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口論

 その豹変ぶりに思わず俺は引きながら、


「あ、いや、一昨日直接僕のところに来て……」


 言い終わらないうちにアニェーゼは部屋を駆け出しながら


「あいつ、ぶっ殺す」

「ちょちょちょちょちょっと待ってください!」

「何? 私は私のものに手を出す奴を許さないことにしてるの。邪魔しないで」

「いやでも」

「邪魔するとあんたもぶっ殺すわよ?」

「そ、そんな……自分のものとか言っていたくせに……」

「自分のものを自分が壊すのは当たり前でしょ! 当然の権利よ」


 助けを求めてエラルド教授の方を見たが、エラルド教授は「私にはどうしようもありません」と言わんばかりに生暖かい笑顔で首を振った。

 結局、俺は止めきれないまま引きずられるように、アニェーゼがアキッレーオの塔に攻め込む現場に到着した。

 アニェーゼは扉を割れんばかりの勢いでノックする。

 反応がないのを見て、さらに炎の魔術の唱え始めて、まずいこのままでは魔法攻撃の現行犯逮捕だ、と思っていたら、扉が内側から開いた。

 憮然とした顔のアキッレーオが現れた。

 アキッレーオはちらりと俺の顔を見た後、アニェーゼに視線を戻し、


「……君にはありとあらゆる意味で常識というものがないのかね?」

「あんたと同じ常識は生まれてこの方持ったことがないわね!!」


 アニェーゼのとげとげしい言葉にアキッレーオはこれ見よがしに嘆息した。


「……君が万が一評議員に選出されれば、アグニ一族全体の品位が疑われてしまうな」

「あんたが評議員になれば、アグニ一族にはこんな無能な魔術師しかいないのかって一族の能力が疑われるわよ」

「……聞き捨てならないね」

「へぇ……魔術の腕で私の足下にも及ばないあなたが、そんな顔をしていいの?」

「足下にも及ばないとはなんのことだ! 失礼な!!」

「足下にも及ばないって言葉も知らないの? いいわ、教えてあげる。足下にも及ばないってのは、天と地ほどの開きがあるってことよ。言い換えれば人間とゴミ虫の差ね。私が人間であんたがゴミ虫」

「こ、この三首竜のアキッレーオに向かってそのような……」

「炎竜の三首化なんてアホでもできるわよ。無駄だから誰もやらないだけ。机上の空論ばかりありがたがるからそんなことになるのよ。それをわざわざ論文を作って二つ名を付けちゃうなんて、教授連中はみんな影で思ってるわ、“困ったものだ。二足歩行を自慢しているようなものだ”ってね」


 リアルにプチンと何かが切れた音が聞こえた気がした。

 全身を小刻みに震わせるアキッレーオは真っ赤になった顔で、


「こここここここまで馬鹿にされてこれ以上放置しておくと我が名誉が失われる! 術比べだ!」


 アニェーゼは小馬鹿にしたように唇をゆがめ、


「は。望むところよ!」


 俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。


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