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 俺はアニェーゼ様にアイアンクローをかけられている状態で目だけ動かして、周囲に救いを求めた。だが君子危うきに近寄らずと誰も目を合わせようとさえしてくれない。

 そりゃそうだ。俺でもそうする。

 どうやら俺はここで細切れになる運命らしい。

 俺はあきらめて意を決した。


「あの、ちょっと考えたのですが……水魔法は、普通、渡河中か籠城攻めにしか使えません。そしてアヴァール帝国軍の渡河位置を特定するのは難しい。ならば、今回は水魔法を捨てて風魔法のみを優先して、陣の位置を決めた方がいいのではないか、と思ったのです……」


 アニェーゼ様は瞬間きょとんとした顔をした。

 それから顔をしかめ、しばらく悩んだ後、


「……水魔法を使えば水竜を作り出せるわよ」

「水竜は水源から30メートルを超えて攻撃はできません。また攻撃できたとしても、せいぜい5,6人を吹き飛ばして終わりです。数千人規模の集団戦である通常の戦場では役に立ちません」


 間髪入れず返した俺の目をアニェーゼ様は覗き込んだ。


「……リキニウスと言ったわね」

「は、はい」


 アニェーゼ様はようやくアイアンクローを外してくれた。


「ちょっとおいで!」

「は、はい!」


 俺はアニェーゼ様に連れられて一番高い丘の上に登った。

 そこからおそるおそる眼下の景色を見渡していると、


「で、どうよ?」

「どうよ、とは?」

「あんたも阿呆なの? どういう戦いになるか、と言う話に決まってるでしょ!」

「あ、はい」


 慌てて、もう一度周囲を見回す。

 背後に控えるのはエートルリア王国、北部の要衝カンザ。このカンザの防壁は厚く高い。実際、このカンザが南下を望むアヴァール帝国の侵攻を何度も阻んできた。

 アヴァール帝国がそもそも騎馬民族系の戦闘国家で、主力軍は弓騎兵であり、要塞攻略戦は苦手であった。

 にもかかわらずここまでの大帝国を築き上げた最大の理由は東方より招いた攻城兵器の技術者の存在が大きい。東方にいる間はただの技術者にすぎなかった彼らが、アヴァール帝国に来たことで、特権を与えられ、知的エリートよ、天才よともてはやされた。悦びに舞い上がった彼らは日がな攻城を考え続け、奇天烈な新兵器をいくつも開発してきたという。

 だからアヴァール帝国が南下をはじめるきっかけは、その技術者たちが素敵なアイディアを思いついた、というものと、政治的な理由で外征が必要になった、という二つに限られる。

 今回は完全に後者である。


(つまり……)


 俺は自分の意見を伝えるために勇を鼓して口を開いた。

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