表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下無双とステータス閲覧  作者: AZUL
反逆編
7/7

動く影

「なんで、、ああ、、うわあああああおおおおおあああああああああああああああああああああああ」



一人残った女は、両手で頭を抱え叫ぶ。

それは底知れない絶望を絵に書いたようだった。

青い炎に閉ざされた男の顔は何も浮かばず、視線もどこを向いているのかわからない。只々、無だった。


「行くぜ」


その一言で、世界が変わった。男の足元から、黒の中の黒と言うべき闇が放出される。それは、炎が広がるようにジリジリと女に近ずいて行った。それは、ライゼンの影であった。その影は女の仲間を包んでいき、

やがて消えた。女がそうなる未来も遠くはなかった。


「"マインドシャドウ" 俺は俺の影を操り、質を変えられる」


「なっ、、、、!!!」


女は立ち上がり、本殿の出口に向かった。

目の前に死が見える。だから、彼女は懸命に足を動かした。生きたいと願った。



くそう!!私はこんなところで死んでられないんだ。

もっと強くなり、親を絶望させなければ、、、


私の弟の命はどこに行くんだ、、!!


ここで殺された仲間の命だって



女は無惨に千切られ、舞い散った。

赤い花弁を撒きながら。


〜〜〜〜〜


「ねえねえ、チョットちょうだいよー、リーゼ〜」


「えーっと、、1、2、3、、、、あと9個しかないから、あげられないなあ」


なはっと言いながら、ルチアは崩れ落ちる。

冗談に決まってるでしょ〜と言いながら笑うリーゼ。

ここは、道はレンガ造りで周りには赤、青、黄色の

花が咲き乱れる。修練院の中庭である。

二人は芝生に転がり、買ったばかりのアップルパイを食べる。


「あっつっつ!こりゃ出来立て過ぎるでしょ!!

あちゃっ!!」


「う〜 美味しい〜♪」


ルチアにとっては、幼馴染みの親友とのこの時間が

唯一と言っても過言ではない程、幸せの時間だった。

ささやかな風、花の香り、ホクホクのアップルパイ。

いつもと違うことは、二人の師匠、ライゼンがいないことだった。


「リライ先輩が言ってたけど、ゼン先輩がいないのは本当なのかな??」


「、、、、わからない」


ライゼン先輩が無言でどこかに行くことは、一度もなかった。どんな最果ての山に行こうが、最果ての領地に行こうがなんらかのことは伝えてから行くのだ。

それなのに、弟子の私達はともかく、妹のリライ先輩に何も言わないというのは奇妙なことであった。

ルチアはリライの話を聞いたときから、胸にチクチクと原因不明の痛みを感じていた。


「どうしたんだろう、今日も特訓の日なのに」


「もしかしたら、前の先輩のことを捕まえろって言う

特訓かもよ??」


「ははっ!リーゼありそう! この前なんて、ゼン先輩の頭をお尻で踏み潰してたもんね。

すごい大胆な誘惑だなって思った!」


彼女らは もう四年間、という歳月をともに死線をくぐり抜け、共に成長してきた。

それは最高の宝であり、この先ずっと続くと思っている。


「ルチアだって!黒魔林の中で、先輩に抱きついてたじゃんか!!」


「っ! 見てたの!? あの時は、ちゃんと能力を使って周りを確認したはず、、」


「ふふふ、ルチアは知らないでしょ!私が能力を開眼したということを!!」


と、自慢気にさくっとアップルパイを食べたリーゼ。

しかし、その時、後ろの茂みから 毛並みの青いうさぎが、残りのアップルパイが入った袋を口に挟んで持っていった。盗み取ったのだ。


「なああああ!!???あの 青ウサギ!!!」


至福なこの時間を崩されたリーゼは怒りに満ち溢れ、その深い紫色の髪の毛が逆立ちそうだった。

ウサギは速く、綺麗なレンガの道を抜けて中央広場の道へかけていった。


「私とルチアと、今は亡きライゼン先輩の絆の証、

アップルパイをおおおおお!!」


リーゼはミニスカートと髪をなびかせながら、レンガの道を走りだす。

それと同時にルチアも走りる。


「ルチア!!」


「分かってる!!挟み撃ちでしょっ?」


「さっすが!」


リーゼはそのままウサギを。ルチアは広場から中庭の道にいき、挟み撃ちを狙う。

目的は、こんがりと焼き目のついたアップルである。


〜〜〜〜〜



「はあ はあ 何あいつ?はやっ!! あれはなんの錬成魔法なの!?」


広場への道をかける、リーゼと一羽の青いウサギ。

この道は青薔薇のトンネルが広場まで繋がる一本道である。つまり、リーゼは何秒かはわからないが、必ずウサギに追いつけるということであった。しかも、ルチアが先回りしている。ここまで完璧な作戦は、ライゼンと共闘して倒した、外の大地のモンスター以来であろう。


「だあああああああああああ!!待てえええ!」


しかし、


「"アームズ" 」


リーゼは焦れったいのは、腐ったバナナを水にっつこみ、それを食べさせられるほど、嫌いである。

彼女は、いつでも全力が好きであった。


キュウン


その瞬間、レンガの道に砂が舞い散り、その先には

自身に満ち溢れた笑顔のリーゼが立っていた。

その手には、もがき苦しむウサギが一羽。


「フッフーンッ♪ わかったかな、うさちゃん?

