初戀
「ずっといいなって、思ってました。付き合ってください!」
同級生の男の子と一緒に、私の帰り道で待ち伏せしていた見知らぬ男の人。
うちの高校の制服だけど、上級生かな?
あんまり突然のことでビックリして、言葉も出ない私に、同級生が言う。
「先輩は、お前のこと、ずっといいな〜って見てたんやで。知らんかったやろ。」
「うん。」
「まずは友達からでいいんで…。よろしくお願いします。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
男勝りな感じの私に、こんな風に告白してくる人がいるなんて思わなくて。
好きな人がいるわけでもなかったし、付き合ってみてもいいかなって感じだった。
それまで、好きな人がいて告白しても振られてばっかりだったし。
仲のいい男友達は、友達でしかなかった。
次の日、昨日先輩といた同級生の男の子が聞いてきた。
「OKでいいんだろ?」
「うん。いつから私のこと、いいって思ってくれてたのかわからないけど。」
「1か月前くらいからずっと。」
「そうなの!?」
全然気づかなかった。
部活も別だったし。
それから、私の部活が休みの日に、先輩の部活が終わるのを待って一緒に帰る付き合いが始まった。
色んな話をした。他愛もない話。
それだけで楽しかった。
先輩の誕生日にはケーキを焼いて渡したり。
私の誕生日には、初めてデートらしいデートをした。
映画を見に行って、お茶飲んで。
初めて手を繋いだ。
小さなキーホルダーをプレゼントしてくれた。
私は、それで十分幸せだったけど、先輩はそれじゃ駄目だと思ったのかな。
ある日突然、同級生の男の子が、先輩から、と手紙を持ってきた。
黒い封筒。
黒い便せんに書かれた白い文字。
さよならの言葉達。
ままごとみたいな付き合いの終わりを告げていた。
ありがとう、と返事を書いて、それで終わり。
高校で会った時も、普通に笑顔で振舞った。
大好きだったよ、先輩。
いつの間にか私の方が好きになってたんだ。
今も懐かしく思い出す。
綿菓子のような恋の思い出。
キスすらすることもないまま通り過ぎた恋。
今も元気にしていますか?先輩。