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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第3階層―RED―
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ニートな女神と初めての宝石

今回のタイトル、『初めての混乱』とどちらを採用するかすごく悩んだ。

でも内容的に深く切り込んだ方を採用。混乱の方はまたどこかでつけるかもしれない。

<第3階層:洞窟>


 ギルドを出て再び荒野フィールドへやってきた私。

 そこでまず荒野フィールドで受けた2件のギルクエを片づけると(ちなみに内容はグリーンスネークを10体討伐&蛇の抜け殻を5つ手に入れること。)洞窟ダンジョンの入り口までやってきた。

 洞窟ダンジョンは1階構成で階段等はない。広さは第2階層の森と同じかそれよりも少し狭いくらいだということを、街の門を出る前にすれ違った親切な女性プレイヤーに教えてもらったんだけど。


「でも第2階層の森も最初の通常ダンジョンにしてはかなり広かったし、洞窟の攻略は上手く行っても今日の午後までかかるかな」


 それでも夜になるまでには終わらせそうだと考えていたのは私が自分の強さにある程度の自負を感じていたからに他ならない。

 それを強者の余裕と呼ぶか、強者の驕りと呼ぶかは人によるだろうが。


 そんなこんなで私は洞窟の中へと足を踏み入れたのだけど。

 もう入ってすぐに戦闘になったよ。しかも事前に聞かされていたモンスターたちとね。


「ええ、いきなり!?」


 最初のルームで襲い掛かってきたのはバットというモンスターがなんと8体。多いな。

 バットは、決して強くはない。HPも低いし他の能力値も全部高くはないのだ。


「「「「「「「「キィィィィィィ!!!!」」」」」」」」


 ただ、口から超音波攻撃を放ってくるだけであって。

 それが例えば8体同時にしかけて来たとしたらまず洞窟内の狭いルームだと回避することなど出来るわけもなくて。


「ぐわぁぁぁぁぁ!、うるさーーーーーーい!!」


 私はキレた。


「スラッシュ!、スラッシュ!、スラッシュ!」


 そして私はバットたちを剣先から衝撃波を飛ばす攻撃、スラッシュでまとめて片づけると最初の戦闘の後でもう疲れていた。なんかちょっと耳が痛い気がする。

 バットは、コウモリの姿そのままのモンスターでもちろん飛ぶし、天井の高いところに逆さで止まっていたりしてなかなか攻撃が当たらないのにもイライラさせられたし。

 超音波攻撃によって私は混乱(微小)の状態異常にもなった。


「はぁ、はぁ、嘘でしょこれ。まだ、最初の部屋なんだけど」


 そして何よりも私が驚いたのはバットを倒しても混乱耐性のスキルをもらえなかったことだ。

 その替わりにバットからは本当に使えないスキルをもらったし。


 〇超音波

 口から超音波を放つ。命中した敵を混乱(微小)の状態異常にする。

 消費MP:2 リキャストタイム:2秒


「いや、こんなのいらないから。混乱耐性のスキルはどこにいったの~!!」


 幸いにも混乱(微小)の効果は1分で切れるし、そもそも混乱(微小)ってそこまで戦闘に悪影響を及ぼすわけでもないから別に無視しても問題はないんだけども。

 でも、混乱耐性のスキルを成長させて混乱無効のスキルにすれば、きっとあのバットの超音波攻撃もうるさい音が聞こえなくできるんじゃないかと期待して私はショックだった。


「もしかして混乱って、耐性スキルが……ない?」


 私の頭の中にそんな想像が浮かんできて私はそれで絶望しかけた。


「いや、バットからもらえなかっただけできっと別の、混乱させる技を使ってくるモンスターからもらえるんだ。うん、そうだ。きっとそうに違いない」


 下界の人間たちはそれを聞いたらなんて言うのだろうか。

 強がり?、合理化?、ご都合主義?……いや、最後のはちょっと違うか。


「いいよ、ないなら別になくても。どうせ混乱の状態異常なんて放っておけば治るんだし」


 神界の神々たちはそれを聞いたらなんて言うんだろうか。

 ……何も言わずにただただ笑われそうだな、うん。


「とりあえずバットはまあ、後回しにしてもいいか」


 直接的に私を殺しうる可能性がほぼゼロだからね。超音波はうっとうしいけど。


 ゴッドワールド・オンラインの世界では、光や音や衝撃などの本来であれば目に見えないものも攻撃される時には可視化される。

 超音波もその例外ではなくバットの口っていうか体全体から何やらぎざぎざの白い線のようなものが波状攻撃としてプレイヤーに迫りくる。1体であればそれをかわすのは容易なんだけど、今みたいに8体が同時にしかけてきたりするとさすがに全部をよけきるのは至難の技だ。


