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カレンとミコトの航宙軍物語  作者: ルイ シノダ
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第八章 原子分解フィールド (2)

謎の物体からの返信を受けた第二艦隊は、その内容に驚く。そして自分たちでは考えられない方法で自分たちの前から消えるとヘンダーソンは第二艦隊はアルテミスに戻した。そして開発センター長ホーランド大佐はカレンとミコトに頼みをするが・・。

(2)


謎の物体に全周波数で呼びか掛けてから三〇分後、通信管制官が

「ボールドウィン主席参謀。返信です。敵から応答がありました」

「なんだと」

「直ぐに回してくれ」

そう言って自分の右後ろの総司令官席に座るヘンダーソンを見た。

「これは」

返信の内容に驚きながらも“何故自分たちと同じ言語を使用している。我々と同じ人類なのか”そんな思いを抱きながらボールドウィンは、

「我々は、“インシュリア“、お前たちが我々の星を攻撃したからだ。降伏とはどういう意味だ」

「総司令官、インシュリアとは」

今回は、軍事訓練を目的としていた為に、技術士官はいない。

「主席参謀、敵と会話できるか返信してみてくれ」

「はっ」

と言うとボールドウィンは、スクリーンパネルにヘンダーソンの命令の指示を入れた。

一〇分も経たない内に返信が有った。

「我々は戻る。我々の星に攻撃をするな」

「なんだと。ふざけるな。これだけの包囲網どうやって突破するつもりだ」

主席参謀があきれた声で言うとスクリーンパネルに映る残った六隻の航宙戦艦クラスの謎の物体と哨戒艦クラスの謎の物体が、急に同位置にて方向を九〇度上方に向くと哨戒艦クラスが大型艦に接近した。

一瞬自分の目を疑った。まるで宇宙空間に穴を開けたように様に潜り込むとそのまま消えた。第二艦隊の全将兵が目を疑った。

「総司令官」

悲鳴とも聞こえる声にヘンダーソンは、“やはりな。これ以上戦線を広げる必要もあるまい”と思うと

「第二艦隊全艦に告ぐ。こちらヘンダーソン総司令官だ。直ぐに救命ポッドの回収、損傷艦に残された負傷者の救出、航行可能な損傷艦の修復を行う。A1G、A2G、A4Gの各部隊はA3Gの応援に迎え」

「副参謀、被害状況をまとめ、報告してくれ」

「主席参謀、残された謎の物体の内、回収できるものがないか、調査させてくれ。くれぐれも慎重にな」

そこまで言うと

「クレメント艦長、作業が終了次第、アルテミスに帰還する」

そう言ってほんの少し、目元を緩ませた。

ヘンダーソンは、指示を出すと、スクリーンビジョンに映る大型の謎の物体を見た。“回収可能であれば、敵の攻撃方法を解明できるチャンスなんだが”そう思うと“無人アトラスであれば、接近調査が可能だが、今回は被害も大きい。仕方ないことだ”自分の考えを否定するような思いを浮かべながら回収状況を見ていた。


六時間後、回収と損傷艦の修復が完了した第二艦隊は、進路をランクルト本星に向けると発進した。

第二艦隊が惑星軌道の近くまで来た時、先程、第二艦隊前から突然消えた謎の物体が、突然その姿を現した。そして、惑星公転周回軌道面に対して垂直に上昇したかと思うといずこかに消えた。


「カレン」

「うん」

第二艦隊A3G部隊航宙母艦アマルテアのパイロットウエイティングルームでモニターしていた二人は一瞬だけ、何かを感じた。


第二軍事衛星アルテミスに帰還してから一週間が経っていた。

「ヘンダーソン提督、今回の件について報告書は読んだ。“インシュリア”について君はどう考える」

「はっきりしたことは、まだ分かっていないので想像の世界で申し上げますが」

少し間を置くと目の前に映る3Dの映像にポイントしながら

「インシュリア星系は、わがフレイシア星系から一五〇〇光年。インシュリア恒星の激しい活動で生命体はいないと考えられていた星系です。しかし、我が星系から二億キロしか離れていない二連星とその近くにある小惑星帯を彼らは“我々の星”と呼んでいました。彼はインシュリア星系を捨て二連星及び小惑星帯に移住したと考えます」

「しかし、にわかに理解しがたい。星系を捨て移住など考えられない」

「更に分からない点が一つあります。かれらが我々と同じ言語を使用したということです。同じ人類とは、考えにくいのですが」

「それについては現在、技術省の方で調査中だ」

「いずれにしろ、これ以上彼らを刺激することは、好ましくないと考えます。和平への道を模索するのがよいと考えます」

ヘンダーソンは、数の勝負で勝てたとはいえ、彼らの技術力を侮ることはできないと考えていた。これ以上の戦闘は双方に利益がなく犠牲が増すばかりだ。それ故に、評議会には和平、共存の道を選択してほしかった。


