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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての谷

ゴブリン〇〇はこの先もまだまだ登場する予定。

コボルト◯◯もいくらでも出せそうですが、一応ゴブリン◯◯で使った◯◯は、コボルト◯◯の方には使わないように心がけてます(笑)。

 翌日の朝のこと。

 今日はまた溜まった洗濯物や衣類をまとめて洗濯しようと、朝起きてシャワーを浴び、髪を乾かし服を着替えた後で洗濯かごに洋服や寝間着、バスタオルなどを詰め込みアパートの洗濯室へ向かった。

 3台ある洗濯機はどれも開いていたので入口から一番遠くにある洗濯機に洗濯ものを詰め込むと、洗剤と柔軟剤を入れて洗濯機を回した。

 そして洗濯かごをもっていったん自分の部屋に帰って来ると、財布を持ってまた外へ出た。

 今日の朝食と昼食を買いにヘスティアちゃんのパン屋へ向かう。


「あははは、そうなんですかぁ。あ、いらっしゃいませ」


 パン屋ではちょうどヘスティアちゃんが買い物客とカウンターで談笑してたところだったみたいだけど、その相手の男神は私の知り合いだった。


「あれ?、君はたしか、アストレアさんだったっけ?」


 金髪の物腰柔らかさそうな眼鏡をかけたその神は、ブラギさんだ。

「書物」を司る神様で神界大図書館で働いている司書さん。私は中学、高校時代は暇な時はよく図書館に行っていて、当時の館長だったトトおじさんや司書のブラギさんともすっかり顔なじみになっていたのだけど、こっち来て1人暮らし始めてからは、そういえば図書館には行かなくなったっけ。


「お久しぶりですね。最近全然図書館に来てくださらないので……でも、元気そうで何より」

「あ、はい」


 ブラギさんはなんていうか、知的イケメンでその知識量もさることながら顔も美形というね。

 図書館を利用する客の、特に若い女神の大半は本ではなくこのブラギさんのことを見たくて図書館に足を運んでいるのではないかと私は思っている。

 ただ当の本人は自分がモテているという自覚が一切ないということが少々恐ろしいところ。


「トト館長が引退して新しい館長が来てから、図書館もだいぶ様変わりしたんですよ?、特に下界で若者たちに流行りのライトノベルなんかも置き始めて」

「へ、へぇ、そうなんですね」

「ええ、これであと漫画を置いてドリンクバーと軽食の提供も始めたらうちは漫画喫茶になります。ははははは」


 いや、それはさすがにダメなんじゃないだろうか?

 でもまあ冗談だということはもちろんわかっているので私も愛想笑いでなんとかやりすごす。

 そしてブラギさんは最後、また暇な時にでも図書館に遊びに来てくださいと私に言った後で、イケメンスマイルをなげかけてパン屋を出て行った。


「お姉さん、ブラギさんと知り合いだったの?」

「あ、うん。前はよく図書館に遊びに行ってたから。ブラギさんはよく来るの?」

「うん。この前たまたまうちに来た時にパンを買ってくれて、それがおいしかったからってそれからはよく買いに来てくれるようになったんだ。もう常連さんだよ」

「そ、そうなんだ」


 まあヘスティアちゃんのパン屋のパンはおいしいし、何より1個の値段が安いからね。

 実は前に2、3回。街のグルメ雑誌に取り上げられて紹介されたこともあるらしいし、雑誌が発売されてからしばらくはお客さんが店の外に列を作るくらいには繁盛していた。

 まあ、今はそれも落ち着いたらしいけどやはりお昼時には込むから私は朝に買いに来ることが多い。


「ブラギさんって面白い神様だね。すごく頭もいいみたいだし、好きな本のジャンルを話したらおすすめの本をたくさん教えてくれて」


 ヘスティアちゃんはそう言っていたけど、そういやブラギさんって人に本を薦めるのが大好きっていうか、もう趣味みたいものだって前に言ってたな。

 下手なこと言うと1回で10冊くらいおすすめされるから気をつけないといけない。しかも図書館でつかまったらそのままおすすめされた本を貸し出しする流れに持ち込まれるから要注意だ。