私達の宝に手を出すと、、てっ、、!!?」


そう、そのウサギには何も加えてはなかった。確かに

さっきまでは、体に似合わず大きな袋を揺さぶりながら逃げていたのだが。

しかし、リーゼが驚いたことはそのことではとどまらなかった。この青薔薇のトンネルが動きだしたのだ。

花が一つ一つ命を持つように、飛び跳ねる。

それらは、トッと、薔薇の茎から落ちてきた。いや、

着地した。 ここは、青薔薇のトンネルである。

しかし、動いたのは薔薇ではない。のそのそ、動き回る。


それらは全て、青きウサギだった。


「ひっ!!!」


しかし、むっと口を噛み締めて、袋を持っているウサギを探す。すると、一匹だけ前方の階段を下って行くところが見えた。もちろん、袋を加えている。


「逃がすか、ウサちゃん・・・!!」


リーゼも、急ぎ急ぎで階段を下りる。しかし、またもや、驚いた。一本道のこの道は、分かれ道などはない。ずっと、赤いレンガの道であった。

しかし、ウサギは飛び跳ねながらレンガの壁に入っていった。入ったところは、水のように波紋が広がる。

リーゼはただ、その壁の前で立ち尽くした。後ろでは、多くのウサギが飛び跳ねている。

今、あのウサギが入ったところは、守護十神と天下無双がいる、窓も入り口もない、中央都の中心に存在する巨塔 "カラドボルグ"

この塔の中で、天下無双らはこの領地の監視と

法律を破ったものへの制裁を加えている。

絶対不可侵の建造物。



もともとは、アップルパイを取り返す。それだけのことだった。


「・・・・・・・マジで・・?」



〜〜〜〜〜〜〜


ルチアは広場への道を走りつつ、孤独を感じていた。いつもなら、先輩と冗談を交えながら走っているだろう。 本当に先輩はいなくなったのだろうか?

小さな不安が胸に走る。


「違う、違う。今は作戦を遂行しないと!」


レンガの道が終わり、広場が見えてくる。

この広場はこの世界を領地ごとに分けた時から存在しているらしく、真ん中にはこの中央都の建造者であり、初代天下無双の像が立ってある。

その周りを花が囲んでいる。


「確か、あの道が中庭への・・・・・・」


ルチアは心から思った。嫌な奴がきたな と。

下級修練生のくせしてその大きな態度は、そういう境遇で育ったということが雰囲気だけでわかる。

フェルルとバルキという人類の汚点だ。


「あれれ、あなたは今朝、第6位の後ろにいた・・・・・」


「フェルル、この方は第4位、ルチア・キルリアーナですぞ。第6位と同じ和人のライゼンを師に持ってるという」


「ほう」


ルチアにとって、この二人は"無理"であった。もう、言葉で表現ができない程のものが胸から溢れている。

もう、ささっと行ってしまおう。


「何か御用ですか?、順列外の同世代の人?」


修練の順列。それは下級と上級の二つの順列があり、

強さを表すと共に、剣術闘技への出場権も意味する。

順列は月に一回ある、実戦試験で決まる。

ルチアは何百人という下級修練生の中でかなりのトップランカーであった。

力が絶対のこの世界で、何故この二人は偉そうなのかというと貴族の一員で、ただ、世間知らずなだけである。


「いや、朝は本当に無礼な真似をしてしまってね。

お詫びということでね」


「そういえば、フェルル。聞きましたか?

この方の師ライゼンが、絶対法を破って他領地に逃げ出したとききましたぞ」


「何?流石というべきだな。この中央都はゴキブリ一匹も出すことも、入れることもないと聞く。

ナハハハハ! ゴキブリ以下の思考か!」


「きっと、そうですなあ!! きっと、廃棄物に混ざりながら外に出たのでしょうな!なんと、胸糞悪い」


「こら、汚い言葉を使うな」


「「ナハハハハ!!!」」







汚い?


何がだ?




先輩は教えてくれた。



人は汚れることもできるし、輝くこともできると。




でも、お前達を見てて思う。








汚いだけの!!

救いようのない汚物がいるということも!!


正しい人間と邪まな人間がいて、その中で私は生きているんだと!!



ゴウッッとルチアを中心に風が起こる。

像が軽く揺れ、花が舞い踊る。

「・・・・・・」

ただ、ルチアは怒った。


「ぬっ、、、なああああ!!???」


貴族二人は尻餅をつき、口を開けている。なんて非力なんだろう。こんな奴が、、と思うと、気分が悪くなる。


「"アームズ"」


そう、なくなるべきだ。不正なものは。私が破壊しないと。 あのときだって・・・・。


右手をスッとあげる ルチア。その動作は滑らかで、人間に制裁を与える、天使のようだった。

ゴウウっ!!

右手を二人に振り下ろすルチア。と同時に巻き起こる爆風。周りのものを巻き上げ、拡散する。


「ダメですよ。修練院の中では、人に向けて魔法を使ってはいけませんよ?」


「!!?」


一人の男がルチアの後ろに立っていた。背は180はあるだろう。白をベースとした鎧には赤い線が入っている。髪は金髪で、前髪以外は後ろに流している。

顔はいうまでもなく、いけている。


「なっなんで、あなたが!!」



そこに立っていた男の名は


スベラカ・キルアート


この中央都の守護十神の一人だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