第七話 ケツイ
久しぶりの投稿です。
それでは、どうぞ。
ガン!バガン!
その音は大きさを増していった。
そして。
ズガァァァァァアン!!!!!!
一際大きな音がして、それは黒風達の前に姿を現した。
「な、なんだあれ……!」
黒風の見つめる先には土煙が舞っている。
「よく見とけや、あれが、【神喰い】や」
それの姿は人だった。
身長は168程度。
銀髪の髪は短めの長さだった。
見た目の年齢は12~3程度の少年だったが、その瞳は紅く輝き、決意を感じさせる。
そして、それは黒風達を見て言った。
「……お久しぶりです、晴明さん」
その声は重く、その声は強かった。
瞬間的にわかる。
彼もまた、普通では無い、何かを持つ者だと。
「晴明……あいつは何なんだ……!?」
「……彼はな、僕の古い知り合いで……いや、これ以上はやめとこ、とにかくあれは、敵や」
「敵?……で、でもあいつも神喰い、とかいうやつなんだろ?だったら」
「詳しい話は後や……はぁ、しかしまいったなぁ、もー少し時間欲しかったなぁ…」
「おい……晴明、あれはなんだ?」
黒風の言ったあれ、それは、少年では無いもう一つの存在の事である。
それは今来た少年の後ろにいた。
身長は190cmほど、しかしその姿は人間に似てはいたが、人間ではなかった。
全身は黒く、異様に大きな手は地面につきかけていた。
顔は丸く、二本、大きな角の様な物が付き、目は漆黒の円、口は三日月の様に裂けていた。
そして、その手には。
「……赤井!?」
黒風のクラスメイト、赤井 柚奈が握られていた。
「おいっ!晴明!赤井が!」
黒風は慌てふためく、しかし。
「わかっとる、落ち着け」
晴明は落ち着いて答える。
「落ち着いてられっか!早く助けないと!」
「ダメや、いまのアンタじゃ勝てへん」
慌てる黒風に対し、冷酷なまでに冷たく晴明は答える。
「そんなんやってみなきゃわかんねぇ……」
しかし、黒風は納得出来ず詰め寄る……だが。
「わかる」
晴明は断言する、確固たる意思を持って。
「なんでそんなこと…!」
「あれは神喰いだけが使える使い魔みたいなもんや、僕らは喰いかすって読んどるもんや、あれは勝てへん、絶対にな」
「じゃあどうすんだよ!俺しかやれねぇんだ!助けたいんだよ!」
「……方法はある」
「っ!あんのか!?教えろ!」
黒風は詰め寄る。
そして、晴明は少し迷い、意を決し、言った。
「せやけどな、これを使ったら……アンタは…二度と人には戻れんようになる」
「…………は?」
理解しきれず、黒風は聞き返してしまう。
「やり方としてはな、アンタを神喰いにする、それが方法や」
「俺を……神喰いに?」
「せや、せやけどな……神喰いは一度なったらもう戻れへん、生涯異能の力を背負って生きることになる…………それでもええか?」
この力、それは黒風が今まで恨み、憎み、何より捨てたい物だった。
いや、捨てられるはずだ、晴明は治せると言っていた。
故に、黒風の心は揺れる、捨てたい、しかし……護りたい。
揺れ、迷う、しかし。
「時間はない、はよ決めてくれや」
もはや、黒風には迷う余裕すら無かった。
迷い、揺れ、そして…黒風は答えた。
「……なるよ、俺に…大切なものを護れるだけの力を……神喰いの力をくれ!」
「……本当に、ええんやな」
黒風の決意、それに対し、晴明は最後の確認をする。
「昨日言ったことは本当や、アンタの力は治せる、今ならな、でも、神喰いになったら……」
晴明は思い詰めたように、黒風に語り、確認をする。
だが。
「かまわねぇよ……もう、何年も前に決めてんだ、人じゃなくても、獣じゃなくても、あっちゃいけない異能の存在でも……俺は」
思いを吐き出し、そして一息吸い、黒風ははっきりと言った。
「俺は…人として人を護りたい」
「……そか、なら……もう何も言わへん、神喰いにしたる」
黒風の決意を受け止め、晴明は笑顔でそう言った。
「時間があらへんから手短に説明するわ、これからアンタをアンタの神に会わせる」
「俺の神?」
「せや、せやけどその神はアンタの事を喰おうとするやろな」
「なっ!?喰われんのか!?」
「いや、喰われたらあかん、喰われたら負けやと思え」
「じ、じゃあどうすんだよ?」
黒風のその問いに対して晴明の答えは単純なものだった。
「喰え」
「……はっ?」
「喰われる前に喰え、神をな」
「はぁ!?そんなん出来るのか!?」
「知らんわ、出来るかどうかはアンタ次第や」
「なっ!?……なんつう適当な……」
「それしか無いんやからしゃーないやろ、一つだけ言うとしたらな、絶対に喰われるな、怪我はいくらでもして平気や、せやけど喰われたらあかん、喰われたら終わりや」
「なんか……アドバイスになってねぇ気がするぞ?」
「やかましいわ、時間が無いんや、もう送るで」
「お、おう!……おくる?」
黒風が返事をしたのち、晴明は懐から一枚の紙を取り出した。
「なんだそれ?」
「だまって見とけや、いくで……」
そう言って晴明はその紙を黒風の額に付けた。
「お、おい何を…」
「んじゃ、頑張ってな」
彼が最後に聴いた言葉はそれだった。
そして、黒風は意識を失った。
「さてと…またせてすまんなぁ」
晴明は何時ものような笑顔で目の前の男にそう言った。
「いえ、構いませんよ」
「しかし本当に久しぶりやねぇ何年ぶりやろ?」
「私が家を出たのが確か980年ごろでしたから……1030年程度ですね」
千年、それはつまりこの少年がそれだけの年月を生きているという事である。
人間の生きられる年月では無い、やはり、人間では無いのだ。
そして、同じ時を生きる晴明もまた、人間では無いのだ。
「そうかぁ……もう千年にもなるんか……」
晴明は懐かしむような目で少年をみて、言った。
「なぁ……僕と一緒に、戻る気は無いんか?光栄くん」




