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マイマイカブリの詩(うた)

作者: 尾妻 和宥
掲載日:2017/08/22

 黒くて、光の加減によってはスミレ色に見える硬い甲羅。


 マイマイカブリである僕は、今日もまた暗い森を彷徨さまよう。


 枯葉がふりつもる静謐せいひつの箱庭で、ひたすら獲物のカタツムリをもとめて這いずりまわる。


 僕はもとめるのだ、やわい肌をした無垢むくのカタツムリを。


 椎の木の幹に、それはうずくまっていた。まるで待ち侘びていたかのように僕の到来を。


 だから勇んで挑みかかった。


 すかさずその硬い殻にもぐりこみ、やわらかい肉に食らいつき、肉汁をすすり出そうとした。


 殻のなかで、食われまいと抵抗するマイマイの面貌と対面した。


 それは彼女だった。17のころの化粧っ気のない素顔が空洞の奥で笑っていた。


 僕はそっと彼女の首根っこに噛みつき、とっておきの消化液を注入した。


 たちまち、まどろむ彼女の寝顔は美しい。


 僕はその柔肌を噛む、噛む、噛む。ひたすら噛む。


 君よ、僕に吸収されるがよい。そして栄養素となり、僕の体内をカケメグレ。


 マイマイの彼女よ、君には腕がない。相手を抱きしめる腕がない。


 しかし君の愛で抱きしめて欲しい。どうか君の愛で抱き殺して欲しい。


 僕はマイマイカブリ。君の愛をもとめて暗い森を這いずり回る。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マイマイカブリ調べたら、けっこう衝撃的な絵でした。 生物の不気味さとエロティシズムが融合したような作品。 マイマイカブリとマイマイ〜はもしかしたら比喩かもしれないけど、食う側、食われる側で…
[一言] う~ん読んでるほうが恥ずかしい(・ω・) 共感性羞恥心ってやつですね。 いっそむかしの黒歴史も 公開したら(・ω・) 虫けらは地面を這いずり回っていますが、 人間よりよっぽど地球にだいじ…
[良い点] タイトルにひかれてやってきました。お初にお邪魔いたします。箱庭の湿った藪にうごめく黒いやつ。マイマイカブリ。彼らは憎たらしい外見をしておりますが、実は救世主さまでありますな。庭を手入れする…
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