「あれを全部素で回避できたらもう神じゃないか?」


 一応リアルで女神やってる私が言うんだから間違いないぞ。

 皆も暇があったら挑戦してみてよ。狭いルーム内でさ、バット8体からの超音波攻撃を全部よけきるっていうのを。たぶんそれが出来たら君は神になれるよ。もちろんこのゲーム内での話だけど。


 1分が経過して混乱(微小)が治ったところで私は探索を再開した。


 それで、洞窟内に出現するモンスターについてだけど。

 まず既存のモンスターが6体。ストーンマン、シャドーマン、ゴースト、ゴブリンアックス、ゴブリンクレイモア、グリーンスネークの6体。

 夜のフィールドとか洞窟内とか、暗いところにはシャドーマンが出てくるんだよね。

 洞窟内にゴーストが出るのも、この洞窟に入ったが最後出られずに死んでしまった人の幽霊がさまよっているんだと考えれば納得できる。

 ゴブリンシャーマンはこの感じだともうこの先出てこないのかな。あいつの耐久低下の魔法には今でも結構苦戦させられるんだけど。まあ出ないなら出ないで良い。


 洞窟内で新しく出現したザコモンスターは5体。

 1体はバットで、これはもう紹介したな。

 残る4体のザコモンスターも、厄介なやつもいたけどそんなに強くはなかったと思う。


 ①モール

 名前の通りモグラのモンスターでこいつは穴から上半身だけ出している。

 そして石ころを投げつけて攻撃してくるのだけど力が割と高くてちょっとだけどダメージを受けた。

 ただ、何よりもこいつは敏捷が高くてこっちから攻撃するとすぐに穴の中に引っ込んで攻撃を回避してしまう。そして地面の中を移動してまた新たな穴を作って顔を出す。


「でも顔を出した直後はまたすぐに潜らないから移動の後が攻撃チャンス」


 耐久も賢さも低いので攻撃を当てられさえすれば誰でも簡単に倒せそう。

 あと、どうでもいいけどこの階層でハンマーが装備可能になるクエストがある理由って、まさかこのモンスターがここに出るからじゃないよね?

 もぐら叩きをプレイヤーにさせたいからじゃないんだよね?


 倒してもスキルはなし。地面の下にもぐるスキルがもらえると思ってたんだけどな。

 ドロップアイテムはまさかの石ころというアイテム。アイテムカテゴリは[石]だったからこれはストーンショップで売ればいいのか。


 ②ブルーリザード

 明るい水色のトカゲのモンスターで、なんかうっすら発光してるから遠くからでもこいつの姿を見つけることは出来る。4足歩行で体は小さめで動きは素早い。

 ブルーフロッグと同じように舌を伸ばして攻撃してくるけどそれ以外には特に厄介な攻撃はしてこない。ただこいつは地面だけではなく壁や天井にも移動するのが面倒くさい。


 倒してもスキルはなし。壁とか天井を歩き回れるスキルがもらえると思ってたんだけどな。

 ドロップアイテムはトカゲのしっぽ。ちなみにブルーリザードはしっぽを捨てて逃げ去るなんていうことはなかったよ。あったらあったでちょっと見てみたかったんだけど。


 鉱山で出現するらしいファイアーリザードっていうのはこいつの強化版なのかな。

 だとしたらこのブルーリザードってここにしか出ないモンスターだったりして?


 ③スモールロック

 小さな岩という名前のモンスターだけどストーンマンとはまた違ったタイプ。

 2足歩行で足は短く体が丸っこい岩の塊。その塊になんか可愛らしい丸い目が2つついていたんだけど。

 それがさ、なんかヨチヨチ歩きながらやってくるから私も特に警戒せずに近づいたんだ。そしたらさ。


 ドォォォォーン!


 なんかね、そいつ自爆したんだよ。うん、爆発して勝手に死んだの。


「ふざけんなし!、マジでふざけんなし!!」


 いや、まあ別にそういうモンスターがいるっていうこと自体はいいんだ。

 本当はそれもあまり良くないんじゃないかって思ってるけどまだ理解はできるから。


「でもそれならなんでそのモンスターにあんな可愛らしい目を……はっ!、まさか!」


 私はそこで気づいた。おそらくだけどこのモンスターのデザインを考えた奴はあのゴブリンとかコボルトのデザインを担当した奴と同じ人間に違いないと。

 見た目可愛らしいモンスターにしておいてそれでプレイヤーに倒させたりした時にちょっと心を抉るというか、罪悪感を植え付けたりとかしてくる奴。

 絶対に性格が悪いタイプのキャラクターデザイナーだ。


「もういいよ。やめてあげてよ。しかも今回は自爆って……あれ、でもそういえば私」


 私はたしかにスモールロックの見た目の可愛らしさに騙されて近づき、そして自爆攻撃を正面から受けたはずなのにダメージを受けていない。それはなぜか?


