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週末は猫と共に
彼女が出て行った。
10年一緒にいた家から、置き手紙だけをおいて、何も持たずに。
あれだけ可愛がっていた猫も置いていった。
一人で住むには少し広い2DKの部屋で、なるほど、僕は納得していた。
よくもここまで気付かなかったものだ。
昨日の晩飯も、いつもと変わらぬ様子で食べていたと思っていた。
あれほど彼女が嫌がったから、僕のお気に入りから抹殺した納豆が食卓に並んでいたというのに。
僕はバラエティ番組に夢中で、彼女が用意した最後の晩餐に気付かなかった。
置き手紙には
「今月に入って、髪型を5回変えました。」
とだけ書いてあった。
ちなみに一回は気づいた。僕が昔、好きだと言った髪型だったから。
そういやこの猫、最近彼女よりも俺にべったりになっていた。
もしかして、彼女に捨てられること知ってたのかも。
自分も、このマヌケな男も。
「お前、知ってたんだな。なんで教えてくれなかったんだよ。意地悪。」
訝しげな表情で尋ねると、猫は暫くこちらを覗き込んで、にゃぁと泣いた。