40、KIA
近づいた町屋が若葉の体に触れ覗き込んだ後で、ゆっくりと立ち上がった。
「小隊気をつけぇ!捧げぇ、銃!」
鈴音をただ一人の例外として、その場にいた全ての兵士が一人の少女の遺体に向け最敬礼を送り、或いは構えた銃を立てて捧げた。
鈴音はへたり込んだまま、それを見つめる事しかできなかった。
「……スズ」
腕を包帯で巻いた志摩が近づいてきて、そっと彼女の肩を抱いた。
「――消えちゃった」
「え?」
鈴音は力なく立ち上がると、友人の下にフラフラと歩み寄る。
手を胸の前で組んだ友人は、嘘みたいに穏やかな死に顔で、眠るかのように横たわっていた。
その頬に鈴音は触れた。まだ、体温は生者のそれと変わらない。
「若葉の魂、消えちゃいました。もう、この世にはいません」
まるで自分が消え入りそうな声で鈴音はポツリと告げる。
「じゃあ、若葉の転生は」
志摩の声に鈴音は首を振る。涙が溢れてきて、とまらなかった。鈴音は戦友の体に縋りつき、啜り泣いた。
かける言葉が見つからず佇む志摩の背後に、乃木が立った。
「済まないが、時間が無い。水野、君の洗脳が解けた敵の搭乗員も抵抗が激しい。至急、彼を制圧して搭乗してくれ」
感情の籠もらない乃木の声に、存外素直に鈴音は従った。乃木とは目を合わせず、チヌークに向けて力なく歩き出す。
「鈴音」
追いかけようとした志摩が、批難するように乃木を睨みかけ、驚いたように彼を見やる。
乃木は彼女に告げる。
「――――伍長、速やかに搭乗しろ」
その顔を暫く見つめた後で、志摩は目を伏せると、「搭乗します」と敬礼を送ってきた。
乃木たちを乗せたチヌークが基地を飛び立ったのはその10分後の事だった。
先の狙撃騒ぎで束の間、鈴音の統制の解けてしまったパイロットたちが抵抗した為に、やむなく副操縦士を射ち殺してしまった所為で、離陸にもたついてしまった。




