蝶々のブレスレット
装飾品3:守りの腕輪
今の装備はこんな感じだ。
ちなみに装飾品2の蝶々のブレスレットと、装飾品3の守りの腕輪については番号の順番が逆だったけど、それはもともと装飾品2に装備していたカラスの指輪を外して、そこに守りの腕輪を装備していたのをちょっと変えてみた。その方が蝶々シリーズの装飾品が連続で表示されて見やすいからね。
でも、なるほど。
両手武器を装備するとたとえば右手に鉄の槌を装備したら左手の欄は空白になるのか。
一応その状態で左手にも何か装備できないかなと思って装備パッドの左手の方をタッチしてみたけど応答はなく、やっぱり槌を装備する時は他の武器を同時に装備はできないみたい。
ああ、それと鉄の槌を装備するのは別に左手でも構わない。その場合は右手の欄が空白になるだけだから。その部分に何も装備していなければ装備欄には゛なし゛と表示されるからね。
……それでさ。私も実際に槌を使って戦闘をしてみたんだけど。
「うわ、やっぱり重いな。いや、実際に槌の重量が大きいわけじゃなくて、攻撃のモーションが重い。いや、この場合は遅い……か」
たぶんだけど槌を1回振って敵をズガーンと叩き潰すなら、同じ時間で片手剣なら3回はズバズバズバと敵を斬ることができそうなくらい、槌は攻撃モーションが遅かった。
ただし、攻撃のリーチと威力は申し分なくて崖フィールドであればすべてのモンスターが一撃で倒せるレベルの攻撃力はあった。
「あ、でも。これって私のレベルが高くて、剛腕Ⅹのスキル効果とか色々加えた上での威力だからな。実際のところはどうなのか」
でも、たとえばシルフのように空中を浮遊して敏捷の高いモンスター相手には、かなり苦戦させられるということは十分わかったし。
なんていうか、敵に狙いを定めて攻撃をしようと槌を振りかぶっても、それを振り下ろす前に攻撃の範囲から容易に逃げられちゃうんだよね。
「はぁ~、やっぱり私には槌は無理だな。せめてもう少し攻撃速度が速くないとさすがに厳しい」
予想はしていたけど私はそう結論づけるしかなかった。
まあそれは裏を返すならば、もう少し攻撃速度が早ければ私は槌を使うこともやぶさかではないというか、どんなモンスターも一撃で倒せるというのは爽快感はあったから。
私の今のレベルなら片手剣でもたいていの敵は一撃で倒せるんだけどね。
「ゴーレムみたいに、耐久が高くて敏捷が遅いモンスターにはすごく使えそうな武器だな、槌は」
槌を装備していたら第1階層の迷宮の中ボスだったあの甲冑、ナイトアーマーも一撃では無理でも2、3回くらいの通常攻撃で倒せそうだ。
ちょっと今度鉱山のロックゴーレムを槌で倒してみようかな。それも10回くらい殴れば倒せるんじゃないだろうか。
槌という武器の動きを一通りマスターした私は、装備を元に戻した。
もう右手にドラゴンソード、左手に蝶々の短剣を握ってフィールドを歩いていることにすっかり慣れてしまった。最初は左手には盾を装備していたはずなんだけどな。
「あ、そうだ盾。片手剣術はスキルレベルⅤに上がったけど、盾は装備していないからスキルレベルⅣのままなんだよね。でも、今日だけで頑張ってレベル上がるわけないし、もう盾はいいかな。この先また装備することがあればそこからまた成長させていけば」
わざわざここで盾を装備させてモンスターの攻撃を盾で防ぎ、盾術のスキルの経験値を稼がなくなって特に問題はないだろう。
第2階層の『草原の守護者』クエストの時は、強化版バトルボア相手にそれをやってみたけど正直もう面倒くさかったし。
「今は片手剣と短剣のダブル武器スタイルだけど、この先また戦闘スタイル変えることがあるかどうか」
戦闘スタイルってそんなにコロコロ変えていいものじゃないっていうか、このゲームに慣れれば慣れるほど後から新しいスタイルに変えるのも大変になっていくんだろうし。
