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カレンとミコトの航宙軍物語  作者: ルイ シノダ
17/26

第六章 ジョンバーン (1)

二連星の宇宙風の調査は表向きで、ついに謎の物体に遭遇した第二艦隊は、予想外の被害を受けます。フレイシア星系評議会は、二連星から三光時離れた小惑星帯の調査を指示しますが。

第六章 ジョンバーン


(1)


「ヘンダーソン提督、報告書は読んだ。にわかに信じがたいが、貴艦隊が遭遇した事実は曲げようがない。星系評議会としては、継続的な調査を行う方向で検討している。ついては君の意見を聞きたいと思う」

そこまで言うとアイエン評議委員はヘンダーソンの顔とウッドランドの顔を見た。

「アイエン評議委員、今回の探査航宙で予想外の被害を受けました。謎の物体“アンノーン”と呼ばせて頂きますが、彼らは、我々の技術力では、計り知れない力、武器を持っているようです。更に航宙駆逐艦並の大きさを持ちながら航宙戦闘機並の機動力。迂闊に近づけばどれ程の被害を受けるか分かりません。十分かつ入念な準備を行いたいと思います」

「提督、気持ちは分かるが、時間も限られている。いつまでも準備をしていると言う訳にもいくまい。どのくらいの時間が必要なんだ」

「三ヶ月」

眉間にシワを寄せると

「準備の為に時間が必要なのは分かるが少し長すぎないかね」

「いえ、これでも短い位です。相手は、我々の技術を上回ります。万全の準備をしていきたいと思います」

ヘンダーソンは、アルテミスに帰還後、このようなことを聞かれる事を予想して航宙軍開発センターのオゴオリ大佐に無人機“アトラス”の増設の時間を聞いていた。


「オゴオリ大佐。無人機アトラスの一個編隊二四機を用意するのに後どのくらいの時間が必要だ」

「はっ、後二ヶ月有れば残り一二機を用意できます。更に制御コンピュータの調整を含めても二ヶ月半有れば、“ライン”への積込も完了出来ます」

「そうか。では、急いでくれ」

「はっ」

そう言ってオゴオリは、敬礼した後、ヘンダーソンのオフィスを出ると少しだけ口元を歪めた。“ヘンダーソン中将がどこまでこの計画を理解しているかわからないが今は、利用させてもらおう。フレイシア星系航宙軍の為、いや俺の為に”

オゴオリ大佐が、自分のオフィスから出ていくと

“あの男、何を考えている。無人機アトラスによる自律航宙戦闘機部隊の編成が実現出来れば、我フレイシア星系航宙軍の為には大きな貢献だ。だが、あの男は別の事を考えている気がする。しかし今は、利用するしかない。無人機アトラスによる自律航宙戦闘機部隊を今回のミッションに投入出来れば、あの双子を危険にさらすこともなくなる”そう考えると少しだけ眉間にシワを寄せた。


