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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての鳥

ちなみに筆者の一番好きな鳥はカワセミ。羽が綺麗。

あと、クジャク恐怖症ですね。

 周囲一体に轟くほどの大きな声をあげた崖のエリアボスは巨大な鳥だった。

 モンスター名はビッグホーク。大きな鷲という名の通り体長は10メートルほど。

 嘴と足先は黄色く、目の色は黒く、そして首から上だけが白い体毛で覆われている。

 下界の動物だとハクトウワシをそのままでっかくした感じのモンスター。


「体力は300%か」


 ビッグホークというモンスター名の下、HPケージが長いもので3本分あるのを確認した私はさっそく戦闘を開始した。

 ビッグホークは見た目通り鳥族で雷属性の攻撃が弱点だということはすぐにわかったが、どうやら氷の属性も弱点のようだった。

 そして耐久と賢さがそれほど高くはなく防御面は大したことがないのだけど、代わりに敏捷の値が高くさらに空中を移動するためなかなか攻撃が当たらずにイライラさせられた。

 こういう時にあのクイーンビーが使用して来た敵の頭上に雨雲を生み出してそこから雷を一発落とす魔法が使えたら楽なのにとか思ったんだけど。


「でもまあ、動きを先読みすればまだ何とかなる」


 ビッグホークはたまに疲れたのか地上に降りてきて歩き回ることもあるが戦闘中は基本的に空にいるというか、常に地面より10メートル以上離れた位置を飛行しながらプレイヤーめがけて様々な攻撃をしてくるのだけど、フレイムデビル戦と同じように私はそのほとんどを受け流すこともなく真正面から受けながら強引に押し切って反撃をしていった。

 なぜかというと、まずビッグホークの攻撃方法はいくつかあるのだけど、そのほとんどを私はすでに無効化できるというか。うん、だからフレイムデビル戦と同じなんだよ。


 ビッグホークの攻撃方法は全部で7つ。


 ①口から直線的な炎を放つ。

 おそらくはファイアーリザードのものと同じでもちろん火属性の魔法攻撃。

 だから食らってもダメージはゼロ!


 ②口から吹き飛ばしの風を放つ。

 これはシルフが使用するものと同じで受けるとプレイヤーは攻撃を受けた方向に飛ばされるが、この草が生えている大地はそれなりに広い場所だから吹き飛ばされても壁にぶつかることはまずないし、なんなら不動の構えでやりすごせばいいので問題はない。


 ③口から炎を螺旋状に放つ。

 これは初見の技だったけど、まず炎属性の魔法攻撃なのでダメージはゼロ。

 で、どういう魔法なのかというとおそらくは①の攻撃の強化版で、直線状ではなく螺旋状に広がるようにして炎が襲い掛かってくるため攻撃範囲が広い。

 だから複数のプレイヤーを丸ごと葬り去るようの技なんだと思う。


 ④口から超音波。

 これはバットやハルピュイアが使用した超音波の強化版だったんだろう。

 受けると混乱の(小)レベル以上の状態異常に普通のプレイヤーはなっていたんだろうけど、まあ混乱無効のスキルをすでに持っている私にとってはまったくの無意味。

 ただし、混乱無効のスキルを持っていても超音波のけたたましい音が聞こえなくなるわけではなく、近距離で食らうと耳がキーンとなったり頭が痛くなったりするのですごくうざったい。

 ……まあゲーム内ではどんなに大きな音や衝撃を受けても鼓膜が破けたりはしないけどね。


 ⑤大竜巻

 翼を大きく広げてから一気に羽ばたいて生み出す、ヤタガラスのものと同じ攻撃で食らうとダメージと上方向への吹き飛ばしの効果があるが、ダメージの方は風魔法無効の効果でゼロ。吹き飛ばしも、まあこっちは吹き飛ばされた後に地面に激突すると確実にダメージを受けることになるが、どうやらこれも不動の構えのスキルを発動させると防げるようだった。

 不動の構えは横方向だけではなく上下方向への吹き飛ばしも防げると。ただし地面の上に足がついていないと使えないのだけど。とにかくこのビッグホーク戦では大活躍のスキルだった。


