表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/60

40、KIA

 近づいた町屋が若葉の体に触れ覗き込んだ後で、ゆっくりと立ち上がった。

「小隊気をつけぇ!捧げぇ、銃!」

 鈴音をただ一人の例外として、その場にいた全ての兵士が一人の少女の遺体に向け最敬礼を送り、或いは構えた銃を立てて捧げた。

 鈴音はへたり込んだまま、それを見つめる事しかできなかった。

「……スズ」

 腕を包帯で巻いた志摩が近づいてきて、そっと彼女の肩を抱いた。

「――消えちゃった」

「え?」

 鈴音は力なく立ち上がると、友人の下にフラフラと歩み寄る。

 手を胸の前で組んだ友人は、嘘みたいに穏やかな死に顔で、眠るかのように横たわっていた。

 その頬に鈴音は触れた。まだ、体温は生者のそれと変わらない。

「若葉の魂、消えちゃいました。もう、この世にはいません」

 まるで自分が消え入りそうな声で鈴音はポツリと告げる。

「じゃあ、若葉の転生は」

 志摩の声に鈴音は首を振る。涙が溢れてきて、とまらなかった。鈴音は戦友の体に縋りつき、啜り泣いた。

 かける言葉が見つからず佇む志摩の背後に、乃木が立った。

「済まないが、時間が無い。水野、君の洗脳が解けた敵の搭乗員も抵抗が激しい。至急、彼を制圧して搭乗してくれ」

 感情の籠もらない乃木の声に、存外素直に鈴音は従った。乃木とは目を合わせず、チヌークに向けて力なく歩き出す。

「鈴音」

 追いかけようとした志摩が、批難するように乃木を睨みかけ、驚いたように彼を見やる。

 乃木は彼女に告げる。

「――――伍長、速やかに搭乗しろ」

 その顔を暫く見つめた後で、志摩は目を伏せると、「搭乗します」と敬礼を送ってきた。


 乃木たちを乗せたチヌークが基地を飛び立ったのはその10分後の事だった。

 先の狙撃騒ぎで束の間、鈴音の統制の解けてしまったパイロットたちが抵抗した為に、やむなく副操縦士を射ち殺してしまった所為で、離陸にもたついてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