「うーっむ。和平、共存の道か」

評議会委員長ヤン・マクリーンは、自分の口に出した言葉を確かめるように他の評議委員に目をやった。

少しだけ間をおいて、

「ところで、彼らの攻撃が、我が星系で現在開発中の分子分解網と同じ力があるというのは本当かね。更に位相転移航法を使用したというのも」

分子分解網(DMG:デコンプマリキュラーグリッド)接触するものを分子レベルに分解する武器である。

「はっ、航宙軍開発センターの技術者が、損傷した我が星系の艦を調査したところ似ていると言っています。そして我が星系よりも性能が高い原子分解までする攻撃力があると報告を受けています。更にDMGはフィールドで攻撃する方法ですが、謎の物体は、これをエネルギー波として打ち出しています。そして我々の目の前で宇宙空間に潜り込むように艦の姿が消えました。第二艦隊全員が見ています」

「原子分解、位相転移航法」

マクリーンはウッドランドからの報告に驚きを隠せなかった。“明らかに自星系よりもすぐれた技術を持っている”腕組をして少し考えると

「ウッドランド提督、ヘンダーソン提督、我々はもう少し考えたい。少し時間をくれないか」

珍しい言葉だった。評議会代表が航宙軍トップへとはいえ、ウッドランドにこの様な表現をすることはなかったことだ。

「はっ」

と言ってフレイシア星系航宙軍式の敬礼を行うと評議会の会議室から出て行った。

“マクリーン代表は何を考えているのだ。これ以上の戦闘は双方に何の利益もない”そう思いながらも軍人は政治には口を出せない。


「カレン。戦っている時、感じたのは“あれ”なんだったんだろう」

「わからないわ。でも何かを訴えるように感じた」

「でも、僕たちだけを攻撃していた、というより。無人機だけを攻撃していたような」

「ミコトもそう思う」

「やはり、アッテンボロー大佐に報告しよう」

「うん」


カレンは、アッテンボロー大佐を通じて開発センター長のホーランド大佐と顔を合わせた。場所は、第二軍事衛星の基地に内にあるアトラスの電子機器整備室の一角にある部屋だ。技術開発衛星とは3D映像で連絡が取れる。

「アッテンボロー大佐から連絡を受けた時は少し驚いたが。もう少し詳しく聞かせてくれないか」

カレンはミコトと視線を合わせるとホーランドの方を見て

「私たちが、謎の物体と戦闘状態に入った時、何か語りかけてくるような思考が入ってきました。そして彼らは、自分たちではなく、無人アトラスを集中的に攻撃しました」

「どのような感じの語りかけかね」

ミコトが

「攻撃的な感じではなくどちらかと言うと何か救ってほしいような。そんな感じです。僕たちの言語ではないと思います」

ミコトの言葉に思考を巡らせながら

「その思考を再現できるかね」

ミコトは、カレンの目を見ながら

“カレンどうする。確かに残っているけど”

“これ以上私たちの事を知られるのはよくないわ”

“そうだね”

「ホーランド大佐、すみません」

そう言って頭を下げた。

「まあ、仕方ないことだ。さすがにそこまでは無理のようだ」

ホーランドは、なぜか二人が隠しているような感じを受けながら答えた。

「分かった。次の調査の時、調べられるよう機材を組み込むことにする」

その後、二人とホーランドは二〇分程、更に会話した後、映像を消した。会話が終了すると疲れるような感覚を体に受けたカレンは、

「ミコト帰ろう」

そう言ってミコトの目を見た。

基地内の食堂“おいしいレストラン”で夕食を取った後、官舎に戻ると部屋に入ったカレンは、

「ミコト、何かとても疲れている。何かわからないけど。体全体が疲れている」

「カレン」

シャワー室を出てリビングに戻ると濡れた頭にタオルを巻いたまま、

「ミコト、今日いいよね」

ミコトの目を離さないように“じっ”と見ていると

「うん、いいよ」

官舎に戻ると姉と弟が逆転する。外では気を張っているからかもしれない。微笑むカレンをミコトは立ちあがって優しく両腕で包むと自分の頬をカレンの頬に合わせた。

やがてベッドに入るとカレンはミコトの首に手を巻きつけて思い切り体を寄せた。

「カレン大きくなったね」

「ミコト、私たちもう二二才よ。立派な大人。そう私は大人の女性、そしてミコトは大人の男性」

少し間をおくと

「ミコト、私ミコト以外は・・」

それだけ言ってミコトの目を見た。

「カレン」

「ミコトお願い」

カレンは静かにミコトの顔に自分の顔を近づけた。静かに時間が流れた。まるで宇宙の時間全てが止まるように。何百億光年先の時間までもが止まるように。初めは緩やかにそして急激に時間の流れがあるように、二人だけの時間が流れた。万物の全てを見なす様に。  

それから少しして、“宇宙の静粛しじま“に見える二つの星が大きく輝いた。


「お父さん」

カノン・アオヤマ、カレンとミコトの母親は、自分の体に鮮烈な刺激が走ると自分の夫を見た。見つめあうと

「カノン、仕方ないことだ。いずれこうなることは分かっていた。いずれにしろこのまま私たちが、この星系で生きていくには、普通に生きていく姿を見せなければならない。我々がこの星系の生命体として生きるためだ。私たちもそうした」

