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おまけ①【門番の話】




 「新しい門番?」

 「はい、何人か候補者がいるようですので、全員分持ってきました」

 「小魔が勝手に決めていいぞ」

 「閻魔様に決めさせるようにと、言われましたので」

 天界で仕事に追われていた閻魔。

 天国と地獄の門番が、なぜか急に辞めたいと言いだし、急遽、新たな門番を見つけなければいけなくなった。

 え?門番なんて誰にでも務まるって?

 いやいや、そんなことはない。

 誰に対しても平等に接し、さらには、知り合いが来ても顔見知りがきても、恋人が来たとしても、心を殺して門を開かねばならないのだ。

 天国なら良いと思うかもしれないが、決してそんなことはない。

 以前の閻魔は、巻物を碌に読まず、女性の話だけを聞いて天国に逝かせたことがあった。

 しかし、その女は性悪女で、結婚詐欺を何度も繰り返していた女だった。

 忙しいのは分かるが、見逃せない不祥事だったのだ。

 「全員と会う?」

 「ああ、そんなに長く話しはしねぇよ。ちょっと顔と話し方と性格見るだけだ」

 「わかりました。すぐ用意します」

 何百人と集まるわけではないが、十人ほどいただろうか。

 勿論、天国希望者の方が多く、地獄の門番が良いなんて、二人しかいなかった。

 「じゃ次、えっと、雲幻」

 「はーい!」

 元気に腕をあげて登場した男は、お世辞にも、地獄向きとは思えなかった。

 ニコニコとしている雲幻は、閻魔の顔を見るやいなや、指をさした。

 「あー!閻魔様ってやつだ!初めてみたけど、もっと怖いかと思ってた!」

 「・・・お前、なんで地獄を選んだ?」

 閻魔の質問に、雲幻はこう答えた。

 「なんでって、なんとなく!地獄の方が、面白そうかな―って」

 「お前、変わってるって言われるだろ」

 「いやー、そんな褒められると照れちゃう」

 「褒めちゃいねえよ」

 雲幻を試しに地獄に連れて行き、雲幻の知り合いと顔を合わせさせた。

 だが、雲幻の表情はぴくりとも動かず、微笑んだままだった。

 続いて、浮幻という男がやってきた。

 「なんで地獄?いや、地獄顔だけど」

 「・・・・・・それは必ずしも答えなければいけないことですか?」

 「え?」

 「正直、俺は興味ありません。他人が死のうが生きようが、どうでもいいんです。はっきりいって、天国に逝ける連中の方が少ないと思いますし。世の中マジでクソみたいな奴の溜まり場ですからね。もっと言えば、クソみたいな奴ほど長生きするもんなんですよ。それってどうなんですかね?」

 「ええと、ストップ」

 浮幻も地獄に連れて行ってみるが、こちらも何の変化も見えなかった。

 全員をひとまず帰し、閻魔は悩んでいた。

 「・・・・・・」

 足を組み、雲幻と浮幻の二人の資料を眺めていた。




 翌日、もう一度二人を呼んだ。

 「まあ、俺も門番が誰だろうが、気にしないっていうか、どうでもいいっていうか。けどま、俺は俺の言う事に全部OKを出す奴は好きじゃねぇんだ。そこで、雲幻、お前を地獄の門番にする。浮幻、お前は天国だ」

 「嫌です」

 「やったー!」

 「どうしてこいつが地獄なんですか。自分でいうのもなんですが、俺は地獄に向いてると思います」

 「やったーやったー!俺地獄―!」

 「・・・・・・」

 掌を額にあて、項垂れてしまった閻魔だが、気を取り直して二人を見る。

 「まあ、やってみろ。もしも嫌なら、門番を辞めてもらって構わない」

 「・・・不服ですが」

 「だろうな。そんな顔してる」

 「俺は準備出来てるー!こんな幸せなことが起こるなんてー!」

 「ちっ」

 「なんなのこいつら」




 「てなこともあったなー」

 「そうですね」

 すっかり板についた二人の姿に、閻魔は思い出に耽っていた。

 デスクの引き出しに隠しておいたお菓子を食べながら、閻魔は巻物を読む。

 「意外としっくりくるんだよな、あれが」

 そう言って笑う閻魔は、イタズラをしている子供のようだった。



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