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こんな夢を観た

こんな夢を観た「時間をグダグダにする装置を買う」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/08/14

 志茂田ともるの部屋で、「アンノウン」をぱらぱらとめくって読んでいる。彼が毎月買っている不思議系雑誌だ。

「この、能登半島で目撃されたっていう『イカタコ娘』って、イカなのかな、それともタコだと思う?」わたしは志茂田に声を掛けた。実際にこの目で見た、という人の証言を元にしたイラストが載っている。

 一見、どこにでもいそうな女子高生だが、腕の代わりにイカのような触手が10本、下半身からはタコそっくりの脚が8本生えている。

「そんなもの、アニメの世界にしかいませんよ、むぅにぃ君」志茂田はさらりと言い捨てた。

 合理主義な志茂田は、根拠のないことを何1つ信じていないのである。そのくせ、「ムー」だとか「不思議大陸アトランティア」などといった雑誌を読んでいる。


 雑誌の中ほどに、誌面いっぱいを使って広告が載せられていた。「UFOを呼び寄せる笛」だの、「霊感のない人でも幽霊が見えるメガネ」などといった、怪しげなアイテムばかり並んでいる。

 その中の「時間をグダグダにする装置」というものに、わたしは興味を惹かれた。

「ねえ、志茂田。『時間をグダグダにする装置』だって」

「ほう、どれどれ?」志茂田はページを覗き込む。「ふうむ、見たところ、ラジコンのプロポにそっくりですねぇ。スティックで時間を進めたり、遅らせたりするんでしょうか」

「3,500円なら、安いんじゃない? 店に行ってみようか」わたしは提案した。

「アキバですか。そうですね、久しぶりに、行ってみましょうか」


 志茂田とわたしは、秋葉原へとやって来た。

「ニュー・ザ・コンの隣でしたっけ。ああ、ここですよ、むぅにぃ君」志茂田が指差したのは、ビルとビルの間に挟まれた、小さな店舗だった。入り口付近にまで、商品がごちゃっと積み上げられている。

「あと2、3年売れ残ったら、ゴミ屋敷になってそう」わたしは言った。

「さあ、入りましょう」志茂田を先頭に、店の中へと入る。


 奥で商品にはたきを掛けていた主人が、手を止め話しかけてきた。

「いらっしゃい~。何かお探しでしょうか~」

 カッと見開いた三白眼、ぴんっと立った口髭、どこかで見たような顔だ。

「あの、雑誌の広告で見たんですけど、『時間をグダグダにする装置』っていうのが気になって……」わたしは聞いてみた。

「あ~、あれね。人気あるんですよ~。ほら、そちらに商品サンプルがありますから、どうぞ、いじってみてくださいな~」

 ワゴンの上に、他の商品と混ざって、例のプロポが無造作に置かれている。


「ああ、これこれ」わたしはさっそく手に取ってみた。

「真ん中にスイッチのような物がありますね」志茂田が赤いボタンを、ポチッと押す。

 ウィ~ン、と低い音が響き始めた。

「スティック、動かしてみようか?」わたしは、左右のスティックをぐりぐりと回す。

 志茂田がいきなり、ゆらゆらとクラゲ踊りを始めた。

「ウンジャラケ~、ウンジャラケ~。ケッケッケッ、アー、ユカイダナア~」

「えっ、なになにっ?!」わたしはギョッとして、スティックから指を離す。たちまち、志茂田はいつもの顔に戻った。 

「どうかしましたか、むぅにぃ君」どうやら、志茂田は今の出来事に気がついていないらしい。


 わたしはもう1度、スティックを操作した。さっきよりも、素早く、激しく。

「ホゲホゲ、ピャッピャッピャーッ。ユレテユレテユテレ、ゴーゴーッ! イエーイ、チェケラッ!」

 狭い店の中で、曲芸のような技が繰り出される。ブレイク・ダンスとヒゲダンスを合体させ、10倍速にしたような奇っ怪なパフォーマンスだった。

「あはっ、何これっ!」わたしは笑いが止まらなくなった。本人に自覚がないだけに、なおさらだ。

「いったい、どうしたというのですか」激しい運動をしたばかりで息を切らしながらも、不審顔でそう言う。

「思っていたのとはだいぶ違うんだけどさ」わたしは答えた。「でも、これが『時間をグダグダ』にするってことなら、1つ買ってもいいなあ」

「ほお、ちょっとわたしにもやらせてもらえませんか?」

「うん、いいよ。絶対、面白いから」わたしはプロポを渡す。


 店の主人も交えて、その後30分ばかりもの間、ひとしきり「時間をグダグダにする装置」で楽しんだ。

 店の前を通りかかった人たちは、絶えず聞こえてくる爆笑に、はて、なんだろうかと覗き込む。

 志茂田とわたしは、それぞれ1個ずつ購入して店を後にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 信じていないのに雑誌を買う志茂田さん、時間をぐだぐだ、確かに30分も大爆笑できればぐだぐだになりますよね。
2014/11/20 14:49 退会済み
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