第六話 カミクイ
人気のない道を、少年、黒風 春は走っていた。
その顔には怒りが浮かんでいる。
(くっそ!めんどくせぇ……なんで俺があんなヤツの言うこと聞かなきゃなんねーんだよっ!くそがっ!)
黒風が向かっているのは学校の中でも人気がなく、通る人もほぼいない場所だった。
キキィィィィイイ!!!
「くっそ…また靴底すり減った……なんでこんなとこに呼び出しやがったんだ……めんどくせぇ…」
黒風が呼び出された場所。
そこは『体育館裏』だった。
「おっ!よーきたなー♪あの暗号分かったんか♪よかったわー♪わからへんとか言われたらどないしよーかなって思っとったわー♪」
転校生、安倍晴明は体育館の壁に背中を預け立っていた。
「うるせぇ、あんなんすぐにわかるっつーの」
先ほどの暗号、あれはローマ字変換を使った暗号である。
まず最初の文、【うさらぼちあのきおきなるんあくきあT】をローマ字に変換する。
すると。
usarabotianokiokinarunnakukiatとなる。
これを逆にすると。
taikukannuranikoikonaitobarasuとなる。
これを日本語に変換すると。
たいくかんうらにこいこないとばらす→体育館裏に来い来ないとばらす
となる。
そう、あの暗号は体育館裏に黒風を呼び出すためのものだったのである。
「たく……で、なんだよ、こんなとこに呼び出したんだ、なんかあんだろ?」
「あるよー♪いやー、話が早くて助かるわ~♪」
「あるなら早くしてくれ、あと俺の事を治すって約束、早くしてくれ」
イラつきながら黒風は言う。
しかし。
「約束?まだ契約は終わっとらんで?」
転校生、安倍晴明は何を言っているんだというように言う。
「はぁ!?昨日一晩中日本刀で斬りかかって来ただろうが!」
「あんなんで終わりなわけ無いやんか……まだやってもらうことはあるで?」
「なっ!?話がちが…」
「別に違くは無いやろ?僕は条件があるゆーただけや、別に一つだけとはゆーとらんで?」
「っ!!……くっそ…じゃあ残り、早く終わらせんぞ、早くしろよ」
「まぁまぁ、まちぃや、ここに来てもらったのはそんな理由ちゃうねんよ」
「……どうゆうことだ?」
黒風はここに呼び出されたのは十中八九、昨日の事のせいだと思っていた。
しかし、安倍はそんな理由では無いという。
「今日来てもらった理由はな?アンタの力についての話をしようと思ったんや」
「……俺の…力?」
そして安倍晴明は一息吸って、こう言った。
「せや、アンタの力、それが何故あるのか、そして、なんなのか、それを教えたろと思ってな」
「俺の……力?」
「せや、アンタの力、なんであんのかなんのためにあんのか、知りたいやろ?」
自分の持つ力、しかし黒風は一度も考えた事は無かった。
何故ならそれは彼にとって当たり前だったからである。
理由も訳も何も無い、そういうものだった。
「この力が何なのか……お前は知ってるのか?」
「知っとるで、アンタが知る以上にな」
そして、一つ深呼吸をして転校生、安倍晴明は語りだした。
「その力、それは【神喰い】と呼ばれる力や」
「……かみくい?」
「せや、神を喰う、だから神喰い、人の身に余る力、神の力や」
「ち、ちょっとまてよ!よくわかんねぇけど、俺は神なんか喰ったことねぇぞ」
「ちょぉまちぃや、説明するから…僕は確かにアンタの力を神喰いやゆうたけどな?でもな、アンタのそれは不完全なんや」
「不完全?」
「せや、なりかけ、片足突っ込んでる状態や、そういった存在を僕らは【喰いかけ】って呼んどる」
「くいかけ……いやでも、喰ったおぼえなんかねぇぞ?」
「当たり前や、お前はまだ喰っとらんねんから」
「はぁ!?」
「説明するからまてや、まずな、人間の心には神がおる、それが大前提や」
「神?心に?」
「せや、よく運が良いとか言うやろ?」
「え?あぁ言うな…」
「その、運が良い状態、それはな、神が力をかしとるんや」
「神が?俺らに?」
「せや、神は1人につき1柱、それぞれの心におる、思いや願いによって姿形は変わるんやけど、気まぐれで力を貸したりする、まぁ貸した所でそこまですごい事が起こるわけやあらへんけどな、せいぜい運が良くなったり、突然の閃きとかが起こるだけや」
「じゃあ話が違うじゃねぇかよ、俺の力はそんなレベルじゃねえ」
「せやからぁ、話しをきけっちゅーねん、確かにな、普通はその程度なんや、せやけど、例外もあるっちゅうことや」
「例外?」
「せや、神は気まぐれで力を貸す、ただな、その人間の思いや願い、それらが強過ぎるとき、神は力を奪われる、つまり、喰われるんや」
「なっ!?」
黒風は驚きを隠せなかった、彼にとっての神のイメージとは、人が触れる事など無いものだったからである、ましてや喰うなど考えたことも無い。
「それがアンタの今の状態、【喰いかけ】や」
「で、でも喰ったおぼえなんかねぇよ?」
「当たり前や、無意識なんやからな、無意識に力を求めてる、せやからそんな中途半端な力なんや」
「じ、じゃあどうしたらいんだよ?どうしたら治るんだ?」
「ま、それについては少し待てや」
「ま、待つってどうすんだよ?」
「もーちょいまてや、そろそろや」
「そろそろ…?」
と、そのとき。
ズガァァァァァアン!!!!!!
突然爆発音が聴こえた。
「っ!?何だっ!?」
慌てる黒風。
「………はじまったな」
しかし、晴明は落ち着いている。
まるでこうなる事をわかっていたかのように。
「はじまった?なんのことだよ、お前…なんか知ってんのか!?」
詰め寄る黒風に、晴明は落ち着いて言った。
「知っとるよ、はじまったんや、【神喰い】達の戦いが」




