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堕天使の君と、恋に堕ちるまで  作者: ラストジェネレーション


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第七話 彼女の肉体

 エリナが目覚めて早々、彼女の部屋を訪れた堕天使は祝福の言葉を告げると共に、一つの任務を与えてきた。やはり、薄々勘付いていたので驚きはない。


 ミカエルが僕の身代わり目的で仲間を増やそうなどと言うわけはない。


「エリナ。君にお願いがあるんだ。天使との戦闘の際、一時的にその肉体を私に預けて欲しくって..、そのために必要な訓練を、今から始めたい」


「なるほど..。でも、私からも質問があります。肉体を預ける間、私の意識はあるのか? 戦闘中に受けた傷は、元に戻るのか..」


「肉体の譲渡中、君の意識は一時的になくなる。傷の件に関してだが、そちらも私が回復させるから問題ないよ」


「そうですか..。なら良いんです。痛いのは、嫌だから....」


「安心して。悪いようには扱わないよ..。戦いは速やかに終わらせる。でも、重要なのは君の肉体と私の精神を接続させられる継続時間の方。善処するけど、最初の方はどうしても拒絶反応が起きてしまうの」


「....。そういうものなのですか?」


「うん。だから練習する必要があるんだよ。私達の肉体と精神が馴染むまで」


 そう言って堕天使は、エリナの肩からお腹にかけてを優しく撫でた。そのあまりの慣れた手つきに、彼女はピクリと身体を震わせ息を漏らす。


「わ、分かりました! すぐに始めてください....」


「勿論そのつもりだよ。魂を同化させるから、エリナは出来るだけ無心でいて欲しい。そのほうが私にとって好都合なんだ」


「えぇ....」


 無心、ミカエルは簡単に言うものの、いざやってみると中々上手くいかない。当たり前だ。それを聞いた人間は大体、目を瞑ってじっとするという選択を取る。


 外部からの情報を遮断したいという欲の現れだ。そうして視覚を閉じたとしても、次に湧き出てくるのは雑念。無心である事を念じるのはかえって逆効果だ。


 特に天使の突如の襲撃といった非常事態においては、早く意識を消さなければと焦って思えば思うほど、思考の沼にハマってしまう恐れがある。


 そんな余計な感情を排し、極力動揺しないように精神を鍛えるのは必須条件。後はエリナの肉体とミカエルの精神が融和するまで反復するしかない。


 1回目ーー


「....。終わったんですか?」


「うん。ほんの一瞬だけ潜り込めたんだけど、すぐに弾かれちゃった..」


 10回目ーー


「少しの間だけ、貴方の身体で話せるようになったわ!」


「本当ですか? ..。なんて言ったのかが気になるのですけれど..」


「....それはまた別の時に教えるよ」


 50回目ーー


「簡単な動作なら出来るようになったよ! 歩いたり、跳んだり..。継続時間も5分程度に延長されたわ。でも実戦にはまだ早いから、もう少しだけ..」


「....。疲れました..」


「えぇ!? まだ練習を始めて一晩明かしただけじゃない!」


「ミカエル..。人間は一日の徹夜でも大分きつい生き物なんだよ。エリナの言ってる事は事実だと思うし、寝かせてあげたら?」


「ダメよ..。そんな悠長な事をしている時間は無いの。天使が襲ってくるまでに、ある程度まで実力を高めないと、三人で仲良く全滅するだけ..。それでも良いの?」


「....」


「私は絶対に嫌..。もう誰も死なせたくない。神殺しの計画に巻き込んだ以上、半端な真似をするつもりはないから....」


 ミカエルとエリナの特訓はのべ三日を要し、その間は不眠不休という過酷極まりない様相であった。


 エリナの顔面は蒼白であり、目の下には大きなクマが出来ている。


「まだよ..。肉体制御の継続時間は申し分ないけど、私本来の力だけがどうしても使えるようにならないの....。だからお願い。後少し付き合って..」


 ここまでくると、堕天使も良心の呵責を覚えるようだ。進展のない現状を見兼ね、困り果てているであろうに、その態度は決して表に出さない。


 このままでは、どちらかが先に限界を迎えるのは僕の目からでも明らかであったが、その時はあまりにも唐突に訪れた。


「....。ダメ。どうしてだろう..?」


「....。無駄なんですかね..。私は、いらないんだ......」


 エリナが倒れ、原因不明の高熱を出したのは4日目の晩だった。



「彼女の調子はどう? まだ、良くならない..?」


「はい。布団の上に横になって、ご飯も残さず食べてるのに熱だけが残ってて..」


 あの後眠りに落ちた彼女の肉体を掌握し、堕天使はたびたびこれを操るも、やはり肝心の『力を使う』事のみが不可能であった。


「エリナの問題、なのかな?」


「........」


「どうしてだろ....」


「......」


 彼女は何か思う節があるらしく、顔を横に逸らしながら呟いた。


「多分、私のせいよ」


「え..? それはどういう意味..?」


「いずれ話すよ。対処法もたった今思い出した所だし、彼女が寝起き次第この問題は解決するでしょう。だから安心して、明日も頑張りましょう..」


「....」




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