課題と特技
お題を頂き、勢いだけで書いた軽いコメディーです。短編のつもりが、なかなか本題入れないので連載にしました…。色々勢い任せですが!よろしければお付き合い下さい!
「はて?今日はまた何を作ってるんです?」
くりくりとした大きな目を瞬かせながら、ちっこい頭が不思議そうに傾く。
動きに合わせて頬を掠める黒髪は艶やかで、成る程。ご近所の老若男女が将来が楽しみだと口々に言うのも頷ける。
残念ながら中身に関してはお先も真っ黒、としか思えないが。
「誰かさんからのストレスを和らげる憩いの場所」
「おや。そんな繊細さを持っていたとは驚きです」
「俺も神子サマの腹黒さには毎日びっくりです」
にこり、と、お互い良い笑顔で睨み合う事しばし。
「曇り、時々豪雨」
さらりと呟かれた一言に、俺は反射的に後ろを振り向いた。
「あぁぁぁ!!村250ごぉぉう!!」
目に映るのは、叩きつけるように容赦なく降り注ぐ豪雨を前に、憐れにも水没していく小さな村………の、模型。
昨日、寝ずに頑張って作った、湖畔近くに佇む、素朴ながらも美しい白壁の家々が並ぶ村である。誠に俺の癒しであった作品、第250号であった。
「…っざけんなよ、毎回毎回…!もうヤダ。マジ帰りたい!!」
「え。駄目ですよ。まだレンタル期間終わってないですし。僕の課題もまだ終わってないじゃないですか」
自らの成した悪辣な仕打ちに対し反省するそぶりもないまま、キョトンとした顔でそんな事を言いやがります神子サマ。
俺の腰の高さで傾けられている小さな頭を引っ付かんで、空高く投げ飛ばしても良いだろうか。むしろ俺がホームランよろしく吹っ飛ばされるイメージしかないが。
「誰のせいだと…。そもそも、課題ぐらい自分でやれ!!人間を巻き込むな!!」
「えー…自分から応募してきたくせに…」
ぶつぶつ言う言葉を無視して、俺は心の傷を癒すべく、先ほどまで行っていた作業を再開する。
手に握るのは、もはや体の一部と言ってもいい、ピンセットと瞬間接着剤。
これらを駆使して、形も色も様々な小さな部品を組合せ、町や村を作り上げていくーー。
要するに、ジオラマの作成である。
10歳の頃に始めた趣味も、20年も続けばそれなりの職人芸となり、特技となる。
いつか、この特技を活かして仕事ができたらいい。そう思ってはいた。いたのだが…。
「あ、250号もちゃんと復元して下さいね?"世界"作成の期限まであと一ヶ月しかないんですから」
神サマの宿題を手伝うなんて仕事、想定外すぎるわっ!!