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草太とスライムの異世界物語  作者: ミケイト
01 草太とスライム
6/8

01-06 勝利と喪失

前回、なんか急に読んでくれる人が増えてました。

嬉しい限りです!

契約した瞬間から、俺は自分の変化に気付いていた。

さっきはあれほど痛く、動かなかった身体が、今ではその痛みなく動かせる。

なんとなくだが、打撃の類いは俺にさほど効果がないだろう。


だって――




身体が"やわらかい"から。




『こいつ……【岩砲】! 【岩砲】!』



岩トカゲは次々と岩を吐き出す。

ドワーフはまだ、頭を抱えて悶絶している。


アイムは飛んでくる岩を、腕で叩き落としていた。



「アイム、あの飛んでくる岩、どれくらい受け止められる?」


「いくら来ても平気~♪」


「よし、じゃあ作戦を立てるから、しばらく盾役を頑張ってくれ」



アイムに盾になってもらっている間に、俺は【鑑定】を行う。


まずは、再度敵の戦力から。




[種族]

  ドワーフ

[称号]

  神の杖を持つ者

  岩トカゲの契約者

[種族スキル]

  鍛冶 Lv.2

  腕力強化 Lv.2

[個別スキル]

  斧術 Lv.2

[能力]

  筋力 C

  体力 C

  魔力 D

  知力 D

  敏捷 E




冷静にもう一度見てみる。

はじめは筋力や体力の高さばかりが目についたが、よくみると敏捷がEだ。

思えば俺の溶解液も、アイムの投げた岩も避けられていなかった。


次は奴の斧。




[名前]

  斧の杖

[杖スキル]

  斧化 Lv.1

[説明]

  100本に分かれた神の杖の1本。

  斧の能力を宿す。

  「起動」と唱えると杖の形になる。




……杖である必要性を感じないな、うん。

ただの斧と考えていいだろう。

ドワーフが【斧術】を持ってるから、気を付けなきゃいけないのは間違いないがな。


あとは岩トカゲ。




[種族]

  岩トカゲ

[称号]

  ドワーフの契約者

[種族スキル]

  硬化 Lv.2

  岩砲 Lv.1

[個別スキル]

  人化

[能力]

  腕力 C

  体力 D

  魔力 D

  知力 D

  敏捷 D




あまり隙がない上、腕力が高い。

ただ、硬化も岩砲も、俺達との相性を考えるとそこまで脅威ではないだろう。


よし、敵の戦力が分かったあとは、こちらの戦力の確認だな。


こうしている間にも、敵は【岩砲】を連射してくる。

が、アイムは難なく対応している。


アイムの変化は……




[種族]

  スライム

[称号]

  人間の契約者

[種族スキル]

  分裂 Lv.MAX

  同化 Lv.MAX

  溶解 Lv.2

  吸収 Lv.2

  変形 Lv.1

[個別スキル]

  人化

[能力]

