第二拾話 シンジツ
またまた長く間が空いてしまいました……
申し訳ないです(´•ω•` )
他のアイディアも並行してまとめているので、つい長く間が空いてしまう事が多いのです……
次回からは頑張りますです。
「いやぁごめんね、えーっと……」
「黒風っす、いえ、大丈夫ですけど」
申し訳なさそうに謝る雲井に黒風は自然に答えた。
昼休み、先生に呼び出され、職員室へと向かった黒風を待っていたのは今日この学校に来た教師、雲井 拓海と大量のダンボール箱だった。
わけがわからず、呼び出した教師、伊森に聞いてみると。
『あー、このダンボール、理科室に運ぶんだけどよ、本来なら雲井先生の担当なんだが……ちょーっと一人じゃ無理があるっつーことでさ、暇そーなお前に手伝ってもらおうと思ってよ、それで呼んだわけさ』
と、いうわけで、黒風は今雲井と一緒に大量のダンボールを運んでいるのである。
「本当は僕が一人で運ぶべきなんだけど……ちょっとこの量は運べなくてね」
「ああいえ、気にしないでくださ」
ヘラヘラとした笑みを浮かべながら謝る雲井に返答し、黒風は廊下をダンボールをもって進んで行った。
「ふー、これで終わりかな?」
「そーみたいっすね」
あの後、さらに一往復して、ようやく全てのダンボールを運び終え、黒風と雲井は理科準備室にいた。
しばらくそこで休み、黒風は立ち上がると。
「じゃ、俺は教室に戻ります」
そう言って理科準備室を出ようとした、しかし。
「あ、待ってよ黒風くん、まだお礼をしていないじゃないか」
と言って、雲井は黒風を呼び止めた。
「お礼?いえ、いいですよ、そんなもの」
黒風は断り、そのまま準備室を出ようとしたのだが。
「まあまあ、受け取ってよ、僕の気持ちだと思って」
雲井はそう言うと、腰のウエストポーチを探った。
(うーん、マジでいいんだけどな……まあ、くれるっつーなら貰っとくか)
貰っておく方が後々ギスギスした感じにならずにすむと思い、黒風は。
「じゃあ、いただきます」
と言って立ち止まった。
「うん!じゃあ、これが君へのプレゼントだ」
そう言って雲井が振り返ると。
「!?」
黒風は身動きが取れなくなった。
直後。
「……くくっ、くくくっ、あっははははは!単純だねぇ黒風くん!こんな簡単な手に引っかかるなんてさ!」
雲井の態度が豹変した。
ヘラヘラとした笑顔は狂喜に満ちた笑顔に変わり、ゾッとするような冷たい瞳で黒風を見下ろす。
「な……!お前、何したんだよ……!」
黒風が怒りを込めて問う。
「んんー?何故君にそんな事を教えなきゃいけないんだい?そもそも知る必要も無いだろう?」
雲井はそう言うと、ウエストポーチから数本、試験管を取り出した、中には液体が入っている。
「これはねぇ、君へのプレゼントさ、あえて言うなら……死の片道切符ってとこかな?」
「な、何でこんなことを……!」
「あー……ま、理由はこれかな?」
雲井はそう言うと、白衣のポケットからメダルを取り出した、そこには。
「天照……!」
天照のマークが刻まれていた。
「ピーンポォォォォン!大正解、さてと、あんまりグズグズしてるとめんどくさいからなぁ」
雲井はそう言って手に持っている試験管を握り直した。
試験管がカチャカチャと音をたてる。
「じゃあ、さよなら黒風くん」
雲井はそう言って試験管を黒風に投げつけた。
(くそっ!ダメだ!動けねぇ……!)