 私は朝食用にハムタマゴサンドと、昼食用にカレーパンと焼きそばパンの2つを買うとヘスティアちゃんのパン屋を後にした。

 うーん、そろそろお金が少なくなってきたけどもうすぐ仕送り金が振り込まれる日だから、それまではなんとか持つかな。

 最近夜は外食が多かったし、1人暮らし始めたばかりの頃はまだたまに自炊もして節約とかしてたんでお金にも割と余裕があったんだけど。その頃はバイトもしてたし。


「うーん、日雇いのバイトでも探そうかな」


 アパートに帰ってきてハムタマゴサンドを食べな終わると私はそうつぶやいた。

 第3階層の迷宮ボスを倒したら1日、2日ゲームを休んでもいいだろう。


 それからしばらくスマホをいじって、ゴッドワールド・オンラインについての情報を集めていたら、どうやら来月にまたゲームのアップデートが行われる予定らしい。

 次のアップデートで第76階層から第80階層までが新しく追加されて、また最前線で暇を持て余してるプレイヤー達は待ってましたとばかりに湧いているし、他にも色々と追加要素があるらしい。

 まだ第3階層を攻略中の私にはあまり関係なさそうな話だけど。


 ゴッドワールド・オンラインでは軽微なバグなどは発生を確認した瞬間にすぐに修復されるくらい、ゲーム運営が日夜ゲーム内を監視しているそうで、だからそういう軽微なバグの修正などについていちいちプレイヤー側にどこを修正したとかは教えない。プレイヤーが気づく前に直してしまっていると言った方が正しいか。

 そして、軽微なバグでさえそれなのだから大きなバグなどはより早く修正されるのだ。


「私の神の恩恵の効果みたいな、ゲームのシステム的に本来は問題はないものは修正されないこともあるんだろうけど」


 攻略サイトでも私以外にも女神アストレアの恩恵を授かったプレイヤーがいるのかどうかそれとなく探してみたんだけど、見つからなかったよ。

 さらに判明している神様と、恩恵の効果一覧という画面にもアストレアの名前は載っていなかった。

 もしかするとゴッドワールド・オンラインにアストレアの恩恵を授かったプレイヤーはまだ私しかいないのだろうか?


「そんなわけない……って言いきれないところがあるからな、このゲーム」


 あるいは、アストレアの恩恵って本来は一般のプレイヤーがもらえる恩恵じゃなかったのかも。

 こう、このゲーム開発陣だけが使える特別な恩恵とか、あるいは何らかのバグで試作段階の恩恵のデータが紛れ込んでいたとかいう可能性もなくはない。

 というか、少なくとも前者の方に関しては私は実際に知っているからね、それ。


「洗濯、終わったかな?」


 私はスマホをいったんテーブルの上に置くと、洗濯室へと向かった。

 するとちゃんと乾燥まで終えていたのでまた洗濯かごの中に入れて私は自分の部屋に戻ってきた。

 洗濯かごを部屋の隅に置くと洋服類は素早くたたんでまたタンスとクローゼットにしまい。

 バスタオルなどは風呂場の横のカラーボックスの中に入れておく。これでよし。


「さあ、じゃあ今日もやるか」


 それから私はヘルメット型ゲーム機を頭に装着すると、ベッドに横になりゲーム機の電源を入れた。

 以前に下界でのゲームサーバーの話をちょこっとしたと思うんだけど、私が下界のどのサーバーにログインしているのかってことね。下界の日本っていう国の北海道サーバーに接続されていたんだが。

 理由はわかんないけど、まあきっとランダムで選ばれたんだろう。

 そういやゲーム内でも私や他のプレイヤーの言語、日本語だったし。まあプレイヤー人口が多そうな関東サーバーでなかったことは私的には良かったかもしれない。私、人混み苦手だし。