 ⑥羽を飛ばす攻撃。

 ハルピュイアと同じようだがビッグホークの羽は1枚が大きく、さらに1度に多方向に何枚もの羽を飛ばしてくるので回避が難しく、さらに物理攻撃であるため私はビッグホークの攻撃技の中で特に警戒していたのだけど、実は飛んでくる羽に対して風属性の魔法攻撃を当てるとはじき返せるということに気づいてからはそこまで脅威でもなくなった。


 ⑦上空からの掴みかかり、からの地面へのたたきつけ。

 物理攻撃であり、ビッグホークの攻撃の中でも一番ダメージが大きいであろう攻撃。

 文字通り少しだけ上空に移動してからプレイヤー1名めがけて急降下してきて、左右どちらかの足でがっしりとプレイヤーを掴むと再び上空へ飛び立つ。

 そして上空で旋回した後で足を放して掴んでいたプレイヤーを地上へと突き落とす。


 ……これはね、絶対に回避しないとやばいよ?


 私は初見でこの攻撃を食らってしまったのだけど地面にぶつけられた時の衝撃とダメージと痛みがもう本当にどうしようもないくらい大きくてさ。

 いや、それでもまだダメージは30ちょっとだったんだけども。


 以上の7つがビッグホークの攻撃方法でそのうち③と⑦の攻撃に関しては体力がおよそ150%、つまり半分を切ったあたりから使用を始めてその他の攻撃についても連続攻撃になったりとか攻撃範囲が広くなったりとかいう変化はあったんだけど、魔法攻撃の方では一切のダメージを負わないからね、私。


「地上に降りてきた時が特に攻め時だな。耐久が低いんで物理攻撃が良く効くし」


 私は最後、地上のビッグホークに接近してからの稲妻斬りで止めをさした。

 ビッグホークはそれで体力を0にして地面の上に倒れこみ、そして体を光の粒子に変えて消滅。

 私は1200の経験値と2500Gを手に入れた。ついでに魔法も1つ手に入れた。


<新たなスキルを入手しました>

 魔法:パニックウェーブ


 〇パニックウェーブ

 無属性の初級特殊魔法。強力な超音波を敵に向かって放つ。魔法を受けた敵を一定確率で混乱(小)の状態異常にする。

 消費MP:10 リキャストタイム:20秒


「うーん、まあなんとなくそんな気がしてたけど。でもこれって、完全に超音波のスキルの上位互換だよな。こっちは魔法だけど」


 超音波のスキルの効果は、受けた敵を混乱(微小)の状態異常にするってもので、だから混乱(小)の状態異常にできるパニックウェーブの方が効果は高い。ただし超音波の方が消費MPもパニックウェーブの5分の1だしリキャストタイムのの方は10分の1の2秒と短い。

 もっとも混乱(微小)の効果はほんとにしょぼいんでそれを差し引いてもこの先私はおそらく絶対に超音波の方のスキルは使わないと思うのだけど。


 そもそもスキルと魔法というのは名称が違うだけで根本的な違いというのは実はそんなにない。

 ただ、スキルはどっちかというと自分の肉体がどうこうとかいう技が多いのに対して、魔法は完全に物理現象を超越した何かだということ。

 あとは、たとえばプレイヤー同士の決闘の時にスキルと魔法は個別に使用制限やらハンデを設定できるということくらいか。いまのところは。


「まあ、それ言うならスラッシュのスキルとウィンドエッジの魔法も、見た目だけならほとんど同じようなもんなんだけど、あっちは攻撃の属性も違うしな」


 だけども、このゲームは本当に多くの種類のスキルや魔法が存在しているし、私のようにモンスターを倒すだけでスキルや魔法を手に入れられるプレイヤーなんてほぼ皆無だろうからな。

 もしかするとまったく同じような効果だけど、スキルと魔法という区分だけで分かれているものもあるかもしれないし。しかし多くのスキルや魔法を手に入れてそれを使えるということは決して悪いことではない。

