ニートな女神と初めての鉱山
タイトルを見てあれ?って思われた方。
本編で玲愛はクエストを受け、通常時とは違う鉱山に挑んでいるのでこのタイトルをつけました。
新たに5つの住人クエストをクリアしたことによってこの階層で未だに未達成の住人クエストの件数は残り22件となった。この後で2つあるボスクエストのうち簡単な方に挑戦するつもりなんだけど、それをクリアすると残り21件になるわけで。
「うーん、じゃあその前にもう1件何かやって、残り20件にしておいた方がいいかな」
そう言って私は1つの依頼書を掲示板からはがして手に取るとギルドの受付に持って行った。
そのクエストとは別に今やらなくてもいいとは思うのだけど『槌入門』のクエストね。
クエストの報酬は槌術Ⅰのスキルであり、そのスキルを手に入れれば私は新たに槌を装備できるようになるのだろう。
「暇つぶしにはちょうどいいだろう」
そうして私は依頼書を受領してもらうなりさっそくグランガンの街にいる依頼主の元へと向かった。
依頼主は街に住む元冒険者の人でガタイのいいおじさんだった。
クエスト内容についてだけど、この第3階層に出現する物質族のモンスターを物理攻撃のみによって50体倒すこと。それに加えて鉱山の地上ルートのボスであるロックゴーレムを物理攻撃のみで1体倒してくるというものだった。
「この階層で物質族のモンスターっていうと、スモールロックとロックマンか。じゃあ鉱山に行ってロックマンを退治するついでにロックゴーレムも倒すとして……でも、物理攻撃だけで倒せときたか」
正直なところまだ物質族のモンスターを50体だけという話ならばこのクエストは簡単な方なんだろうけど、問題はロックゴーレムだ。
ロックゴーレムは耐久の値が高いからそれを物理攻撃のみで倒すとなるとかなりの時間がかかりそうだし、そもそも並のプレイヤーなら返り討ちに遭うこと必須だろう。
槌という武器は、まあもう見た目からしてものすごい力がないと扱えなさそうな武器だから耐久の高いモンスターを物理攻撃だけで倒せるくらいじゃないと装備可能にしれくれないというのは、わからなくもない話だとは思うんだけどね。
「でも時間かかっても頑張ればできなくはないだろう、たぶん」
私は依頼主のおじさんから話を聞いた後でグランガンの街を出ると、鉱山へと向かった。
それで、途中経過は省くとして結果をまず伝えると、クエストはクリアはした。
鉱山でロックマンをひたすら剣で斬りつけていき50体ほど倒してから、頂上で待ち受けていたロックゴーレムも頑張って剣と短剣による物理攻撃のみで倒すことに成功はした。
だけど結局それだけで2時間もかかっちゃってものすごく疲れた。
「いや、さすがにロックゴーレムは……きついよ」
魔法攻撃ありきで戦っても割と苦戦させられるのに。
それで魔法なしの物理だけで倒せとか、よくよく考えれば鬼畜だぞ。
というかそこまでして装備可能にしたいと思える武器じゃないしな、槌って。
こんなこと言うとリリムちゃんみたいに初期武器に槌を選んだ人に怒られそうなんだけど、槌ってあんまり人気がない武器なのも事実だし。短剣よりは人気があるようだが。
「もう終わったことだからいいけど」
私がグランガンの街に帰ってきて、依頼主のおじさんに報告をするとそこでクエストはクリアとなった。そして報酬として私は槌術Ⅰのスキルと鉄の槌という武器ももらったのだけど。
これは第2階層の『短剣入門』のクエストと同じだった。
クエストの報酬は武器スキルとその武器スキルで装備可能になる武器の、おそらくは鉄シリーズのもの。
『短剣入門』の報酬でもらった鉄の短剣については実はまだアイテムボックスに入れっぱなしで売ってなかったけど、別に売っちゃってもいいか。武器屋に普通に売ってるし品物なんだし。
「あ、でも。そういえば……」
と、そこで私はあることが頭の中をよぎった。
それは第2階層でのこと。
第2階層の迷宮ボスであるマダムバタフライを倒した後で、最高グレードの金の宝箱がボス部屋に現れて。その中には蝶々の短剣という武器が入っていた。
で、その蝶々の短剣はもちろん[短剣]というカテゴリの武器でありそれを装備するためには短剣術というスキルが必要だった。