「あ、そうか。今の自爆ってゲーム的には火属性の魔法攻撃扱いなんだね」


 レッドスライムさんに感謝を。そしてデザイナー、次また同じようなモンスター登場させたらマジで私下界におりて天罰下すから。もう本当、やったことないけども。


「そういえば見た目違うけど下界のあの有名なRPGにもいたな。ば●だん●わっていう爆発する岩のモンスターが。まさかパクりかな?」


 でもまあありがちなモンスターだし、見た目全然違うからそれは違うか。

 とにかくダメージは受けないけどスモールロックには近づかれる前に魔法とかで倒そう。

 あんな可愛らしい目をしていたのが自爆して消し飛ぶのはもう見たくないから。


『新しいスキルを入手しました』

 スキル:自爆


「はぁ?」


 〇自爆

 自身の体を大爆発させる。スキルを発動した時の自身のMPの量×INGの値だけ敵にダメージを与える。スキル発動後自身のHPが0になる。

 消費MP:すべて リキャストタイム:――


「誰が使うか!」


 私はもう速攻でそのスキルをオフにしたよ。

 っていうかこのスキルいったいどういう状況で使うというんだ。

 パーティ組んでて状況が最悪の時にでも使うのか?、自分を犠牲にしてでもパーティ全体のことを考えてとかそういう……いや、もう考えるのはやめよう。私は一生使わないスキルなんだし。


「くそ、どいつもこいつも。なんかこの洞窟私に優しくないな」


 私はとっととこの洞窟のボスを倒してすぐに出ようと思った。

 なんていうか、もうこれ以上ここにいたくないって思ったから。

 うん。途中まではたしかにそう思ってたんだけどね。でも最後の最後で踏みとどまれたのはあのモンスターがいたからだよ。いや、正確にいうと出会ったから、かな。

 たぶん洞窟内にいる数自体少ない超絶レアなモンスターだったと思うんだけど。


「うん?、あれってブルーリザード……じゃ、ない?」


 ダンジョン内のマッピングも9割方終えて、ボス部屋の位置も確認した頃だった。

 なんか歩いてたら目の前の通路をすごい勢いで光る何かが通り過ぎ去って私はすぐにそれを追いかけたんだ。そいつは見た目はブルーリザードとほぼ同じだった。ただ体がブルーリザードのよりもはるかにまぶしく光っていたんだ。そして光の色は黄色っぽかった。


 ④トパーズリザード

 トパーズとは宝石の名前であり皆もテレビや写真なんかで見たことがあるという人もいるだろう。

 宝石店などに行ったことがあれば実物を肉眼で見たことがあるという人もいるかな。

 まあそれも種類が色々あるんだけども、普通は黄色っぽいオレンジ色をした宝石でさ。


「すごい綺麗なモンスター。いや、今まで見たどのモンスターよりも綺麗だな」


 全体的にトパーズ色をしていて常に黄色い光を放っている4足歩行のトカゲ。

 私はそれを見た時ついそれがモンスターであること、そしてここがダンジョンの中であることを忘れてただただそのトパーズリザードの姿に見入っていた。


 トパーズリザードは一切の攻撃行動をしてこないモンスターだった。

 プレイヤーが接近するととたんに全速力で逃げ出す。だから戦闘にもならない。

 でも体がすごく光っているんで逃げてもまあすぐに場所がわかっちゃうんだけど。


 私はなんとかトパーズリザードを捕まえてやろうとダンジョン内の袋小路に逃げ込むように誘導した。

 そして袋小路の先で私はじっとトパーズリザードとお互いの目を見合わせていた。


「いいな、このモンスター。アストとは別にペットとして飼えないかな」


 プレイヤーが飼うことのできるペットの数は原則1人1匹だけ。

 だからもしもこのトパーズリザードを飼えるとしてもその時は私はアストを手放す必要があるわけでもちろんそれは絶対にしないけど。

 でも、ペットとは別でモンスターを従えさせるようなスキルがあったなら、私は絶対にこのトパーズリザードを捕まえに来るだろう。それぐらいこのモンスターのことを私は気に入った。

