1.家族
「お、来た来た。兄貴達遅いぞ〜」
そこにいたのは俺らの親父じゃなかった。
血は繋がってはいないが俺の大切な兄弟達だ。
長男が俺の隣にいるストラ。面倒見が良くしっかりしている。
その下の次男が俺。活発で目立ちたがり屋。(と言われる)
で、コイツが末のランス。ドジで臆病。
三男のシンは・・・
「あれ、シンは何処だよ?」
「ああ、シン兄ならさっきからそこに・・・」
ランスが俺達の背を指差すと闇から不気味な人影が出てきた。
何年も一緒に暮らしているがこれになれることは難しい・・・いや、不可能のようだ。
「うわ! 脅かすなよシン!」
いることを知っていたランス以外の2人は軽く悲鳴を上げる。
初めての人なら気絶する奴も出るかもしれない。
それほどコイツは怖い。顔立ちは綺麗なのだが被っているフードがなんともいえない不気味さをかもし出している。
見ての通り、コイツは暗い。とにかく暗い! てか怖い!
「これ・・・」
シンの手には紅茶が入ったティーカップが握られていた。
「あ、ああ、すまん」
「あ、ありがたくもらうぞ」
根は良い奴なんだよなぁ。とか思いつつもらった紅茶をすする。あ、これおいしい。
「で、親父は何処だ、親父が遅刻なんて砂漠に雪が降るんじゃないのか?」
とにかく親父は時間を守らなかったことが無い。
集合時間まで残り10秒だ。
9――
8――
7――
6――
5――
4――
3――
2――
1――
ゼ―――「ドーン!!」
ゼロと言いかけた瞬間。奥の扉を突き破り変なきぐるみを着た大男が入ってきた。
「うおぉぉん! 俺の名前はクマキング!!」
いや、そのネーミングセンスはどうだろう・・・ってかそれクマだったんだ。へぇー新しい発見だぁ・・・じゃなくて!
「親父。なにしてんだよ・・・好い年してきぐるみはねぇだろ!」
「親父なんてしらねぇな! とにかく俺と戦え!」
クマキング(おそらく親父)は手に持った棍棒を振り上げ襲ってきた。
「ったく。親父は何考えてんだか・・・」
「とにかく戦うしかなかろう」
「・・・面倒」
「ええええ! 戦うの? 怖いよ俺・・・」
クマキングが振った棍棒は誰にも当たらなかったが。
その攻撃から繰り出される風圧は凄いものがあり。
自分の子供に振れるような攻撃ではなかった。
あっ。いや、例外がいた。俺らの親父はどんな時も手加減できなかったっけ。
考える暇は無い。0,2秒後には直撃すれば骨が折れかねない攻撃が飛んでくる。
端から見ると闇雲に振り回しているように見えるが、ちゃんと相手を捕らえた動きだしかも急所を・・・
「「「「殺られる!!!」」」」
全員がそれを悟った。
親父だろうとクマキングだろうと関係ない、とにかく動きを止めるっ。
ランスは怯えて隅で「がんばれー」と言っていて。シンは「我関せず・・・」と天井にぶら下がっている。
「「・・・あいつ等あとで料理してやる」」
2人は堅く誓った。
リュウは双剣をストラは短剣を鞘から出す。
そして次の瞬間。2人は消えた。
ただ動き回っているだけなのだが常人が見たのなら消えたように見えるだろう。
「くっ。どこだ!」
「「クマキング。後ろだぜ」」
クマキングはしまったと後ろを振り向くが遅かった。
リュウとストラはクマキングの横を通り過ぎる。
2人はそれぞれの剣は鞘にパチンと納める
それと同時にきぐるみの部分だけ剥がれ落ち、正体があらわになる。
やっぱり中身は親父だった。
「ちっ。俺の負けだぁ」
「負ける気は無かったんだがなぁ・・・」
「いや、あんたが勝ってたら俺ら死んでたから・・・」