  筋力 D

  体力 D

  魔力 D

  知力 D

  敏捷 D




……強くなったなぁ、うん。

スライムの能力はもともとオールEだったからね。

今はオールD、全部一段階強くなってる。

スキルのレベルも上がってるな。




「クソ最弱ども! 楽に死ねると思うなよ」



あ、ドワーフが復活した。

まだ俺のステータスを確認出来てないのに……。

奴の武器は斧。スライムでは分が悪いな。



「アイム、奴を近付けるな。 【溶解】だ!」


「うん! 【溶解】!」



アイムが【溶解】を唱えると、アイムの両手の先から大量の(・・・)溶解液が出てきた。

人一人くらいの量の溶解液がドワーフを襲う。


――そうか、レベルだ。

溶解Lv.2。

レベルがひとつ上がるだけで、威力が段違いだ。


ドワーフは全身に溶解液を浴び、再び苦しんでいる。

ドワーフの服も溶けかけてる。

溶解液の量のだけじゃなく、質も上がっているらしい。



「畳み掛けろ、アイム!」


「うん! 【溶解】! 【溶解】!」


『【硬化】!』



岩トカゲがドワーフの前に立ち、【硬化】を発動。

岩トカゲの体表面は本物の岩のように硬くなる。

【溶解】にも耐えているようだ。



『ぼくたちも戦うよ~!』



ふと、そんな声が聞こえてくる。

声の元は……スライム達だ。



「君達も人語を……? まぁいいや、ありがとう! みんなで【溶解】だ!」


『うん! 【溶解】!』


『【溶解】~♪』


『【溶解】っ!!!』



どんなに弱くても、数は力だ。

残っていた10匹ほどのスライムから、雨のように溶解液が降る。

岩トカゲの体もジワジワと溶け始める。


しかし、岩トカゲは自分の表面が溶けるのに構わず、ゆっくりとこちらに近づいてきた。



「接近戦は厄介だ、近付かれる前に溶かし尽くすぞ」


『ぐっ……【硬化】っ!』



再度【硬化】をかけるが、岩トカゲは苦しそうだ。

よし、俺も参戦するか。



「いくぞ、【溶解】!」



俺の杖から出た溶解は、アイムの【溶解】と同じサイズ。

つまり、やわらかい杖の溶解もLv.2になっているということだ。



岩トカゲはついにその足を止めた。

ずいぶん余裕がなさそうに見える。




――勝てるっ!