<第3階層:岩の都グランガン:冒険者ギルド>


 今日は崖フィールドの下ルートと、その先の渓谷フィールドの攻略をしようと思っているけど、その前にまずは情報取集だな。

 グランガンの街の酒場を回ったのだけど情報屋のアイリッシュの姿はなく、タイミングが合わないとフレンド登録してないプレイヤーとはなかなか出会えないんだよね。


 私は仕方なく冒険者ギルドへ向かい、そこで他の親切なプレイヤーの方たちに色々と渓谷、さらには最後の迷宮ダンジョンについて知っている情報を教えてもらった。

 ただで教えてくれる人もいるし、中には情報屋よろしく情報料を要求してくるやつもいたけど、今はとにかく安全第一なので値段にもよるけどお金は払った。

 そうして集まった情報を精査するに、渓谷フィールドでは特にあるモンスターに注意が必要であるということがよくわかった。

 話を聞いたプレイヤーの多くが軽くトラウマレベルと言っていた、おそらくはこの階層に出現する中でも最強のザコモンスターの話。


「うーん、まあ実際に遭遇してみないとなんとも言えない感じだけど、やばいモンスターだっていうことはよくわかった」


 何がどうやばいのかということについては、後で説明するけど。


「後は迷宮な。迷宮ボスの情報はなかったけど、中ボスと、他にも色々わかったんで今回は上々だろうか。まあ今日はさすがに迷宮には挑まないからまた明日以降だな」


 というところで私は情報収集を終えると、薬屋によって聖水などの回復アイテムを補充し、街の北門から崖のフィールドエリアに出たのだった。


<第3階層:渓谷>


 崖のフィールドエリアを進み、時たまシルフの吹き飛ばし攻撃を受けながらも私は上下の道に分かれる分岐点までやって来ると、迷わずに下のルートへ進んだ。

 崖の下のルートは、特にそれまでと変化はなかったので道中のモンスターを蹴散らしながらマッピングを進めていき、30分ほどで崖のすべてのマッピングが終了した。

 そして私は、崖と渓谷とフィールドライン(フィールドとフィールドの境目)を見つけ出し、そのラインを越えるとこの階層最後のフィールド、渓谷へたどり着いた。


 渓谷は、崖の下の谷底を進んでいくためフィールドの壁が上空まで伸びている。

 さらに道が入り組んでいる場所も多く、崖と同じで細い通路と広い空間をつなぎ合わせたフィールドとなっている。


 そして一番の特徴はフィールドで初めてトラップが登場すること。

 登場するのは落石というトラップで、その名の通り崖の上から石が落ちてきて、それが当たるとプレイヤーはダメージを受ける。

 なんでも、ずっと移動しないまま同じ場所にとどまっていると発動することが多いらしいので渓谷ではなるべく動き続けた方が安全らしい。

 ちなみに、落ちてくる石の大きさは(中)(小)の2つがあり、もちろん(中)の方が当たった時のダメージも大きい。


「ま、地上のモンスターだけでなく上にも気をつけておけってことだな」


 落石のトラップが発動する時は必ず石が転がったような音が聞こえるらしいので、それが聞こえたらとりあえずその場から飛びのけば問題はないだろう。


 そして渓谷で出現するモンスターについてなんだけど。

 まず、いつものように既存のモンスターから言うと。


 デザートウルフ、ブルーリザード、スモールロック、ロックマン、フレイムバグ、シルフの6種類。

 それで、昼間に出てくる新モンスターが3体……なんだけど。

 その前に1個だけ、ハルピュイアとゴブリンスリンガーってもう出番終わりなの?


「いや、今までもそこに出たっきりもう2度と見かけなくなったモンスターはいるし、RPGでもモンスターごとに生息地とか、出現する場所ってだいたい決まっているし」


 ゴブリンスリンガーの方はわからないけど、ハルピュイアは見た目は鳥人間で、崖の上なら出るだろうけどわざわざ崖下まで降りてきてプレイヤーに襲い掛かったりとかはしてこない、と。

 でもこの先の階層とかでまた崖とか、山とかに行ったらまたハルピュイアか、その強化版のモンスターが出現するのかね。


 渓谷で新たに出現するモンスター①―ゴブリンガード


 木で出来た大楯を装備したゴブリンで、見た目通り耐久が高い。

 しかし大楯を振り回す時に胴体はがら空きになるし動きも遅いので簡単に背後を取れるため、ほとんど苦もなく倒せるが。

 でも狭い通路でモンスターが列をなして出現する時に、前衛ポジションで出現して他のモンスターへの攻撃を代わりに受けたりするなど、壁役としての意識は少しはあるみたい。

 倒してもスキル等はなし、ドロップアイテムは木の大楯。


 渓谷で新たに出現するモンスター②―スケルトン


 骸骨のモンスターで、ゲーム初となるアンデッド族のモンスター。

 骨を投げつけての遠距離攻撃と、手に持った骨のこん棒を振り回す近距離攻撃をしてきて、さらに力の値がそこそこ高いため意外と強い。

 ただし、体が骨であるため耐久はやや低めであり、物理攻撃が普通に効く。

 それで倒したらスケルトンからはスキルを1ついただいた。


 〇粉骨砕身ふんこつさいしん

 ・自信の耐久の値が20%減少し、力の値が20%上昇する。

 ・1回の戦闘中3回まで使用可能であり、効果は重ねかけされる。

 ・戦闘終了時まで効果は持続し、戦闘終了毎に効果はリセットされる。

 消費MP:10 リキャストタイム:――


 だからまあ仮に戦闘中に3回このスキルを使用したとしたら自分の耐久が60%下がる代わりに、力は60%強化されると。

 1回の使用で消費MPが10もあるのは大きいけど、でもこのスキルは効果が戦闘終了時までずっと続くらしいので、防御を捨てて攻撃面を強化したいなら使える。でもさすがに使っても1回までだろう。