黒風の目の前にまで試験管が迫り、死を覚悟したその瞬間。
黒風の肩を誰かが掴み、後ろに引っ張った。
倒れる黒風、そして、引っ張った誰かはそのまま準備室に入り。
カシャン!という音を響かせ、試験管をキャッチした。
「オイオイ雲井先生、そりゃあねぇんじゃ無いかい?」
黒風の目線からは背中しか見えなかった、しかし。
黒風はそれを知っていた。
煙草臭い黒いジャケット。
シワのついた黒いズボン。
ボサボサの髪、気だるそうな声。
その全てに覚えがあった。
「先生ってのは、生徒を殺すためにいるんじゃねぇ……護るためにいるんだからよ」
それは最も教師らしくない教師にして生粋のロリコン。
そして、黒風のクラスの担任教師。
伊森 童の姿だった。
「せ……先生……?なんで?」
状況が飲み込めない黒風が伊森に最初に言った言葉はそんな言葉だった、だが。
「おう、黒風、取り敢えず質問は後にしてくれ」
伊森はそれだけ言って、再び雲井に目を向けた。
しかし、その声を聞き、疑問は確信に変化した。
目の前にいる男は確実に黒風の担任、伊森であると。
(本当に、これが本当に先生なのかよ?ロリコンで変態でヘビースモーカーの……あの伊森先生?)
信じられないという感情と信じるしかないという相反する感情が黒風の頭の中をかき乱し、混乱させる。
しかし、敵は待ってはくれない。
「ふふふふっ、伊森先生ェ……邪魔しないでくださいって……じゃないと」
先程までのヘラヘラとした頼りなさそうな表情は消え、雲井の表情は残忍な悪魔のような表情に豹変していた。
その表情のまま、伊森を挑発するように嘲笑し、雲井は。
「殺スヨ?」
腰のウエストポーチから再び薬品入りの試験管を取り出し、投げつけた。
「危ない先生っ!」
思わず黒風が叫ぶ。
しかし、その次に起こった現象は目を疑うようなものだった。
「ん?あー、ほいっと」
伊森が気だるそうに振った伊森の腕が試験管に触れた瞬間。
試験管が、まるで存在しなかったかのように消え去った。
「あ……?」
雲井がその現象に唖然とし、棒立ちになった、その瞬間。
「ほいっと」
ドパン!という音がして、雲井の体が宙に舞った。
「ごほっ!!?」
それは、伊森が雲井を殴り飛ばした故の現象だった。
雲井がそれを理解したのは完全に殴り飛ばされたあと。
空中では身動きも取れない、そこに。
「よーいしょっと」
気の抜けた声と共にさらに二発、伊森の蹴りが入った。
「あっ……がぁっ!?」
もはや、雲井にはわけがわからなかった。
何故、自分の体が宙に舞っている?
何故、優勢だった自分の方が劣勢に立たされている?
何故、何故、何故?
なにより。
(こいつはなんなんだ!?)
その思考が雲井の中を駆け巡る。
その隙を狙われ。
「よいしょおっ!」
伊森の渾身の右ストレートが打ち込まれる。
「ごはぁっ!?」
そのまま雲井は吹き飛ばされ。
バリィン!という音がして、理科準備室の窓が破れ、雲井の体が投げ出される。
「ふーい、終わったな?」
まるで何事も無かったかのように伊森は呟き、窓の外を覗こうとする、しかし。
「調子に、のるなぁっ!!」
覗こうとした瞬間。
「うおっ!?」
雲井が細長い何かで伊森を突き刺そうと襲いかかった。
かろうじて伊森が躱す。
雲井が持っていた細長い何か、それは、一本の洋傘だった。
「危ないなぁ、雲井先生、生徒が真似したらどうするんですか?」
しかし、伊森はたいしたことではないとでも言いたそうにそういった。
「はっ!あいにく僕は優良教師になりたいわけじゃないんですよ!」
雲井はそう言うと、ウエストポーチから再び薬品入りの試験管を取り出し。
「それから、めんどくさいことにかかわる趣味もありませんよ!」
という言葉と共に床に叩きつけた。
バリン!と音がして、薬品が飛び散る、直後。
シューーー、という音がして、あたりが煙に包まれた。
「うっ!?ゴホッゴホゴホ!」
「黒風ー、伏せとけー」
しかし、伊森は慌てる様子もなく、黒風に指示を出す。
煙は3分ほどで消えた。
しかし、そこにはもう雲井の姿は見えなかった。




