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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めてのお好み焼き

 現実世界に戻ってきた私だったが、そういえば状態異常の効果についてまだ言ってなかったことが1つだけあったな。

 今回の酩酊のような特に効果時間が長い状態異常に限らなくても、ログアウトしている間も状態異常の効果時間はきちんと経過する。

 たとえばゲーム内で酒を飲んで酩酊の状態異常になったとする。その効果時間を2時間残したままでログアウトして現実世界に戻ってきた後で現実世界で2時間過ごしてから再びログインすると酩酊の状態異常は治っている。逆に言うと2時間以内であれば再びログインしたところでプレイヤーはまだ酩酊の状態異常のままだということ。


「酩酊の状態異常は効果時間が最長でも48時間まで伸びる。そうなったらゲーム内でももう意識を失ってふつうは倒れて死ぬと思うけど」


 ちなみに酩酊の状態異常の時に、副次効果によって意識を失ったことで死亡した場合は直近で立ち寄った街の祭壇の上に戻されるが所持金は基本減らない。それで一旦は酩酊の状態異常が治るらしいので最悪の場合はあえて死ぬことによって酩酊状態を脱し、そこからさらに酒に飲みにいくという真正の飲んだくれプレイヤーも一定数いるという。そいつらはモンスターを倒して得た金の大半を酒代につぎ込んでいるんだろうが、まあそういう楽しみ方も私は否定はしない。


「ただ眠りとかやけどとか時間経過では治らないタイプの状態異常はログアウトとかあんまり関係ないのだけど」


 私は頭からヘルメット型ゲーム機を外すとそう言った。

 そしてベッドから起き上がり台所にあったコップに水を1杯入れて飲んだ。

 部屋の電気を点けてから充電器にさしっぱなしだったスマホを起動してみた。

 すると今から12分くらい前にヤヌスからLINNEでのメッセージが1通届いていた。


『アストレア、今部屋にいる?』


 隣の部屋の住人からこんな内容のメッセージが届くこと自体ちょっと変に思うやつもいるかもしれなけど、でもまあ私はそれに返答したよ。


『いるけど。何かあった?』


 私がそれを送信するとその1分後にヤヌスからまたメッセージが届いた。


『いや、もし良かったら一緒に食事でもどうかなと思って』

『あ、アストレアもう夕飯食べた?』


 立て続けにそう送られてきたメッセージを読んで私は考えた。

 これはつまりあれだな、ヤヌスは私のことを食事に誘ってきたわけだ。

 あー、どうしようかな。たしかに私はこれから外に何か食べに行こうっていうか、居酒屋にでも行って酒を飲もうかなとか考えていたけど。


「うーん、でも私は酒は1人で飲みたい派なんだよね。けどせっかくヤヌスが誘ってくれたんだし、ちょうどゲームをログアウトしたタイミングだったからな」


 そう、今まであまり気にしたことはなかったのだけどもちろんVRゲームをプレイしている最中というのは現実世界で何が起こったとしても基本はそれを認知できない。

 だから極論それで家が火事になったとしてもそのまま焼け死んでしまう可能性もあって、VRゲームをプレイする際にはまずそれが一番怖いのだけど。

 私は少し考えてからヤヌスにこう返信した。


『まだ食べてない。これからどこかに食べに行こうかと思ってたとこ』


 そしてさらに続けてもう1つメッセージを送った。


『一緒に行くか?』


 だけども私が2つ目のメッセージを送る直前にヤヌスから先に返信が来て、それに間に合わず私は送信ボタンを押してしまったためちょっと会話にずれが生まれてしまった。


『まだ食べてない。これからどこかに食べに行こうかと思ってたとこ』

 ↳『本当?、それなら一緒に行こうよ』

 ↳『一緒に行くか?』


 こんな感じでね。いやだってヤヌスのやつ予想外に返信早いというか、1つ目のメッセージを送信して即既読がついて返信してきたんだ。別に悪くもないけどそれだとたまにこういうことが起きるんで、うん、まあそれはSNSあるあるの1つなんだけど。

 私は迷った。この次はどっちが話す番だろうかと。順当に内容だけを追うなら次はヤヌスが私の問いに答えを返してきそうだけど。とりあえず3分くらい待つか。そう思っていたら1分でヤヌスからまたメッセージが届いた。