「三ヶ月か。仕方なかろう。ヘンダーソン提督、三ヶ月後の再調査の準備をしてくれ」

そう言ってアイエン評議委員は、ヘンダーソンに握手を求めた。手を出してアイエン評議委員と握手をすると、アイエンは、そのまま星系評議会のオフィスを出た。

「ヘンダーソン中将、私はオフィスに戻る。次のミッションは、我フレイシア星系航宙軍にとっても重要な意味を持つ。宜しく頼むぞ」

「はっ、理解しています」

ウッドランドは、顎を引いて真剣な眼差しでヘンダーソンを見ると星系評議会ビルを後にした。

ヘンダーソンは、その後ろ姿を見ると自分も武官と一緒に自走エアカーに乗った。

「アルテミスのオフィスに戻る」

と一言言うと窓の外にうつる景色を見た。


「諸君聞いてくれ」

タカハシ准将は、第二艦隊航宙戦闘機群A1G、A2G、A3G、A4Gを配下に置く各隊長を呼んだ。

「フレイシア星系評議会で二連星から更に三光時先にある小惑星帯の調査を行うことが決定された」

タカハシは四人の隊長の顔を見ると

「次回の調査は、謎の物体の発生源を突き止める」

各Gの隊長の顔に緊張が走った。

「次回のミッションが容易ではない事は、全員思うとこだろう。そこで調査には独立編成部隊“アテナ”を優先的に使う」

各隊長がどよめいた。

「しかし」

誰かの言葉にタカハシは、

「分かっている。あの子たちは、我フレイシア星系航宙軍にとって重要な存在だ。そこで次回のテストを兼ねた無人機アトラスによる“自律航宙戦闘機部隊”を構成する。構成は二四機による無人機アトラスだ」

間をおいて

「調査には、この無人機の編成を使う。あの子たちは“ライン”の管制フロアでコントロールする」

「そんなことが出来るのですか。今まであの子たちが先頭に航宙していたからこそ無人機が追随していたように見えるのですが」

A3Gアッテンボロー大佐の言葉に

「だから、小惑星帯に到着する前にテスト飛行を行い、その実証に当たる。その後、調査を無人機のみで行う」

「テスト飛行がうまくいかなかったら。あの子達なしでうまくいかなかったらどうするのですか」

食い下がるアッテンボローに

「その時のことはまだ決まっていない。次回の調査は、あくまでも自律航宙戦闘機部隊が有効に機能することを前提としている」

アッテンボローは、自律航宙戦闘機部隊が、機能する事を前提とした作戦案に承服しかねていた。“上が決めたことに自分達は、従うしかない。しかし今回の決定は、あまりにも無茶だ。いくら常人とは比較できない卓越した能力を持っているとはいえ、こんなミッションを押し付けていいのか。まだ二〇才を過ぎたばかりだぞ”

