カワラナイモノ
「なにも変わってないようだな。ルキナもいつも通りのご様子で、」
「そちらこそ、こんな姿になったっからって油断していると倒しちゃいますよ?」
「それは楽しみだ」
いつしか時間は経っていて、影も伸び始めた。
明かりのない本殿で、二人と一振りは語る。
「どうしたんだ? お前は中央都内でのほぼ戦力だろう。 法律はどうしたんだ?」
「法律? そんなのあったけ? 少なくとも、俺の目にはとまらなかったぜ。」
「はは〜変わらないな、お前も」
絆奏はゆっくりと歩みだす。 二人は幼なじみであったというべきか、小さい頃ではお姉ちゃん、弟という感じであった。というより、お互いにそう呼んでいるのだが。
「姉ちゃんはどうなんだ。 領地を守れてんのか?
油断してると奪われるぞ。特に俺な?」
「ははっお前が領地を持てるのは10年は早い。領地を持てるということは、七星帝ってことだ」
「持つんじゃないよ。姉ちゃんから奪うんだよ。
略奪。奪取。この言葉が当てはまるものだ」
「なるほど、なるなる。 おまえの自信はいまだに
湧き続けているようだな。 安心、安堵したよ」
「それで?我が弟??」
首だけこちらに向けて問う。
「なにが目的だ。もう、おまえに出し抜かれる姉ちゃんじゃない。昔からこういう時に、おまえは、影が揺らぐ。」
「何かを狙ってるときだ」
おれは流石、と言いながら頭を下げる。
姉ちゃんも俺を睨んでいるようだ。殺気が向けられている。本殿内は静寂な空気に包まれていた。
それを断ち切ったのは、ルキナだった。
「ライゼンさん!」
「…わかった!」
その時、切り替わるオーラ。その針のように突き刺さるような圧迫感は、絆奏に向けられた。それと同時に刀も鼻先へ向ける。
「下げろ。そうしないと、防衛として拘束するぞ」
「私はなにも命令をだしていない。皆、自己判断で自己責任だ」
「…いいんだな?」
ゆらりと、揺らいだ手はルキナが入っている刀にかける。ゆっくりと抜いていく。その刀身は乱れ刃で、
刀身は星々のように輝きを放つ。
ライゼンは床に深々と突き立てた。
「じゃあ、行動不能になってもらいますよ〜‼︎‼︎‼︎」
ルキナが声を上げた瞬間、真っ暗な道場に無数の悲鳴が響く。七星帝様は驚きの様子で周りを見渡した。
そこには先程の忍者の女と同じような服をした者が二十人程足をおさえて、転がり出てきたのだ。
足にはえんぴつ程の穴が開いていた。
「影刀 "線"」
ルキナが冷たい声で言った。
その者達は俺達を警戒していたらしいが、七星帝の言葉で後ろに下がった。
絆奏は驚きもせずにおれ達を見ていた。
昔はおれとルキナで連携して姉ちゃんにかかったものだ。結局は一度もしりもちさえ着けさせられなかったのだが、一つ一つ強くなるたびに、一緒に達成感を得た。
そんな思い出に浸りながら、おれは刀を抜き鞘に収めた。
「変わってないな。その技も、お前もルキナも」
姉ちゃんが髪をなびかせながらいう。
姉ちゃんにも感じるものがあったんだろう。
「変わっていますよ。私もライゼンさんも。」
ルキナが暖かい声で言った。
俺達はただ空を見ていたり、爪を噛んでいたりしていたわけではない。いつまでも立ち尽くしているお地蔵さんのわけではないのだ。
そうだ。おれたちは変わっている。成長している。
目的に向かい、俺達だけの道を進んでいるのだ。
鍛錬して、いつかはその目的に・・・
「例えば、ワ タ シ とかですね!!
つるぺた、ペタつると言われ、馬鹿にされた日々は遥か彼方です!! この豊満な胸!!! ライゼンさんを包み込めますねえ〜」
「いい事言うんだなと思った俺が馬鹿だったよ!!」
「なんだと、、、それは盛っているのではないのか?」
「いや、刀の中にいるから見えないよね!!?
俺は一ミリたりともその膨らみは見えねえよ!!!」
呆れた。呆れ果てたぞ。
くらい、道場のような本殿の中で俺は思わされた。
そうだった。
見た目が変わっても、気持ちが変わっても
俺達は俺達。
昔から戦いに励み、協力して強くなった。
ときには銀の滝から落ちたり、気味の悪いモンスターに飲み込まれたルキナを助けたり。
共に食事をし、共に倒れるように寝た。
この目の前にある物は真実。
それは変わらないのだ。
だからこそいうべき事がある。言わなければならない。
「なあ、姉ちゃん・・・・・?」
「・・・なんだ?」
「俺さ、この世界に抗うよ」
「・・・」
「俺、会いたいんだよ。ルキナに。
すぐ、近くにいるよ。 俺の事を思って、ルキナも
色々ちょっかいだしてくる。
それだけで・・・すっげえ 嬉しい。
すごく楽しい。
だからこそ、浮いてきちゃうんだよな。
コイツはいたくもない、刀の中に封じ込まれて
一緒にいたいかどうかも わからねえ 俺といて。
わからねえ 戦いに巻き込んで
わからねえ 事だらけの世界にコイツはいて!
俺は救いたい そして、普通にコイツと一緒にいて!
普通に喋って・・・」
「・・・・・抗うことそれは、どう関係するんだ?」
「ルキナを救うには、この世界の頂天、天下無双
になるしかない。
唯一のてっぺんだ。
そこに辿り着くまで、俺は切り進む。」
変わらない物はある。しかし、今は変わるときだ。