prologue.4
「さぁどうするか。ヤツが幻獣神であったとしても、このまま野放しにすることはできん」
「先生、実は私、このピンチをなんとかできる秘策を思いついたんです!!」
「本当かエイダ!?」
「はい、今から神技アルディオンを発動します」
「な、ナニ!? アルディオンだと」
「はい、アルディオンでアイツの呪縛からみんなの心を解放してあげたいと思います。きっと心を失ったらアイツは実体を保てなくなって消滅すると思うし」
「自分が何を言っているのか分かってるのか? アルディオンは神技、人がそれを発動すれば……」
「きっと、私は消滅するでしょうね~」
「それを分かっていてアルディオンの発動を!?」
「残念ですが、今の私にはこれくらいしか方法が思いつかないんです。それに、アイツが幻獣神とわかった以上、ヴァルキュリアスの責務を果たさないといけませんし」
「キミは、自分のカンを信じて命をかけると……承服しかねる」
「先生、これは“カン”じゃないです。私のヴァルキュリアスセンスが私にそう語りかけてるんです」
“しかし、それもこれで最後だ。キミを死の呪縛から解放する”
「待て、待つんだエイダ。まだ私も使用してないSS級魔法が一つある。これには属性がないからヤツにも」
「先生! SS級魔法であってもアイツが幻獣神なら効果を期待することはできないですよ。先生がそんな分析もできないなんて焦ってるんですねぇ珍しい」
「茶化すなエイダ……まだ策は」
「もう時間がありません。アイツはどんどん地上に降りてきています」
「キミの娘は」
「大丈夫!! あの娘なら大丈夫だから」
「エイダ……」
「そんな顔をして。先生には黒幕を探し出して成敗するっていうお仕事が残ってるんですよ!」
「ゥ……」
「先生がしっかりしないと犠牲になったみんなが報われないじゃないですか」
「ふっ、キミが私に説教するとはな……」
「では先生! 聖戦士ヴァルキュリアスエイダ・ハートがこの問題をこれよりクロージングします!!」
「アルディオン発動!」
“涙が溢れ落ちる音。人の心がまたキミを傷つけている”
「先生、ニシさんに連絡をとってマジックシールドの展開を。今の私にアルディオンをコントロールする能力なんてありませんから不測の事態に備えて下さい」
「打開策がこんな方法しかないのか……」
「もう先生、未練がましい男は嫌われますよ。早くマジックシールドの展開を!」
「グゥ〜、ク、クソ……わ、わかった! チィ……ち、中佐! ニシ中佐聞こえるか?」
「よし! 私の声が聞こえるな。今からあのクソ野郎にトドメをさす」
「そうだ、これでヤツは必ず消滅する。とにかく今すぐに部隊の正確な位置を把握したい。発光弾を空に放て」
「質問には後で答える。とにかく今は発光弾を放て!」
「先生早く!! もう意識が……」
「わかっている。ま、まだか」
「よし! 光が見えた」
「ニシ中佐、全員に地面に伏せるように指示を出せ。そうだ、その場で衝撃に備えろ」
「それと、何があっても今から起きる奇跡を皆の目に焼き付けて欲しい」
「先生!!!」
「よし! エイダやれ!!」