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この世界は神々の祝福によって成り立っている。人々は古来より神々に毎日祈りを捧げ地上は天上の神々からの祝福により、豊かに平和に包まれていた。
しかし今より約120年前に悲劇は起こった。
天上におわす神々の内、一柱の神が厄災の神と成り果ててあろうことか神が直接降りれぬはずの地上に降りてきた。
堕ちた神は天上の神々が直接の関与を出来ぬことを良いことに地上を一方的に荒らし破壊し、人間の血と火により真っ赤に染め上げた。人が死に、死に、人々は絶望に浸った。
このまま地上は滅びてしまうのだと身を寄せ合った人々は感じていた。
そのとき一人の救いの乙女が現れた。神をその身に宿した乙女であった。直接の関与は出来ないが人間を哀れに思った天上の神々が乙女に特別な祝福を与え、力を貸してくださったのだ。
祝福されし乙女は一人、災厄をばらまく神に立ち向かい聖なる力をもって神を封じることに成功した。
だが、堕ちた神はされど神であった。
封じられたはずの天より堕ちし神はなおもその力を振り絞り、自らを封じる人間の乙女を呪ってしまった。
呪われた乙女は若き命を散らす運命にあり、その身のみならずその子孫に至るまで代々呪いは受け継がれることとなった。
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……と、世間的には神話につけ加えられた伝説で上記のように思われているが、実はいくつか異なる点がある。
その中でもここで述べておくべき重要な点は一つ。呪いが代々続いているというより、外見も中身も同じで呪われた本人が生まれ変わって――生まれ直しているのだということ。
さて、次の死と生まであと二十といかほどか。「神々に祝福された乙女」として厄災の神を封じ、今度は「呪われた乙女」となったジゼルは目覚め、六度目の生をはじめ……数え間違えていなければもう十八年目を迎えていた。