他の各Gの隊長も同じ思いでいるらしく全員が苦味虫を潰したような顔をしていた。その中の一人が

「調査には、我々も参加出来ないのでしょうか」

突飛に出た意見にタカハシは、声の主A1Gアンク・オッコーネル大佐に顔を向けると

「我々も選りすぐれたパイロット、航宙戦闘機乗りと自負しています。こんなときの為に我々がいると考えます」

この言葉に全員が顎を引いて“その通りだ”という思いをタカハシに向けた。

タカハシは、四人の大佐、第二艦隊の実質的な隊長が、同じ思いであることが分かると

「分かった。お前たちの思いは上層部へ伝えよう」

そう言って四人の大佐の顔を一人一人しっかりと見た。


アッテンボローは、A3Gのパイロット全員を集めると

「次のミッションが決まった。謎の物体の発生源を突き止めるため二連星から更に三光時先にある小惑星帯を調査する」

“おおーっ”と声が上がった。アッテンボローは、静まるのを待って

「今回のミッションでは、特別独立編隊“アテナ”が全面に出るが、我々も調査に出る」

またまた声が上がった。

「ミッションは、相当難しい事が予想される。戦闘になる可能性もある。今まで養った腕を十分にいかして欲しい。各隊の役目は、各隊長が説明する。以上だ」

それだけ言うとミーティングルームの一段高い場所から降りた。アッテンボローは、そのままカレンとミコトの側に行くと

「二人には、別に話がある。これから私と一緒にヘンダーソン中将の所へ行ってくれ」

二人は、顔を見合せると二人同時に

「はっ」

と言って敬礼をした。

ヘンダーソン中将の基地内のオフィスに行くと中将の他に航宙機開発センターのオゴオリ大佐もいた。

「よく来てくれた」

そう言ってアッテンボローと二人に椅子を勧めると三人が座ったのを見計らって

「オゴオリ大佐説明を始めてくれ」

そう言ってオゴオリに促した。

「カレン中尉、ミコト中尉、これを見てほしい」

オゴオリは、二人の顔を見た後、3D映像に映し出された“RC42”に目を移した。

「これは前回、君たちと一緒に同期飛行を行った無人機アトラスⅣ型改だ。次のミッションでは、この機体を二四機一個編隊で自律航宙させるテストを行う予定だ」

そう言って二人を見た。二人の顔に変化が有ると思っていたオゴオリは、何も表情が変わらない事に内心驚いたが、そのまま

「二四機を六機ずつに編成してその先頭を二人の“ジュン”と“サリー”四機でリードさせる。君たちは、“ジュン”と“サリー”に“意思”送ってほしい」

さすがにその言葉に二人は、表情を変えた。

「出来るかね」

ヘンダーソン中将の質問にカレンが

「分かりません」

一呼吸置くと

「今までは、私たちの“意思”を“ジュン”と“サリー”が組み取ってきました。私たちが、あの子たちに送っていた訳ではありません。今回のテストでは、あの子たちがどう動くかは、全く想像できません」

その言葉にオゴオリは、苦り切った顔をすると

「オゴオリ大佐、シミュレーションはしたのかね」

ヘンダーソンの言葉に

「はっ、大丈夫と思うのですが」

「思うのですが」

ヘンダーソンは、目をきつくしてオゴオリをにらむと

「オゴオリ大佐、すぐにシミュレーションレベルで二四機が自律航宙可能か否か確かめた前。実機は、まだ製造中だが、シミュレーションは出来るだろう」

「はっ」

と言って、敬礼すると

「それでは、早速シミュレーションの準備に入ります。私はこれにて説明を終わらせて頂きます」

そう言って、3D映像を切ると一度ヘンダーソンに向かって敬礼した後、部屋の出口へ向かった。“実機テストで上手く行かなければ、あの二人をそのまま引きずり出そうと思っていたのに”その考えが、上手く行かなそうになったことにオゴオリは、腹の中に“しこり”が有るのを感じた。


「オゴオリセンター長は、まだシミュレーションをしていなかったのでしょうか」

アッテンボローの言葉に“わからん”という顔をするとヘンダーソンは、二人を見て

「実際、どうすれば、一個編隊飛行が出来ると思うかね。難しい質問だが、これを実現したい。君たちの将来の為にも」

そう言って、本当に尋ねる視線を送った。

「ヘンダーソン司令、私たちが二四機の先頭を航宙するので有れば、今まで通り飛行可能と考えます。しかし、“ジュン”と“サリー”が、私たちがいない時、どの様な挙動にでるか、想像できません。申し訳ありませんが、解らない事には答えようがありません」

ミコトの言葉に考えた顔をすると

「分かった。その通りだろう。今日は、もう下がっていい」

そう言って二人を見ると、敬礼をしている二人に答礼をした。

「二人とも先に戻ってくれ。私はヘンダーソン司令ともう少し話がある」

その言葉にカレンとミコトは、出口へ立ち去ると、二人がドアから出て行くのを見計らって

「オゴオリ大佐の思惑。腑に落ちません。何か別の考えが有るような気がします」

「私もだ」

そう言って、二人は目を合わせた。


“ミコト、何か面倒なことになりそうだね”

“うん、オゴオリ大佐、最初から僕たちを先頭で飛行させる事を考えている様な気がしたけど”

“私もそう思う”

“実際、私たちがいない時、“ジュン”と“サリー”は、上手く航宙出来ないと思う”

“そんなことある訳ないよ。でもカレン、上手く言ったね”

“ミコトだって”

他の人には、聞こえない会話をすると並びながら歩いている二人は少しだけ微笑んだ。すれ違う士官が、自分に微笑んだと思って顔を赤くしているのを見ると、今度は本当に目元を緩ました。

 二人で歩いているとスカートとスラックスの違いが有るとはいえ、本当に目を引く。胸元にある二つの輝いている徽章、“中尉”と“フレイシア航宙軍航宙戦闘機乗りトップパイロット”がなければ、声を掛けられても本当におかしくない位、可愛くそして綺麗だ。