 なんならこのモンスターに会うためだけにこの洞窟に来てもいいくらい。


「ずっと見ていられそうだけど、でもごめん。今は倒すよ」


 私は十分トパーズリザードの姿を堪能すると、トパーズリザードに向かってスラッシュを放った。

 苦しまないように一撃で仕留めてあげた。

 それで倒してもスキルはもらえなかったけど、でも貴重なドロップアイテムをもらった。

 それはもちろんモンスター名の由来にもなっている黄色い宝石で。


「うわぁ、トパーズだ。……絶対高く売れるんだろうけど記念にこれはとっておこうかな」


 私はトパーズを拾うとそれで少しだけ寂しさを覚えた。

 たぶんだけどトパーズリザードって会おうと思って会える類のモンスターじゃない気がして。

 見つけたプレイヤーはすごい運がいいとか言えるレベルのモンスターだったんじゃないかな。


「運がいい、か」


 私は自分の恩恵の効果について、以前にローズ達やパス太達にこう説明した。


 運の値が強化されているんです、と。

 だからモンスターを倒した時も高確率でアイテムがドロップする。

 だからアイテムを作った時も高確率で最高品質のアイテムが出来上がるのだ、と。


 でも実際に蓋を開けてみればそれは違った。

 私の恩恵の効果は運の値とはまったくなんの関係もなかったんだよ。


「はぁ~。でも、よくよく考えてみればすごい確率だよな、これ」


 私が、つまり神界にいる女神であるアストレアがこのゲーム内でアストレアの恩恵を授かったこと。

 このゲーム内で実際に何柱の神様の恩恵が存在しているのかは知らないけど、でも私が私の恩恵を引き当てる確率ってそれこそ奇跡的な確率だったんじゃないだろうか?


 第2階層の最後。皐月さんと森で再会した時に、皐月さんはその出会いを運命だと言っていた。

 その時私は、そんなの『運命』を司る神が聞いたら鼻で笑われそうだとか思ったんだけど。


「神様が運命とか、不用意に口にするべきじゃないんだろうけどでも……きっと運命ってそういうことなんだろうな。誰かが違うと言えばそれまでだけど。自分がそうだと思えればそれはきっとそいつにとっての運命だったんだろう」


 それなら私の場合はどうだったんだろうか?

 このゲームを初めて最初に、私が私の恩恵を授かったことは運命だったんだろうか?


「下界の人間たちの中には運命は神様が作ってるって言ってる人もいるらしいけどそれは違う。本当の運命は神様にもわからない。たとえそれが『運命』を司る神であったとしても、誰にも」


 この言葉を言ったのは誰だったろうか。

 たしか、そう。『運命』を司る女神のスクルドだったっけ。元SORSのメンバーの。


 SORSというのは神界にちょっと前まで存在していたアイドルグループだ。

 メンバーは6人。年齢順に言うと最年長がウルド。そしてクロートー、ヴェルザンディ、ラケシス、アトロポス、そして最年少だったのがスクルド。

 このアイドルグループはすでに解散していて、後にクロートー、ラケシス、アトロポスの3人によって再結成されたのが今現在のMOIRAIだ。


 MOIRAIについては、まあ前にも1度説明したからいいか。

 6人中3人での再結成だったけど、不思議とSORS時代のファンがそのままMOIRAIのファンへと移行したのは別にそれ以外のメンバー3人に人気がなかったわけじゃない。

 グループの解散理由は本当のところは謎らしいけど前にヤリーロのやつが話していたところでは。


 ~回想~


 場所:神界にあるとあるコンビニエンスストアの休憩室

 登場人物:ヤリーロ、アストレア(私)


 ヤ「SORSは目立ちすぎたんっすよ。いや、人気がありすぎたって言うか」

 ア「それってまさか他のアイドルグループからの嫉妬とかやっかみが原因ってこと?」

 ヤ「いや、というよりは業界全体の話ですね。1つのアイドルグループだけがあまりにも人気がありすぎると色々と困る部分もあるんすよ」

 ア「そうなんだ。じゃあMOIRAIも危ないんじゃないか?」

 ヤ「何言ってんすか先輩!、MOIRAIが解散なんて絶対にありえないっすよ。だってMOIRAIは……」


 それから2時間以上に渡ってMOIRAIの良さを語るヤリーロ。途中でその話に飽きて帰った私。


 ~回想終わり~


「あの時はアイドルって大変なんだなって思ったけど」


 いや、その話は別にいいか。

 あれ?、っていうか何の話してたんだっけ?