そしてその短剣術のスキルは第2階層の住人クエスト、『短剣入門』の報酬でもらえたのだけど。
「もしかして、第3階層の迷宮ボスを倒してそれで金の宝箱だしたら。中に入っている武器は槌だとかいうことはないよな?」
つまりは迷宮ボスを倒した時に出てくる最高グレードの宝箱の中身と、その階層の住人クエストの中にあるプレイヤーが装備できる武器が増えるスキルがもらえるクエストとの関連性。
第1階層の迷宮ボスのドラゴンの時は、そもそも第1階層には新しい武器が装備可能になるクエストがなかったんで例外だとしても、十分考えられそうな話だと思う。
「でも仮にもしそうだったとしても私は、槌はやっぱり無理だと思う。ソロだしな」
だからもしも第3階層の迷宮ボスを倒して、それでその後に出てきた最高グレードの金の宝箱の中に凄く強力なんだけどカテゴリが[槌]である武器が入っていたとしても残念だけどそれは記念に取っておくことになりそうだ。
他の防具とかの性能が良ければ多少見た目の恰好がちぐはぐになったとしてもそっちは装備を変える可能性はあるかもだけど。私はまだ第3階層の迷宮ボスがどんなやつなのかも知らないし、ドラゴンやマダムバタフライの時のように初回撃破できるかどうかはわからないから。
「でもなんかこの予想、当たってる気がするんだよな。どうしようかな。もし本当に槌が入っていたらリリムちゃんにプレゼントでもしようかな」
そんなことを言いながら私は冒険者ギルドに帰ってくると『槌入門』の依頼達成書を受付で受理してもらった。
一応、明日にでも槌を1度は自分で装備してみて調子を確かめようとは思うけど。
いや、今日はこの後でまだボスクエスト1個片づける予定だったから。
だけどもう時刻は午後6時を回っていてこの第3階層は夜になっていた。
別に私が受けようと思っているボスクエストは時間帯指定はないんで夜でも受けられるクエストだったから問題はないのだが。
「どうしようかな。これからボスクエストを片付けて、その後で夜の崖フィールドに行くか。それともここでひとまずログアウトしてリアルで夕飯食ってからにするかな」
私は少しだけ悩んだ後で先にボスクエストを片付けることにした。
その後でログアウトしてリアルで飯を食って、飯の後で再びログインして夜の崖を攻略することにした。それで明日は崖の先、渓谷フィールドに向かうと。
「よし、それで行くことにしよう」
<第3階層:鉱山(地上)頂上付近>
それで、その後のことなんだけども。
私はギルドの住人掲示板に貼ってあった簡単な方のボスクエストの依頼書を取って、また受付で依頼を受領してもらったんだけど。
このクエストが、また面倒臭くてさ。
クエスト名は『怒りの鉱山』。
依頼主は採掘場で現場監督をしているおじさんで、最近鉱山の地上ルートでモンスターの様子がおかしいので、その調査をしてもらいたいということだったのだが。
まず、採掘場にいるクエストの依頼主に話を聞いた後で、鉱山の地上ルートに入ってそこでザコモンスターを100体倒してくる。
これはいつものように視界の右上にモンスター討伐カウンターが表示されたからそのカウンターの数字をゼロにすれば良かったのだけど。
今回のこの『怒りの鉱山』のクエストの最中は出現するモンスターのレベルがいつもよりも全体的に5~6程度上がっていて、さらになんていうかこう、凶暴というかやたら攻撃的になってて。
それが依頼主の言っていたモンスターの様子がおかしいという部分に相当しているんだろうけども。
モンスターの攻撃方法とかは変化ないんだけど能力値が上がっているから注意というところか。
それで100体倒したところで視界右上に出てた討伐カウンターは消滅したんだけど、その直後に大きな地響きがしたかと思えば私は鉱山の頂上付近、通常であればロックゴーレムが待ち受けているであろう頂上へと続く手前の部屋へと転移させられたわけ。正確には一瞬で視界というか、場所が切り替わった。
「……え??」
もちろんそれには私も混乱したけど、その後ですぐに状況を理解した。
ご丁寧なことに、その部屋から頂上へ向かう道以外の道は全部落石によって塞がれていたから。