二人は、基地内にあるレストラン“おいしいレストラン”で食事をしているとレイとサキが近寄って来た。二人で“あれっ”と顔をすると

「カレン、ミコト、色々ありがとう。やっぱり無理しないで普通に二人でいれる時はいることにした」

サキがそう言って微笑むとカレンとミコトも

「そう」

と言ってハーモニーして微笑んだ。

「ところで“アオヤマツインズ”、聞いたけど」

と言って小声になるとレイが

「“ライン”の航宙機編成が変わると聞いた。無人機アトラスⅣ型改(RC42)が、二四機積み込まれるそうだ。搭載機数二一〇機の内、有人搭載機アトラスⅢ型が二四機他の艦へ移る。ちょうど一中隊だ。実はその中に僕たちも入っている」

「えっ」

と二人で言うと

「知らなかったのか」

「いや、航宙戦闘機の編成が変わるのは知っていたけど、レイやサキが“ライン”を移動するとは知らなかった」

「そうか」

と言うと

「今度“ライン”のパイロット達が、壮行会をしてくれる。来ないか」

二人が少し気まずそうな顔をすると

「そうだよね。出される二四人の原因を作った本人たちだもんね」

サキの“きつい”言い方に

「サキ、どういう意味だ。カレンやミコトは、全く関係ない。航宙軍の方針に沿って一生懸命になっている二人に失礼じゃないか。それに僕達より上だぞ」

レイの本気になって怒っている顔に、今度はサキが気まずそうな顔をすると

「レイ、気にしなくていいよ」

ミコトがそう言うと同時にカレンとミコトが席を立った。

「ごめん」

と言って誤るサキを振り返らずに二人はトレイを持ってカウンタに歩いて行った。いつもならボーイに片付けさせるのが普通だ。後ろでレイがサキに怒っているのが聞こえる。

「ミコト、官舎に帰ろう」

「うん」

そう言うとレストランを出て、基地のゲートまで歩くと自走エアカーに乗った。

上級士官用に用意されているビルの入口について中に入るとミコトはエレベータに乗り五階のボタンを押した。

五階二号室のドアを開けて中に入るとボイスコムのランプが点滅している。ディスプレイを見ると“ヒサヤマ中尉より”と表示されている。

「あっ、ヒサヤマさんだ」

と言ってカレンが、ディスプレイの名前の所にタップすると

“お疲れ様、カレン中尉、ミコト中尉、明日基地に着いたら、私の衛生管理室へ来て”そうメッセージが残っていた。

「ミコト何だろう」

「分からない」

カレンはメッセージを削除するといきなりミコトに抱きついてきた。心臓の鼓動が少し早くなっている。

「カレン」

そう言うとミコトがゆっくりとカレンの背中に腕をまわした。

「大丈夫。いつも二人でやってきたじゃないか」

「うん、でも」

そう言って、ミコトの頬に自分の頬を付けながら

「ねっ、今日いいでしょう」

と甘えた声を出すとミコトは

「うん、いいよ」

と答えた。普段、他の人の前では姉であるカレンがリードするが、部屋に帰るとミコトに甘えるのである。


シャワーを浴びた二人はミコトのベッドに入ると体を寄せ合った。カレンの胸がミコトの胸に当たると

「カレン大きくなったな」

「うん」

と言ってそのままにしている。カレンがミコトの目を見ながら

「いいのよ」

「いいよ」

心臓が同期をとって鼓動している。ミコトの首に腕を巻きつけながら

「私、ミコト以外だれも好きにならない。ずっとミコトのそばにいる」

「カレン、それはだめだよ」

「でもミコトも私以外の人好きになれるの」

「それは無理だけど」

「じゃあどうするの」

カレンの甘えに受け答えしながら目をつむるといつの間にかミコトから眠りの息遣いが聞こえた。

「ミコト」

と言うと少し目元を緩ませて頬を寄せる。自分もいつの間にか眠りに就いた。

小さい頃からどちらかが不安になったり、寂しくなるとこうやって寄り添って寝ていた。こうすることで心が安らぐのだ。


自分たちの活躍がレイとサキを他の艦に移すきっかけとなった事にカレンは心が揺れます。

来週は、いよいよ小惑星帯の調査に向かいます。そこで意外な出来事が待っていました。お楽しみに。

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