フレイシア星系主都星ランクルトにいるカレンとミコトの両親が話をしているころカレンとミコトは、溶け合うように抱きながら睡魔の虜になっていた。


第二艦隊が帰還して一ヶ月後、フレイシア星系評議会は、二連星と小惑星帯の再度の調査を第二艦隊に命じた。目的は和平と彼等の技術の獲得だった。

無理な命令を突き付けられたヘンダーソンは、アテナ大隊の無人機アトラスⅣ型改の補充を理由に出発を三ヶ月間先とさせた。

「今回は、和平の道を探ることが目的だ。あの子達に出番がないことを祈りたい。しかしインシュリアの生命体とはどのような」

ヘンダーソンは、開発センター長のホーランドから聞いている二人の感じた意識について“何か救いを求めるような”という言葉に僅かな期待を感じていた。

“あの子達の我々にはない力を頼るしかない。しかしあの子達は一体”基地内にある自分のオフィスで腕を組みながら壁に映る星系図を見ていた。


それからしばらくして、カレンとミコトは、軍事衛星の一つフレイシア星系航宙軍開発衛星の開発センターの奥まったところにある電子クローンを生み出した研究室にいた。

「カレン少佐、ミコト少佐。これがインシュリアの生命体からの意識伝達を記録するシステムだ。これは、アトラスⅣ型改のシステムを改良したものだ。君たちは、特に意識せず航宙してくれればいい」

そう言ってホーランドは、研究室の中央にある小さなチップを見せた。

「このチップを君たちのヘルメットの中に取り付ける。特に邪魔にはならない」

そう言って二人を見た。

“ミコト。なんかいやな感じ”

“うん、僕もそう思う”

“でも仕方ないね”

“まあ、いいよ”

「ホーランド大佐。分かりました」

「では、このヘルメットを付けてくれ。アトラス乗機時に使用するものと同じだ。例の電子クローンを利用して君たちへ意志を送る。それを受信できるかテストしたい」

「分かりました」

といつものハーモニーで言うと二人はヘルメットをかぶった。


「では、始める」

カレンとミコトは、ヘルメットをかぶりながら意識を統一した。壁に映る三本の縦バーの二組のうち、片方が完全に消え、一方しか映らなくなった。

「センター長」

研究室にいる担当者達が驚きの目で見ている。“なんて子たちだ。意識を完全に移譲している。なぜこんなことができる”そう思いながら見ていた。


カレンはミコトに意識を完全に移譲していた。そこに何か入ってくるものがあった。

“カレン”それだけ思うとカレンの意識を離した。

突然、二組の三本の縦バーが激しく上下し始めた。そしてその縦バーの上にある周波数のような右から左に流れるウェーブが、激しく乱れた。

「センター長。中止して下さい。バーストします」

「なに」

突然、スクリーンの縦バーとウェーブが消えた。全員が言葉にできなかった。

“あれ、壊れちゃった”

“やっちゃったね”

顔には出さずに二人で話していると

「二人ともヘルメットを取ってくれ」

“なぜだ”ホーランドは何が起こったのか全く分からなかった。

「何かしたのか」

「いえ、なにも」

二人は目を合わせるとホーランドには分からないようにほほ笑んだ。

「再度行えるか」

「センター長、だめです。受信システムが、暴走しています」

「なんだって」

スクリーンのグラフの中央にあるテキストスクリーンが、ロールを繰り返していた。それを見たホーランドは、苦み虫を潰したような顔になりながら

「今日は、これで終了する。システムの修復を待って再開したい。それまで待っていてくれ」

二人が敬礼をして研究室の出口に向かう後ろ姿を見ながら“あの二人は一体・・、本当に我々と同じ人類なのだろうか”そんな思いが心に浮かんできた。


開発衛星は、開発センターで働く二〇万人とその家族の生活を支える基盤を持っている。もちろん衣食住にはまったく困らない。レクリレーション施設も他の軍事衛星と同じだ。

二人は、航宙軍開発センターを出ると

「ミコトやりすぎ」

「でも仕方ないよ。あの時、入ってくる思考と一緒に僕たちの思考も取ろうとした。だからカレンに意志を送り込んだ後、外から入ってきた意志をはじき出したんだ。そのおかげで、システムは外からの意識を全て受けることになった。結果はあの通り。でもそれで壊れるようだったら、僕たちの意識を受け入れるのは無理だよ。あれとは比較できないもの」

「そうね。ミコトの言う通りね」

「カレン、少しお腹すいた。どうしようか」

「ミコトの好きなように」

そう言って、カレンはほほ笑むとミコトの腕を掴んだ。


カレンとミコトはホーランドの頼みに協力する姿勢を見せながら、ホーランドのやり方を逆手にとって妨害しました。そしてランクルトの両親からの連絡に驚きます。

さあ、いよいよ次章は、最終章です。お楽しみに。

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