 スキルの中にはオフにしておこうと思うようなやつもたまにあるけど手に入れたスキルや魔法に対してあんまり文句を言うのはさすがに贅沢か。


「はぁ~、でもこれでモンスターを混乱にさせる魔法も手に入った。それなのに何故眠りの状態異常にする魔法が手に入らないのか」


 私はそんなことを言いながら画面を閉じると、そこで周囲を見渡して草の生えた大地の一画に青色のワープゲートが出現しているのを発見した。

 青は一方通行のゲートであるから入ったらこっちに戻ってくることはできないのだけど、たぶん1度街に戻るなり時間経過するなりでさっき落ちたあの吊り橋は復活するんだろう。


「どういう仕組みで橋が治るのかはゲームだから考えないけど、もしも誰か人の手で修復させられているんだとしたら結構な重労働だよな。ははは」


 ビッグホークからドロップしたアイテムについてなんだが、これも何かビッグポイズンスパイダーやクイーンビーと同じ流れを汲んでいるのか装飾品アイテムが4つ落ちていた。

 落ちていたのは耐混乱の指輪というアイテムで、まあもう説明はいらないと思うけど混乱攻撃を受けた時に混乱の状態異常になるのを50%の確率で防ぐというもの。

 私にはもうすでに無用の長物だということはもう言わなくてもわかると思うけど、これも武器屋で売ったら高く売れるかな?


 それと後は素材アイテム、大鷲の羽というアイテムが12個、そして大鷲のくちばしというアイテムが1個落ちていた。まあ嘴が1個しか落ちていないことについては当然か。倒したのは1体だし、鳥に嘴は1つしかないしね。(上下をセットと考えた場合。)


「よし、それで後はここにある草だな。本当にものすごい大量に生えてるから良かった」


 そうして私がその崖の最奥で入手した草は、通常の薬草が128個、魔力草が86個、そして薬草の上位種と思われる上薬草が63個と薬草のほぼ半分。

 あとは赤い花や白い花などの染料系の色付き花が生えていて毒消し草などの状態異常を治癒する薬を調合するための素材などは見つからなかった。


「眠り草がなかったのは残念だけど上薬草が手に入った。これであとは浄水が手に入ればハイポーションが調合できるな」


 調合のスキルレベルがⅣに上がったことで新たに覚えた5つのレシピ、そのうち私がまだ作成していないのはダブルポーションを除いた4つ。

 それらはまだ作成のために必要な素材アイテムが手に入っていないから作成不可なのだが、今回手に入れた上薬草はその中のハイポーションの作成に必要な素材の1つだった。

 ハイポーションの作成に必要な素材アイテムは3つで、1つは今言った上薬草。そして1つが第2階層のグリーンスライムからドロップするスライムの雫(緑)。最後の1つが浄水というアイテムで、これは水の上位互換となるような素材なんだろうがこの階層の街では売っていなかったので手に入るとしたら第4階層以降ということか。


「それで、うーん。たぶんこの階層で草が生えているのはここだけ、なんだろうなきっと」


 この第3階層にはあと崖フィールドの下ルートとその先から繋がる渓谷のフィールド、そして最後の第3階層の迷宮のみだが、まず迷宮内には絶対にないだろう。

 第1階層と第2階層の迷宮内も、草どころか素材アイテムが1つも落ちていなかったんだし。


「渓谷、渓谷かぁ。仮に谷底に草が生えていたとしてもそんなに数はないだろうな」


 この第3階層は赤の階層と呼ばれていて草一本も生えていない赤土の大地が通称の由来になっているくらいなんだし、この階層では草系アイテムの採取は向いてない、か。

 その代わりにこの階層では採掘のスキルがクエストの報酬で手に入ってそこかしこに採掘ポイントがあるんで採掘するなら持ってこいなんだろうけど。


「あれ、でもそういえば。第1階層と第2階層にも採掘ポイントってあるんだろうか」


 採掘のスキルは第3階層で手に入るものの、その採掘を行える採掘ポイントはそれ以前の階層に存在していてもおかしくはない。

 なぜなら採掘のスキルを手に入れるまではフィールドやダンジョン内の採掘ポイントは見ることさえできないのだから。


「んー、でも戻って確認するほどのことでもないか。そもそもそんなに熱心に採掘する必要なんてないんだし、採掘は、一種のストレス解消ゲームだと思ってたまにポイント見つけたらやってみる、くらいがちょうどいいのかもしれない」