『わかった。じゃあ何時に行く?、今からでも大丈夫?』


 今からって、まあいいけど一応ちょっと時間をもらおうかな。


『うーん、支度するから10分待って』


 するとヤヌスはそれでOKと返してきてそこで一旦やりとりは終わった。

 最初に私に部屋にいるかどうか聞いてきたってことはヤヌスはおそらく自分の部屋にいるんだろう。

 もしもヤヌスが外にいるんなら文面は今どこにいるになるはずだろうから。


「まあいいか。とにかく着替えよう」


 私は着ていた服(汗びっしょり)を脱ぐと新しいシャツと下着と洋服に着替え、そしてトイレを済ませてから洗面台で髪の毛に寝ぐせとかついてないか軽くチェックした。

 それからいつものハンドバックに財布とスマホと家の鍵が入っているのを確認すると部屋を出た。

 ところでちょうど隣の部屋の扉も開いてヤヌスが出てきた。ヤヌスももちろん私服だったけど白い半そでに青いジーンズと運動靴というシンプルな恰好をして出てきた。


「「あ……」」


 私たちはそこでお互いに目を合わせて部屋を出るタイミングが重なってしまったことに少しのきまずさを覚えた。いやこれアパートとかマンションとかに暮らしてる人ならきっと人生に何回かくらい経験あると思うんだよね。近くの部屋の住人とほぼ同時くらいに部屋を出て顔合わせること。


「アストレア」

「お、おう。それじゃあ行こうか」


 私とヤヌスはそれぞれ自分の部屋に鍵をかけてからとりあえず2人してアパートの階段を下りた。

 そうして私はヤヌスについていく形で歩いて行ったのだけど。


「でも急にどうしたんだよ。いや、別に一緒に飯食いに行くのはいいんだけどさ」


 友達なんだからそこは別に気にしてないけど、私は一応今日誘ってきた理由を聞いてみた。


「ああうん、お祭りも終わってアストレアまた暇してるんじゃないかと思って。たまには普通に食事するのもどうかなって思って」


 ヤヌスの答えに私はただ一言そうかとだけ返した。


「ところでヤヌス、これ今どこに向かってるの?」

「え?、ああ、そうだね。アストレアは何か食べたいものある?」

「え?、ていうかお前が誘ってきたんじゃないのか?」


 私たちはすでにアパートから離れたところまで来ていたが、特に目的地というかどこか特定の店に向かっているわけではなかったみたいだ。


「いや、一応アストレアの意見も聞いておきたいなって思って」

「お前は最初どこに向かおうとしてたわけ?」

「うーん、まあ近くの居酒屋か、あとはお好み焼きとかどうかなって思ってたけど」


 お好み焼きか。まあこの前の祭りの日にも出店で売っていたの食べたけども今日は本格的に鉄板で焼いて食うやつを食べに行くってことか。うん、お腹も減ってたしちょうどいいかな。


「わかった。なら私もお好み焼きでいい。けどもここらへんにお好み焼き屋なんてあったか?」


 私がそう尋ねるとどうやら最近オープンした店があるとのことで、アパートから歩いて20分くらいのところにその店はあった。へえ、全然知らなかったし。


「ヤヌスって意外とグルメなの?」

「え、いやそうでもないと思うけど。あ、この道いつも仕事行く途中に通るから」

「へえ。そういやヤヌスっていつも職場まで何で行ってるの?、自転車持ってたっけ?」


『はしくれ荘』には一応自転車置き場もあるにはあるけど、私を含め住人の誰も自転車を持っていないのかそこはただの粗大ゴミ置き場になっていたはずだが。


「徒歩だよ。やっぱり運動して体力つけないとね」

「ふーん、ちなみに職場まで何分で着く?」

「本当にゆっくり歩けば1時間かかる時もあるけど、いつもは40分くらいで着くかな」

「マジか。それって行きも帰りもだよな?」

「うん。あ、でもたまに寝坊した時とかはバスとか使う日もあるよ」


 なるほどな。というかヤヌスでも寝坊とかするんだ。なんかヤヌスはしっかり者で完璧ではないかもだけどそういうところはちゃんとしてるんだと思ってた。


「さ、ここで立ち話してても難だしそろそろ店に入ろうよ」

「ああ、そうだな」


 ヤヌスが店先にかけてあった暖簾のれんをくぐって店に扉を開けると、すぐに元気よくいらっしゃいませの声が聞こえてきた。よし、この店は良さそうだな。

 これは私の持論だが、良い店というのは当たり前のように挨拶がしっかりしている。酷い店だと客が店に入ったのに何も言われずに人数だけ確認して席に案内されたり、あるいは新人でも教育が行き届いていないところだといらっしゃいませは言うものの声が小さかったり、無愛想な感じが出てしまっていたり。