「耐久が40%減少とか、危険すぎるし。60%減少はもう論外だよ」


 まあそれでも状況によっては使う機会があるかもしれない。

 魔法ではなくアクティヴスキルなのも面白いし。


 だけど、粉骨砕身ってお前。スケルトンの骨折れたらもう終わりじゃね?、だってお前骨だけじゃん。

 というかスケルトンもこのスキルを使用して攻撃面を大幅に強化してくる可能性があるのか。


「さすがに60%強化は、敵が使ってきたら怖いし、念のため優先して倒しておくか」


 ちなみにスケルトンはナゾの骨というアイテムをドロップした。いや、ナゾって。


 渓谷で新たに出現するモンスター③―皆の言ってたやばいやつ!


 他のプレイヤーから多くの情報が寄せられたこの渓谷フィールドの、あるいはこの第3階層で最も強くてやばいとされるモンスター。


 曰く、そのモンスターは他のモンスターとも同時に出現せず必ず1体のみでフィールドに出現する。


 曰く、そのモンスターは渓谷の分かれ道の真ん中など、プレイヤーが絶対に通るであろう場所にじっと居座ってプレイヤーが近づくのをただ待っている。


 曰く、そしてそのモンスターにひとたびでも捕捉されると……すごい勢いで襲い掛かってきてさらにプレイヤーをどこまでも、それこそどこまでも追いかけてくる!!


 そのモンスターの名前は……


「いや!、いやいやいやいや!!、怖い怖い怖い、怖いし強いって!!」


 モンスター名、レッドキャップ。

 そのモンスターはゴブリン族のモンスターであるが、〇〇ゴブリンという名前ではない珍しいタイプのモンスターだと言う。

 頭に真っ赤な帽子を被っただけの見た目はただのゴブリン……と、思いきや!

 プレイヤーを視界内に補足したらものすごいスピードで接近してきて、それはもう苛烈に一切の容赦なく攻撃してくる。

 攻撃方法は手に持った大きめのナイフで、能力値的には力と敏捷がザコモンスターにしてはすごく高くて、HPが低いプレイヤーなら数秒で瞬殺されるらしい。

 しかもこのモンスター、それだけではなくモンスターの行動を決めるAIの知能も高めで、プレイヤーが反撃しようとしたらその瞬間に飛び退いて回避したりする。

 そして何よりもHPが多く、耐久と賢さもそこまで低くはないという鬼畜仕様。


「これあれだな。コボルトサーベルやバトルボアと同じ、初見殺しのザコだ」


 初見どころか慣れたプレイヤーでもちょっと気を抜いたら殺られるぞ、これ。

 だってもうね、ナイフがすごい勢いでザクザク言ってるんだよ。攻撃の時の音が、すごく怖い!

