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5.知らぬことは罪深きこと

「―――でさぁ。その部屋に飛び込んだらいきなり銃を突きつけられてさぁ。あと少し避けるのが遅かったら俺はここに居なかった訳よ」

 どんなにつらいことがあっても長い年月がそれを笑い話に変えてくれる。一種のトラウマと言うもの意外は…だが。

 リュウは数年前大富豪、メルテル一族の屋敷に忍び込んだ話をしていた。

 相手はミラエスタ=ストレイツェル。この国の王女にだ。

 もちろんリュウはそんなこと知るはずも無い。名前は偽名を教えたからである。

 そんなことも露知らずリュウは巧みな話術で王女の心を捕らえていた。

「リュウさんのお話、とても面白いです。もっと聞かせてください!」

「そ、そうか? そこまで聞き入るほど面白いとは思わないけど・・・」

 王女は、そんなことないですっ。と首を横に振る。少し躊躇(ためら)いながらもリュウが話の続きをしようとした、その時。

 誰かが梯子を上ってくる音が聞こえる。しかも二人。

 王女は少し警戒をしていた。がそれもすぐに解けたようだった。

「おう! くつろいでるか。譲ちゃん」

「紅茶…持ってきた…」

 登ってきたのは、親父(ガーレス)とシンだった。言い忘れていたが、ここはリュウ達の飛空挺(ファミラリアス)だ。

 一方。ランスとゼロはと言うと―――




―――飛空挺(ファミラリアス)→→→時計台―――






「あれ? 誰もいないや。すみません、こんな所まで来させちゃって」

 時計台はもちろん空っぽ。ランスは申し訳なさそうに頭をかいた。

「あ、いえ。付き合せたのはこちらですし…こちらこそすいませんね」

 あ、いえいえこちらこそ。という会話が何往復か続いた。この二人は性格が似ているのかもしれない。

 このまま会話を終わらせると嫌な沈黙が出来そうなのでランスはある提案を出した。

「よかったら、家に来ません? 兄達も手伝ってくれると思いますよ」

 金を取られるかもしれないですけど…と付け足す。よかった聞こえてなかったみたいだ。

 ゼロはその意見に賛成してくれた。位置も大体つかめたし、もう迷うことはないだろう。

 あのもの凄く長い梯子を降りるのだけが少し怖かった……。




―――時計台→→→飛空挺(ファミラリアス)―――







 ランス達がこちらに向かっているころ。リュウ達は話に盛り上がっていた。

「でよう、拾ったばかりのこいつは自分から罠に飛び込んで行ったり、失敗するとわんわん泣いたり…とんでもねぇガキだったぜ本当に!」

「う、うるせぇな! その話はすんじゃねぇって」

テーブルを囲んで紅茶をすすり、ケーキをつまみ(ランスのおやつ)正に話に花が咲いている状態だった。

 王女はすっかり打ち解け、リュウとガーレスの会話に腹を抱えて笑っていた。

 シンもその部屋の隅によっかかり話を聞いている。時折口元が笑っていた気もする。

 そんな昔話に盛り上がっているころ、長男ストラは帰ってきた。

「帰ったぜ……って誰その…綺麗な人」

 リュウはこれまでの経緯を話した。ストラは驚きの顔に満ちている。

 リュウが…女の子を口説いて連れてきた? そんなのありえない! と言った顔だ。

「なんだよその顔は……」

「あ、いや、すみません。あまりにもありえない話だったもので」

 つい敬語になってしまった。いや〜リュウももうそんな歳かぁ。青春だね、うん。

 つい親父臭いことを考えてしまった、自分もまだ青春真っ盛りなんだが。(リュウ16歳、ストラ17歳)

 そんなことを考えていたら、ストンッと何かが自分の足元にささった。

 あ、包丁だーわぁ…すっげえあぶねぇすっげえ怖え。

「兄貴だって、連れてきたことないよなぁ」

「いやいや、何回かあった気がしますがなにかぁ?」

「そうそう、腰を痛めた老人と雌犬は含みませんのであしからずぅ」

 語尾を妙に上げる二人、笑顔で喧嘩してるのはなんとも不気味だ。

「やめんかこらっ! お客さんの前で何やってんだ!」

 親父の流星拳骨炸裂!×2

「「〜〜〜〜〜!」」

 声になってないうめき声を上げる。ストラは久しぶりだったので尚更効いた。

 ついでに人前で殴るなよ…。と言い返す奴はいない、皆命が惜しいのだ。

 そしたらいきなり、ああああっ! とストラは叫びだす。痛みで気が狂ったか? と思ったが違う。ストラは続けた。

「ど、どどど、どこかで見たことがあると思ったら。その女の子…じゃない! その御方は…」

 ストレイツェル王国の王女様ではないか! そう続ける。

 全員王女を見る。本人が気まずそうにしているのが嘘ではないことを裏付けた。

 あ〜こりゃ打ち首もんだよ。やばいって、今日結婚式じゃないか…こんなん誰が見たって誘拐したように見えちゃうって……。

 王女を除く全員リュウを見る。いや、にらんだ。その物全てを否定しているような軽蔑の眼と怒りの眼が交ざって、その視線はとてつもなく痛かった。

「お、俺の所為…だよな。ああ、どうしよう…」

 王女はオロオロした様子。完全に身分知られてしまって混乱してしまったのか、衝撃の言葉を発した。

「わ、私をこのまま連れて行ってはくれませんか?」

「「「「はい?」」」」

 そんなのダメに決まっている。んなことやったら、全国指名手配犯に……ってもうなってる用なもんか。

 それでも一国の王女誘拐って…流石にやばいだろう?

 部屋中に深い沈黙が続く。

 その沈黙を破ったのは……。

「今帰ったよ〜」

 ランスだった。

 梯子を登る音が聞こえる。あれ、ランスだけじゃ…ない?

 瞬時に全員の頭によぎる物があった。

「「「「まさかあいつ! 王国騎士なんかでも連れてきてるんじゃ…!」」」」

 王女にはとりあえず隠れてもらうことにする。

 この後、一つのちっぽけな飛空挺に二国の王子と王女が乗ることになるのは数秒間後の話。












危険な足音が近づく……

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