 もし万が一にこの先、採掘のスキルを使って入手できる鉄鉱石などの素材アイテムが必要になったら、それはその時にまた考えればいいんだしね。


「とりあえずもうここには何もないみたいだから戻るか、どこに繋がってるのかね」


 私は草系アイテムを全部採取するとそう言って青色のワープゲートに入った。

 すると視界が一瞬で切り替わり、崖フィールドのあの上下ルートに分かれている分岐点の場所まで戻された。


「おっと、ここに飛ばされるのか。あー、そうだな。まあ今はいったん街へ返るか」


 このまま崖の下ルートを進んで渓谷に向かうという選択肢もなくはなかったけど、そんなに一気に攻略を進める必要もないから。ビッグホーク戦で私もそれなりに疲れたことだし。


 というわけで私は道を引き返してグランガンの街へ帰ることにしたわけだ。

 その途中の戦闘でゴブリンスリンガー相手に試しにパニックウェーブの魔法を使用してみて、混乱(小)の状態異常がどの程度の意味があるのか確認したりとかもしたんだけど。


<スキルレベルが上がりました>

 片手剣術Ⅳ→片手剣術Ⅴ


「おおっと、ここで片手剣術のレベルが上がったか。やっぱり職業を剣士に変えた影響もあったのか」


 剣士の職業にしておくと片手剣術のスキルのスキルレベルが上がりやすくなるという効果もあって、おそらくこの上がりやすくなるというのは、それまでよりも片手剣でモンスターを攻撃して倒した時に手に入る武器の経験値の量が上がるということなんだろうと思っていたんだが実際のところはどうなんだろうか。


「新しく覚えた技は、4つか……あれ、でもこの技って全部……ああ、そうか」


 片手剣術のスキルレベルが5に上がったことで新たに習得した技は4つ。

 しかし私はその技名を確認した瞬間にすべてを悟った。なるほど、こうなってくるかと。


 ①4段斬り

 無属性の物理攻撃。剣で素早く4回斬りつける。連続攻撃。2回目の攻撃では敵に与えるダメージが通常攻撃の1.2倍の威力になる。3回目の攻撃では敵に与えるダメージが通常攻撃の1.4倍の威力になる。4回目の攻撃では敵に与えるダメージが通常攻撃の1.6倍の威力になる。

 消費MP:12 リキャストタイム:15秒


 ②旋風斬り

 風属性の物理攻撃。吹き荒れる風をまとった剣で斬りつける。

 消費MP:7 リキャストタイム:8秒


 ③烈火れっか斬り

 火属性の物理攻撃。燃え盛る炎をまとった剣で斬りつける。

 消費MP:7 リキャストタイム:8秒


 ④凍結斬り

 氷属性の物理攻撃。凍てつく冷気をまとった剣で斬りつける。

 消費MP:7 リキャストタイム:8秒


 以上の4つの技を見て何か気づいた人はいるだろうか?


 ……うん、そう。この4つの技ってさ、片手剣術のスキルレベルがⅡに上がった時に覚えた技と似てるんだよね。というか、おそらくはその上位互換となる技なんだろう。

 4段斬りについては、まあ私の予想通りというか。4回目の攻撃の威力が3回目よりもさらに上がっているということも前々から予想していたんでそこまで驚きはしなかった。

 この4段斬りを全部相手に命中させることができたらそれだけで大ダメージを与えられるんだろうということは明らかだし、まあその分消費MPも大きいんだけど。


 旋風斬り、烈火斬り、凍結斬りの3つについては疾風斬り、火炎斬り、氷結斬りをそれぞれ強力にした技なんだろうな。

 仮に疾風斬りを初級物理攻撃だとしたら旋風斬りは中級物理攻撃みたいな?


