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眠りからの目覚め
かざした手すら見えない漆黒の闇の中で男は静かに目を開ける。
上も下も前も後ろも分からない世界で、男は自分が目覚めたことをはっきりと自覚していた。
「ここか……私がここにいるということは……」
「そうか。また彼女の心が傷ついてしまう」
「諦める!? 冗談ではない!!」
「泥水をすすってでも私が彼女を呪われた運命から解き放つ」
「テロメアがない……」
「もう次がないと?」
「やれるのか……」
「やってみせる。今の私にはこの偉大なチカラがある」
「どうする……」
「すべてのピースは揃った。あとは、私が完璧な道化を演じるだけでいい」
愛あるがゆえに人は人を愛しみ、愛あるがゆえに人は人を憎む。
人の真理がそうであるならば、私はそのすべてを受け入れ、あらがうことをやめよう。
しかし、人の真理がそうであるならば、私は私の意志に従い、悪魔に魂を捧げ、人であることをやめる。
ただそれだけだ……
揺ぐことのない強い意志が男を突き動かす。