前までのスタイルの動きの癖とか残るから。
私が片手剣と盾のスタイルから片手剣と短剣のスタイルに変えた時も、最初は盾を装備していないこと忘れてそれまで通り自然と左手を前に出してモンスターの攻撃を受け止めようとしちゃったりとか、普通にあったからな。
「でも、それ以前に私、意外とこの片手剣と短剣のスタイルが性に合ってるというか、結構やりやすいと思ってるから、もうずっとこのままでもいいかな」
まだこの先どうなるかわからないから断言はできないのだけど。
さて、それでギルドクエストの話ね。
というか私は荒野、洞窟、鉱山で受けられる24個のギルドクエストはもうクリア済みで、残るギルドクエストは崖、渓谷、迷宮にそれぞれ8つずつあるクエストだけなのだけど。
崖で受けたクエストについては、もう8つすべて受けることができた。だから崖は夜でも新モンスターが登場することはないということなんだろう。
先に受けた5件の崖で受けられるギルドクエストを片付けると、すぐに街に戻ってギルドで報告し、そしてビッグホークの討伐を含む残る3件の崖でのクエストと、渓谷フィールドでのギルドクエストを2件足してまた崖のフィールドへと向かう。
ビッグホーク戦については前回同様にそんなに苦戦せずに倒すことができて、また耐混乱の指輪を4つ手に入れたのだけどそういえばこのアイテムを売るのはすっかり忘れていた。
前回のと合わせて私は耐混乱の指輪を8つも持っているのだけど、まあ4つはまた誰かとパーティを組んだ時に貸し出し出来る用に取っておこうか。
もちろん他の素材アイテムも全部ちゃんと回収したよ。
「あれ?、前と生えている数が微妙に違う?」
そしてビッグホーク戦の終わった後のボス部屋、今回もまた薬草などが大量に生えていたからそれもまたすべて回収したのだけど。
今回は通常の薬草が124個、魔力草が88個、上薬草が64個と前回と同じ場所なのに生えている野草の数がそれぞれ微妙に違っていた。
「ああ、でもそういえば第2階層の牧場の時もそうだったな。同じ場所でもタイミングが違えば採れる草の量とかも違うってこと」
違うと言ってもそこまで大きな差もなかったのでこれは特に気にしなくてもいいんだろうけど。
前回の分と合わせて上薬草の所持数はこれで127個になった。
ハイポーションの調合では1個作るのに上薬草は2個必要で、それを50個作るとしたら上薬草は100個必要になるんだけど、これでとりあえず上薬草はもう大丈夫か。
第3階層でもうフィールドに生えているくらいだから、きっと第4階層以降のフィールドにも普通に生えていると思うし。まあフィールドが砂漠とかなら無理だろうけど。
「でもあれだな。調合のスキルを極めていけばあの、1本でHPもMPも両方とも全快させられる最上級の回復アイテムとか……自分で作れるようになったら最強だな」
下界の某RPGではエリクサーとか呼ばれてるアイテム。
もしかするとこのゲーム内でもエリクサーという名前の回復アイテムは存在してるかもしれない。
効果の方は、また違ったものかもしれないけど。
「……材料集めが死ぬほど大変そうだけど」
そういえば、第1階層で薬屋のリックスが調合のスキルを手に入れたのは私がちょうど10人目とか言ってたし、その後で『薬屋の試練』のクエストを受けてクリアしたマロンちゃんで、調合のスキル持ちは11人目っていうことなんだけど。
でも、それって結局このサーバー内での話なんだよね。
他のサーバーでも第1階層であのクエストを受けて、調合のスキルを手に入れた人もたくさんいると思うし。
「このサーバーで私より先に調合のスキル手に入れたらしい9人は、調合してるのかな?」
有用なスキルではあるんだけど途中で面倒になったり、素材集めが大変になって結局そのまま放置している人が多いとは思うけど、中には頑張って調合Ⅹまでスキルを極めた人も……いないかな?
