アザとー式作文講座(一人称はこれでばっちり!編)
小学校で作文を習うときに言われなかっただろうか、時系列どおりにだらだらと事実を羅列してはいけないと……
つまりはこうである。
僕は朝起きました。朝ごはんを食べて歯を磨いてから学校へ行きました。
悪い作文の見本として見かける一文ではあるが、これは書き手がわざと下手に書いているだけである。じゃあ、アザとーが書いてみろって?
良かろう。刮目せよっ!
俺は夜の寒さすら空けきらぬ早朝に目を覚ました。
階下からは香ばしいトーストの香り。階段を駆けるように降りて、既に並べられた朝食に飛びつく。
……ああ、至福だ。
薄くキツネ色の焦げ目をまとったトーストは溶けて染み込んだマーガリンを甘く舌先へと届けてくれる……
え、もういい? この後歯を磨くくだりもあるのに?
さっさと進めろ?
ああ、そうっすね。アザとー式文章講座、開幕です。
ええと、うかつな題材を使うわけにはいかないし……かといって誰でも知っているような……『竹取物語』をテキストに借りちゃいましょう。
アザとーが文章を書くときに気を使うこと、それはカメラワークです。
その物語を見せるためのカメラを持っているのは誰なのか、あるいは定点カメラなのか、レンズは何に向けられているのか……今日日映像の一つも見たことが無いという人はいないだろうという前程の下、実際に竹取物語の冒頭シーンを見てみましょう。
今は昔、竹取の翁といふものありけり
「今は昔」ってのを語っている人がいますよね。つまりこれを映像化しようとしたらこうなるわけです。
温かく日の差す縁側に子供達と老婆。
老婆>昔話をしてあげようかね。昔、竹取爺さんといわれている人物がいたんだよ……
次のシーンへパン。
ああ、語り部のナレーションで入るって手もあるのか。その場合のカメラは語り部目線になるんですよね。
竹林を歩く竹取の翁。それにかぶせて
ナレーション>むかぁし、竹取の翁というものが居ったそうじゃ……
原文に忠実なら大体こんなもんですよ。でも、それじゃ面白くないんでカメラマンを爺さんに変更してみましょうか?
わしは通いなれた竹林の中を歩いておった。天に向かってすいっと立つ竹どものせいで、昼だというのにここは薄暗い。
だが、なんだろう?
ふと見ればその暗さを押しのけてわしの目を刺す光があった。
ありがちな一人称文が出来ました~♪
カメラマンは爺さんなんだから、当然レンズが向けられるのは爺さんが実際に見たもの。でもその画面に映りこんだもののすべてを書き込むのではなく、カメラマンが興味を持ったものだけを描けばいいのです。
そして文章という名のカメラの利点は、心の動きにもフォーカスを合わせられるということ。ってことで金色に輝いている竹にカメラマンチェンジっ!
ひゃっっは~~~ノってきたぜえええええ!
あの人は今日もやってくるの……今日こそは私を選んでくれるかしら?
ううん、きっと選んでくれる。だって、今日の私はトクベツだもの♡
あの鉈で、ついに切られちゃうのね、わ・た・し。あああああっ! できれば優しく、でも激しく切り倒してえええええええっ!
ほらね、一人称文なんて簡単でしょ?
ぜひあなたの創作に役立ててくださいね。
次回、マト●クス的カメラワークによるアクションシーンの作り方。お楽しみに!