「ああ、そうそう。スクルドが言ってたことね」


 後にアパートに引っ越してきたヤリーロのやつに半ば強制的に見せられたSORSの解散ライブの映像。

 ライブの最後のあたりでメンバーがそれぞれ解散への思いとかこれまでのファンへの感謝の気持ちとか言ってたんだけど。ラケシスなんて号泣してたし。

 その時にメンバー最年少だったスクルドがさっきの言葉を言っていた、と思う。


 グループ解散後、ウルドは占い師に転職した。

 今でもテレビで神界で一番当たると評判の占い師としてたまに話を聞くことがある。

 私の友達も1回占ってもらったことがあるって言ってたけどマジで当たったらしい。

 何を占ってもらったのかについては教えてくれなかったけど。


 ヴェルザンディは一流大学を卒業して一流企業に就職した。

 なんでも今では社長秘書にまでなったらしい。本人がそれで満足しているのかは知らないけど。


 そしてスクルドについてだが、私は知らない。

 解散当時はまだ中学生だったし、以降の情報や消息がぱったりと途絶えていると。

 でも芸能界からはもう引退したんだろう。SORSが所属していた芸能事務所の名簿からも名前が消えてたってヤリーロが言ってたし。

 ヤリーロは、今でこそMOIRAIのラケシス命だけどSORS時代だとスクルドが一番のお気に入りだったらしいからね。


「うーん……おっといけね。まだここダンジョンの中だったわ」


 気がつけば私はトパーズリザードを倒したダンジョンの袋小路の中で考え事をしていたみたいだ。

 今ここでモンスターに襲われたらまずいな。


「って思ったそばからきたよ。タイミング良すぎ!、いや違うか、タイミング悪すぎ!」


 私はこちらに気づいて向かってくるモンスターの群れに飛び込んで行った。


 さて、それから探索を進めてダンジョンのマッピング率は99%になった。

 つまり残るはこのダンジョンのボス部屋、そこにいるダンジョンボスを倒すだけということだ。


「さっと行ってさくっと倒そう。でも嫌だな、絶対に気持ち悪いよここのボス」


 洞窟に来る前、グランガンの街の冒険者ギルドでギルド掲示板に貼られていた依頼書にあったこのダンジョンのボスと思しきモンスターの名前、それは……


「やっぱりだぁ~!!」


 モンスター名、ジャイアントワーム。

 ワームは、芋虫という意味もあるけどもう1つ別の虫の名前を表す時にも使われる。


 ボス部屋に入った瞬間に入り口の通路が崩落して塞がれた。

 そしてボス部屋の中にいたそのモンスターはそう、とてもとても巨大なミミズだった。

 ジャイアントワーム、すなわち巨大ミミズ。気持ち悪さだけでいうなら洋館クエストのボスゴキブリ以上だったと思う。


<モンスター辞典>

〇バット

鳥族。コウモリのモンスターで口から超音波を放つ。全能力値が低めである。

超音波攻撃を受けると混乱(微小)の状態異常になるがそこまで気にする必要はない。

弱点は火属性、雷属性、光属性とかなり弱点が多い。闇属性に耐性あり。

ドロップ:コウモリの羽(本編未記載)

↑もちろん全部拾ったよ。(アストレア)


〇モール

獣族。モグラのモンスター。地面の下を移動して攻撃する時には穴を掘って地表に出てくる。

攻撃方法は石ころを投げつけるだけだが、実はこの石ころ、プレイヤーは素手でつかみ取って投げ返すことが可能でありそれに気づけるともう楽勝。石ころはあたると本当に石を投げつけられたのと同じ痛みを体験できるよ。つまりめっちゃ痛い。

ドロップ:石ころ


〇ブルーリザード

獣族。ブルーフロッグと同様にブルーというよりは体色はむしろ水色に近い。

舌を伸ばしてプレイヤーを攻撃してくる以外特にこれといった特徴はないが、地面だけでなく壁や天井にも移動するため意外と倒すのは難しかったりする。

ドロップ:トカゲのしっぽ


〇スモールロック

物質族。プレイヤーと一定以上の距離まで近づくと自爆して勝手に消滅するモンスター。

この自爆の威力がシャレにならないので遠距離から攻撃する方法がないプレイヤーはまず近づかないこと。見た目はただの歩く岩。

ちなみに、玲愛の読み通りこのモンスターのデザインを担当したのもゴブリン、コボルトのデザインを担当したのと同じキャラクターデザイナー。彼が玲愛に天罰を落とされる日は近そうだ。

ドロップ:なし(本編未記載)

↑自爆する前に倒しても何も落とさなかったよ。(アストレア)


※トパーズリザード、ジャイアントワームについては次回の後書きにて紹介。


次回はジャイアントワーム戦です。



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