「それに、今はまだ私はアイテム作成系のスキルは調合しかないけど、この先、錬金術とか鍛治とか他のアイテム作成系のスキルも手に入れてそれも全部極めようと思ったら……大変なんてもんじゃないよ」
だから私はたとえこの先その、錬金術とか鍛治のスキルを手に入れてもしばらくは手をつけないで放置しておこうと考えている。
まずは調合のスキルを極めてから。少なくともスキルレベルがⅧくらいに上がってから別の作成系スキルのレベル上げもして行こうと思う。
あんまり複数のスキルを1度に成長させようとしても頭の中がこんがらがってしまうと思うし。
「焦らずに、1個1個片付けていく方向でね」
私はそう言うとワープゲートに入ってビッグホーク戦のボス部屋を後にした。
それから、追加で渓谷で受けた2件のギルドクエストも達成するとそこからまた街へと帰還。
受付で達成した5件のクエストの報告を済ませるとビッグホークの初回討伐報酬として素早さの種をもらった。
「これで崖のクエストも全クリ。残りは14件。そのうち渓谷のやつが6件だけど……」
残る6件の渓谷で受けられるギルドクエストのうち、2件は渓谷の夜にだけ出現する新モンスターの討伐と、そのモンスターがドロップするアイテムの回収だったので、私はまず4件のクエストを受けてその2件については夜になってから受けることにした。
「レッドキャップを3体討伐する、か。ふふふ、楽勝だな」
事実としてそれからまた渓谷へと向かい、レッドキャップを3体討伐するクエストを含む4件のギルドクエストをしてまたまた街へと戻ってきたのだが、1時間も経過していなかったし。
これで最終的に残るギルドクエストは10件となったわけだが、今日の夜また2件片付けるとして、明日はもう迷宮に挑戦しようか。
それとも住人クエストの方がまだ20件残ってるからそっちを片づけておくか。
「……もう5時か。あと1時間で夜だけど、うーん、どうしよう。……まあたまにはゲーム内のレストランで何か食べたりしてゆっくりと時間をつぶすのもありかな」
私は冒険者ギルドを出て茜色に染まる空を見上げながらそう言った。
するとそこで、道の向こうからこの冒険者ギルドに向かって歩いてくるすごく見覚えのあるプレイヤーたちの姿が。
「今回はやられちゃいましたね、課長」
「まさかあの巨体でジャンプするとはね、さすがに驚いたよ」
「まあ私もあれにはビックリしましたけど、でもだから次は何か対策を……って、あ……」
そうか、そうだよね。
ここにいるってことは君たちも無事に第2階層を突破してもうこの階層に来てたんだね。
「あ、玲愛ちゃんだ!」
「どうもです。ナポリさん……と、パス太さん」
そこで遭遇したのは第2階層で一緒にパーティを組んでエリュマントスと戦ってくれた3人のプレイヤーのうちの2人。ナポリさんとパス太だった。
<武器の特徴紹介―Part4>
⑦槌
ゴッドワールド・オンラインの中で通常攻撃の一撃の威力が最も大きいとされている武器。
実際には1番ではないのだが初期武器で選べる武器の中では攻撃の面に関して最上の武器。
ただし、両手武器であり盾を装備できず。さらに攻撃モーションが非常に遅く、素早い敵に攻撃を当てることはほぼ不可能である。
逆に耐久が高くあまり動かない敵にも物理攻撃でダメージを与えることができるというメリットもあるが、使いこなすのにかなりの時間がかかる。
なお、ゲーム最前線でも重要なアタッカーとして槌をメイン武器に戦うプレイヤーはいるが、ソロプレイヤーで槌を扱っている者も極僅かだが存在する。
⑧スリンガー(パチンコ)
初期武器で選べる武器の中にはない武器。
遠距離攻撃用の武器だが一撃の威力も低く、さらに攻撃モーションも弓矢や銃に比べて遅めであり特にこれといったメリットがない武器。
ゴッドワールド・オンラインの第19階層で受けられる住人クエストの報酬としてスリンガーを装備できるようになるスキル、射出機術がもらえますが武器スキルなのになぜかスキルレベルが存在しません。
そうです、そのことからもわかる通りもう完全にネタ武器なのです(笑)。
でも、使いこなせれば案外強いかもしれないよ?