 そしてそういう挨拶が悪い店の料理ってたいていそこまで美味しくない。あんまりまずいわけでもないけどね。だけども料理を提供する店は料理以前に店の雰囲気とか、店員の態度や対応も客はしっかり見ているんだぞということは覚えておいてもらいたい。

 もっとも、私はこういう料理屋さんでのバイト経験はないからそこまで偉そうなことも言えないんだろうけど、あくまで客目線の話として私個人の意見だから。


「いらっしゃいませー!、お客様何名様ですかー?」


 と、応対してくれたのは若い女神の店員さんだった。


「あ、2人です」

「当店は全席禁煙席となっておりますがよろしいですか?」

「はい」

「お席はカウンターとテーブルどちらがよろしいですか?」


 店員さんがその質問をしてきた時にヤヌスは私の方を向いてどっちがいいか聞いてきたので私がテーブル席でお願いしますと言ったらそれからすぐに私たちは空いていたテーブル席に案内された。

 ちなみに店内はテーブル席が4卓とカウンター席が12席。テーブル席はすでに2卓埋まっていてカウンターにもお客が7人いたことから最近オープンしたとはいえそれなりに繁盛はしているみたいだ。

 ああ、店の名前は暖簾に書いてあったけどなんか崩した感じの記号みたいな文字が書いてあって読めなかったからわからない。でもまあここがお好み焼き屋だということがわかっていれば店の名前なんてそんな覚えなくてもいいだろう。


「そういえばアストレアってお酒は飲むの?」


 テーブル席はテーブル1つに椅子が2脚ずつ向かい合わせに入れてあって私たちは向かい合う形で椅子に腰をおろしたところでヤヌスが聞いてきた。


「うーん、強い弱いで言うなら強いほうかな。でもあまり量は飲まない。いつも居酒屋で1人チビチビ飲んでる。ヤヌスは?」

「僕も同じかな。決して弱くもないけど、付き合いで飲まされる時以外はあんまり飲まないかも」

「ふーん、そうなんだ」


 もちろん最初にこの話題を口にしたのはその後ですぐに店員さんがお冷とおしぼりの乗ったお盆を持って私たちのテーブル席にやってきて、そしてそれらを置いた後で先に飲み物の注文を承るからなんだろうけど。


「あ、生ビール2つで。で、大丈夫なんだよねアストレア」

「うん」


 そうして私たちが注文した生ビール(中ジョッキ)が運ばれてきたところでまずは乾杯してから私はビールを一口飲んだ。


「ああ、やっぱり酒はリアルで飲んだほうが美味いな」

「え、それどういう意味?」

「いや、なんでもない」


 私はヤヌスにそう言ったけど、まあ今のセリフは本心からだよ。

 さっきゴッドワールド・オンラインの中で飲んだビールは、味やシュワシュワ感はうまく再現されてはいたんだけども、やっぱり本当に美味しいと思えるのはリアルで飲んだ時だよな。

 なんていうか、月並みな表現かもしれないけどちゃんと自分が生きているんだなって思えるというかね。

 これって本当はちゃんと定職について働いている人が仕事終わりに飲んだビールとかで、その日も1日ちゃんと働いて疲れた体に酒が染み渡るように感じられて言うことであって、特に何の労働もしていない年中ニートの私が言えたことではないんだろうけども。


「アストレアどれ食べたい?」

「んー、ヤヌスに任せるよ」

「わかった。じゃあ手軽にぶた玉ミックスと、あとゲソ焼きと枝豆も頼もうか」

「うん。それでいいよ」


 再び店員さんを呼んでヤヌスは注文をした。

 その間に私も一応壁にたてかけてあったメニュー表を手に取って見てみたけど、そういえばお好み焼き屋も高校時代に行ったきりだったな。

 いやだって1人暮らし始めて友達もいないとお好み焼き屋って行かなくない?