「そう考えるともうなんていうか、片手剣術Ⅵより上で覚えられる技もなんとなく想像がつくな」


 たぶんだが次の片手剣術Ⅵでは稲妻斬り、水流斬り、砂塵斬りの強化版となる技が。その次の片手剣術Ⅶでは閃光斬りと宵闇斬りの強化版の技。片手剣術Ⅷではまたここに戻って旋風斬り、烈火斬り、凍結斬りのさらに上。上級の物理攻撃とも言える技が覚えられるというところか。


「まだ予想でしかないけどおそらく間違ってはいないはず……ああ、でも先の楽しみが少し減っちゃったかもしれないな。次のレベルではどんな技が覚えられるんだろうとかいうワクワク感が薄れたかも」


 でもこれは私でなくてもちょっと勘の良い人間なら普通に気づくというか、予想できることだしそんなに気落ちする必要もないかな。

 できれば私の予想を超えるか、あるいは裏切るような形で次に新しい技を覚えられることを期待してこの先も頑張るとしよう。


<第3階層:岩の都グランガン:冒険者ギルド>


 それでもちろん私は覚えた新しい技については4つとも1度ずつモンスターに試してみたんだけど、結果はお察しの通りだった。旋風斬りは疾風斬りの強化版の技っぽかったし、他2つの技も同じ感じだった。

 まあだからこれからは疾風斬りの代わりに旋風斬り、火炎斬りの代わりに烈火斬り、氷結斬りの代わりに凍結斬りを使ってゲーム攻略を進めていくことにするか。

 ただ消費MPが多いのでザコモンスター相手だったら今まで通りに疾風斬りとかの方でも全然問題はない気がする。旋風斬りなどの強化版の技は主にボス戦で活用できそうだ。


 と、いうところで私は崖のフィールドからまたグランガンの街に戻ってきた。

 そして冒険者ギルドにやってきたわけだが、さて、どうしたものかな。


「今夜で夜の崖を攻略して、明日は渓谷の攻略でしょ。それで上手くいけば明後日にでも第3階層の迷宮に挑戦したいからそれまでの時間に余裕がある時にクエストを片付けておきたいんだけど」


 ギルド掲示板に貼ってあるギルドクエストは後回しでもいい。

 なんなら先に迷宮を攻略した後にでもゆっくり片づけてもいいんだし。


「やっぱり住人クエストだよな。うーん、2つあるボスクエのうち簡単な方を今やっておくのもいいけど、その前にいくつか先に片づけておくか」


 私は住人掲示板に貼ってあった依頼書を見ながら適当に5枚を選んで受付に持って行った。

 この階層でまだクリアしていない住人クエストは27件。そのうちの2つはボスクエストであり、さらに2つはソロでは受けられない人数制限のあるクエストなので実際に選べるのは23。

 それでその23あるクエストのうち現在他のプレイヤーが挑戦中のものが6つあったので最終的に17件の中から選んだ5件だったけど。

 1時間ほどでまずその5件の住人クエストを片付けるとギルドに戻って報告した。


 その5件の中で面白かったのは『すっぱくないブドウ』のクエストか。

 クエストの内容は簡単で、グランガンの街にある自然公園のとある木の近くに依頼主の男の子がいて、その子がブドウが食べたいというので街の果物屋さんでブドウを買ってきてその子の元へ持っていく。

 しかし子供は「僕の食べたいブドウはこれではない。黄緑色のやつ」と言う。


 黄緑色のブドウ=マスカット。


 もう1度果物屋に行って今度はマスカットを買い、公園に戻って依頼主の子供にマスカットを手渡せばそこで依頼は完了となる。クエストの報酬は500Gと調合のレシピが1つ。


 〇ブドウジュース

 レシピ:ブドウ(2)+砂糖+水


「野菜、オレンジ、リンゴと来て今度はブドウジュースか。マジでジュース屋さん開けそうだな」


 私は報酬のレシピをもらった後ですぐにまた果物屋(本日3回目)に行き、またブドウを100個買った。そして自然公園に戻ってくるなりベンチに座って、ブドウジュースをそこで10個ずつまとめて合計50個ほど作成してみた。

 試しに1本飲んでみたけどまんま味はブドウジュースだった。けれども、そういえば毒消し薬も味はブドウジュースだったっけ?