そう思ったときだった。

岩トカゲの後ろから、"奴"が飛び出してきた。



「てめぇら……ぶっ殺す」



ドワーフは、瀕死の岩トカゲを一瞥した後、スライム達に突っ込み斧を降り下ろす。

2匹のスライムが犠牲になった。


こちらも溶解で応戦すると、奴は岩トカゲの陰に隠れてしまう。

そうして、隙を見てまた1匹と、別のスライムが犠牲になる。


ゆっくりとではあるが、近付いてきていた岩トカゲ。

岩トカゲが守り、ドワーフが攻める。

これがこいつらの戦略か。



「アイム、俺がドワーフを止める。 お前は岩トカゲを――」


「わかった!」


「出来そうか?」


「たぶん平気~!」



俺は岩トカゲの陰に隠れるドワーフの元へ急いだ。



「【変形】!」



俺は杖を"鞭"の形に変形させた。

これならやわらかくても問題ないだろう。



「おいクソ人間、なんだその触手は」


「鞭だよ、失礼な」



接近戦は、どうあがいてもドワーフが有利だ。

向こうもそれが分かっているのだろう。

斧を構えてこちらに近付いてくる。


俺は鞭を振り上げ、ドワーフに打ち付ける。

が、その鞭はドワーフに届かない。

鞭の先端を、ドワーフが掴んだからだ。



――それが罠とも気付かずに。



「こんな弱っちい攻撃が――」


「【溶解】!」



鞭の先端から放たれた溶解液。

ドワーフはそれを頭からかぶり、思わず鞭から手を離す。



「ぐっ、卑怯な――」


「足っ!」



俺はドワーフの足に鞭を絡み付かせると、一気に引き上げた。

地面にたまった溶解液が潤滑油となり、ドワーフは後頭部を激しく地面に打ち付ける。

同時に、持っていた斧を地面に落とす。



「がはっ……ってめぇ!」


「【溶解】!」



俺は畳み掛けるように溶解液を浴びせる。

しかし、怒り狂ったドワーフはそれを無視し、斧も拾わず、真っ直ぐ俺に向かってきた。



「いい加減、うぜぇぇんだよぉぉぉぉ!!!」



ドワーフの拳が俺の体をとらえる。

筋力Cの攻撃と、筋力Dの防御。


一撃ぐらいは耐えられるんじゃないかという俺の見通しは、甘かった。



「ぐはっ――」



足の踏ん張りも全くきかず、吹っ飛ばされる。

スライムと契約し、身体がやわらかくなっていなかったら、骨まで粉々になっているような攻撃だった。



「これでも死なねぇか……」



ドワーフは、少し離れたところに落ちている斧を拾い上げ、岩トカゲの方を振り返りながら……



「こいつを片付ける。 加勢しろ、ラグ――」



岩トカゲに話しかけようとして、目の前の光景に唖然とした。



『ぐぁ……ぁ……』



"岩トカゲを包むゼリー状の何か"が薄く光る。

そしてそれ(・・)は、やわらかく形を変え――



「ソータ、【吸収】終わったよ♪」



無邪気な笑みを浮かべる少女の姿になった。

時間稼ぎ(・・・・)、うまくいったな。



「アイム、お疲れ」


「えへへ♪」



アイムが俺の方に駆け寄る。

俺は立ち上がると、アイムの頭を撫でた。

気持ち良さそうにニコニコしている。


可愛いなぁもう!!!



「……て、てめぇら……」



声に振り返ると、青い顔をして半分正気を失ったドワーフが、斧を引きずってこちらに来る。



「アイム、逃げるぞ」


「大丈夫だよソータ、任せて」



そういうと、アイムは俺の前に立ちはだかった。



「なんで……スライムごときに……人間ごときに俺が負けるっ!?」



ドワーフはアイムに向かって斧を降り下ろす。



「【硬化】」



アイムは新しいスキル(・・・・・・)を唱えると、斧を受け止めた。



「ねぇドワーフのおじさん……わたしね、おじさんに感謝してるの」



ドワーフはかつての相棒のスキルを見て、半狂乱になりながら斧を振り回す。

しかし、アイムには意味がない。



「おじさんの食料で、ソータを救えた。 おじさんが殺しに来てくれたから、ソータと契約できた。 おじさんの岩トカゲがいたから、今こうしてソータを守れてる」



ドワーフは泣いていた。

俺からすれば、人を蔑み、スライム達を殺しまくった嫌な奴。

でも、あの岩トカゲのことは、こんなに泣くほど大事にしていたのか……。

俺が同情するのは筋違いだけど。



「だからおじさん、逃げていいよ。 わたしもおじさんを、食べたくないの(・・・・・・・)



ドワーフはガタガタ震えだした。

先程の相棒のように、吸収される自分の姿を想像したのだろう。


こちらを向いたまま、ゆっくり後ずさる。

こいつはこのまま、この場を去るだろう。



……終わったな。



俺は手を伸ばし、アイムの頭をなでた。

こちらを振り向き、ニコニコしている。


でもさっきの脅しは、ちょっと怖かったぞ♪





「主、ここには杖持ちが二人いるようだ」


「あらそう、じゃ、どちらも潰しましょう」



物騒な声が聞こえてきた。

部屋の入り口を見ると、耳の長い人間……エルフが二人(・・・・・・)、現れた。

女の方は、杖をドワーフに向けている。



「【風刃】」



彼女がそう呟くと、ドワーフの持っていた斧が一瞬でズタズタになる。

ひっ……と、気を失ったドワーフは、その場に倒れ込んだ。


エルフの彼女は、そのまま杖をこちらに向ける。

俺の前に、アイムが立ちはだかった。



「ソータを……させない」



エルフは冷たい表情でアイムを見つめる。

そしてそのまま、抑揚のない声で呟く。



「【風刃】」



鋭い風がこちらを襲ってきた。

俺は、考える間もなく動いていた。



「アイム!!!」



アイムの体をつかみ、地に伏せる。

それを見たエルフの表情が、怪訝そうに曇った。



――バシュッ



背後から聞こえた小さい音に振り返ると、そこには。


ズタズタに引き裂かれた、俺の「やわらかい杖」が落ちていた。









余談ですけど、アイムの名前は「あかいスライム」の最初と最後を取った感じです。

まったく草太は安直ですね。


……え?作者が安直なわけじゃないですよ、えぇ。

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