「あー、これはもう頂上行くしかないってことだな」
そして頂上で今回のボスクエストのボスモンスターが待ち構えていて、それを倒すか逆に負けて死ぬかしないとここからは出られない、と。
いつもならこの頂上手前の部屋にあるはずの鉱山の入口までつながってる緑色のワープゲートもなくなっているからそれは間違いなさそうだ。
「まさかクエストボスって、単純にいつもよりもレベル高いただのロックゴーレム……なんてことはないよね?」
もしもそうだとしたら私としてはすごい嬉しいというか、ラッキーなんだけど。
けれどもボスクエストだからきっと今回限りは鉱山の山頂にはロックゴーレムではない別のボスモンスターがいるんだとは思う。
そいつもゴーレムなのか、あるいはまったく別の姿かたちをしたボスなのかは知らないけど。
この時点でHPとMPはもちろん全快状態だが、それでも果たして勝てるかどうか。
私は1度深呼吸してから気を引き締めると、ついさっきも『槌入門』のクエストでロックゴーレムを退治しに来たばかりの鉱山の頂上へと繋がる道を歩き始めた。
夜の鉱山はもちろんダンジョンなので昼間とモンスターの分布に変化はないものの、鉱山のところどころに松明がオブジェクト扱いで置かれていて明るい。フィールドやダンジョンによってこういう明かりがある場所とない場所があるんだけど、そもそも誰が設置してるのやら。
頂上も同じでルームをぐるりと取り囲むようにして松明が設置されていたために夜だけど視界が悪いということはないようだった。洞窟内のボス部屋と同じ感じかな。
もっとも私は夜目のスキルをもっているからそれもあまり関係はないんだけど。
「うん?、あれ?」
私が鉱山の頂上にやってきた時に、私は少しだけ首をかしげることになった。
なぜならそこにはいつもと同じようにロックゴーレムが待機状態でいたからだ。
「え、もしかして本当にただのいつもよりレベル高いロックゴーレムが今回のクエストボスってこと?」
と、私が言いながらボス部屋へ足を踏み入れ、いつものように背後の道が落石で塞がれた後で、私は今自分が言ったことが間違いだったということを知った。
いつもであれば逃げ道が塞がれた直後に待機状態のロックゴーレムの顔に当たる部分の、目の穴から赤い光がキラリと輝いてロックゴーレムが動き出し、そのままロックゴーレムと戦闘になるのだけど。
「うわぁぁぁぁ!!、なんだなんだ!?」
今回はそこでまずとてつもない地響きがした。
さっきのものよりも大きい、というかもうそれは地震に近かったような。
まるでこの鉱山ダンジョン全体が揺れているかのような振動に私はつい態勢を崩しそうになった。
そして……
「おっと、なんかまずい感じだな、これ」
地響きが収まったと思ったら今度はボス部屋の待機状態のロックゴーレム、その真下の地面からなんだかよくかわらない真っ赤なオーラが溢れ出てきて。そのオーラがロックゴーレムに吸い込まれるようにして消えていく。
「怒りの鉱山、か。何に対しての怒りなのか知らないけどあのオーラみたいなのがこの山の怒りのエネルギーってところなのかね」
そしてその山の怒りのエネルギーらしき赤いオーラを吸収したロックゴーレムは、一回りほど巨大化してからそこでようやく起動したのか目に赤い光が宿った。
さらに、微妙に体色にも変化があって。通常のロックゴーレムがロックマンと同じように赤茶色の岩で形づくられたゴーレムだとしたら今回のゴーレムは焦茶色というか、なんか黒っぽくなって赤みが抜けていてもちろんモンスター名も違った。
「ふーん、それでマインゴーレムねぇ。マインって何だったっけ?」
モンスター名、マインゴーレム。
HPケージは250%。つまり大ケージ2本と半分というところ。
通常のロックゴーレムが200%であることからやっぱり全体的に強化されてるのか。
「グォォォォォォォォ!!」
そして戦闘開始前の合図のように雄たけびを1つ。
下界の言語、英語での綴りはmine。その意味はたしか鉱山だったかな。
つまりマインゴーレムとは直訳して鉱山のゴーレムということか。
「いや、そのまんまだな」
どうせならブラックロックゴーレムとか、アングリーゴーレムとかにした方が良かったんじゃないか?