 で、もちろん私にも普通にザクザクとダメージが発生するわけで。


「なんでこうたまに、すごく凶悪なやつ出してくるかな。そんなにプレイヤーを足止めしたいのか、ゲーム運営も本当に性格悪いわー」


 レッドキャップと戦ったら、たしかにトラウマになるという話もわかる。

 だって見た目はただの赤い帽子被っただけのゴブリンなんだから。


 あの、第1階層の最初の平原でさ。

 普通のゴブリン見た後でゴブリンメイスに遭遇した時にちょっと似てるかも。

 装備が違うだけでここまで性格というか、行動パターンが変わるものなのかね。


「いい加減に、しろ!!」


 私はレッドキャップの猛攻を受けながらもなんとか反撃を叩き込み、レッドキャップを倒した。


<倒したモンスター>

 レッドキャップ×1


 獲得経験値:80ポイント 獲得ゴールド:150G


 戦闘終了後のリザルト画面を見てみてもわかる。

 どうやら本当にレッドキャップはこの階層で最強のザコモンスターだったようだ。

 たった1体で80ポイントの経験値。この階層のモンスターの中でもダントツに高い。


「新しいスキルはなし、か。まあただナイフを振り回していただけだしね、それはいいけど」


 私が驚いたのはレッドキャップからドロップしたアイテムの方で。

 1つはレッドキャップが手に持っていたナイフ、鉄のマチェット。

 装備カテゴリは[短剣]で、装備補正値はそんなでもなかったけど短剣にしてはリーチが長めで刀身も大きいため近接向けの短剣というところ。

 そういえばなんか聞いたことあるわ、マチェットっていうやつ。実際に見たのはリアルでもこっちでもこれが初めてだけど。


「へー、こんな武器だったんだ」


 そしてさらにレッドキャップはもう1つ装備品をドロップしていて。


「あれ、赤い帽子も落としたの?」


 〇レッドキャップ

 HP+5、STR+3%、VIT+3%


「……うわぁ。これって結構良い装備なんじゃないか?」


 少なくともいつもの、たとえばレッドウルフからドロップする狼のストラップくらいの価値はあるというか、いやそれ以上か。でもなんか装備品の名前がモンスター名と一緒なんだけど。


「いや、それ以前に武器と防具を1個ずつ落としたんだ。まあ、私のドロップ率100%の効果が適応されたからなんだろうけど」


 果たしてこのレッドキャップと鉄のマチェット、武器屋で売ったらどのくらいの値段がするのか。

 たぶん両方合わせて1000Gは下回らないだろうとは思うのだけど。


「渓谷フィールドにはエリアボスはいない。だからレッドキャップはここのエリアボスじゃない」


 いや、もう普通にエリアボスレベルの強さはあったと思うんだけどね。

 少なくともレッドウルフよりは強かった。レッドウルフ3体分くらいかな?


「ってことはレッドキャップはまだこの渓谷フィールドにまだたくさんいるわけだな」


 そして1体のレッドキャップを倒せば武器と装備品アイテムが1つずつと、80ポイントの経験値に150のゴールドが手に入る。

 手に入れた武器と装備品は街に帰ってまとめて売ればもっとお金が稼げる。


「別にお金に困ってるわけでもない、けど……狩るかな。レッドキャップ」


 たしかにすごく強いモンスターだったけど攻撃方法は単調でただナイフを振り回して襲ってくるだけだし、私の今のレベルなら油断しなければ普通に倒せる。

 でも、よく考えればスキルの成長以外の目的で特定のモンスターを重点的に倒す=狩りをするのはこれが初めてかもしれない。そう、お金稼ぎのための狩り。


「ふんふんふん~♪、ふんふんふ~ん♪、レッドキャップちゃんどこかな~?」


 レッドキャップは、この階層ではプレイヤーキラーとまで呼ばれるほどのモンスターだ。

 しかし、今の私はそのレッドキャップを狩る者。プレイヤーキラーキラーだった。

 あるいは、人によっては私の姿の方が邪悪な悪鬼(アンシーリーコート)に見えただろうか。


<モンスター辞典>

〇ゴブリンガード

ゴブリン族。木で出来た大楯を装備したゴブリン。

耐久と力は高いが、賢さと敏捷が低い。

前方からの攻撃は大楯でガードされてしまうとダメージが大幅に減らされてしまうが、後ろに回り込めば簡単に倒せる。

時に他のモンスターへの攻撃を自分の盾で防いだりすることもあり、壁役のプレイヤーたちからはモンスターだけどあっぱれと称賛を送られているとかいないとか。

ドロップ:木の大楯


〇スケルトン

アンデッド族。動く骸骨のモンスター。

骨をなげつけたり、あるいは手に持ってこん棒のようにふるい攻撃してくる。

力の値が高く、敏捷もそこそこだが耐久はやや低め。

さらに粉骨砕身のスキルによって自分の防御を捨てて攻撃面を強化することもあるが、スケルトンは戦闘中に1回までしかスキルを使わないのでそれほど恐れる必要もなかったりする。

火属性と土属性に耐性があり、弱点はなし。

ドロップ:ナゾの骨


〇レッドキャップ

ゴブリン族。ゴブリン族だが名前にゴブリンが入っていない珍しいモンスター。

見た目はマチェットを装備し、赤い帽子を被ったただのゴブリンであるが通常のゴブリンよりもかなり気性が攻撃的で、さらに粘着質。

プレイヤーに対して苛烈に攻撃をしてくる、さらに逃げてもしつこく追い回してくる。

力と敏捷がすごく高く危険、耐久と賢さは普通程度。

弱点となる属性はないが、実は火属性に耐性がある。

なお、元ネタはイギリスなどにおける民間伝承で、極めて危険な妖精の名前、レッドキャップから。

ドロップ:鉄のマチェット、レッドキャップ



次回、レッドキャップ狩りの行方と夜の崖&渓谷の探索。

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