ファントムシンク
「……い、妹の……」
「妹って、真咲ちゃんの誕生日かよ! それを早く言え俺がバカみたいじゃねーか!」
こいつには年が1つ下の妹がいる。名は神崎真咲。俺の中学の頃の部活の後輩でもある。
とても良い娘で、優しくて、美乃里が妹なんじゃないかと思うくらいしっかりしてる。
「仕方ない光太が先走って自滅しただけ、KIA」
「う……。それそうと、なんで真咲ちゃんの誕生日に俺呼ぶんだよ?」
「光太には手伝ってもらう!」
そう言って、真咲はもう一度部屋を出ていったかと思えば、またすぐに戻ってきた。
しかし、戻ってきた美乃里は大きなバースデーケーキを持っており両手で慎重にロウテーブルに置く。
ケーキの上には『親愛なる我が下僕へ』と書いたネームプレートが乗っている。おそらく真咲ちゃんのことだろう。なに書いてんだこいつ……。
「これから我が下僕、真咲の謝肉祭を執り行うために光太は動いてもらう」
「謝肉祭って……まあ良いや、真咲ちゃんの誕生日祝うんだろ? それなら構わんよ。それにしても妹のために誕生日パーティーやるってお前、真咲ちゃんのこと下僕とか言って実はすんごい好きなんだろ?」
「そ、そんなわけあるかー!」
顔を真っ赤にして慌てて否定し、すぐ近くにあった気持ち悪い形のぬいぐるみで俺の頭をペシペシ叩く。
照れを隠すために必死である。わかりやすい奴だ。
それでも、妹のことを少しは大事にしてるんだなと思った。