マインゴーレムって、それむしろ通常のダンジョンのボスモンスターの名前に使った方が良かったんじゃないかなとか、ちょっと思ったよ。
「さて……なにはともあれ、やるか」
そうして『怒りの鉱山』クエストのボス、マインゴーレムとの戦いが始まった。
……の、だったけど。
戦闘開始から10分、どうやらマインゴーレムはそんなに警戒する必要もないモンスターなのではないかと私は思い始めていた。
というのもマインゴーレムの攻撃方法は基本的にロックゴーレムと同じであり、戦闘開始の段階では特に新しい攻撃方法などはしてこなかった。
ロックゴーレムと同じ、近距離、中距離、遠距離用の物理と魔法攻撃の6種類に、自身の周囲を吹き飛ばす波状衝撃波攻撃を加えた7種類の攻撃法。
もちろんロックゴーレムよりはマインゴーレムの方が能力値は全体的に上がっているせいでちょっと気を抜いて攻撃を食らってしまうとそれで少なくないダメージも受けるのだが。
でも、それだけならパーティーを組んで挑んでいれば通常のロックゴーレムと同じように苦戦はしても最終的になんとか倒せはするだろう。
「うーん、今のところは弱点属性が変わったところくらいか」
ロックゴーレムの弱点属性は風属性だった。
これはストーンゴーレムもそうだったけど岩石が風によって風化することから関連付けられた弱点なんだろう。しかし、マインゴーレムは風属性の弱点は克服したというか、弱点ではなくなっていた。
その代わりになぜか雷属性が弱点になっていたんだけど。理由はよくかわらない。
この鉱山で採掘される岩などは磁力もなく、特段電気を通りやすい素材というわけでもないし、あるいは山には雷が落ちやすいというところから来てるのか。
耐性の方は確認しなかったけど、でもとりあえず雷属性が弱点だということがわかったので私は基本的に雷属性の魔法攻撃をメインに戦っていくことにした。
そして、マインゴーレムの体力が150%を切ったあたりだった。
やはりそんなに簡単にボスを倒せるわけもなくマインゴーレムはそこで新たな攻撃方法を使用してきた。
「……うん?、新技かな?」
その技は、もしかすると私がこれまでに経験したどの技よりも危険だったかもしれない。
さて、ここで少し話は戻るのだけど、私はマインゴーレムの名前のマインとは、つまり鉱山という意味なのだと思っていた。
だけど、英単語のmineにはもちろんそれ以外の意味もあって、どうやらマインゴーレムは鉱山という意味のmineの他にもう1つの意味が掛け合わせてあるのだということを、私はだいぶ後になってから何気なく開いてみた英語辞書から知ったのだ。
英単語mineの意味は主に5つある。
①[所有代名詞]私のもの
②[所有格]私の~
③[動詞]採掘する
④[名詞]鉱山、炭鉱
ただし、辞書で引いてもらったらわかると思うけど、mineという単語は同じ綴りだけど2つ存在していて、正確に言うと1つの単語に5つの意味が集約されているわけではない。
①と②の意味を表すmineと、③と④と⑤の意味を表すmineがあるということ。
……はい、ここテストに出るかもよ?
そして最後の、5つ目の意味が問題でね。
⑤[名詞]機雷、地雷
これで理解してくれただろうか?
そう。つまりマインゴーレムというのは鉱山のゴーレムという意味であり、機雷のゴーレムという意味があるということだ。機雷というのは、まあ爆弾のことだ。
「あれ、もしかしてこれって……」
マインゴーレムの8つ目の攻撃技は、マインゴーレムの背中から射出された岩石の塊が、ボス部屋内の地面に着弾すると、その岩石の塊は地中に潜り込み。
そうしてそれから数秒後、大爆発を巻き起こした。
そう、つまりは地雷(地中に埋まった爆弾)の設置とその爆破。
「うそうそうそうそ、うそだって~~~~!!!!」
私が何故ここまで慌てているのかわかる人はいるだろうか?
たとえどんなに大きな爆発だったとしてもそれが爆発である以上は火属性の魔法攻撃でしょ?
だからレッドスライムから火魔法無効のスキルを手に入れている私にはダメージはないだろうし、そんなに慌てることはないんじゃないかと、ここまで話を読んだ人なら思ったことだろう。
うん、というか実際私も最初はそう思ったんだ。
だけど、今回のその地雷攻撃による爆発で私は見事に大ダメージを受けてしまった。
それはいったい何故か?
「っ!!、あ~~~~!!、そうか。マジで?、私初めてだけどこれがそうなんだ」
ゴッドワールド・オンラインにおける攻撃には3つの種類があるということを覚えているだろうか?