 俗にいう1人◯◯ってやつだよ。1人ラーメンとか、1人ファミレスとか、あと1人焼肉なら私も行くことはあるけど。1人お好み焼きは私にはちょっとハードルが高いかな。お好み焼きって皆で分けて食うものだっていう意識が強いし、何より大きさにもよるけど1枚でも結構量あるからね、お好み焼き。


「アストレア、どうかした?、まだ他に何か頼みたいものあったら遠慮せずに頼みなよ」

「え?」

「大丈夫だよ。今日は僕のおごりだから。誘ったのは僕なんだし」

「いや、別にそういうんじゃ……」


 注文を一旦終えて店員さんが去って行った後でヤヌスと話していた私だったけど、そこでふとメニュー表をもとの位置に戻した時に壁に数量限定と書かれたメニューが別枠で張ってあることに気づいた。


「へぇ、サイコロステーキなんてあるんだ」


 私は別に食べたいとかいうわけでもなくただそれを見てそうつぶやいたつもりだったのにヤヌスは意外にもそれに食いついてきた。


「あ、ほんとだ。でも数量限定って書いてあるよ。聞いてみる?」

「いや、別に食べたいわけじゃないよ。ただその、お好み焼き屋も色々あるんだなって思って」

「ああ、うん。結構多いよ。お好み焼き屋にサイコロステーキあるお店。まあ同じ鉄板で焼いて食べるものだし別にいいんじゃないかな」

「あー、そうだな」


 私はヤヌスの意見にそう返しながらビールを飲んだ。

 そしてそれからまずは枝豆、次いでゲソ焼きが先に運ばれてきた。

 ゲソ焼きっていうのはゲソっていうのはイカの足でさ。それを鉄板で焼いて食うやつね。

 声をそろえていただきますを言ってから枝豆をつまみつつゲソを鉄板で焼き始めた。鉄板はもう熱々で手を近づけただけで熱を感じられた。


「ヤヌスは、どのくらいの頻度で外食とかしてる?」


 その中で私がヤヌスに聞くと、ヤヌスは少し考えたから答えた。


「んー、どうだろう。でも親方や先輩たちとの付き合いが大半だからな。今日みたいに自分からこういうお店に行って食べることは少ない、かもしれない」

「ふーん、じゃあ普段は自炊してんだ、偉いな」

「いや、前にもちょっと言ったと思うけどそれもあんまりね。仕事が夜までかかった日とかはコンビニ弁当とか、あと、そもそも食べないでそのまま寝ちゃうこともあるし」

「わかるわー。なんかもう起きた時に夜中とかだと食欲もないんだよね」

「うん。あんまり健康には良くないとはわかってるんだけどね。どうしても生活リズムが不規則になりがちだから」


 ああ、生活リズムが不規則になってるっていう自覚はあったんだ。

 ヤヌスってどれだけ疲れていたとしても私の前じゃあんまりそういうの出さないっていうか、私はヤヌスが愚痴とか他人の悪口とか言ったの聞いたこと1度もないから。

 もしかしたら私の知らないところでは普通に言ってるのかもしれないけど、でも私はヤヌスはそれもないんじゃないかなって思う。なんていうか、こいつは本当にいいやつなんだよ。


「それって、お前まだ見習いだから?」

「うーん、そうかもしれない。でも家具職人っていうのは、いや職人はさ、ほら誰かに頼まれて物を作ることもあれば自分で作って売りに行くこともあるから。その時の忙しさで変わっちゃうんだよね」