 そう思ってアイテムボックス内にあった店売りの毒消し薬(結局使わなかったまま持ってたやつ)を改めて飲んでみると、たしかに同じブドウジュースの味がしたのだが。


「あ、でもなんか。本当のブドウジュースの方がブドウジュースっぽい味がするな」


 毒消し薬の方は、なんていうか風邪ひいた時とかに飲む液体の飲み薬を、ブドウ風味をつけて飲みやすくした感じの飲み物っていうか。

 それでわからなければ毒消し薬の方は果汁10%のブドウジュースで、ブドウジュースの方は本当に、果汁が100%くらいのブドウジュースみたいな?

 そしてそのブドウジュース(私が作ったので☆付き)の効果については。


 〇ブドウジュース☆

 HPとMPを30回復し、状態異常:やけど(中)を治す。


 やっぱりオレンジジュース☆、リンゴジュース☆と同じような効果だったよ。

 ブドウジュースはやけどの状態異常を(中)まで治してくれると。


「でもなんで果物のジュースで状態異常が治るのかは謎だよな、やっぱり」


 あと、せっかくならマスカットジュースのレシピもくれたら良かったのにって思った。

 それともマスカットジュースはさすがにないのかな、このゲーム内には。そういや私もリアルで飲んだことないな、マスカットジュース。


<モンスター辞典>

〇シルフ

精霊族。風を司る精霊で性格はいたずら好き。

プレイヤーを吹き飛ばす風魔法(魔法名:ウィンドブレス)を使用してくる他、ウィンドボールの魔法も使用。敏捷の値が高いがそれ以外の能力値はそれほど高くないので慎重に狙いをつけて攻撃しよう。

弱点は氷属性。ちなみに風属性の攻撃に対して完全にダメージが無効化である。

ドロップ:風の結晶


〇ゴブリンスリンガー

ゴブリン族。木製のスリングショット(パチンコ)を装備したゴブリンで、遠距離から小石を射出して攻撃してくる。

飛んでくる小石の速度が意外と早く、また射程距離も長いので注意が必要。

ちなみに、このゴブリンスリンガーを倒しても手に持っていたスリングショットをドロップすることはないが、実は先の階層でスリングショットという武器は存在はしている。

ただ、攻撃の威力が最低レベルであり、同じ遠距離攻撃用の武器なら弓矢や銃の方が何倍も使える武器であるためゲーム内では1種のネタ武器としてそれなりに有名だったりする。

イギリス:ウェールズサーバーにゲーム内で唯一そのスリングショットをメイン武器としてゲームを攻略しているプレイヤーがいるとかいないとか。

ドロップ:銅貨袋


〇ハルピュイア

鳥族。RPGではそれなりに有名な鳥人間のモンスター。ハーピーとも言う。

ザコモンスターにしては攻撃方法が4種類もあって意外と苦戦させられる。能力値も高めでHPが多いので割とタフ。弱点は雷属性で風属性に耐性あり。

ハルピュイアの顔立ち、また胸部の膨らみから性別はおそらくメスであり、オスのハルピュイアは存在しない。(理由はメスの方が可愛いし、デザインを統一した方が楽だから。)

なお、ハルピュイアに限らず、マーメイドなどの女性系で人型のモンスターはプレイヤー間でもそれなりに人気が高く、ネット上でのモンスター人気投票(可愛い度ランキング)ではハルピュイアも割と上位に食い込むこともある。ちなみに前回の結果は13位だった。

ドロップ:ハルピュイアの羽(本編未記載)


※ビッグホークについては次回の後書きコーナーにて紹介。

次回、玲愛は2つあるボスクエストの簡単な方に挑む……前にあのクエストを受ける?


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