1つは物理攻撃で、これは腕で殴ったりとか、武器で斬ったりとかいう物理的な攻撃のこと。
1つは魔法攻撃で、これは文字通り魔法による攻撃のこと。
で、実は今まであんまり触れてこなかったんだけどもう1個だけ、このゲームには攻撃の種類が存在しているということを以前に説明したんだけど覚えてるかな。特殊攻撃っていうやつ。
特殊攻撃というのは、たとえば相手を状態異常にするような攻撃、ポイズンスパイダーの毒液とか、キラービーの針攻撃とかがそれに当たる。
(ちなみにポイズンの魔法などは特殊魔法と呼ばれていて、魔法攻撃の扱い。)
そして特殊攻撃に分類される攻撃にはもう1つあって。それが罠の設置だった。
フィールドなどに罠を設置して、その罠によってプレイヤーにダメージを与えたりする攻撃。
「地面に機雷を埋め込んでからの爆破、なるほどわかりやすい罠の設置だな」
属性的にはおそらく爆発なんで火属性ではあるんだろうけど、地雷爆破攻撃は特殊攻撃に分類される攻撃なのだということ。
そして私の持つ火魔法無効のスキルは火属性の魔法攻撃によるダメージを0にしてくれるが、それ以外の物理攻撃と特殊攻撃で受けるダメージは0にはできないということ。
「地面に潜り込んでから約10秒後に爆発ってところかな?、だから機雷が落ちた場所を記憶しておいて近づかないようにしておけと?」
しかしマインゴーレムは10秒後に設置した機雷が爆発すると即座に再びまた機雷を設置し直してくるのだ。1度の機雷設置の数は5つだが、機雷1個1個の爆発の範囲が広い。
いや、それでもちゃんと地面に落ちてきた時にどこに落ちたのか全部場所を記憶しておけばその機雷爆破攻撃を回避することだけならできなくもないのだけど。
「10秒おきに機雷設置して、爆発するなりすぐにまた新しい機雷の設置の繰り返し。おいおい、これ私の方から攻撃をしかけるチャンスがないんじゃね?」
もしも下手にマインゴーレムに接近して攻撃をしかけようものなら、すぐに機雷の爆発に巻き込まれて最悪の場合それだけで死ぬだろう。
しかもマインゴーレム自身は機雷爆破を直撃してもダメージはなしと来ている。
さらには、機雷を設置してから爆発するまでの10秒間でもマインゴーレムはそれまでと同じようにロックゴーレムと同じ7種類の攻撃のいずれかを使用してくるためそれらの回避まで含めるとなると、もはやプレイヤー側はどうあってもマインゴーレムに攻撃をしかけることができない。
いや、近づくことさえ困難になったと言ってもいい。
そう、爆発によるダメージを覚悟の上で特攻をしかける以外には。
「うーーーーん、うん。…………詰んだかな、私」
ここ最近の戦闘で、フレイムデビルやらビッグホークやらが割と楽勝だったんでちょっと調子にのっていたかもしれない。あるいはその罰が当たったのか。
私はこの第3階層で今ここが一番まずい状況だということを理解した。
アースジャイアント戦よりも、ジャイアントワーム戦よりも、ロックゴーレム戦よりもまずい。
「ロックゴーレムの時も思ったけど、もうあれ(=マインゴーレム)がこの階層の迷宮ボスでもよくないかな?」
少なくともそれぐらいの強さだと思うんだけどな、マインゴーレムって。
やっぱり2つあるうちの簡単な方とは言っても気軽に受けるんじゃなかったよ、このボスクエスト。
<モンスター辞典>
〇ビッグホーク
鳥族。崖フィールドのエリアボス。
大きな鷲のモンスターで、下界でのハクトウワシという種類の鷲に似ている。
口からは炎やプレイヤーを混乱の状態異常にする超音波、あとは翼を羽ばたかせて竜巻を起こしたり羽を飛ばしたり、1度上空に上昇してからの急降下掴みかかり攻撃など、多彩な攻撃方法を持つ。
特に超音波攻撃を受けるとプレイヤーは混乱(小)の状態異常になり攻撃が当たりにくくなるので注意が必要。
耐久が低く、賢さもそこまで高くはないものの敏捷が高く、また攻撃後の隙も短いため攻撃を当てられるのかどうかが重要となる。
体力が減ってくると攻撃と攻撃の間隔も短くなり猛攻が始まるので物理攻撃を当てられそうなら確実に当てていくべし。
弱点は雷属性と氷属性。耐性は風属性だ。
ドロップ:耐混乱の指輪、大鷲の羽、大鷲の嘴
※マインゴーレムについては次回の後書きにて紹介。
次回、果たして玲愛はマインゴーレムに勝つことができるのか!?
ちなみに、崖フィールドのエリアボスについて筆者は、鷲にしようか、鷹にしようか、あるいは隼にしても面白いかなとかずっと悩んでました。
この先、ビッグイーグルやビッグファルコンというモンスターがどこかで登場するかもしれない。