「ふーん、そういうものか」

「まあ僕も将来独立して自分の工房とか持ったら、今よりは生活も安定すると思うけど」


 独立か。そりゃあまあ職人なんだしそういうこともあるのだろう。

 ただ、ヤヌスはまだ半人前らしいし、とりあえず今の職場で一人前認定されてから何年かは経験とかもっと積んでからの話なのかね。


「1人立ちとか考えてるんだ」

「出来るなら、ね。でも出来ないならずっと今の工房で働くのも悪くはないって思ってる。親方や先輩たちは厳しいけど、優しいから」


 厳しいけど優しい、ね。ちょっと矛盾してるようにも聞こえるけどなんとなく言いたいことはわかる。

 ダメなものはダメってはっきり言うけど決して見放したりとかはしないで色々と教えてくれるみたいな意味かな、たぶん。


 そしてそこでゲソ焼きが良い感じに焼けたようなので私たちは焼けたゲソを食べた。

 うん、美味かったよ。私は結構海産物とか好きだから。でもこの後でメインのお好み焼きがあるんだよな。ゲソ焼きを食べ終わったところで1杯目のビールがなくなってしまったので私とヤヌスは2杯目のビールを注文した。それから2杯目のビールが運ばれてきてすぐにぶた玉ミックスのお好み焼きも運ばれて来た。

 店員さんが私たちの目の前にある鉄板に材料をおいたらジューという音を立てながらお好み焼きが焼かれ始めた。意外とサイズ大きいな、この店のお好み焼き。


「さっきのサイコロステーキの話じゃないけど、一番意味不明なのってやっぱ回転寿司だよな」


 私がヘラを上手に使いながらそう言うとヤヌスも私の言いたいことがわかってくれたみたいで、たしかにと答えてくれた。


「だってもうさ、米の上にエビフライとかハンバーグとか乗ってるしさ。酷いところだと普通に魚乗ってる寿司よりもサイドメニューの方が充実しちゃってるとこもあるし」

「まあ回転寿司はファミレスと一緒で家族連れも来るし、子供向けのメニューも多いから余計にそう感じちゃうのかもしれないね、最近は特に」

「だよな?」

「でも、握った米の上に魚乗せるだけが寿司じゃないからね、たぶん」

「んー、まあそれ言われちゃうと私も何も言えないし、別に文句があるわけでもないんだけど。よくよく考えてみるとちょっと、なんていうか違和感はあるよね」


 もっともそれが最近の流行りというか、風潮なのは私もわかってるし。そこに違和感を覚えるのはきっとまだ馴染めていないだけなんだろうけど。


「ラーメン屋さんだってラーメン以外のメニューが充実してるお店もあるし、回転寿司はその中でも特にメニューに幅があるってだけなんだと思うけど。アストレアみたいな考えもわかるよ」

「ほんとに?」

「うん。寿司屋ならサイドメニューとかなしに寿司の味で勝負しろってことでしょ?」

「そう、そうなんだよ。私はそれが言いたかったんだよ」


 私がそう言ったらヤヌスは私の顔を見てぷっと笑い出した。


「え、何?」

「い、いや。僕がそれ言ったらアストレアならそうくるだろうなって予想した通りの答えが返ってきたから、ついね」

「そ、そうか」


 それって、私ってそんなに読みやすい性格ってことなのか。

 いや、きっとヤヌスだからかな。こいつ人のことはちゃんと見ててたまにすごく的を射たこと言ってくるし。その分自分のことについてちょっと適当すぎるきらいもあるけど。

 正論とはまた違うけど人を納得させるだけの意見も言えるし。ほんと、すごいやつだと思う。


 そんなことを考えながら私たちは焼けたお好み焼きを切り分けて平らげた。ただ、ヤヌスは私の食いっぷりを見て私が実は今結構お腹を空かせていることに気づくと私の方に多く食べさせてくれたことに私は気づいた。

 だから私はその上でヤヌスのおごりだということがなんだか悪い気がしてやっぱり今日は割り勘にしようと提案したらなぜか却下された。祭りの時もそうだったけどヤヌスっておごるのが好きなんだろうか。

 それとも女の子に気前よくおごる俺様って格好良いとか内心で思ってたりする?


「ん?、どうかしたアストレア」

「…………いや、なんでもない」


 さすがにそれはないかな。ヤヌスはただ、本当に優しくて良いやつなだけだ。

 ヤヌスが今ちょっと気になってるっていう噂の女神もきっとヤヌスのそういう面を知ったら絶対に惚れるに違いない。私みたいに恋愛に鈍感でなければの話だけど。


本編内でのアストレアとヤヌスの会話については、筆者の実体験というか以前に友人2人とお好み焼き屋に行った時にした会話を元に書きました。

どうでもいいことかもしれませんがサイコロステーキってすごい高いよね。肉なんだからそれも当たり前なんだろうけど。

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